第12話「恐怖心」
「それでは、夢の話を」
「はい。気が付くと、一人で博物館のような建物に閉じ込められていました。建物の中は薄暗くて、鉄格子の嵌った窓からは月が見えていました。棺桶に入れられたミイラ、髪の一本、皺の一筋まで丹念に描き込まれた油絵の肖像画やブロンズ像、剣と盾を持った鎧兜、肉食動物の剥製、そのどれもが、今にも動き出しそうな、不気味な、ただならぬ気配に満ちていました。館内は、迷路のように入り組んでいて、一向に出入り口が見つかりません。この扉が出口かと思ったら、別の展示室に繋がる。この階段を下りれば、地上階かと思えば、まだまだ下に続く階段がある。廊下の先が行き止まりで、引き返すと別なところに出てしまう。そんなことを繰り返すうちに、同じところを何度も巡っているかもしれない、という不安に苛まれ、動けなくなりました。すると、ひたっ、ひたっ、と水気を含んだ足音が近付いてきました。逃げようと思っても、足が竦むばかり。足音が、すぐ背後に迫り、肩を叩かれたところで、目が覚めました」
「そうですか。それでは、よい旅を」
「ありがとうございました」
「……さて。水道を直すとしますか」




