69話 あらあら、生誕祭ですって
はぁ〜、楽しかったわ〜。
な・つ・や・す・み!
ギリギリまで遊びに遊んだわ。
先ずは、ハワイアンリゾートの様な湯の里で羽を伸ばし。
プールで、適度な運動を嗜み。
老舗旅館のバイキングかと思える程の、料理に舌鼓をうち。
次に、元極寒の大地ソルへと赴き、犠牲になった者たちを葬い。
震源地となった大地を封鎖した。
危ないものね。
最後にもう一度、湯の里で英気を養ってから帰路へと着いたの。
ヤバイくらいの時期だったから、少しだけズルをしたのよね。
私は嫌だったのよ。
だって……。
「「『ギィ〜ヤァ〜! お〜ろ〜し〜てぇ〜! !』」」
主に叫んでいたのは、私とロクとロキアの3人。
私たちは、極寒の大地ソルに行った時の交通手段で移動したの。
ハチがスキル“闘気功・玉”で包んで、エディの特殊魔術“フライ”を使って、低空飛行してソルの洞窟まで行った組合せ技よね。
アレを低空から上空に変えて、さらにスピードアップしての今なの。
ちなみにハチは……。
『凄いよ! 速いよ! 楽しいよ!』
と、尻尾フリフリ爽快満面の顔をしているわ。
ちなみにアイザックと子供達は、どうやって移動するかを聞いた途端、マナスの影の中に入ったの。
素早い行動に笑ったわ。
そして、素早い行動に失敗したのがロクなのよ。
スキル“影”を“影法師”まで上位互換したんだから、そこいら辺の影に飛び込めば良かったのにね。
それすらも忘れて、私にしがみ付いてしまったの。
大八車の中で、ロキアと3人で抱き合い、目を瞑って叫んでしまったわ。
死ぬかと思ったじゃないの。
でもそのおかげで、行きは5日かかった道のりも、2日で走り抜けたわ。
……2度と乗るかぁ! !
そう誓ったのは私だけではないはずだわ。
新学期が始まった。
初日に、転入生がやって来たの。
誰かしらと、思ったら……。
「初めまして。メースロア・サラ・マナスです。異世界人ではありませんが、同じ境遇のナナの側で色々と学びたいと思い、ママに相談してこのクラスに通うことになります。寮も同じです……って、夏休みからずっと一緒にいるんだけどね。これからも、よろしくお願いします。アイザックも一緒です」
「うふふ、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
「よろピコ〜」
「オウ」
「僕の方こそよろしく」
みんなそれぞれの言葉で、挨拶をしたわ。
「ハンナ先生は都合により、1週間のお休みです。その間、皆さんの副担任を勤めてもらう方です」
「メースロア・サラ・ロキアです。魔力な無い私ですが、皆さんの役に立てるように頑張ります」
「お姉ちゃんは、ブードとマーゼの世話をしてよ」
「五月蝿い。マナスは黙ってて」
「はぁ? 何言ってんのお姉ちゃん!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」
「「ホゼ(兄さん)は黙ってて!」」
仲が良いほど喧嘩する。
そんなところね。
でも、ハンナはどこに行ったのかしら?
1週間後と言えば、祭りが始まる頃よ。
……どこにいるの? 何をしているの?
ヒュ〜〜ポン! ポン!
ヒュ〜〜ポン! ポン!
開催を知らせる花火が上がり、始まりの高揚が高まりつつある闘技場。
誰もが期待の眼差しで中央を見つめているわ。
その視線の先には、王様らしいスタイルで貫禄たっぷりのスアノース・シド・シュード様の姿が。
両手を広げ、宣言したの。
「皆の活躍を楽しみにしている。……開会を宣言する! !」
短い言葉の中に重みを感じるわ。
伊達に王様をしてないわね。
その王様も、見晴らしの良い観客席の最上段に鎮座したわ。
代わりにルバー様が降りてきたの。
「ギルドを統括しているルバーだ。先ずは、魔術開発課から発表する」
なんの前触れもなく、淡々と話し出したルバー様。
コレは……ギルドからの報告と言う名の表会? よね。
ルバー様が始めに発表した、魔術に驚いたわ。
だって、ハチがソルの地でアイザックの双子に使ってくれた“エンジェルリング”を公表したんですもの。
「この魔術は、白属性の“女神のキス”を元に考案したモノだ。その為、“女神のキス”を使える者しか使用できない。しかし、効果は絶大だ。リングを着けた者すべてに、リングの影響がある。その効果は、少しずつHPが回復していき、状態異常を治し、呪いまでも解いてしまう。ただし、速効性は無く時間がかかる。さらに、MPの消費が激しい。1分間にMP1ずつ減っていく。ちなみに、着ける人数は関係無い。便利良さそうに思えるが、使用時間を間違うと枯渇する。くれぐれも無駄遣いはしないでもらいたい。次は……」
ルバー様から新たに考案した、魔術や改良したスキルを次々に発表して行ったわ。詳しくね。
その説明の最後に、ルバー様はとんでも無い爆弾を落として行ったの。
「発表はこれで終わりだ。最後に僕から一言、付け加えたい。これらの魔術・スキルはルジーゼ・ロタ・ナナ様の配下魔獣、ハチ、ロク、ネズミ隊の功績による!
最近の風潮で、ギルドへの報告をしない人が多々いるようだが……魔獣にも劣る考え方だと僕は思う。常に向上心を持って! 魔術は人族の為にある! その事を心に留めておいて欲しい。僕からは以上。
次は、マジックアイテム開発課から」
言いたい事だけ言って、帰って行ったわ。
怒ってる?
次に出て来たのは……お父様? !
「マジックアイテム開発を担当している、ルジーゼ・ロタ・ガロスだ。俺からはマジックバック改を発表する。このバックは……」
お父様が朗々と話し出したわ。
ルバー様は魔術“ステレオ”で声を大きくしていたけれど、お父様は違ったの。
生声よ。
素晴らしい肺活量よね。
高すぎす低すぎす聞き取りやすい。
少しだけバリトンボイスかしら?
でも、いい声だわ。
「くれぐれも注意してほしい。パーティー登録の無理強いを禁ずる。HPにしろMPにしろ、多いからと言う理由で仲間にするなど、言語道断だ! 発覚次第、マジックバック改を没収する。
最後は料理開発課からだ」
ルバー様と同様に、言いたい事だけ言って帰って行ったわね。
そして、出て来たのは……?
「食堂のおばちゃん! !」
そうなの!
お父様の代わりに、降りて来たのは食堂のおばちゃんだったの。
私の隣に戻って来た、お父様に詳しく話を聞いたわ。
「ギョザリアは、ルバーがギルド長になる前から食堂に勤めていた強者だよ。ちなみに、結婚している。今は、2人で食堂を切り盛りしているぞ。ふっ、ふふ……」
「お父様! 含み笑いは良くありませんわ」
「すまない。ルバーが最も苦手にしている1人だよ」
「え? どういう事ですの?」
「あの男は、好き嫌いが多い! 食べず嫌い! 好きな物しか食べない! そんな三拍子そろった男に、家族以外で、食べさせる事の出来る唯一の人なんだよ。その光景が……ふっ、ふふ……面白いんだ。あんまりみんなが笑うから、個室を作ってそこで食べるようになったんだ。今度、そっとのぞいて見るといいぞ〜」
「お父様ったら、あんまり笑うと拗ねませんか?」
「拗ねる? そんな生易しいものでは無いな。暴れるんだ。魔術の考査だ! とか何とか言いながらなぁ。なかなか酷いだろう?」
「確かに、酷いですわね。近寄らないように、いたしますわ」
「賢明だなぁ」
そんな他愛もない話をしている間に、おばちゃんの料理教室は終了したわ。
良く考えたものよね。
発表会と試食会を兼ねていたの。
ギョザリアさんが作った料理は、王族と私たち貴族が食したわ。
その料理に驚いたのなんのって!
だってカレーライスだったのよ!
ただ……かなり和風寄りだったけれどね。
ライスより、うどんの方が合うような美味しさだったわ。
そして、カレーライスには必ず付いている漬物といえば!
「福神漬け! !」
「さすがナナ様ですね。正確には福神漬け風です。完全復元は無理ですよ」
朗らかに笑ったのは、おばちゃんと似たような体型のおじさんだった。
私が、誰? 的な顔をしたのに気が付いた、その人が自己紹介をしてくれたわ。
「俺は、菅原博と言います。異世界人です。俺は、前の世界で食堂を営んでおりましたが……不審火で店が焼けてしまって、煙に包まれつつも逃げ出した先が、この世界だったんです。最初こそ戸惑いましたが、まぁ〜、どんな世界であろうとも人間だ。飯さえ食えれば、どんな世界でも生きているける。飯を作るのが俺の仕事です」
「うふふ、菅原さんは素敵ですわ。でも凄いですわね。まさか、この世界に来てカレーライスを食べれる日が来るなんて、驚きましたわ」
「俺の魔力はたいした事なくても、スキルが凄いんです。スキル“再現”と言います。食材を見れば何が作れるか分かります。さらに、この料理には何が足らないかも分かります。それで、いろんな料理ができる訳です」
「確かに、驚異的なスキルね。でも、ありがとうございます。貴方がいてくれるからこそ、こんなに美味しくも、懐かしい味に出会う事が出来ます。本当に感謝していますわ」
「エヘヘ」
嬉しそうに笑った菅原さんの横で、ギョザリアさんも幸せに満ちている顔をしていたわ。
食って素晴らしい。
だって、どんな環境でも人を幸せにする事が出来る必殺技なんですもの。
私の娘は、今も誰かを幸せにしているかしら?
そんな事をふと考えてしまったわ。
「さぁ! やってまいりました! 勇者による勇者の為の、力の大会! 決勝戦の開幕です! !
予選は激しい戦いが、繰り広げられていましたね。本日は、力といえばこの人。ガロス様とマギノ様に来て頂いております。えっと……総評をお伺いしても、よろしいですか?」
「うむ。確かに凄かったが、魔術に頼りすぎている嫌いがある。スキルをもう少し使えば、勝ち残れた勇者が数名いたなぁ」
「ガロスの言う通りだ。さらに付け加えるとすれば、戦いにおける基礎の基礎。体術が成っていない。もう1つ上げるとすれば……」
「あははは〜、お話は尽きそうにないので選手の入場です!」
東と西の入り口から、2人の女性が入って来たわ。
1人はハンナね。
もう1人は……誰?
「西の入口からは、火の勇者ハンナ様。東の入口からは、水の勇者を継承された勇者タトリナ様。早速のいがみ合いだ! この2人は、同じ歳で同学年。因縁のライバルです」
「あら? 誰かと思ったら、山奥に引き篭もったなんちゃって勇者のハンナじゃないの。なんでここにいるのよ。ここは神聖な場所。勇者による、勇者の為だけの! 力の大会よ。偽物の勇者が来るところではないわ。メイドはメイドらしく、足の無いお姫様の世話でもしてなさい」
「偉そうな物言いね。そんな言葉を使えるように成ったのね。成長したじゃない、タトリナ。1度も私に勝てたことないくせに、ね。私、貴方と戦うのが楽しみにしていたのよ。どれだけ成長したか、見てあげるわ」
「何、上から目線なのよ! あんただって私に1度も勝ってないでしょう!」
はぁ? お互いが1度も勝ててない?
「えっと……注釈を入れますと、19戦しておりまして19引き分け、だ、そうです」
呆れたわ。
19戦も試合をして19引き分けって……アリなの?
などと思っていると、お互いのマイクパフォーマンスが終わったのか、試合が始まったわ。
19回も引き分けをしている2人。
きっと泥仕合いね。
そう思って見ていたら、違ったの。
ハンナの方が、最後まで主導権を握っていたわ。
それもそのはずよね。
だってこの1ヶ月、ハンナはハチ達の朝練に参加していたの。
後から話を聞いたんだけれど。
予選で勝った人が、前年度の優勝者と戦えるみたいなの。
5年前はハンナが毎年、優勝していて予選勝者を蹴散らしていたらしいわ。
タトリナさんが勝ち進んだ時だけ、引き分けだったみたい。
ある意味、仲良し?
ところが、私の所に赴任が決まってから力の大会には、不参加だったらしいの。
その間、勝っていたのがタトリナさん。
ライバルだったハンナと戦わずして、優勝したのが不服だったようね。
初めは嬉々として、楽しそうに戦っていたのよ。
タトリナさんがね。
でも、彼女は気がついてしまったの。
いつの間にか、主導権を握られてしまっている事にね。
ハンナは、魔力を一切使わず、スキル“闘気功”だけで戦って見せたわ。
なぜ、そんな無謀な事をしたのか。
答えてくれたのはロクだった。
『あの、ガロスとマギノの言う通りニャ。魔力に頼りすぎニャ。戦術も何も、あったもんじゃない。確かに、魔術は見た目も派手だし殺傷能力もある。でも、そんなもの当たらなければ意味が無いニャ。肉体強化こそ、魔術に対抗出来る唯一最強の武器ニャ。ハンナは、もともと“纏”が上手かった。さらに、努力家でもある。そんな人間に、ただあぐらをかいて王座に座っていたヤツに負けるわけなどない! ニャ』
『だ、ワンね』
だそうです。
ロクの、言葉通りの展開だったの。
タトリナさんは、水属性の攻撃でハンナを倒そうと躍起になっていた。
魔術の乱発で、額から大粒の汗が吹き出ていたわ。
息も上がってしまっていたの。
それにひきかえハンナは、1つ1つの魔術を丁寧に、避けるか弾くかして防ぎつつ一歩ずつ進んで、追い詰めて行った。
恐ろしいほどの闘気を纏ったね。
追い詰められた方は堪ったものではないわ。
魔術を使っても、使っても、倒れてくれないんですもの。
ジリジリと進んで来るハンナに、恐怖の眼差しを向けたその瞬間、試合は終わったわ。
苦し紛れの“ウォーターボール”を放ったタトリナさん。
左腕で弾き、右手で綺麗なボディーブローが炸裂。
意識を手放し、決着した。
呆気ないほどの戦いに、皆が惚けてしまっていたのね。
拍手すら無かったの。
王様が席を立ち、盛大な拍手を送ったら、皆が皆、席を立ちスタンディングで拍手喝采を浴びせたわ。
立つ事は出来なかったけれど、私も力の限り手を叩いた。
どう? 私のハンナも凄いでしょう!
そんな誇らしい気持ちでいっぱいになった。
「勝者! 火の勇者ハンナ! !」
ワァ! ! ! !
オオ! ! ! !
どよめきが起こった闘技場内。
その歓声を左手1つで鎮めた王様。
「大義であった」
その一言で座ったの。
それだけ? と、思ったのは私だけでだったみたい。
騎士の礼をしたハンナは、満足そうに西の入口へと消えて行ったわ。
まだ意識を取り戻していないタトリナさんは、ルバー様が抱えて東の入口へと入って行ったの。
5分ほどして、またルバー様が現れたわ。
ザワザワしている場内に、魔術“ステレオ”で拡張した声を響かせ、話し出したの。
「火の勇者ハンナは、素晴らしい戦いを見せてくれた。感謝の意を込めもう1度、盛大な拍手を!」
オー! ! ! !
パチパチパチパチ……。
バチバチバチバチ……。
歓声と喝采が、闘技場から溢れていたわ。
5分ほどで拍手喝采が静まると、おもむろにルバー様が話し出した。
「ここで、提案してもよろしいでしょうか? ……ありがとうございます。ルジーゼ・ロタ・ナナ様と私の、エキシビョンマッチを申請したいと思います」
オー! ! !
ワァー! ! !
これまでにない歓声が上がったわ。
はぁ? ? 私とエキシビョンマッチ? ?
『そう言う事、ニャ〜かぁ〜』
『腕がなるワン』
『『『『はっ』』』』
なるほど、私個人ではなく、ハチとロクとネズミ隊とのエキシビョンマッチね。
良かったわ。
あれ? 忠凶がいないわ?
「忠大、忠凶は?」
『はっ、忠凶は……』
「ナナ、イケるか?」
忠大から話を聞く直前に、お父様から声をかけられてしまったの。
今思うとこの時、お父様ではなくて忠大の話を聞いていれば良かったわ。
「お父様! もちろん、やってやりますわよ! ね。ハチ、ロク、ネズミ隊、イケる?」
『ボコボコにしてやるワン』
『泣かせてやるニャ』
『『『『はっ』』』』
「よし! ヤル気だなぁ。よく聞けよ。ルバーは、魔術を駆使して攻めて来る。戦術も素晴らしいから、裏の裏をかけ。また、その裏を読むぐらいで良いぞ。ただ弱点もある。あいつは運動オンチだ。撹乱して隙を突く作戦が正当だろう。まぁ〜、もう1つ弱点があるとすれば、フェミニストだ。ナナに攻撃を仕掛けて来る事は無いだろう。そこを突けば……面白い事になるかもなぁ」
お父様の不敵な笑みが、ハチとロクに伝染したみたい。
なんだか、悪役みたいな感じ。
「ルバー様。お手柔らかにお願い致します」
「それは、僕の台詞だね。一切の手加減無しだよ。僕も本気で行くから、ハチとロクとネズミ隊にも、真剣に試合をしてもらいたい」
「分かりましたわ。ハチ、ロク、忠大、忠吉、忠中、忠末、魔獣化を許可します」
「忠凶は、どうしたんだい?」
「それが、居ないみたいなんですの。訳を聞く前に、お父様から話しかけられて聞かずじまいなんです。後から聞きますわ」
「……そうかぁ……」
「ルバー様?」
「なんでも無い。さぁ! 魔獣化をしたまえ!」
『『『『『『魔獣……』』』』』』
ハチ達の魔獣化を合図に試合が始まる寸前、思わぬ事態が発生したの。
息も絶え絶えの忠凶が、闘技場のグラウンドに落ちる影から現れた。
『姫様! 大変です! こちらに、紅蓮の龍王が攻めてまいります! すぐに退避を! はぁ〜はぁ〜』
「え! 忠凶! どう言う事! 説明しなさい!龍王が何なの? !」
忠大が倒れている忠凶に触れて、スキル“走破”を使用したわ。
みるみる顔をが青ざめ、震え出したの。
『姫様。一刻の猶予もありません。メースロア地方にある、ソルの洞窟の奥地から龍王が此方へと向かっているとの事です。詳細は不明です』
「うそ……ルバー様! 龍王が、紅蓮の龍王が、此方へ向かっているとの事です。目的は……何故なの?」
「おそらく、僕とナナくんだろう。無限の魔力と、無限の体力を得るためだ。ナナくんには申し訳ないが、ロクくんを王と貴族の護衛に回してもらえないか?」
「え? 何でですの?」
「僕とナナくんが行けば、龍王を王の側へと誘導しかねない。だったらここで迎え撃つ方が得策だよ。ハチくんはナナくんの足だからね。答えは1つしかない! 時間もないみたいだ。ロクくん……王と王妃を……頼む」
ルバー様はロクに跪いて、頭を下げた。
ハチとロクとネズミ隊を、1人の人としての対応してくれた事に心を打たれたわ。
「ロク、話は聞いていたわね。忠凶、大変だけれどロクと一緒に王様の元に行ってくれる。その際は、魔獣化をしないで。許可したままにして置くから、火の粉が降りかかった時に魔獣化をして護ってちょうだい。忠凶、魔獣化を許可します。忠大、忠吉、忠中、忠末はエディ達を守って! ハチ! 貴方はルバー様と一緒に……ここで足止めよ!」
『ナナ、分かったわよ。ハチ! 分かっているだろうねぇ?』
『もちろん! どんな事をしてでも、ナナを守ってみせる! ロクも護れよ』
『誰に物を言ってんのさぁ。いつまで寝ているんだい。行くぞ! 忠凶! 女の意地を見せなぁ』
『はっ』
「みんなよろしくね!」
『『オウ!』』
『『『『『はっ』』』』』
ハチ達の気合い1つで散って行ったわ。
その間に、ルバー様が王様に連絡を入れたみたい。
勇者が一斉に動き、避難誘導が始まったの。
もちろん王様と貴族の側には、ロクと忠凶が到着して護衛に着いたわ。
忠大たちも持ち場へと到着したみたい。
これで一安心ね。
30分後……凶々しい魔力を感じ始めた。
闘技場には、私とハチとルバー様だけ。
みんな、退避が出来たみたいね。
少しだけホッとしたわ。
そんな安らぎもつかの間、闘技場に邪悪な影が包み込んだ。
……え? 竜坊の……気配? ?
『ばあちゃん! ナナばあちゃん! 僕だよ! 鐵竜一だよ! ばあちゃん!』
「竜坊! ! !」
まず始めに、謝罪です。
更新が遅くなりました……ごめんなさい。
新キャラはどこに……ごめんなさい。
謝罪した所で次回予告です。
「ベルネ。私は存在しているか?」
「イヴァン。居るわよ。生きているわよ。存在しているわ! 貴方に譲るわ。予告してちょうだい」
「ベルネ……すまない。次回予告。王の生誕祭に突然現れた、紅蓮の龍王。その凶々しい姿に、恐れ慄くルバーとハチ。しかし、ナナだけは違っていた。龍王の気配は、紛れもなく亡くした孫のモノだった。訳を知りたいナナと退けたいルバーとハチの間で、不和が起こる! ナナはこの窮地をどうやって切り抜けるのかぁ! 戦わない選択は選べるのかぁ! 見逃せない戦いがそこにある!
……私は生きているぞ!!」
「イヴァン……お見事」
色々……すまん。
次回はもう少し早く更新出来るように、頑張ります。
それではまた来週会いましょう。




