82話 あらあら、遭遇者ですって
残忍な描写が含まれています。
苦手な方はご注意下さい。
ハァ〜、ハァ〜、ハァ〜。
そろそろ、ヤバイわ。
出かけの駄賃に、火属性の魔石をたくさん貰って来たんだけれど……底をつきかけてる。
質は良いんだけれど、量がね。
そもそもコレは……。
ルジーゼ地方にある砦のような居城にて、ナナの肖像画に落書きをしてから、餌じゃなかったわ!
魔力が宿る物を探して、少しだけウロウロしたのね。
ロの字型の一番奥。
その執務室の左隣りの、隣の部屋がバカみたいに、厳重な結界を施してあるんだもの。
覗いてみたくなるじゃない?
で、更に隣の部屋の壁を、溶解で溶かして中に入ったわ。
正面から入るわけ無いじゃん。
だいたい厳重なのが正面だけって、間が抜けているわね。
甘いんじゃない?
氷炎の魔人と言われたシャルルの血で、魔力も知力も上がったのよ。
フン!
コレぐらいたやすいわ。
中に入ってみると、ビックリ仰天!
魔石だらけなの。
その中でも、宝石の王と言われているルビーがたくさんあるわ。
しかも、綺麗だわ〜。
さらに、中々の魔力も秘めてるし……。
いっぱいあるから……少しぐらい……貰っても平気ね。
うふふ、それにしても、可愛い赤ちゃんだったわぁ〜。
わたしを見てからの、あの笑顔。
アイドルスマイルより、強力だった。
おかげで、今の自分がどれだけ穢れているかが、理解できた。
神様に対しても、怒りが込み上げてくる始末。
だって不公平でしょう!
なんで、私だけがこんなにも過酷なの?
乗り越えられるワケ無いじゃないの!
はぁ〜。
本当は、ぷよぷよほっぺに触りたかったわ。
触れなかったけれどね。
柔らかいスライムみたいな触り心地よね。
と、言ってもスライムなんか触ったことないけれどね。
あははは!
あははは〜、はぁ〜。
そう言えば……うふふ。
うふふ、肖像画の落書きはどうなったかしら?
我ながら最高傑作だったのよね。
うふふ、うふふ、うふふ……。
「コレが最後の魔石ね」
まいっちゃうわ。
100個の魔石が尽きてしまった。
道のりは……半分弱。
わたしの中の悪魔は……大丈夫……よね? ヤバイかしら?
選択肢は2つ。
1つは、このまま突っ走る!
もう1つは、餌を求めて突っ走る!
結局、走るしか、私には手が無いのね。
はぁ〜、ため息しか出ないわ。
わたしの命も残すところ、後1日。
生きて会えるかしら? 手記でも残す?
あははは! ガラじゃないわね。
死んだら死んだで、仕方ないわ。
私の使命なんてそんなもんよ。
はぁ〜、腐っていても仕方がないわね。
そんな事より。
景色が変貌したわ。
砦みたいなルジーゼ城近辺は、森の中に建つ関所みたいな風格があったのね。
割と木々も高かったし、森も深かったの。
深緑って感じ。
でも、今は田舎町の舗装されて無いあぜ道。
そんな雰囲気ね。
森ではなくて林に変わっていたし、木々も手入れがされていたわ。
半纏を着た子供が、妹を背負いお兄ちゃんの跡を追いかける。
そんな風景が似合う情景ね。
小川も流れていて、3つ並んだ水車が村中に水を招き入れていたわ。
良いわね。
長閑だわ。
殺伐とした、私の心を癒やしていく様ね。
カラン、カラン。
カラン、カラン。
「タア! とっても綺麗よ!」
「ナソン! タアを幸せにしろよ!」
カラン、カラン。
カラン、カラン。
「タア! お母さんの事はあたしにまかせな! あんたは幸せになりなさい。ナソン! 不幸にしたら、許さないからね!」
「叔母さん。ありがとう……ございます」
カラン、カラン。
カラン、カラン。
はぁ? ?
花嫁行列? ?
何なの? ここ異世界でしょう? ?
でも……綺麗で幸せそう。
それにしても、モロ日本風ね。
巫女さん見たいな従者を筆頭に、花嫁さんと花婿さん、その後ろにご両親。
あら? 片親みたいね。
その後のご両親は、母親の姿しか無かったもの。
そして、また、巫女さん見たいな従者が並んでカラン、カランんと鳴らしながら、練り歩いていたの。
「お姉ちゃん。とっても、綺麗でしょう! 白い服に白い帽子。本当に綺麗だよね」
「白い服は白無垢で、白い帽子は角隠しって言うのよね。コチラでも、そんな風に言うのかしら?」
「あんたよく知ってんね。今、王都スアノースで流行ってるんだってさぁ。あたしの時にゃ〜、シーツを頭から被って、ベールの代用にしたものさぁ。それにしても……あんた誰?」
「え! わたしですかぁ。ま、ま、魔石の買い付けに、スアノースへ行くところなんです、よ。あははは〜」
「ふ〜ん、そうかい。魔石ならメースロアの方が良いんじゃないかね?」
「そ、そ、そうなんですね。あははは〜」
「あ! そうかい! そうなんだね。魔石を使った装飾品が、欲しいのかい? だったら、スアノースだね。あそこの品は良いモノ揃いだもの! あたしも死ぬまでには1個欲しいさねぇ〜」
「そ、そ、それにしても花嫁さん。き、き、綺麗ですね」
オバチャンパワーに負けながらも何とか、私から意識を逸らしたわ。
「タアちゃんかい? あの子も苦労したのよ〜」
「あ、あ、あのぉ〜! わたし、そろそろ行きますね。じゃ、知っ礼しますうぅ〜」
「あら、そうかい? あんたも気を付けて行きなよ! 幸あらんことを」
「ありがとうございます」
ふぅ〜、やれやれ。
あのオバチャンと言う種族は、話好きよね。
しかも、遠慮と言う言葉を何処かに置き忘れて来たかのような振る舞い。
あんなふうにはなりたく無いわね。
と、言ってもわたしの命もあと数日。
何の為に今を生きているのかしら。
悲しき命題よね。
うふふ、それっぽい事を言っちゃた。
そんな事より、本当に綺麗だったわね。
異世界なのに、まるで日本。
違うわね。
うふふ、今はウェディングドレスよね。
わたしなら、ふんだんにレースを使用したスケ感満載のスタイリッシュタイプのドレスが良いわ。
乙女の憧れよね。
でも、和装も良いわ。
芸能人では、神社仏閣での結婚式が流行っていたもの。
どちらも素敵で、捨てがたいわね。
……うふ、うふふ、あははは!
救いようのない馬鹿だわ。
私に未来なんて無いのに!
一生……無いのに!
あるのは……死……だけ。
そのとき、目眩がわたしを襲った。
「嘘! 早くない? ……………………フン! やっと交われたわ。何が真実の愛なのかしら! 馬鹿らしい。この世は力よ! 魔力よ! それが全てなのよ! あんたもそれが分かっていたから、食べたんでしょう。マ・リ・ア」
私は水面に写った姿を見たわ。
「貧相な姿。シャルルの名が泣くわね。フン」
思いっ切り変えたわ。
違うわね。
元の私に戻ったの。
清楚な美人も、有りと言えば有りよ。
でもね。
私らしく無いわ。
ウフフ、そうそう、コレか私なの!
艶やかな黒髪。
濃い明るいクリムゾンレッド色した瞳。
パールホワイトの様な肌。
溢れんばかりの胸。
くびれた腰から迫り上がる桃尻。
スラリと伸びた脚。
それらを覆い尽くす、黒のボンテージファッション。
極めつけは、ピンヒールのニーハイブーツ。
色はもちろん黒よ。
あぁ〜、スッキリしたわ。
コレぞ! 私よね。
さて、ゆっくりもしていられないわ。
急いで、紅蓮の龍王を生け捕りにして献上しないと、本当に殺されちゃうもの。
お腹は……少し減っているわね。
あら?
誂え向きに餌が居るじゃないの。
う〜ん。
魔力を備えている子も居るわね。
「いただきます」
コツコツ。
「あの〜、誰かの〜、お迎え〜、ですか?」
コツコツ。
「そうねぇ。貴女の命?」
「え?!」
私は小ぢんまりした幼稚園へと入ったわ。
5歳ぐらいの子供が3人、少し小さい3歳ぐらいの子供が2人、大人が1人。
合計で6人ね。
この中で魔力を感じるのは、2人。
他はゴミね。
ウフフ、ゴミは焼却処分に限るわ。
「“フレイムセレクト”……ウフフ、中二病的発言かしら?」
青白い炎が大蛇となり、幼稚園を呑み込んだ。
コツコツ、コツコツ。
私は一通り歩き回り、食料を集めたわ。
「ママ? ……ママ……ママ!」
「貴女は誰ですか! ひ、ひ、人を呼びますよ! !」
「煩い。子供は……美味しそうね。! ! ! 分かったわよ。私だって、服を汚したくないわ」
この青白い炎は、建物に延焼しないの。
魔力の無い、生き物だけを燃やしてしまうのね。
一気に灰へと姿を変えるわ。
とっても便利な技なの。
ついでに、魔力のある物の場所を、私に教えてくれるのね。
探知も兼ねているの。
大人は不味そうだからチョーカーで魔力を吸収するとして。
子供の方は食べたかった!
あの女が邪魔しなければ、ペロリと食べたのに!
何も出来ないくせに、私の身体を拘束したのよ。
まぁ、動きを阻害する程度だけれど、気持ちのいいものではないわ。
仕方がないから、この子もチョーカーで済ますわよ。
食事はコレぐらいにして、本気で急がないと駄目ね。
とりあえず、移動よ。
それにしても、魔力を備えている獣が少ないわね。
全く無いに等しいわ。 人も同様にね。
町並みは、文明的で走りやすくて、分かりやすい。
山の向こうは、獣道しか無いからね。
歩きにくいったらないわ。
靴が汚れるじゃない。
その点は、褒めてあげる。
オヤ?
城のシルエットが薄っすら見える距離ぐらいに、魔力が集まっている場所があるわ。
……紅蓮の龍王と対峙するのよね。
……お腹は満腹では無いけれど、魔力はそこそこあるわ。
……駄目だわ! コレくらいの魔力では太刀打ちできない!
だったら、頂くだけよ。
すぐそこに、集まっているじゃないの。
私に、食べて欲しいのかしら?
あらあら、では美味しくいただきましょうね。
「マリア! 今度は邪魔しないでちょうだい! どうせ、大したことできないんだから、静かにしていて! ……フン。本当にしょうもないわね。貴女、なんの為に生きてるのよ。……。アハハハ! 死んだも同然だったわね。体ごと私に渡せば……苦しまなくて済んだのよ。貴女は私。私は貴女。表裏一体、表と裏よ。貴女が生きる意味を求めるのなら、私は生き延びる道を求めるわ。さて、龍王と対決しないとイケないの。私の餌になりなさい!」
ここも砦のような場所ね。
私は裏から中に入り、近くの部屋へを覗いたわ。
子供にして大きいわね。
15歳? 17歳? 20歳?
そのぐらいの、坊や達が居るわね。
1・2・3・4・5人。
しかも、誂え向きに火属性の子たちが揃っているわ!
「いただきま〜す。騒がれると厄介ね。ウフフ、ここも中二病的発言の登場よ。“フレイムネイル”なんてね」
私は自身の爪を鋭く伸ばし、驚き戸惑っている子供達の額に突き刺した。
そして、一気に魔力を吸い上げたの。
コレをすると必ず、爪が割れるから嫌いなんだけれど、背に腹は替えられないわ。
ドサ、ドサ、ドサ。
「ププ! 先生に伝えるんだ! 行……け」
「甘い」
ドサ。
「ヒィー!」
「あらあら、粗相をしてしまったのね。ゴミが! 靴が汚れたじゃないの! “フレイム”クズの魔力なんていらないわ。灰になりなさい。フン」
ポキン、ポキン、ポキン。
あらら、やっぱり、折れたわね。
仕方がないわ。
それにしても、本当にクズね。
まぁ、良いわ。
ここには、魔力を宿した生き物が沢山いるから、1人ぐらい殺しても平気。
さて、次は……誰かなぁ?
私は最初の部屋を出たわ。
廊下を挟んだ壁には、建物の地図があったの。
なるほどね。
ここは、コの字の形に建っているわ。
高さも3階ぐらいしか無いの。
部屋も細かく別れていて、各部屋には文字を書く板と机5個が1セットになっているのね。
私が入ってきた、反対側には窓が幾つも列なっていたわ。
ここはひょっとして……学び舎なのかも知れないわね。
しかも、魔力を宿している坊やたちの。
ウフフ、ついてるわ。
ウフフ、ラッキーだわ。
この子たちの魔力を吸い尽くせば、魔力の総量を上げることは可能よ。
下手したら、上位種へと進化も夢ではないかも!
「俄然! やる気が出てきたわ! ……まぁ! 集まってるじゃないの! 今から行くわね。待ってなさい」
私は窓ガラスを破壊して、外へと出たわ。
なりふりかまって、いられないのよ!
一刻でも早く、呪いを解かないと、マリアと共に死んでしまうの。
龍王を手土産に解いてもらうんだから!
それにしても、広い中庭よね。
魔獣を作るには、もって来いの場所だわ。
ここを拠点にすれば、人族なんて呆気なく捕食できそうね。
凸凹にするのは得策ではない、と言う事。
上手くやらないと……死ぬわ……私がね。
私! 頑張れ!
気合を入れ直して、中庭へと足を踏み入れたの。
広い、広い、庭が広がっていたわ。
その隅っこに、魔力の塊を発見!
「そんな所に居ないで、コチラへいらっしゃい。可愛がって、あ・げ・る・わ!」
パシィン! パシィン!
私は、腰に取り付けていた鞭を外したわ。
50人強も居るのよ!
流石に多いわ!
少しづつ、いただくことにする。
砂埃を舞いあげながら1歩、また1歩と近づいたの。
中には珍しい魔力も感じるわね。
ウフフ、本当にラッキーだわ。
この子達も付ければ、生き残れること間違い無し!
ここは慎重に……殺してしまわないように……ゆっくりと……歩いていたの。
私も、焦っていたのね。
鳴き声を聴くまで、気が付かないなんて!
間が抜けてるわ。
「ニャ! ニャ、ニャニャ!」
「嘘! シャルルの魔力じゃない! あ! あの時の黒猫かぁ! こんな所に居たんだね。これで、本物の氷炎の魔人シャルルになれる」
「ニャ〜ゴロ。ニャゴロゴロニャ」
「フン! ニャニャ、煩いわね。大人しく飼い主の靴でも舐めなさい。ペットならそれらしく振る舞いなさいよ」
私はジリジリと、黒猫に近づいたわ。
逃さないようにね。
猛る気持ちを抑える事など出来ぬほど、私は興奮していたの。
「今度こそ! 喰ってやるわ! その血、1滴も逃してなるものかぁ! !」
「ロク! ハチ! 魔獣化を許可します」
「はぁ?」
たった一言で、状況が一変した。
驚いたのなんのって。
目の前にいたのは、普通の黒猫だったはずよ。
その黒猫が、魔獣へと姿を変えたの。
その姿は、美しい黒ヒョウ。
先程のままの私なら負けていたかも。
あの子達を吸収しといて正解だったわね。
そして、困った事にもう一匹、私の後ろに居たの。
その子はシルバーウルフの最上位、大神。
この子は首輪、行きね。
確か残っていたはずよ。
ほら! 有った。
左の尻ポケットに入っていたわ。
これで何とかなるわね。
……本当に私は焦っていたの。
状況が見えないくらい、混乱していたわ。
さらに、あの集団の中に、目的の者がいた事に全く気が付かなかった。
命の切符を切られ。
タイムリミットが近づくなか、私は私では無くなっていたの。
ここに来て、マリアの生きる意味が、私の勇み足を誘発しちゃったみたいね。
マリア……死にたくない……わ。
マリアからシャルルへと選手交代でナナ達とバトル開始です。
タイトルの遭遇には、シャルルとの遭遇と結婚式の遭遇とをかけてみました。
ちなみに、私にとっては結婚とは……なにそれ?美味しいの?
次回予告
「ナナ!」
「マノアちゃん落ち着いて!私が予告をするわ!」
「青!よろしく!」
「まかして! 次回予告
氷炎の魔人シャルルとのバトルの火蓋が切って落とされた。初めて魔人と相見えるナナは、混乱してしまう。戦うことができるのか!ナナや人族にとって最大の試練が今始まる!!
マノア、こんな感じでいいかしら?」
「大丈夫よ!それよりも……ナナは大丈夫かしら?」
「「心配ね」」
青とマノアにしてもらいました。
本当にどうなるのでしょうか?
私にもさっぱり分からないですね。
アハハハ!
それではまた来週会いましょう!




