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閑話 あらあら、8月11日ですって

話が短いです。

気軽に読んでいただけると幸いです。

「ねェ〜、ねェ〜、ヴナ、知ってる?」

「なに? デル? 知らないって……何をよ? !」

「じゃ〜、教えてあげる。ヒコモンターニュには、呪いの歌って言うのがあるんだって」

「うそ! マジで!」

「本当、本当よ。何でも、全ての歌詞を知ると呪いに落ちるらしいの。私が知っているのは1番だけ」

「知ってるの! 教えて! キャー!」

「行くわよォ〜。

 遠き山に 日は落ちて

 星は空を ちりばめぬ

 きょうのわざを なし終えて

 心軽く 安らえば

 風は涼し この夕べ

 いざや 楽しき まどいせん

 まどいせん


 やみに燃えし かがり火は

 ほのお今は しずまりて

 眠れ安く いこえよと

 さそうごとく 消えゆけば

 安き御手みてに 守られて

 いざや 楽しき 夢を見ん

 夢を見ん」

「あんたバカね。それ、ドボルザーク作曲「新世界から」に堀内敬三が作詞した「遠き山に日は落ちて」でしょう。そんな事はいいから仕事してちょうだい」

「「は〜い」」


 まったく、困った子ちゃん達ですこと。

 まぁ〜、私も興味はある、け・れ・ど!

 今はダメよ!

 もうすぐ、山の祭典が開かれるの。

 年に1度のお祭りよ。

 そこで、着用するシュード様とノジル様とエディート様の衣装を製作しなければいけないの。

 え?

 私は誰かって?

 私は王室専属のデザイナー、ザベユよ。


「先生ェ〜。ここどうしますゥ〜」

「そこでしょう。もう少しフリフリを増やしたいけどォ〜、でも山よ! 山登りよ! ……やはり無理ね。こっちで、してちょうだい」

「はァ〜いィ〜」

「デル! その話し方どうにかならない? 気が抜けちゃうわぁ〜」

「先生の真似をしているだけですのォ〜」

「はァ〜」


 ため息しか出ないわ。


「先生ェ〜。ここどうしますゥ〜」

「今度はヴナね。何かしら?」

「エディート様の丈どうしますゥ〜」

「それは計っている。身長125センチ、座高63センチだったわ」

「はァ〜いィ〜」

「双子だからって同じ事を言わないで」

「先生の真似をしているだけですのォ〜」

「はァ〜」


 本当に、ため息しか出ないわねェ〜。

 デル&ヴナは!

 彼女達は、私のアシスタントをしてもらっているの。

 勤めて5年ぐらいになるわね。

 実力はあるの子よ。

 物凄いポテンシャルを秘めているの。

 でもねェ〜。

 身長が少し低くて、童顔で幼児体型。

 子供に間違われることも、しばしばあるの。

 本人達は、面白がって子供のフリをして遊んでいるのよ。

 罪な子達よね。


「先生。お茶にしましょう。急いては事を仕損じるとも言いますし」

「お茶菓子なら、ここに!」

「はぁ〜、息ぴったりね」


 準備バッチリで、お茶会が始まったわ。


「このケーキどこのォ〜?」

「先生、食堂のおばあちゃんからの提供品です!」

「ヴナ! 本当なのォォォ! テンションマックスじゃないのォォォォ!」

「「でしょう! 私たちもマックス! です」


 食堂のおばあちゃんのケーキは絶品ですものォ。

 あァァァァ……お・い・し・い……ホォ。

 チョコムースとベリーの相性は最高だわ。

 これが毎日、食べられたら……わ・た・し……天にも昇る思いよォォォォ!

 1人で悦に浸っていると、デルが呪いの歌の話題をまた持ち出したの。


「先生ェ〜」

「何かしら?」

「先生は呪いの歌の事は知っていたんですかぁ?」

「知っているわよ。と、言っても1番だけだけれどね」

「「教えて下さい」」


 呆れるほどの双子力よね。

 でも、知ってるんだなァ〜。

 少しだけ鼻を高くして教えてあげたわ。


「貴方達ィ〜。よ〜く聞いているのよ!


 遠き山に 火は落ちて

 星は地にて ちりばめる

 きょうの技を なし終えて

 心軽く 安らえば

 風に押されて この夕べ

 いざや 見下し まどいせん

 まどいせん


 と、言うのが歌詞よ。さすがの私も2番目は知らないわ」

「「どこが呪いの歌なの?」」

「あんた達、本当にピッタリね。面白いわァ〜」

「「で! どこが呪いなんですか?」」

「知らないわよ。でも、ヒコモンターニュに伝わる歌ってコレの事だわね。それ以外は知らないわ」


 この出来事がすべての始まり。

 私にとって忘れる事が出来ない出逢いが……待っていたの。


「ねぇ。ザベユ」

「はい、なんですか? ノジル様」

「本当にコレを着るの? 前の世界の記憶がある私には、辛いわね。昔のテレビで特集していた服装でしょう。中世ヨーロッパで確立した貴族のスポーツ。ゴルフのウェアよね。紳士のスポーツだから、フォーマルスタイルでプレーしていた、あの姿よね? ……本当に着るの?」

「はい。山を登るんですよ。ヒラヒラしたドレスでは、無理です。動きやすくて、スタイリッシュな服装がベストかと思い、このデザインに致しましたが。何か問題でもありましたか?」

「……無いわ。いつもありがとうね」

「もったいないお言葉です」

「ウフフ、そうだ! 貴方もこの姿で参加してね」

「え? ! 私は……」

「拒否権は無しよ!」

「は、はいィ〜」


 そしてやって来ました、8月11日。

 山の日の慣例行事。

 ヒコモンターニュにて、執り行われる祭り。

 山に感謝しつつ祈り慰霊の為、神仏および先祖を奉る儀式。

 山の中腹に祠があり、そこに供物、そのほかが捧げられるわ。

 厳かなセレモニーに、ピッタリな服装を作るのが私の仕事ね。

 ちなみに、私も勇者よ。

 何かあったときの戦闘要員なの。

 属性は土。


「「なんで私達も登るんですかァ〜」」

「なんでって、貴女達も勇者でしょう。参加しなさい! それと、そんな事まで声を揃えないで! キモいわ」

「「はァ〜いィ〜」」

「はァ〜」


 デル&ヴナも勇者なの。

 属性は2人とも風。

 よく3人で、魔力を使って掃除をするのね。

 私が砂ぼこりを浮かせて、デルかヴナが、風で1箇所に集めるの。

 隅々までキレイになっていいのよね。

 しかも、楽だし!

 ここ重要よね!


 配置も決まり、中腹に向かって出発したわ。

 デル&ヴナはエディート様で、私はノジル様。

 楽しく、おしゃべりしながらの山登りよね。

 ヒコモンターニュ前広場でセレモニーも済ませ。

 いざ行かん!

 出発よォ〜!


 祠へと続く道すがら、ノジル様に話しかけられたの。


「ねぇ、ザベユ」

「はい、何でしょう? 疲れましたか?」

「まだ、大丈夫よ。そんな事より……呪いの歌って知ってる?」

「もちろん知ってますよ。1番の歌詞だけですけれど」

「なぁ〜んだ。私も1番だけ知っての。確かこんなんよね?


 闇に光 見えしとき

 光 今は しずまりて

 眠れ安く いこえよと

 さそうごとく 消えゆけば

 天の御手みてに 守られて

 いざや 楽しき 夢を見ん

 夢を見ん


 ……よね!」

「そ、そ、それは……2番の歌詞?」

「え?」

「キャー! !」

「ザベユ!」


 もう少しで、祭壇がある中腹に到着する寸前だったのに!

 ノジル様から2番の歌詞を聞いた途端、私の足元がポッカリと大きな口をあけてしまったのよ。

 もちろん私は……。


「落ちるのォォォォォ!」

「ザベユゥゥゥゥ……」


 ノジル様の声が、遠くに聞こえるわ。

 そして、誰もいなくなった。


「ここ何処よ!」


 ……何処よ……。

 ……何処よ……。

 …………よ……。


 木霊が響くよどこまでもォォォ。

 はァ〜、本当にここはどこかしら?

 まずは、落ちる速度をなんとかしないと、私、死ぬわね。


「“サンドストーム”」


 とりあえず落ちる速度を抑えないと、ヤバイわね。

 下に向かって砂嵐を起こしたの。

 計算通り、落下速度は落ちたわ。

 で、落ちる所まで落下したようね。

 ここは、3畳ほどの広さがある、スペースだわ。

 それにしても、真っ暗ね。

 壁に手を添えながら、1周ぐるりと回ったの。

 コレでも土属性では、強者なのよ! 私は!

 さて果て……ここはどこかしら?

 私のオリジナル魔術“アースサーチ”を発動させたわ。

 “アースサーチ”は、金属探知機の凄いバージョンの魔術なの。

 道も物も私にかかれば、一目瞭然と分かっちゃうのよ。


「なるほどね。はァ〜、真っ逆さまに落ちちゃったのね。で、何とか道は無いのかしら……無いわ。驚くほどの土ばかり。はァ〜、どうしましょう。呪いの歌の本当の意味は、歌詞をすべて知る者が通ると落とし穴が発動する仕組みになっていたのね。とんでもない呪いだわ! もォ〜、バカチンがァァァ〜」


 ……バカチンが……。

 ……チンが……。

 ……が……。


 はァ〜。

 虚しい木霊が反響するだけね。

 でも、本当の意味はこの先にあったの。


「……か? ……ですか? ……ザベユさん! 大丈夫ですか?」

「天使?」


 そうなの!

 私の目の前に、天使が舞い降りたわ。

 男でも女でもなく、ファッション業界で言うところの、ユニセックスの天使。

 真っ白い翼が、音もなく舞い降りた。

 一瞬にして恋に落ちちゃった。


「大丈夫ですか? ザベユさんですね。私、異世界人ユントと申します。すいません。こちらへと来ていただけますか? こんな姿ですが、私の属性は白属性です。空は飛べません。紐で降りてきているので動けません。怖いでしょうが、私の腕の中に来てください。一緒に上へと上がります」


 あらあら、この天使ちゃん女性なのね。

 そう言えば噂で聞いたことがあるわ。

 異世界人に男装の麗人が居るって。

 イケメンだけど女性で、白属性と黒属性を持っていると。

 なるほど、彼女のことね。

 素敵な女性じゃないの!

 ウフフ、この呪いの歌の本当の意味を知っちゃった!

 キーワードは落ちるよ!

 穴に落ちる。

 恋に落ちる。

 山の神様も、なかなかやるじゃないの!

 素敵……キャハ!


「ねぇ、ユントさん」

「私の事は呼び捨てて構いません。ザベユさん」

「だったら、私も呼び捨てていいわよ。それに敬語もいらないわ。ざっくばらんに話しましょう」

「ありがとう。ザベユ。私も貴女と話せて嬉しいわ。相談したい事があるの。まぁ〜、後からでいいから聞いてくれる?」

「もちろんよ!」

「ありがとう! さぁ、御手をどうぞ」

「まァ〜! ありがとう!」


 意中の女性を誘う青年。

 傍から見たらそんな景色ね。

 右手を差し出され左手を添えたわ。

 そして腰に手を回し、お姫様抱っこされたの。

 本物の乙女なら、気絶モノね。

 でも……。


「ユント、ごめんなさい。私、女性じゃないの。男性なのね」

「はい、抱き寄せて気が付きました。すいません」

「ウフフ、謝らないでちょうだい。えっと……異世界人で言うところの女装家ね。ノジル様の衣装を作成するに当たって、どうしても着心地を確かめたくなったの。自分で着てみるのが、確実でしょう。そしたら、似合っちゃたのよね。髪も伸ばして、お化粧したら、あら不思議! 美人さんじゃないの! で、ハマってしまったの。ちなみに、身も心も男性よ。あしからず!」

「そうなんですね! とても綺麗だったから……身も心も女性かと」

「私が好きなのは、綺麗で可愛い人であり物よ! ユント、貴女もとっても可愛いわ。今度、食事でも行かない? 美味しいケーキが食べららる所を知ってるの?」

「はい!」


 コレが私の大切な人との出逢い。

 まさか、キューピットが呪いの歌って、驚きよね。

 でも今、思うと呪いが発動する条件が有ると考えるの。

 まずは、呪いの歌の歌詞をすべて知っている事。

 祭壇へと続く1本道にいる事。

 8月11日、山の日にヒコモンターニュにいる事。

 これらの事がすべて揃って呪いの歌が発動するのよ。

 そして、その効果は……。


「ユント、好きよ!」

「ザベユ、私も好きです」


 ウフフ、呪われて幸せになるなんて……驚きよね。

 この事は、私のひ・み・つ!


正解はザベユでした。

呪い=怖い話の呪いを打ち破ってやりました。

実は、恋の話でしたね。

落ちるに引っ掛けて見ました。

私もそんな恋がしたい。


次回予告

「ナナの元に危機が訪れる。現れた姿に戸惑う竜とロク。危機を回避できるのかぁ!乞うご期待。

……コレでいいかぁ」

「良くないわぁ! マギノ! 名前ぐらい言いなさいよ」

「すまん。ベルネ」

「俺は……」

「今更、遅いわぁ! いい加減にしなさい!」


マギノ&ベルネにしていただきました。

気持ち漫才コンビ風に読んで下さいね。


来週から話が進みます……よね?

頑張って書くので、お楽しみに!

ドラクエ11に負けずに書きま〜す!!


それではまた来週会いましょう!

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