第17話「独創心」
「それでは、夢の話を」
「はい。気が付くと、とても無機質な空間にいました。化学の実験室や、病院を連想させるような、徹底して自然を排除しようという、強い意志を感じる部屋でした。床には、顔面全体を丸ごと覆うことができる仮面と、背番号の縫い付けられたローブが置いてありました。しばらくすると、壁面に文字が浮かび上がり、二つを着用するように命令されました。指示に従うと、今度は床面が光りました。壁面を見ると、床面の光を追えという指示に切り替わってました。光っているところまでいくと、その場の光が消え、その先に新たな光が灯るという具合でした。しばらく歩くと、同じ格好をした人たちと合流しました。人数は、どんどん増えていきます。全員で、同じ場所を目指していました。徹底した個性の排除と、中枢一括管理が進んでいるようでした。そうして、全員に同一財、同一サービスを享受させることで、統括にかかる無駄な煩わしさを省いているのでしょう。不気味で、目的の分からない行進は続きましたが、底知れないおぞましさから、仮面とローブを外してしまいたくなってきました。その欲求が耐えがたくなり、ついに、外してしまいました。すると、一緒に行進していた人たちが、一斉に私に向かって襲い掛かってきました。暗闇に紛れてしまおうと、光っていない場所へと走るのですが、走る先、走る先、床面に光が灯りました。ついに、追っ手の一人の手が肩に掛かったところで、目が覚めました」
「そうですか。それでは、よい旅を」
「ありがとうございました」