9話 あらあら、レベルとランクですって
異世界人だと話してから翌日のこと。
私達は4頭立ての馬車の中にいるわ。
前後に同じ馬車が1台づつ走っている。
前の馬車には荷物と御者が2名で、後ろの馬車には10名の兵士が乗っているの。
私達が乗り込んだ馬車は大きくて立派なモノ、それを見た忠吉は楽しそうにウロウロしていたのよね。
乗組員にはお父様、私、ハンナにハチ、ロク、忠吉。
ちなみに他のネズミたちは……私達がモタモタしている間に忠吉を置いて先に行ってしまったようなの。
馬車が動き出してすぐ、ハンナの講釈が始まったわ。
「ナナ様。王都スアノース城まで約20日です。それまでの間、私達が生きている世界についてお勉強をしましょう。ここには近衛隊長まで昇られましたガロス様も居りますし、裏話なんかも聞けるかもしれませんね。よろしいですか?」
手にしていたのは分厚い本。
インテリぽっくそれを捲って話しだそうとした時、忠吉が慌て出した。
『姫様!暫しお待ち下さい。この世界についてのお話なら忠大が適任です。すぐ参りますからお待ちください!』
「え!ハンナちょっと待ってあげて!今から忠大が来るみたいなの。すぐ……え!!」
「「!!」」
お父様とハンナの驚きの眼で忠吉を凝視した。
もちろん私もよ。
だって忠吉の影から忠大がニュルンと出てきたんだもの。
ニュルンと言うのは私が感じた擬音ね。
本当は無音のまま、突然現れたわ。
「ナナ様!い、今のは!!」
「この子達が使う能力なの」
「ハンナ……今のは……スキルか?魔術か?」
「ガロス様。魔力の発動は感じませんでしたので、スキルではないかと……思います。詳しくはルバー様に聞くしかございません」
「ス・キ・ル?」
「ナナ様……もしかして……魔術やスキル、レベルやランク。その手の言葉はご存じないありますか?」
「え!辛うじて魔術なら知っているわ。獣が魔獣に進化する時に魔族から注がれる力の事よね」
「ハンナよ」
「はい。ガロス様。スアノースに着くまでの20日で地理から冒険者の心得などなど、これから必要になる知識を教えます」
「うむ、頼むぞ。俺で分かるところは話をしょう。配下になる、そなた達もよく話を聞くといい。魔族と人族では、大きく事情も違うからなぁ」
「ワン」
「ニャ」
「チュウ」
「うふふ。みんなハイって言ってるわ」
「ナナ様!貴方様が1番、理解しないといけません。この20日は、私は鬼になります!」
「お、お、お手柔らかに……お願いします」
本当にハンナは鬼だったわ。
まずは、魔術とは魔力を使い術を行うことを言い。
次に、スキルとは魔力を使わずに術を行うことを言う。
つまりハチの竜巻は魔術で、ネズミ達の影から出て来たり本を手で読んだりするのはスキル。
私は魔力が無いのでスキルしか使えないとの事。
傾向として魔術は攻撃だったり防御だったりで、スキルは行動の補助だったり隠匿または解読その他いろいろある見たい。
そして、レベルとランクなのだけれど……。
「レベルとランクですが……。まずはレベルからご説明いたします。
レベルとは力や俊敏性などを数値化して分かりやすくしたものです。ぱっと見ただけで理解しやすいですからね。レベルですが冒険者以外、必要ないのでありません。では冒険者になるにはどうすればいいかと言いますと、冒険者ギルドで登録してください。そうすればギルドカードが発行されます。ちなみにコレが私のギルドカードです」
そうして見せてくれたのは、稲穂デザインの穂先にガーネットが着いたペンダントだった。
「え!ペンダント?ギルドカードなのにペンダント?どこにカードがあるの?」
「まずは私の話を聞いてくださいね。
冒険者ギルドで、くじ引きをする時のような箱に手を入れます。すると、その人が持っている魔力または気を折り込み、結晶化して手の中に現れます。それが個人情報の核となります。コレがないと登録が出来ません。私の場合、ガーネットの粒でしたので、稲穂デザインの穂先として着けています。その場で引いて加工しますので、冒険者ギルドには加工職人が多数おりますよ。大体ですが、魔力がある人は色の着いた宝石が多いようです。魔力が無い人は無色透明で少し小ぶりの宝石が多いです。自分の気に入った物なら無くさないですよね。私もとても気に入っています。
次にランクですが、レベル10毎に1ランクで表します。下がJランクで上がAランクで、最上がSランクとなります。ここまでで分からない所はございますか?」
「ランクとレベルの違いはなに?」
「え?あ!忘れてましたわ!そうですね。
レベルは個人情報の塊です。無闇矢鱈に見てもいけませんし、見せてもいけません。大切な情報なのです。ですが、仕事をする方も、受ける方も、レベルが分からない事には依頼できないですし、受けれないですよね。そこでランクです。Jランクが1から10レベルとして、レベルが上がるとランクも上がります。ランクを見ればこの冒険者の大まかなレベルが分かり、依頼をする側も受ける側も安心して仕事ができる訳です。ランクしか表示されませんしね。情報漏えいも安心です。ついでに魔獣もランクで表示されます。魔獣の場合は魔力の量でランクが決まるみたいです。この辺りは私では詳しい事は分かりかねます。後でギルドで聞いておきますね。理解出来ましたか?」
「はい」
「ニャ」
「ワン」
『はい……ですが、1つ質問をしてもよろしいですか?』
「何で忠吉が!え?いいわよ」
「チュウ、チュチュウチュウチュウチュチュウ?」
「聞いてみるわね。ハンナ、忠吉がギルドカードを見せてもらってもいいですか?て聞いているの。大丈夫?」
「も、もちろんいいですよ。はい、どうぞ」
少し驚きながらも、何故かハンナは嬉しそうに顔をほころばせながら稲穂のペンダントを差し出した。
忠吉も律儀に礼をして、ペンダントの端に触れ、穂先のガーネットにも触り、出た結論は……。
『やはり、コレはマジックアイテムです。他の事にも利用出来るのではありませんか?』
「え!そうなの?ハンナ、これはマジックアイテムなの?」
「え?ガロス様、そうなんですか?」
「忠吉はすごいなぁ~。スキル走破が使えるのかもしれん。
その通りだよ。ギルドカードに使われている宝石はマジックアイテムだ。ちなみにだが、自然に採掘される宝石にも魔力が宿っている物がある。それと同じだなぁ。しかしギルドカードに使われる宝石は、魔力または気によって情報を書き込まれている。それらを消して新たに魔力で書き込まなければいけない為に、スキル走破を持っていなければいけないようだ。ネズミ達なら出来るのではないかなぁ?」
『お言葉を返すようですが、私達が保有している能力が走破とは限りません。それに走破だとしても鍛錬をしなければ使えぬやもしれません』
いつの間にか目の前にはネズミ達が勢揃いして礼儀正しく、お父様とハンナの話を聞いていたわ。
突然、現れるからびっくりするわね。
「お父様。忠大が走破かどうかはわからないし、走破だとしても鍛錬をしなければ使えないかもしれません。と言っているわ」
『姫様。前方2キロの辺りに強い魔力を秘めた獣が居ります。ハチ様かロク様にお頼みして退けて頂きますか?』
「え!そうなの!お父様、ハンナ。2キロ先に強い魔力を秘めた獣が居るみたい。ハチ、ロクお願い出来る?」
「いやいや、待て待て……ここはオレが出よう」
「ガロス様が出ずとも私が出ます」
「はぁ~……ハンナよ。俺は、お父様!素敵!と言われたい……」
「え?はぁ~、では、どうぞ。くれぐれも周りの木々を傷つけ過ぎないようにお気をつけ下さい。迷惑ですから」
「ハンナよ。言い方が嫌味なチャラ男ルバーに似てきたなぁ」
「止めてください!私にだって選ぶ権利はあります」
「あははは、伝えておこう」
「………すいません」
「さて!ナナにハチ達よ。今からスキル闘気功を見せてやろう。馬車を止めろ!少し離れて待機せよ!」
お父様が号令を出し3台の馬車が止まったわ。
兵士達はハンナを含め、やれやれガロス様がまた張り切って何かを壊すぞ!的な空気で場所を空けたわ。
馬を12頭、馬車から外し後ろに回し繋ぎ留めたの。
もちろん10名の兵士に6名の御者は馬車を盾にして身構えた。
私は……どこで見ようかしら?
喘息持ちの方ならわかるはず!!
私の咳喘息が治まりました!!
嬉しすぎるのでもう1話、更新したい!!
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