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閑話 あらあら、3月3日ですって

「やってまいりました! ひな祭りクイーン杯! 12歳未満の女の子達によるバトルロワイヤル。誰が今年のお雛様になるのかぁ! 選手入場です! !」


 1週間ほど前に遡るわ。

 給食時間がすぎた、お昼休みのことよ。


「ねぇ。今年はナナも出場するのよね。だったらクイーン、間違い無し! ……でしょう」

「確かに……私もそう思う」

「マノアに青ちゃん。クイーンって?」

「「……」」


 沈黙が痛いわ。

 本当に知らなかったのよ!

 それから、エディとホゼが加わり説明してくれたわ。


 毎年3月3日に開かれる、お祭りと言う名の闘技大会が開かれるみたいなの。

 全国に住んでいる12歳未満の女の子が対象で、全員参加ね。

 それでも例外はあるの。

 それはねぇ……メースロア・セラ・マナス様。

 流石に盲目の少女を戦わせる訳には、いかなかったようね。

 ベルネ様が強硬に反対したみたい。

 だったら私も〜、と口を開きかけた時スキル“意思疎通”が点滅したの。


 〈「誰ですか?」〉

 〈「俺だ。今どこにいる?」〉

 〈「お父様? 今ですの? 食堂ですわ」〉

 〈「そうかぁ。今から、そこに行くから待っていなさい」〉

 〈「はい」〉


 私はみんなを呼び止めて、お父様が来る事を話したわ。

 5分ほどでいらしたの。


「「「「ガロス様。こんにちは」」」」

「はい、こんにちは」

「お父様。何かあったのですか?」

「まぁ、その事なんだが……。ナナはひな祭り杯の事は知っているかなぁ?」

「さっき聞きましたわ。全国にいる12歳未満の女の子がバトルする大会でしょう。全員参加なのにベルネ様の娘さんだけ不参加になる大会よね。だったら私も……」

「今年はベルネの姉妹とモア家の次女も不参加だ」

「え? 何でですの? ?」

「ベルネの姉妹は身体を慮っての辞退だ。モア家の次女は……誰かさんのせいで魔術の考査に熱が入り、やり過ぎて寝込んでいるよ。そのため出場は断念した。貴族側から誰も出ないのは不味いので、ナナが出ることになった。まぁ〜、自分で蒔いた種だ。しっかり刈り取りなさい」

『あたし出たいニャ!』

『僕も!』

『女の子だけニャ。あんたには無理だよ! お・ん・な・の・子・ニャ!』

『どこにいるワン! 女の子なんていないワン!』

『はぁ? やるかニャン!』

「2人ともいい加減にして。お父様の話の途中でしょう!」

『ごめんワン』

『ごめんニャ』

「お父様。ごめんなさい。えっと……」

「アハハハ! ワンとニャしか聞き取れなかったが、言っていることは理解できたぞ! 2人とも出たがったんだなぁ?」


 そう言ったお父様が、ハチとロクを見ながら話しの続きをしてくれたわ。

 どこか楽しそうなのよね。

 何か企んでいる顔だわ。


「ハチ、ロク、よく聞けよ。2人を出したい! だが、力の差がハッキリしているからなぁ。弱い者いじめをしてもつまらんだろう。そこで、魔獣化無し、風属性だけ使用、ナナのハンディ有り……の、ハチに出てもらう事にした。イケるかぁ?」

『勿論ワン!』

『ちぇニャン』

「アハハハ! コレも解ったぞ。尻尾で判断できるなぁ。また今度、闘う機会もあるだろう。その時頼むぞ!」


 そうなの。

 も〜何だか恥ずかしいわ。

 お父様がハチに出てもらうと言った瞬間、ハチのお目々がランランしだして尻尾もフリフリ激しく振れ出したの。

 それにひきかえ、ロクは顔が床に着くくらい項垂れちゃったし、尻尾もダラリと掃除をしているわ。

 目は口ほどに物を言うよね。

 誰でも理解できるわ。

 その証拠に、みんな笑っているもの。

 はぁ〜、私は溜息しか出ないわ。

 だって、拒否権無しの決定事項なんだもの。

 私、どうなるのかしら?





「ひな祭りクイーン杯の優勝候補だった、マーウメリナ・モア・テデシア様。そんな彼女が、魔獣の考査をやり過ぎで熱が下がらず欠席する今大会。そんな中、大注目はやはりこの方! 魔獣を従えた美少女貴族。ルジーゼ・ロタ・ナナ様。そして、対抗馬はこの美少女。魔力が無いにも関わらず優勝候補に名を連ねるノホポロス様の娘シィネ様。さぁ! 盛り上がってまいりました! 誰がクイーンとなりキングの横に並ぶのかぁ!

 ……開始の合図が出されました! !」


 煽るわねぇ、この司会さん。

 実はアレからネズミ隊に調べてもらったの。

 本当に呆れたわ。

 だってこの大会、毎年、貴族VS豪商の構図になるんですって。

 ここは正確に言わないとダメね。

 貴族の権力で従えた勇者と、豪商の金の力で集めた勇者の戦いみたい。

 巻き込まれるのは魔力の無い子。

 そんな子達のために、避難所が設けられているらしいわ。

 2畳分ほどのサークルにルバー様がスタンバイして、クイーンが決まるまで護ってくれるみたい。

 ある意味、最高の守護者よね。

 最大の問題は勇者にあるようよ。

 権力に屈するか、金の魅力に惑わされるか!

 毎年、過激になる一方みたい。

 なぜ過激になるのか?

 忠大の見解では、それぞれの中心になる子達の親がコソコソ動いるようね。

 子供のうちから箔を付ける事で、親の権威を上げたいのではないか、との事なの。

 はぁ〜、馬鹿ばっかり。


 さて、開始されたバトルロイヤル。

 通常なら、勇者の移動は半分半分ぐらいに分かれるらしいのだけれど……。


「これまた清々するほどの光景ね。ハチ」

『そうだワン』


 広い闘技場に70名ほどの子供達がいたの。

 開始直後、40名ぐらいがサークルへと殺到したわ。

 残り30名は1人の少女の側へと移動した。

 保護下に下った、その40数名の中には勿論、勇者も居たわ。

 本来なら貴族に着くはずの子よね。

 誰の力かは、あえて言わないわ。

 馬鹿らしいもの。

 でもねぇ……はぁ〜、あからさま過ぎるわ! !

 ちなみに、12歳未満なので青ちゃんとマノアも参加しているの。

 もしもの時の為に、忠凶と忠末を護衛に付けたわ。

 何かあっても困るものね。

 満員電車の様になっているサークル内。

 2人とも無事かしら?

 と、呑気に状況を分析している私の横をウインドーボールが通り過ぎたわ。

 でも、余波までは避けきれなかったみたい。


「キャ!」

『ナナ……考え事をしててもいいけど……試合は始まっているワンよ?』

「ごめんなさい」


 そうなのよ!

 あちらこちらから、ファイアーボールやらウォーターボール、ウインドーボールにブラックボール。

 魔術のボールシリーズが飛んでくるのなんの。

 でも、慌てず騒がず正確に避けていくハチって凄いわ。

 風属性の魔術で弾くより、スキル“闘気功”で防ぐ方が良いみたい。

 軽やかなステップで回避する姿は流石よね。

 それにしても、邪魔よね。

 ものすごく、お邪魔だわ。

 保護している子達が、ね。


「ちょっと待って! ストップ! ちょっ……」

『この乱打戦では誰も止まらないワン。“ステレオ”これでいいワン』


 魔術“ステレオ”を発動させたわね。

 だったらこの言葉よ!


「全軍〜止まれ! !」


 効果抜群だわ。

 全ての人が止まったの。

 時も止まったみたいね。

 改めて王様に話を振ったわ。


「どうかお願いです。保護区に居られる方々を、上へと上げてください。ハッキリ言って邪魔ですわ。ルバー様には、正確なジャッジをしてもらいたいものです、ね。ルバー様」


 私の話を最後まで聞いた王様が、左手を上げたわ。

 すると、闘技場の扉が開きギルドの職員が女の子達を迎え入れた。

 程なくして、私VS31人の女の子達……とんでもない構図ね。

 笑っちゃうわ。

 でも、怪我させるのもマズいし殺しちゃうのは論外だし、どうやって戦えばいいのかしら?

 そうだわ! !

 ウフフ、良いこと思いついちゃった(ハート)


「ねぇ、ハチ……てぇ〜の出来る?」

『出来るワン』

「そこから……でぇ〜……ば、行動不能に出来るでしょう。やれそう?」

『出来るワン! 面白そうワン!』


 作戦会議はあっさり終了して、バトルロイヤルが再開されたわ。

 ハチが最初にしたことは……。


『“スプリングボート”……こんな感じかワン?』

「なかなか良いじゃないの」


 私達が初めにした事は、魔術“スプリングボート”を闘技場のはるか上空で、ドーナッツの形に出現させたことよ。

 そして……。


「ギャ〜〜」

「イヤァァァァ〜〜」

「嘘……来ないでぇ〜〜」


 見事な跳びっぷりね。

 玉屋〜〜鍵屋〜〜、と言いたくなるぐらいだわ。

 さて、次にハチがした事といえば……。


「ナナもエグい事するわぁ。エディなら、楽しめる?」

「マノア。飛ぶのと跳ばされるのは違うぜ。アレは俺でも嫌だ」

「アハハハ! だよね」


 魔術“ドライヤー”で、ドーナッツの穴から上へと飛ばしただけよ。

 はるか上空とは、ドーム球場の屋根ぐらいかしら?

 それぐらいの高さに、待機してもらおうと考えたのね。

 だって、怪我されても困るし中途半端な高さだと攻撃されそうで邪魔だし、色々考えた結果、ドーナッツの上で待っててね! 作戦を遂行したの。

 なかなかの妙案でしょう!

 あら?

 話している間に、30人いた女の子達がドーナッツの上で気絶しているわ。

 早いものね。

 ハチが最後の1人を打ち上げて、シィネに詰め寄った。

 尻餅をつき、倒れた彼女に乗り掛かり動きを止め、顔を近づけた。

 今にも事切れそうな彼女に宣言したわ。


「チェックメイト」


 私の声を聞き、意識を手放したシィネ。

 彼女にルバー様が駆け寄り審議して手を交差した。


「勝者! ルジーゼ・ロタ・ナナ! ! ……ナナ、上に居る子供達も降ろしてくれ。その……大丈夫だろうなぁ?」

「ウフフ、誰にモノを言っているのですか? ハチですよ。そんなヘマはしませんわ」

『そうワン! ロクじゃないワン!』

「また、そんな事を言うと……」

『筒抜けニャ! !』


 はぁ〜、始まっちゃったわ。

 観客席から飛び降りて、走りながら言い放ったのがこの言葉。

 バトルになる前に止めないといけないわ。


「2人とも! 言い合いは後にして! ハチはドーナッツを降ろしてちょうだい。ロクはみんなの所に戻って!」

『大丈夫ニャ。ネズミ隊を残して来たし、ユントやハンナも居るニャ。あたし1人居なくても平気ニャ。次はあたしもやりたい!』

「アハハハ……次があればねぇ」


 もぅ〜、笑うしかないわね。

 その後も……笑ったわ。

 アハハハ……ハァ〜、疲れた。

 だって、凄かったのよ。

 別に死んだ訳ではなかったからいいじゃないの、と思ったんだけれど駄目だったみたい。

 お父様にもルバー様にも王様にも、激しく叱責されたわ。

 やり過ぎだ、とね。

 降ろされた女の子達は医務室へと運ばれ、怪我がない事を確認して帰宅の途についたみたい。

 その間も、説教だったの。

 とんでもないひな祭りだわ。

 クイーン杯という事はキング杯もあるのかしら?

 今度、マノアにでも聞いてみましょう。


「ナナ! 話を聞いているのかぁ! 確かに……」


 はぁ〜、お父様の説教。

 はぁ〜、早く終わらないかしら?

 はぁ〜、今日のお昼ご飯は何かしら?

3月3日ひな祭りなので女の子達に闘ってもらいました。

ある意味、今も闘いですよ。

片付け遅れると婚期が遅れる……3月3日前に片付けてもやって来ない婚期……イヤイヤ、モテ期すら来た事ない……涙がポロリ。


次回予告

「貴方は良いですわよね。ナナの側に居るんですもの。ナナの勇猛果敢な姿や、可愛らしい表情なんかも見ているのでしょう……私も見たい……ですわ」

「ソノア、そんな事を言ってもなぁ〜。身重だし、ルジーゼ地方に居るし、何よりお腹に赤子が宿っているんだぞ! 無理無茶は駄目だ!」

「貴方、同じ事を2度も言っているわ。もういいです! 次回予告をいたします。

ベルネの家族に会えたナナ。ところが大切なマジックアイテムを忘れてしまう。このピンチをどうやって乗り越えるのかぁ! そして、白熊にも対面する。彼はなぜそこに住んでいるのかぁ! その真相にナナはどうやって立ち向かうなかぁ! 見逃せない真実がここにある!

こんな感じでいいかしら? はぁ〜、ナナに逢いたいわ」

「す、す、すまない」


ガロス夫妻に次回予告をしてもらいました。

来週は白熊アイザックの登場ですわぁ〜。

どうしましょう……実は……名前だけで何も考えてなかったり……頑張りますぞ!


それではまた来週会いましょう!

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