閑話 あらあら、5月5日ですって
「やってまいりした! 子供の日杯キング戦! 3月3日に行われました、ひな祭り杯クイーン戦にて激烈なバトルにより、最強のクイーンが誕生いたしました。本日のバトルも激しい戦いが予想され。実況を担当いたします、私も楽しみで仕方ありません。さて、こちらに最強の名に相応しいクイーンをお呼びしており、戦いの後日談などお聞きしたいと考えて……」
「ゴロニャ〜ゴ!」
「え? !」
まったく何やってんだよ。
どうせ、ナナの差し金だろう。
自分が出るのが嫌だから、ロクを置いたんだぜ。
俺は……何としてもキングになってやる!
まぁ〜、なんだ。
ナナやホゼ、青にマノア、こいつらのおかげで今の俺がいる。
この世界に生まれた時、俺は絶望に喘いでいた。
……また、死ぬんだ。
ゴミ袋を頭から被り苦しみながら、死ぬんだ。
その前に、逃げなきゃ。
やられる前に、逃げなきゃ……。
その言葉が、俺を支配していた。
そんな俺にナナは、衝撃と優しさで諌めてくれた。
俺は、俺は!
ナナの左側に立ちたい!
立ってみせる!
スアノース・シド・エディートの名にかけて!
戦いは3月4日から始まった。
「ハチ〜、一発逆転する様な必殺ワザかなんか、ないのかよォ〜」
「ウゥワン、ワンワン(そんなすぐは、無理ワン)」
「なぁ〜、ハチならなんかあるだろぅ〜」
「ワンワンウゥワンワン(エディが使える魔術は無いワン)」
「ハチぃ〜〜」
「エディ。いい加減に放してやれよ。ハチが苦しそうだよ」
「ちぇ、分かったよ。だったから代わりにホゼが、なんか考えてくれよ」
「はぁ? 自分で考案、考査しないと意味ないと思うよ」
「それが出来るなら苦労はしないぜ」
俺たちは、ハチとロクとネズミ隊が朝練している闘技場へと来ていた。
ネズミ隊は4匹しかいないけどなぁ。
毎朝、ここで魔術の考査や考案やスキルの熟練度、上げなどをしているんだ。
そこに俺たちもお邪魔したってワケさぁ。
「でもさぁ、ホゼ。新しい魔術ってどうやって創るんだ?」
「そんなの知ら無いよ。今、使える魔術から考査するんじゃないの。ホラ! ハチも頷いているよ」
「う〜ん……なんの魔術から考査をするんだ?」
「さぁ〜。得意な魔術からでいいんじゃないの。テストだって、解る問題からやれ! と、言われているからね。エディなら“フライ”だと思うよ。ホラホラ! また、ハチが頷いてる」
「うん! ハチがそう言うなら当たりだぜ!」
「発案したの僕〜」
「エヘヘ〜」
これからが、大変だったぜ。
確かに、俺の得意な魔術は“フライ”だ。
でも、完成されたモノを進化させるのは難しい。
ヒントをくれたのは……やはり親友の……ハチだった!
言葉が分からなくても伝わる事がある。
ハチは行動で教えてくれたんだ。
要は「Don’t think, feel 考えるな感じろ」だったけ?
そんな感じの事をハチは言いたかったはず!
俺にはそう思ったね。
同じ魔術を繰り返し使う事で何かを感じているだ、と思う。
じゃなきゃ〜、繰り返す意味ないもんね。
俺もハチに習って魔術“フライ”を繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し……。
そして考案した魔術は……。
「改めまして、ご紹介いたします。最強のクイーンをお育てしていますガロス様においでいただきましたが……。それにしても、凄いご令嬢ですね。強さと優雅さを感じております。どの様にお育てしたら、この様なご令嬢に育つのですか?」
「え? その〜、あの〜、なんだ。あ! 選手が入場して来たようだぞ」
「……ほ、本当てすね。それでは、選手の紹介です。やはり今年の台風の目は、スアノース・シド・エディート様でしょう。この方の登場で、子供の日杯キング戦の結末が分からなくなってしまいましたね。ガロス様の見立ては?」
「定番で行くなら、ノラ家のクラーネルだと思うが……。キーになるのはエディート様の特殊魔術“フライ”だと思うぞ」
「しかし、あの魔術は攻撃系ではありませんよね?」
「確かにその通りだが、使い方によっては最強の武器になるかもしれんぞ。エディート様が、如何に魔術の考査をしているかがポイントだ。クラーネルにしても、ここ最近、勉学に集中している。この2人が中心になる事は、確かだなぁ」
「なるほど。さぁ! 開始の合図は間も無くです! !」
始まるぞ。
ホゼが解説の内容を教えてくれたけれど、頭んなか入ってこない!
ドキドキやらワクワクやらフワフワした気持ちで、どうにかなりそうだよ。
100人ぐらいの人がウジャウジャいるんだ。
でも、実際には86人だってさぁ。
そんな事はどうでもいい!
今の俺には、クラーネル派のヤツらの方が大問題だ。
あいつらが邪魔だなぁ。
はぁ〜、俺がキングになる事ができるのかぁ?
イヤイヤイヤイヤ!
なるんだ!
なれるかもでは無くて、絶対なるんだ! !
「エディ。入場が始まったよ」
「オ、オウ!」
闘技場へは何度も来た。
でも……こんなに広くて狭かったけぇ? アレレレレ? ?
ドン!
「エディ? 大丈夫?」
「ホゼ……俺……緊張……してる?」
「はぁ〜、エディなら平気だろう、これくらい?」
「え?」
「僕たちは死線をくぐり抜けて、今ここに居るんだ。これくらい屁でも無いよ」
「あははは! 確かに、確かに! 屁でも無いなぁ。 ホゼ! サンキュー」
「どって事ないよ。僕は安全地帯に居るからね〜」
「俺はやってやるぞ! !」
「がんばれぇ〜」
覇気のないホゼの声援を背に、俺は中央へと歩み進めた。
ホゼは、ルバー様が護っているセーフティゾーンへと真っ直ぐ走って行ったんだ。
こういう時のホゼは、見た目に反して速い。
5分ぐらいで、あらかたの移動が終わったみたいだ。
86人居た人達が30人まで減って居た。
これならアレが使いやすいぜ。
まずは、先生布告からだ!
「やってやるぜ! ! 魔術“F1”」
俺が開発した新しい?
魔術は、やはり“フライ”が基軸になっている。
ホゼの説明によると……。
「空気力学を取り入れたら? ダウンフォースを利用したら速くなるかも?」
「はぁ? 空気学力? ダウンフォーク? ?」
「あははは! エディ、面白すぎ! あははは……あははは! 止まんない。あははははは〜」
「ホゼ……笑いすぎ」
「ごめん、ごめん。要は、F1だよね。タイヤの摩擦力を高めるために用いられるんだよ。高速走行時に流線型の車体ボディーにより生じた揚力を打ち消したり、旋回性能を高める働きがあるんだって……理解できた?」
「そんな訳あるかぁ! でも、F1ねぇ〜。カッコいいぜ!」
そんな事があり。
考査して考案したのが、魔術“F1”なんだ。
まだ、ルバー様には見せてないから、俺独自の魔術になる。
さぁ! かましてやるぜ!
「速い!」
「クラーネル様。流石に捕まえられません」
「バザ、クケ。魔術を乱発して動きを止めろ!」
「「はい」」
バカだよね。
F1並みのスピードが出てるんだぜ。
当たる訳ないよ。
さて、ホコリもいい具合に舞い上がっているぞ。
そろそろ、仕上げと行こうかなぁ。
俺は、中央に止まって考案したての魔術を発動させようと構えたその時、空から1匹の獣が舞い降りた。
「ワン、ワォォォォン!ワン“ワンワン”(僕だワォォォォン!魔術“塵旋風”)」
ハチの遠吠えから魔術が生み出された。
俺が起こした砂塵から、竜巻が発生し30人居た俺たちを巻き込み舞い上がった。
俺がしたかったのに……ガックシ涙。
「ハチのバ〜カ〜」
眼が覚めるとベッドの上だった。
「エディ! ごめんなさい。もう! ハチがいきなり飛び込むんだもの。しかも、ナナの側にいるのは僕だ、とかなんとか言いなが……。本当にごめんなさい。後から、ホゼに聞いたんだけれど。ハチが使った魔術“塵旋風”はエディが考案したんでしょう。もう! ハチのバカ! 人のモノを取っちゃダメでしょう! !」
『ごめんワン』
耳と尻尾をペタンと張り付かせ、うなだれていた。
「ナナ。俺がするより威力倍増だったよ。やっぱり、ハチは最強だぜ」
「何言ってんの? 貴方がキングでしょう?」
「はぁ? 俺が? ? ?」
「そうよ。竜巻がみんなを巻き上げて、ルバー様が慌てて受け止めたんだけれどね。セーフティゾーンの子達しか助ける事ができなかったの。エディやクラーネルを含めた、30人の子供達は地面に叩きつけられた。それほど高い所からでは無かったみたいで、打ち身と擦り傷だけ。うふふ、貴方は立ち上がり「俺の勝ちだ! 」と叫んで、人差し指を天高くかざして、倒れたのよ。最後まで立っていたのが貴方だったから、優勝はスアノース・シド・エディートで決まったみたいよ。おめでとう」
「……ありがとう……」
「あら? 嬉しかないの?」
「俺の魔力で……勝ちた……かった」
俺はまた、意識を手放した。
まずは、遅れて更新したことをお詫び致します。
申し訳ございません。
言い訳をしていいのなら、5月2日から季節の変わり目のせいでお腹を壊してしまい。
下痢が今も続いています。
だいぶん良くはなっているのですが……正直、キツイですね。
さて3月3日ひな祭りの続き、5月5日子供の日のお話です。
少し短いのですが、エディが頑張りましたよね。
ハチの話した内容は、ナナから聞いた事にしといて下さい。
それでは次回予告です。
「ハチちゃんは凄かったわね」
「確かに凄かったけれど、アレはルール違反だよねぇ〜」
「う、う〜ん。確かにね」
「青が落ち込んでいるなで、私マノアが予告しま〜す!
ホワイトベアーの主、アイザックがメースロアの守護獣になる事を確約した。マジックアイテム“恭順の首輪”も付けることが出来たのに! 取り返しのつかない大問題が発生する! なんと! マナスのギルドカードを無くしていた。この窮地をどうやって乗り切れるのかぁ! ナナの手腕が試される。
青、これくらいでいいよね」
「大丈夫だと思うわ。この位にしとかないと、どうなるか分からないものね」
「だよね」
青ちゃんとマノアにしていただきました。
が!
青ちゃんの言葉が私の胸を刺さりましたよ。
痛いですよ。
シクシクですよ。
でも、頑張ります!
それではまた来週会いましょう!




