第16話「利己心」
「それでは、夢の話を」
「あっ、はい。いかにも、お金持ちという風貌の男性に連れられて、ある工場を見学していました。あぁ、いかにもというのは、新聞の風刺画でお馴染みの、某赤い盾一家の当主のような風貌の男性という意味です。えぇと、その工場では、人間を生産してました。比喩ではなく、生身の人間です。そこは、良質な労働者を生産する工場だったのです。生産ラインを順を追って見せてもらいました。まず、物心がつくようになると、教育がスタートします。太陽は赤、月は黄色、お母さんは優しい、お父さんは強い。そういう洗脳をされます。そのあとは、数年置きに記憶力を競う争いが行われ、規格に合わない人間は、粗悪品として処分されます。そうして、生後から二十年ほど教育が施されると、工場の人間たちは、同じような黒い服を着て、会社に対してアピールをします。会社の偉い人に見初められ、晴れて戦士として入社した後には、身体面、精神面を問わず、どれだけ苦痛に耐えられるかを競わされます。堪え切れずに役に立たなくなったら、即座にお払い箱です。最後に、引率の男性から、一人あたりの値段を告げられ、買わないかと持ちかけられ、そのあまりの安さに驚いたところで、目が覚めました」
「そうですか。それでは、よい旅を」
「あっ、はい。ありがとうございました」




