音楽祭
(2)
死刑施行室。
死刑囚は頭に袋をかぶされ、後ろ手に鉄枷をはめられた。
タカロス・ラビルはしっかりと確認をしてから、所長、副所長が並び、スツールに座っている。
白いブロックに囲まれる中、白い蛍光灯がその場を照らしていた。
死刑囚は無言のまま、縄を首に掛けられた。
タカロスはそれを項まで降ろし、静かにうな垂れる頭部を見た。
「………」
肩と縄から手を外し、腕を持ち立たせては、段に昇らせる。
死刑囚は上り、その場に立った。
女精神科医が所長の横に立っては、見守っている。
腕時計を確認し、タカロスの背と、死刑囚のうな垂れる麻袋の頭部を見た。
「人生を、随分と急ぎすぎたようだな」
タカロスの静かな声がそう言い、縄をもう一度引き上げると袋の顔を見た。
袋の中で息をし、動いていた。
折角この世にたった一人の個人として、生まれて来たというのに、寿命を迎えるでもなく、その他の多くの楽しみさえもこれから体験する事も無く、自らの生を途中だというものを終らせるのだ。
たとえ、一生分のことを一気にしてきたとしても、なんとも愚かなことだろうか。本当の生まれたという、世界の中のその幸せを、分からないなんて。
途中で強行して終わらせるという事は何がなんだろうと、既に、もう後戻りも、取り返すことも、勝ち取る事も、引き返すことも、出来ないのだ。
一生、出来ない。
その一生をここで終らせることも無いというのに。
此処で命を終らせる者達は……。
タカロスは一歩離れ、男を見ては、これから死刑囚でなく、一個人となり、戻る事を思った。
死して、初めて戻れる皮肉の選択を、彼等は分かって犯罪を犯すわけでも無い。
犯罪理由はそれでも、本当に全てを台無しにする。
最大限に充実を得るためだ。
各々が、敷き詰めれば、自己の極限の幸福がその先にあるから。
その全てが。
タカロスは三人を横目で見ては頷き、壁際まで歩いた。
女精神科医が頷き、視線を死刑囚に戻す。
タカロスは壁のパネルを開き、死刑囚を見つめた。
「………」
三人は敬礼し、タカロスは息を吸い、ボタンを押した。
キャップを取り、目を綴じる。
ファンファーレ。
灰色の曇り空は、光っている。
司祭が聖書を読み上げ、墓場は風がゆるく流れた。
タカロスは男の棺を見つめては、頬を風が流れた……。
屋上の貯水タンク横。
アルデは腰を下ろし、片足を引き寄せては、サファイア色に光る夜の海を見つめながら、トランペットを静かに吹き鳴らした。
風は黒髪を翻し浚っては、眸に静かに艶が走った。
哀愁ある音が流れては、静寂を誘う……。
夜は、地平線を明るくさせては天は暗く群青に沈んでいる。
アルデは瞼を閉ざし、息を吐いた。艶の冷たい風が頬をさらい、そして、感情を落ち着かせる。
倒した膝に立てたトランペットは、闇と、陰を映しては黄金を染み付かせ、媚態を帯びて夜風を浴びた。
影になる塔は遥か遠くに佇み、広い刑務所内は今は、自然の音のみに占領されていた。風の音は極めて艶音だ。
「アルデ」
女の声に、彼は背後の地面に視線を落とした。
女看守は、女性監房の警備員だ。
女子鼓笛隊ではスネアドラムを打ち鳴らすニ十人の中の一人だ。
「所長が、また提案を出して来たんですってね。聞いたわ」
「全くだ」
黒艶ボブは柔らかく風に揺れては月光を滑らかに受け、そして美しい夜青の鮮やかなひとみが、黒のまつげから静かに覗き、ディープサファイア色に光彩かかった。
涼しげだが、麗しい目元の彼女は彼の横に腰を降ろし、月を見つめた。
「奴等にまさか楽器を教えろなんて、馬鹿らしい事だ。やるはずが無い、とんだ茶番さ」
トランペットを撫でてはそう言い、女が一度、薄い唇に細い指を当て、ハスキーな声でくすりと笑った。
「かっこうのシューティングエリアにされているようだものね」
「今に奴等、頭突きだ」
彼女は乾いた声で夜空に笑い、涼しい風が心地良く首筋を流れていく。彼の頬にも。
死を弔うような音色は、静かに流れる。
死刑囚が死刑を終え、そしてその後日弔われる時、吹かれるファンファーレは厳しいほどのこの世の悲しみを称えて思えた。
それを、吹き鳴らしてきた。今までも……。
夕陽のファンファーレも、死への弔いの闇のファンファーレも……。
夕方、職務を終えると日勤の警備員達が会議室に集められ、所長から聞かされた≪受刑囚吹奏楽団≫の話に、誰もが口を閉ざしたままだった。
誰が募集を募って奴等の中の一人でも、そんな事を率先してやりたがると言うのか。しかも、副所長はその応募の紙を既に刷らせているというのだ。
「あたしは、いいと思うわ。ずっと前に、五年前だったかしら。タカロスが自由監房の人達をボランティア活動のために合同的に被災地キャンプに連れて行ったじゃない? 初めは誰もがそんなこと大反対していたし、失敗に終ると思っていたのに、あの時は誰もが受刑囚達が何も言わずに子供達やお年寄り、けが人達を瓦礫から運び出して、崩れかけてるけど他に移る余裕さえ無い人々のバラックを補強しはじめて、破水した河を砂利や石を運んでせき止めさせて。やっぱり、それなりに力もある人達だから、人として困って泣く人達の手助けを、人として役立つ範囲でしてた。本来のあるべき、しがらみも何も、気負いも必要無い場所……きっと、彼等にもそういう心の隙間が自然とあるものなのね」
彼女は微笑み目を綴じて、夜の風に吹かれていた。
「確かに、誰もが好んで楽器だとか、そういうのをはじめようと思うわけでも無いと思うわ。でも、どこかにやっぱり、あると思うの。人としての心の隙間とか、心自体が。人として生まれて、一度でも笑ってきた事があるのが人だもの。犯罪者には通じない事も多いけど、全ての人が染まりきってるわけでも無いから。あたしはそこまで間違った話でも無いと思ったわ」
アルデは溜息を尽き、相槌を打った。溜息はそっとつかれては、空気と混ざる。
「絵空事にならなければいいけどな……」
クラウディスは紙をまじまじと見ている軍団を見つけた。
一階監房の人間が主になってたむろしている。がたいがいい男達で、顔に縫い傷があったり、民族的墨が入ったり、象みたいな奴……様々だ。
汚れてくすんだ黄色の軍団には近づきたくなかったのだが、余りにも男達がそれを見ていた為に、顔を覗かせた。
「何だよ。何見てるんだ?」
クラウディスがそれを見ると、白い紙に、黒の印字で簡素に何の装飾も無く、何かが記されている。
_________________
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| 吹奏楽団 |
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| 楽器;金管楽器 |
| 木管楽器 |
| 打楽器 |
| 人員;無制限、数決班員制 |
| 練習;毎木曜十九時寄り二十一時 |
| 場所;食堂広場 |
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| 応募 |
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| 受刑囚番号; |
| 希望楽器; |
| |
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吹奏楽。
なんでいきなりそうなるのかが皆目検討もつかずに、首を傾げた。
クラウディスは、以前ヴァイオリンを習っていた。幼少オーケストラ楽団から始まって中学時代まで。
だが、ヴァイオリンを弾かなくなったのは、ランディアを欠いてからだった。
ランディアと出会ったのは、彼がヴァイオリン教室へ向かう曜日の事で、ヴァイオリンケースと楽譜を持ち、建築物の彫刻修復工事の現場横の公園を通る時の事だった。
青空を魅了するような荘厳な建築物は歴史を流れて来た立派な街並に映え、そして、遥か上空から吊るされた修復彫刻師達が鑿を構え、石を削っていた。
ダイマ・ルジクの所有する建築物で、巨大な美術館は三百年以上の歴史が息づいていた。その修復彫刻師の中に、ランディアがいた。
クラウディスはいつでも音楽教室へ向かう途中、働く彼等を見上げる事が好きだった。いつでも見てばかりもいられなかったために、彼等の作業を見ては手を振り、そして彼等作業員五人は遠くから手を振る少年を見ては笑顔で手を振替しては、クラウディスも嬉しそうに微笑んだ。白の太陽を満遍なく浴びて。
クラウディスは、男らしい職業を生甲斐にする男達が好きだった。逞しい体力で挑む仕事、命がけの仕事、縁の下から支える無くてはならない影の仕事、それらを誇りを持ち当る姿に、いつでも惚れ惚れした。
そうやって、晴れの日に教室へ向かう途中、彼等やその中の若い青年、ランディアの姿を見ると、一日が浮き足立って笑顔が満ちた。
そういう日は、必ず教室の先生に、何か良い事があったのね? とからかわれていた。ヴァイオリンさえも、伸び伸びとした音色になった。それは、どこまでも……。
クラウディスはそれを思い出してしまい、うつむいて、持ち運び自由な方の紙を手にして、見つめた。
「お。何だよ。何みてんのお前」
デラが顔を覗かせ、クラウディスの手から紙を奪って行った。
「吹奏楽団? へーえ」
「デラ。お前、何か楽器やってたか?」
「あ? 俺? 中坊時代の奴等でバンド組んでベースとカンタンテ(歌手)やってたような気がする……」
「気がするのか。そこまではっきりしていて尚もうろ覚えか」
「暇だしやろっかなー。自由練習も許されんのかよ。お前、何かやってたか? 音楽」
「俺?」
まさか、ヴァイオリンという言葉を出せばボンボンだと結び付けられるに決まっていた。
「さあ……」
「俺、譜面ってベース用のキーしか読めねえんだよなー。楽器久々にやりてえなあ。監房色気ねえんだよ色気が。トランペットとかさあ、気持ち良く吹き鳴らしたいとおもわねえ? 思い切り盛大にスイング」
「俺トライアングルでいい……」
「似合う。お前、楽団に入れ」
早速デラが用紙に記入し、横の箱に入れた。楽器はトランペットだった。
「お前は? アル」
「考えとく」
そう言い、もう一枚取って畳んでからパンツポケットに入れ、歩いて行った。
「楽器、どこから支給されんだろうな。まさかレンタル料とか授業料必要かよ」
「トラ箱に入れられててそりゃねえだろ。寄付の物とかあるんじゃねえの?」
壁に張り出される紙を見ている男達は、一様に腹の硬い肉を剥れてドラムなどの張り皮にでもされそうな太鼓腹や、そのまま木琴にでもされそうな割れた腹を持ち合わせた奴等で、その太い腕はさながらバズーカの如くバリトンサックスかのようだった。銅鑼のような顔面は、バチで叩かれても到底ひるむ事も無い。鎖の様な目元は剣呑としている。
無差別格闘リングの許されていないこの刑務所内は、極めて安泰に近かった。
「………」
木曜十六時五十分。食堂広場。
アルデは気が思いやられ、表情も無い目元で彼等を視線だけで見渡した。
後ろ手で組まれ立つ彼の前に、嫌になっちゃう程の人数がジュースを片手に飲みながら椅子に座っている。
ザッと見て二十七名。
内、最近の脱獄未遂事件から姿を消していた刑務所の野良猫を抱える男が二人、剣呑とした目で彼を見ていた。
一階監房の受刑囚が全体の二十名中十五名。
二階監房の受刑囚が全体の四十名中十二名。
出すぎだ。こいつ等、出すぎだ。
アルデは机上の箱から紙を出し、其々の番号と、希望楽器を視線だけで見下ろして行っては、青筋立てた。
トライアングル、ソリの鈴、ギター、ディスクジョッキー、カスタネット、木魚、メロディオン、ピッコロ、ウィンド・チャイム、和太鼓、ゴング、クリスタル・ベル、バグパイプ、また木魚、ビードロ、ほら貝、硝子引っ掻き鉤、ボクシンググローブ、角笛、時計の文字を見やすくしてくれ、マラカス、風鈴、琵琶、マイク、空き瓶二十本と金槌、花火、トランペット
「………」
お前等ふざけてんのか……。
アルデはそう思いつつも、よくもここまでふざけきった回答を思いついて書いて来た物だ。第一なんだグローブというのは。完全に何かのお門違いに他ならない。
二十七人が揃いも揃って、阿呆ばかりだ……トランペットが一人いた。
例のダイマ・ルジク美術館に入った怪盗犯の青年で、元々が軽業師の為にヴァイオリン、本気で角笛、ヴィオラ、そういった物を何でも演奏できる青年だ。元は家柄が良家の人間で、中学時代はベースで教師をぶん殴って転校している。元々収集品好きだった彼は、高校を中退し芸を身につけながらも友人と二人で気ままにヨーロッパ中の美術館と博物館を回る旅を続けていたが、その道中に闇マーケットの存在を知ってその裕福な友人と共に闇オークションに興味を持ち始め、その為に自己で仕込んだ軽業の芸を生かし、ヨーロッパ中の美術館に盗みに入った。ついにイタリアに登場し、ダイマ・ルジク美術館に怪盗に入り、友人と共に闇市に盗品を卸そうとした手前で、そのルジクグループの人間に捕まり、警察へ突き出された。ベルギー人だ。
尚、共犯者の友人は姿を消したままだ。
「トランペットを希望する者。挙手しろ」
初めて声を発した警備員の冷めた声音が響き、静かにその声は芯がありよく通った。
「………」
二十六人とも手を上げた。
「………。トロンボーンを希望する者、挙手しろ」
二十五人手を上げる。
「ホルン」
二十五人。
「チューバ」
二十五人。
アルデは表情も変えないまま、そこから薄い唇を閉ざした。
トライアングルを希望した受刑囚3062番は、トライアングルが来るのを今か今かと指をそろえ膝上でそれ毎にドキドキとして小さく上げ下げを繰り返し待っていた。
やっていられるか。
アルデはおもむろにうんざりと横を睨み、剥いた歯から風の様に溜息を吐き、手にしていた紙を置いて、顔を戻した。
「こちらから願い下げだ。散れ」
ジュースを飲みながら受刑囚達は首を横に振り、猫はごろごろと一階監獄受刑囚1088番の膝で喉を鳴らした。
「楽器は金管楽器が先ほどこちらが挙げたトランペット、テナートロンボーン、バストロンボーン、ホルン、ユーフォニアム、テナーチューバ、バスチューバ、コントラバスチューバ。木管楽器がサクソフォンのソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス。打楽器がシンバル、バスドラム、スネアドラム、鉄琴だ。その他は認めない。全十六種の中から各人選んでもらう。尚、二十七名という人員上、班員分けを行なわずにトランペット、アルトサックス、シンバル、スネアドラムの人員を増やし、全員で一組の班を形成してもらう形を取るが、希望するならば各人、五名なり十名なりサクソフォンのみの編成、パーカッションのみの編成、各種類から自由に編成する事も可能だ。いずれの場合も各班、各種類毎の代表を決めてもらう。出直して来い」
誰もが紙を戻され、各々が上唇を噛み散って行った。
トランペットを希望したデラだけが残った。
「あんた、トランペット吹くんだな」
夕暮れ時のファンファーレでコルネットを天に吹き鳴らす警備員を見ては、デラは長い足横に立てられるトランペットケースを見た。
また誰もがぞろぞろと戻って来た。
二十六名分の紙を見下ろし、頷いては最後の提出された紙を見て確に……。トライアングル。
クラウディスはこめかみを人差し指第二間接でグリグリやられ倒れ、猫に頬を舐められた。
「希望楽器は何だ」
「トライア」
目と歯を剥き威嚇された。
「ソプラノサックス……」
「席に戻れ」
彼等はジュースをチューチュー飲み、ケースからトランペットを出した警備員を見た。
もちろん、自己の愛器は部屋だ。絶対に奴等の前には出すか。何をされるか分かったものでもない。これは寄付されたレンタル品だ。とはいえ、安物というわけでもない。
「他の楽器は後日数を揃える。各楽器共に食堂外へは持ち出し厳禁だ。毎回こちらで開始時と共に提供し、ケース毎終了時と共に回収する。各人手入れの方法も覚え、時間以内にトリートメントを済ませ、返却時までを責任を持ち管理してもらう。この中に、牢屋や日中のグランドに持ち出しケースや楽器内に不要物を仕込もうと考えるような人間がいれば、即刻ここから立ち去れ」
「………」
誰も動かなかったので、仕方無しに続ける事にした。
「トランペットの希望者が三名いる為に、他の者は楽器違いだが、基本的な手入れを説明する。サクソフォン全般の担当者は後程こちらへ到着する為に、その者からの説明を受けるよう」
クラウディスはさっきから警備員の声を聞いてうっとりしている。その薄い唇の柔らかな動きや、その唇が当てられるであろうトランペットを見つめてぼうっとしていた。クラウディスは魅力的な男全般にそういう目を向けるために、別に恋心とは関係無い視線でもある。
革靴の音が響き、クラウディスはそちらを見た。
「………」
みるみる目が丸くなり、頬を紅くして行っては、他の者たちは逆に口を引きつらせ、その彼が歩いて来た姿を見ていた。
独房のアヌビスだ。
なぜだ。
鍔陰の下の白水色の瞳で彼等を静かに見下ろし、警備員の横に止まった。
「彼がサクソフォン全般の指導者だ。普段はテナーサックスを担当している」
アルトサックスを希望したサリ、バリトンサックスを希望した一階監房の受刑囚2290番、テナーサックスを希望した二階監房の受刑囚3781が、一斉に帰ろうと椅子から立ち上がり身を返そうと思った程だった。
この独房のアヌビスがライフル銃を持った姿以外にどう思い浮かべろというのか……2290番は幾度と無く彼が狙撃し撃ち落した脱獄班達を見て来ていた。
クラウディスは自分がソプラノサックスを希望していた為に、まるで夢見るかのような目でキラキラと潤って見ていた。
練習期間を要し、煉瓦造りの合同イベント会場前に集められた彼等と自由監房受刑囚達には、フェンス向こうの女子自由監房の女受刑囚達が揃いにそろって色目を使ったり、騒いだり、掛け声をかけて来ていた。
どれぐらいか振りに会う恋人同士もいれば、新しく見る女も多かった。警備員達が彼等との間のフェンス前に立ち、監視している。やはり兵士のように女子側に女警備員、男子側に男警備員が後ろ手の背中合わせにフェンス越しで立っている。
煉瓦造りのイベント会場を中心に、フェンスで区切られた合同グラウンドがある。大きな集会の時以外にグラウンドフェンスが外される事は無い。今も同様だ。イベント会場の鉄の扉が開く時を彼等は待ちわびていた。
男子受刑囚達がブラスバンドなら、女子受刑囚達はファッションモデルのコレクション希望者を募り、ショーのバンドを彼等が演奏する事になっていた。その後は合同の立食の夜会だった。そこでもバンド演奏が行なわれる。
十メートル煉瓦壁に囲まれ、灰色の鉄扉で閉ざされた会場。四隅の塔に監視員がライフルを構え、スポットライトが会場をうねっている。
モデル達が歩く舞台がT字にセッティングされ、カラフルなスポットライトが回っている。そのステージ前にバンドの男子受刑囚達が集まり立っていて、ギャラリーは左が男子受刑囚達。右が女子受刑囚達がいて、歓声を飛ばし始めた。硬質のフェンス向こうに、楽器を持ち立つ彼等が、いた。
警備員達の吹奏楽のファンファーレとは別物で、受刑囚達が演奏するものはコレクション用のものだ。
わざわざ難易度の高い物から挑戦させ、それでも根を上げるものはいなかった。
ショーが始まった。群青掛かる赤紫の光が降りたと共に。
激しいスイングと共にトランペットが昇るように吹かれ、歓声が沸きあがった。
女達が舞台を練習したモデル歩きで色目抜群に歩いてきては、艶めかしくウインクやキッスを送り、グラマラスな身体を見せたりしては十分色気を振り撒き光にあおられ歩いていき、男子受刑囚達からの指笛が飛んだ。
アングラな彼等独自のファッションだ。彼女達がミシン作業で各々で造った思い思いのファッションのショーは、実に独特で派手で、ハードに洒落ていた。
ブラスバンドに女受刑囚達も踊り歓声を上げては、ステージ上の女達も腰をダンプしあっては悪猫の様に手をひらつかせた。
テナーサックスの渋くセクシーなソロがエロティックな中に響いてはダンスホールと化し、スポットライトが駆け巡った。
またバンドが激しく回ってはハーレーの女受刑囚二人乗りがフェンス越しにステージ上ハードセクシーな装いで来てクールな美貌を振り撒き、鋭いヒールでフェンスに蹴り込み男受刑囚達を卑猥に色目つかせる。
パワフルな演奏がうねっては銀や紫の照明と共に駆け巡り、女達が悪魔の様に悦として微笑してはステージフェンスにマニキュアの爪を立て美しい獣の様に威嚇した。
悪辣とした黒や、鋭い銀、艶めかしい紫に、悦とした琥珀色……。
ショーが終了し、夜会のためのフェンスが警備員達により開かれた。初めてそこで男受刑囚達、女受刑囚達が合同で煉瓦とフェンスに囲まれた中を警備員達に見張られ触れ合った。
各六箇所隅にトランペットと各サクソフォンの人間達がソロでスツールに座って吹き、他の楽器の男達は前ステージでティンパニやタムタムなども加わり各場所で演奏をしては、時に合同での演奏になっては夜会を盛り上げた。
ソプラノサックス担当のクラウディスの場合は、トランペットのデラと共にだった。
それぞれがジャズを渋く吹き、恋人同士はキスをし合い、新しくまたカップルが出来ていく。
元からレズビアンのカップルはそれで出来上がっていてラブリーハードな装いで甘く溶け合っているのだが。
クラウディスに色目を使って来る女が何人かいた。
白の肌が葡萄色に染まり、クラウディスはスツール半分、デラの背後に座り吹き鳴らしては、天に吹くトランペットは黄金をその色が強く反射し、クラウディスの細い管のサクソフォンが黒い睫の閉ざされる瞼で吹かれていた。
甲高い音は神経の懐に入り込んできては、男の性感を抉って来る。意地悪な程に。
クラウディスは漆黒の目を開き、影と影が重なり揺れ、微笑や笑い、グラスの光影が重なる合間、いるはずも無い者達を探した。吹き鳴らしながら、目を綴じ、ただただ音を神経質に吹き鳴らす。
デラが彼の膝に乗り微笑み聴く金髪の女受刑囚とキスをしあっては、クラウディスは肩越しに見て二人に微笑し、そして会場の一角にライフルを持ち立つタカロスの横顔を見つめた。
クラウディスは膝にサクソフォンを立て、見つめては、その紫に染まる頬を見つめた。目元は鍔陰で完全に暗闇に入り、薄い口許はいつものように閉ざされている……。
「ねえ。吹いてよ」
クラウディスに色目を使って来ていた女受刑囚が横に来て肩に肘を掛けては、上目で微笑んで来た。
「あたしはレダール。デンマーク人なんだ。ここにはちょっと、結婚詐欺ではいっちゃってんの。でも二年で出られるから、ちょっとした旅行みたいなもんよね」
下手なイタリア語でそう言い、酒に酔ってろれつが回らない。適当に上目で微笑んでおき、息が吹きかけられたことにぞっとしたが、何か跳ね返しでもしたら即刻この場の全てを引っ繰り返すカオスの番人達が鋭く変貌を遂げるだろう。
女は酒を持ちに行き、離れて行った。綺麗に思い切りお洒落をする彼女達は羽を伸ばさせていた。其々何してつかまったのかは分からないが、やはり一癖も二癖もある強い微笑の女達は刑務所の中でもしなやかに生きているようだ。それとして個性が輝くかの様に。
その彼女の背が消えて行った先の、タカロスは、気付いてくれているだろうか……。
彼に練習を受けた楽器を、彼に向けて自分で作ってみて今、吹き鳴らしている。まるで、女みたいだ。気付いてくれなくてもいいんだ。星の下、こうやって共にいる事が今実感できている。
今のこの時……。
ギ、ギギ、ギイイイイ……
受刑囚達誰もが身の毛がよだち、シャカシャカシャカという音で瞬きし眉を寄せた。
そしてその時、DJのレコードが刻まれた。
「………」
バッ
合図だ。
かれ等は一斉にそちらを向き、急いでサッと各々が楽器を出した。
警備員達がステージ方向を見た時には、遅かった……。
アルデは心中で眉を潜め口を開き、何かしらの曲が二十七名で始まったことに気付いた。
黄金と、琥珀の照明が闇の中に染まった。
ポクポクポクポク……(木魚)
……リリリリリン……(風鈴)シャン、シャン(ソリ鈴)……リリリリリン……、シャンシャン
タッタッタッタ(ウィンド・チャイム)、カンッ(ゴング)
鎮まりかえった会場がステージのその何だか妖しげなスポットを見ては……一瞬で、始まった。
キュキュキュキュキュカキュ、キュキュカカキュ、(DJ)カ、カーン、カン(ゴング)
一気に、民族的エキゾチックな音が西洋の美しいクリスタル・ベル音で装飾され、琵琶が掻き鳴らされ、マイクで受刑囚番号1906番、七十四歳が苦情を唄う……。要求をスルーされ聞き入れられなかった腹いせなんじゃないかってぐらいに……。
「時計の文字を 見やすくしてくれ 時計の文字を 見やすくしてくれ」
ビードロのビコビコする音を横の男が間に入れ、和太鼓がドドドドドド、ドン、と唸った。
ティーン(トライアングル)
ピュルルーール、ララ(ピッコロ)
「時計の文字を 見やすくしてくれ」カンカン(カスタネット)
ウヲヲーー、ウヲヲー、(角笛とほら貝)
バシン、バシン(グローブ)シャラララ(ソリ鈴)コロロロロロカンカン(ウィンド・チャイム)ジャーン、ジャジャジャーン(ギター)
それに女達が乗り悪辣と彼等の膝に足を絡め会場に上目で微笑しては、ポールダンサーの様に踊り楽器は鳴らされる。
仏陀的音が相当洒落て演奏されてはDJがレコードを回し、ニ十本の空き瓶が金槌でリズムを打って割られていった。
そして最後に一気に曲は加速度を増し、地から湧き出るように琥珀色の照明の中を、ゾラが打ち上げ花火を点火した。
ヒューー、ドカーン……
巨大に花開き、華やかに彩られ、塔に立つ警備員達の頬をその色とりどりの色味で染め光らせた。
その煌きと共に、ジャン、ジャジャジャーンティタティラティティティパーンと、バグパイプとメロディオン、ブラスバンドの音がうねりにうねった……。
ドーン……。
アルデは呆気に取られ、どこで手にしいつこいつら練習していたのか、阿呆たちに目を引きつらせ、相当渋くて格好良かったためになんだかむかついた。
奴等、いつの間にあんな物揃えて……。
実は闇市でだった……。
アルデは彼等を睨み、クラウディスはソプラノサックスから口を離しては、緩く微笑してはピンク色の舌を出した。
アルデは目を回し、瞬きをしていたタカロスはおかしそうに口端を笑わせた。
所長達はアングリと口をあけて、スポットライトを回し広げた膝を付き頭を回しキャーキャー跳ね回り始めた猫の様な女受刑囚達を見回した。
大いに成功したので、彼等は手を叩きあって拳を突き上げ、完璧なバンドが演奏される。星の元……。
その後のクラウディスの一生物の経歴に、刑務所からのその間に習得した必須条件の特技として堂々トライアングルが掲げられてしまったのであった……。
女看守は可笑しそうに腹を抱えていて、アルデは憮然としていた。
「ああ、可笑しい。本当、もうあの時耐えてなかったら本気で笑っちゃってたわよ」
貯水タンクは夜気を吸い込みひんやりしていて、白く夜空に浮いていた。
「どうしようもない奴等だ。木魚もソリ鈴も没収した」
「アハハハハ! もう彼等ってば!」
後から所長からは本気で呆れられるし、タカロスは大笑いするし、アルデは頭を痛くしてうな垂れたい気分だった。アルデは冗談を言うが、どこかしらが生真面目な性格だ。
星は尚もキラキラ輝きを湛えている。
「ふ、あの花火には参ったわよ」
「奴等、馬鹿なことに糞真面目に熱心になって」
今日の昼も、没収したはずの木魚にいつの間にか取って変えられていたラグビーボールが囚人達の手にキャッチされつづけては、気付き没収させたのだから。
ドッジボールで横壁に強烈に狙い撃って来る事はなくなったものの、妙なギャグ事を覚え始めて困っていた。
元々、ハスキーな声の女警備員だが若い頃は声楽を習っていて、歌うと声が高くなる。
トランペットに合わせて彼女は気ままに星を瞼に移し微笑み歌っては、鋭いつくりの中、美しい瞳を開いた。
歌は好きだ。邦楽も洋楽も。アメリカの音楽は情景的で、その背景が克明に脳裏に浮かぶ。イギリスならば政府や体制への批判的な歌詞が多く思え、日本は叙情的な感情を歌い上げた物が多い。インドなら宗教的な民族音楽、北欧なら、美しい自然を織り込ませた鮮明な歌詞や音源など……。
特徴を捉えると、国民性の大幅な部分が窺える。やはり、歌は人々の内面を反射しているのだ。人はものを生み出すときに、自己の物とは反逆したものを作らせる人間と、ありのままの事実を作り出すものに分かれている。本物の人生は実に呆気なかったり、酷かったり、救いが無かったりするからこそ作り出されるものは夢で溢れ、実物を映し出すものを拒否したりし、悪魔が宿ると非難する。
音で醜いカオスを作り上げるものもいれは、極地の心有る美を表現するもの、人工的耽美で人々を涙させるもの、耽美的カオスに至るもの……。
写実的な絵画を描くものと、抽象的絵画を描くものとが分かれていることもそう。人々は現実にもがき生きるか、それか瞑想の中で幸せに生きる。どちらにも、しきつめれば延長線上に犯罪が存在するものだ……。
そうやって来た彼等が獄中で作り出した音楽というものや、許されてはいない自由の最新であるコレクションをやらせると、それはもう活き活きとしていたものだ。
風が出始め、アルデは今は一人風と共に唄う彼女のゆらゆらと流れる髪を見下ろし、その肩を引き寄せた。
彼女は目を開き、歌を止めては温かさにコンクリート地面を見つめた。伸ばされる足の横のトランペットが静かに光り、彼女は自己の心音を聴きながら、しっかりとした腕に手を当て、黒髪から覗く彼の瞼を見つめ、目を綴じ髪に頬を寄せた。
彼女の細く温かい首筋にキスを寄せ、肩を抱き寄せたまま耳裏にキスし、背を抱きしめた。彼女は目を開き肩を見つめ、アルデは目を開き白タンクの繊細な星影を見つめた。
ロイドは貯水タンク下の鉄骨の脚下に影を見つけ、足を止めドアを背に口をつぐんだ。
またこんな寒い場所で奴等は浮気をしている。屋上を見回し、邪魔でもしてやろうと目を伏せさせ、ロイドは歩いて行った。
「………」
女は驚き足を引き寄せアルデの背を叩き、アルデは肩越しにロイドを見上げた。
ロイドは肩に屋上で飲むための瓶を担いでいて、憮然とアルデを見下ろしては、女が動けずに困っていた。アルデは顔を戻し、身だしなみを整えてから人妻から離れた。
「メルザ。お前、次回また知られれば旦那に絞め殺されるぜ」
ロイド自身がすぐに女に声を掛け捲るくせに、自分の事などいつでも棚上げだ。女の旦那は海軍大尉で、地位のある人物だった。怒らせると恐い。
「ご忠告をどうも」
彼女は髪を手の甲で流してから、ロイドは首をやれやれ振ると彼女の横に腰を降ろし、彼女越しに貯水タンクに頭をつけたアルデの横顔を見た。
「ま、飲め」
アルデは横目で意地悪そうに笑う甘い目元のロイドを睨み、瓶を奪って一口呷った。彼女も口をつけ、ロイドに戻って来て呷る。
「男二人を横に置いて美酒だなんて、贅沢だこと」
くすりと彼女が笑い、ロイドは自分にはなびいてこなかったメルザの顔を覗き見ては、口端を上げて言った。
「不出来な弟をあまり、遊び相手にしないでくれ。こいつは傷つくと酷いんだ」
アルデはロイドを睨み、顔を戻してトランペットを手に立ち上がり、颯爽と歩いていってしまった。
「あーあ、可愛そうに……。傷ついてしまったじゃないの。意地悪ね」
ロイドは肩を竦め言った。
「あいつはガキ時代から繊細なんだよ。だから囚人共に標的にされるんだ。今回の囚人共も任されるしな」
それをあの優しいタカロスが手伝ってやっていたのだ。
「でも、アルデ嬉しそうだったわよ。練習が上達していくこと」
「柄にも無く。まあ、折角邪魔者も消えて二人になったん」
「あー今日もいい天気!」
また伸びをして立ち上がられ、回避されたのでロイドは失敗した。
弟と元から不倫してればそれはなびかないわけだ。
「じゃあ、今日もお疲れさま。お酒、ありがとう」
「こいつ等……」
「ふふ」
意地悪そうにロイドに肩越しに魅力的に笑い、歩いて行った。
アルデの背を見つけ通路を見渡してからメルザは階段から降り、歩いて行った。
彼の背に手を当て、横に並んでから彼を見上げ微笑んだ。彼も微笑み、横の並び歩いて行った。
ロイドはいつもの様に柵に腰をつけ横目に広がる海を眺めては、風に吹かれた。
塔の夜警の見張り役は時々、巡る白のライトに当てられるロイドを見てはまた闇影に閉ざされる……。
いきなりの警報音。
ロイドは眉を潜めこの棟屋上から、監房棟側を見た。
即刻走って行き、誰もがロッカーで一瞬で制服を身につけ走った。
ライフル保管室で手にして者の見事に駆けつけた瞬間、夜空にライフルの軌道が幾つも駆け巡った。
その影が星光りを背にして、女のシルエットが浮き上がる。
高い壁越しに女警備員達も駆け上がり塀を走り、強烈なスポットライトが女を照らし付けた。
女夜警のドスの利いた甲高い声が塀向こうから張り上げられる。
「受刑囚番号2282番! 即刻塀から降りろ!!」
彼女は鋭い目で光の中を血走り背後下の女警備員達の拳銃、前方に男子監房の男警備員達のライフル銃を見下ろし、眼孔が光った。
2282番は連続殺人犯の死刑囚だ。女警備員を拳銃を奪い撃ち逃走した。
アルデとロイドが塀に一瞬で駆け上ったタカロスを見て、受刑囚2282番は鋭い目でタカロスを睨み銃口を向けた。
背後には女警備員が拳銃を女の背に向けている。
死刑囚の場合、即刻射殺権限は彼等には無い。その為に警備員達は鋭いドーベルマンの様な目で見据えながら、立ち往生する女の落ち窪んだぎょろりとする目を見て、銃口を向けつづけた。
タカロスは女の銃口を意識に置いては、女の闇色の目を見つめた。
その女の青い瞳は駆け巡るスポットライトに光ってはまた戻り、ウェーブ掛かる黒髪が薄く愛情の少なそうな唇を風によって撫でた。
女は先日、女子特別監房内に来て健康状態を看て来た男警備員を睨み見上げ、銃口を両手で持った。
見上げたまま、一瞬で銃口を下斜めに向け発砲した。地面にのめりこみ真横のロイドは歯を剥き女を鋭く睨んだ瞬間、タカロスが丸い光の中女に飛び掛りライフルと拳銃の軌道が追う中、グランドの芝の上に転がった。
女は拳銃を持つ手首をつかまれたまま重い体の下で暴れ、タカロスは押さえ込むと一度鳩尾を押さえ込み黙らせ、女は咳き込んで引き立たされた。
背後のタカロスと、前方の警備員達を睨み見据え、乱れた黒髪を首を振り戻しては塀上から女警備員が飛び降り鋭く女を睨み見た。
タカロスは女警備員を見ては、彼女は頷き塀の上の女警備員達に首をしゃくり降りてこさせる。
女の手首に拘束器具を嵌め、腰に固定し、連れて行く。
女は暴れ肩越しにタカロスを睨み見た。
「あたしを殺せるもんなら殺してみな! 一生化けて出てやる!!」
強烈な闇が強く光り地獄から沸きあがった怒りが発され、ドラ声ががなり連れて行かれた。
「………」
ロイドがタカロスの背を叩き、週に一度の引き続き夜警に入るオッドーが小さなドアから状況を聞いた。
タカロスはオッドーに頷き、オッドーは相槌を打ってから蛍光灯が灯る棟への間口を鋭く見てから、戻って行った。
男子自由監房内は警報で目をグラウンドへの巨大な鉄扉へ向けていた。白いその扉は、闇の中に群青に浮いている。不動の態で。
グラウンド側の牢屋の受刑囚達は横に細長い窓に青の警報照明が駆け巡らなくなったのを、口を閉ざしたまま視線を戻した。
あれ荒みきった女の魔声が轟いたまま、静寂の中へと落ちて行った。
クラウディスは睡眠薬の恩恵でぐっすり眠りに着いていたのだが……。
セレは三つ隣向こうの牢屋に入るアルに意識を飛ばした。あいつ、睡眠薬なんかで眠らされていて大丈夫だろうか。
万一何かがあればひとたまりも無い……。