52話 あらあら、テストですって
本当にとんでもない1日だったわ。
遠足! 遠足! と喜んでいたのに、チンピラ勇者のせいで台無しになったの。
クラーネルのいたずらで、私は蟻地獄へと落ちて行ってしまったわ。
そして、ハチのおかげでみんなの元へと帰るこたが出来たの。
問題はそこから先なのよ。
確かに少しだけ調子に乗ったわ。ノリノリだったわ。
ハチなんて新しい属性の、新しい魔術を創作しちゃうし。
学園にとんぼ返りしたし。
戻ってみると、お父様にこっ酷く叱られてしまうし。
残念! だったわ。
はぁ〜、疲れちゃった。
でも、私以上に疲労困憊した人達がいたの。
それはもちろん、勇者どもよね。
「はぁ〜。まさかこの歳でテストを受ける羽目になるなんて」
「ナナちゃん、何言ってんの? この歳って、私達まだまだ子供よ」
「青ちゃん、まぁ、まぁ〜ねぇ。アハハハ……そうでした」
「それにしても、テストがあんなに難しいモノだって俺、知らなかったよ!」
「あれ? 何で……あ! ごめんなさい」
「気にしなくていいよ。ナナ。確かに、学校に行った記憶は無い。だからこそ、今が新鮮なんだ。俺は楽しいよ。それに、卒業したら俺はここの先生になるらしいよ」
「なに? その話しマジなの?」
「マノア。王族はさぁ。王位を継ぐ前は、勇者を育てる教師になる義務があるんだってさぁ。俺は異世界人だから、異世界人の教員になるらしいぜ」
「エディに務まるの?」
「うるせぇなぁ〜。俺だってしらねぇよ!」
「ハイハイ。静かにして下さい。次の期末テストでは実技のテストも行います。ナナさんは免除です。それでは、筆記テストの範囲から始めます」
「起立、気を付け、礼」
授業が始まったわ。
歓迎遠足で私のとった行動から、学園制度を見直す事にしたらしいの。
私が何をしたのよ! と思ったけれど、思い当たる節だらけだから何も言えなかったわ。
そもそも話。
勇者学園は魔力を保有している人達が集う場所、という認識みたいなの。
要はエリート集団な訳。
その為プライドが高く、テストなど実施する必要無し! との考えがあったみたい。
ところが、ハチの魔術に危機感を感じたらしく、さらに私の言葉が恐怖を煽った様なの。
慌てて話し合い、制度を大幅に変更したのね。
遠足の翌日はお休みで、その次の日も臨時休校となったわ。
で! 何が変わったのか。
もちろん、中間テストと期末テストの実施。
中間テストは筆記だけで、期末テストは実技と筆記の両方。
私はどちらも筆記だけね。
だって、私自身には魔力が無いから。
確かに魔石があれば、私でも可能だわ。
でも、アレって結構な値段なのよね。
そうそう使えるモノでは無いのよ。
それに、ハチにしろロクにしろ、完璧に魔術を使いこなすわ。
もっと! もっと! と意欲的だしね。
そこで、実技テストの模範解答演技を担当する事となったわけ。
本人達もやる気満々だから、止められなかったわ。
「それでは、教科書の15ページを開いて下さい。今日は属性についてお話しいたします。みんなが知っている属性は何ですか? はい、エディさん、答えて下さい」
「はい! 風、火、水、土、白、黒……あ! 雷だ! ……です」
「正解です。よく雷属性を知ってしましたね。この属性は古の属性と言われています。今では1人しかいません。誰だか分かりますか? はい、ナナさん、答えて下さい」
「はい! ……えっと……」
『ルバー様で御座います』
「ヘェ〜、そうなんだ。ルバー様です」
「ナナさん。ダメですよ。ご自身で答えて下さい」
「は〜い。すいません」
「次の18ページの属性と弱点についてから読んでください」
「はい。属性と弱点について。火属性は水属性に弱し。水属性は土属性に弱し。土属性は風属性に弱し。風属性は火属性に弱し。白属性は黒属性に弱し。黒属性は白属性に弱し。だが、弱点は欠点にあらず。考査せよ。さすれば道は開かれん」
「とても上手に読めましたね。さて、この文章なのですが、難しい言い回しの為、理解するのに厄介です。こちらのプリントを見て下さい。火は水で消えます。水は土に吸収されます。土は風で巻き上げられます。風は火に取り込まれ火の勢いが増します。この様に考えると弱点が理解しやすいですね。ですが、弱点は欠点ではありません。火は水で消えますが、火が大きかった場合などは水だけでは消えません。水は土に吸収されますが、限度があり飽和すると、泥や泥水に姿を変えます。この様に、弱点がそのまま欠点では無いという事です。火属性しか持っていない人でも、魔力の練り方や魔術の考査で威力を上げると水属性にも勝てる事を意味しています。皆様も精進しましょうね」
「「「「「は〜い」」」」」
『は〜いワン』
『は〜いニャ』
『『『『『はっ』』』』』
そうなのよ。
いつの間にか、この子達全員が姿を現しているんですもの。
左にハチ、右にロク、机の上にはハツカネズミ姿のネズミ隊が並んで授業を受けているのよ。
まぁ〜、忠大に助けてもらったからダメとは言えなかったけれどね。
そうそうテストにも驚いたけれど、それ以上に驚愕で大変だったのが……引っ越しだったの。
引っ越し自体は問題無かったんだけれど……ねぇ。
「はぁ〜、まだ慣れないわ。青ちゃんはどう?」
「私だってよ。マノア。まさか奥の塔で生活するだなんて、今でも信じられないわ」
「だよねぇ〜」
私達は王様と王妃様の居住区、奥の塔で暮らし始めたの。
この塔は、1階に近衛兵の屯所と食堂があるわ。
2階は男性近衛兵の宿舎があり、3階に女性近衛兵の宿舎がある。
そこから上が、大奥となるのね。
正確には、4階が王の書斎スペースで、5階が王と婦人達の住居エリアだったらしいわ。
ところが、私達が引っ越してくる為に4階と5階をリフォームしたの。
新しい大奥は、4階が男子寮と食堂で、5階は女子寮と浴室がある。
もちろん浴室は日替わりで入る事になったみたい。
そして寮母は……。
「みんな! お帰りなさい。学校、どうだった?」
「は、はい。ノジル様」
「もう! 青ちゃん、ダメじゃないの。私の事は、ノジルさんかおばちゃんって言って」
言えないわぁ〜。
そんなセリフが、私達の共通の意見だったわ。
思わず目で語り合ったじゃないの。
確かに、第2婦人のエクサ様はすでに他界しているわ。
そして第3婦人のクミラは事実確認の後、処刑される事が決まっている。
事実上、大奥には第1婦人のノジル様しか居ないのよ。
その為、私達の寮生活がここで始まる事になったのね。
女子寮の寮母が第1婦人のノジル様なら、男子寮は……。
「おう! エディ、ホゼ、おかえり」
「父さん! ただいま!」
「えっと……ただいま戻りました。王様」
「エディ! 俺の事はお父さんではなくて、シュード。ホゼもだ。今は王様ではないぞ」
「エヘヘ。そうだった」
「は、は、はい。シュード……さんで勘弁して下さい」
ホゼの涙を見た気がしたわ。
ちなみに引っ越しは簡単だったわよ。
ウフフ、だって私がいるんですもの。
マジックバック(改)で移動する事なく配置完了。
お手軽だったわ。
このバックなんだけれど、正式名称が決まったの。
君の名は……マジックバック改……何でしょうね。
タイトルにZとかGTとか、安易に付ける発想からだとは思うのだけれど。
面白味に欠けるわね。
さて、このマジックバック改は国保有で一般販売はしないようなの。
悪用される恐れがあるし、開発も販売されるほど多く作らなかったみたい。
そこで軍やギルドで使う分だけ、制作したようね。
それにしても、王様と王妃様はフランク過ぎるわ。
もともと、王妃様は異世界人だったせいもあり、私達には親身になってくれているのよ。
それも理解できるんだけれど、他の人には言い難いわね。
さて、期末テストも終わり後は夏休みを待つばかりになった7月初頭。
食堂での雑談で、とんでもない事になってしまったの。
ホンの戯言だったのに、口は災いの元ね。
「なぁ、ナナ」
「なに? エディ」
「“雷鳴の首飾り”ってしてる?」
「何それ? マノアは知ってる?」
「さぁ〜、知らない?」
青ちゃんもホゼも首を振ったわ。
すると、エディは自信満々の顔で話し出したの。
「“雷鳴の首飾り”は……首飾りは……」
あらあら、勢いが失速したわね。
シュードさんを見てエヘヘと笑ったわ。
王様の威厳形無しのダラけた表情で、嬉しそうに続きを話し出したの。
「“雷鳴の首飾り”は、王家に伝わる秘宝なんだ。マジックアイテムなんだよ。だが、俺が生まれる随分前に無くなったと聞いている。残っているのはこの絵画だけなんだ」
そう言って指差したのは、食堂の壁に掛けてある大きな絵だったわ。
白銀のフルプレートアーマーに白銀のマント。
アレは、私のパンツね。
兜は下に転がっていたわ。
手には両手剣を構え、迫り来る魔獣に立ち向かっている姿を描いたものね。
確かに首には、キラキラと黄色い5個の石が嵌め込まれた首飾りが光っていたわ。
みんなで眺めていると青ちゃんが、そぉ〜っと手を上げて王様に質問したの。
「あの〜、シュ、シュ、シュード……さん。属性の事について分からない事があります。教えてくれませんか」
「もちろん、いいとも。何だね、青くん」
「は、はい! 雷属性は何に強くて、何に弱いのですか?」
「うむ。確かに、たった1人しか居なくなった属性だなぁ。そのため忘れ去られた属性とも言われている」
「あなたもみんなも、お茶を入れたから座って聞いたら?」
「「「「「はい」」」」」
「そうだなぁ」
この時に気がつくべきだったのかも知れないわ。
私達は席に着き話を聞いたの。
「みんなが学んだように、火属性には水属性。水属性には土属性。土属性には風属性。風属性には火属性。この様に相性がある。雷属性は土属性に弱く風属性に強い、とされているが正確な事はいまだ謎に包まれている。しかし最近の学説では、風属性は火属性の補助属性だったのでは無いか? 風属性では無く雷属性が主属性だったのではないのか? その様に考える者が現れた、それもまた然り。風属性だけ火属性と雷属性に弱いからなぁ。そう思われても仕方がないかも知れん。とまぁ〜、属性1つとっても本当は何も分かっていないんだよ」
「「「「「……」」」」」
「アハハハ! 異世界人と言えども、まだまだ子供だなぁ。難しい話をして固まったぞ!」
「もぅ、あなたったら」
可笑しそうに笑いながら追加のお茶を注いでくれたわ。
風属性が補助属性?
そんな事ってありなの?
「忠大。今の話は本当なの? 忠大! 忠大!」
『姫! “雷鳴の首飾り”を探して参ります。恐らくですが、雷鳴との冠が付いている以上、雷属性のアイテムだと考査いたします』
「はぁ? ちょっと待ちなさい。探さなくてもいいわよ。だいたい、どこにあるのかも分からないのでしょう?」
『おおよその見当は付いております』
「無理しないでちょうだい。まぁ〜、見てみたい気持ちはあるけれど……え! 見当がつくの?」
「ナナくんどうした? 忠大は何と言ったのかなぁ?」
「シュードさん。どうも……王家の秘宝“雷鳴の首飾り”の在処の推測が出来るそうです」
「なに? そんな馬鹿なぁ! 国中を探し回ったんだぞ! それでも見つからずに……何処なんだ?」
「そうよ。忠大、何処なの?」
『このスアノース城で御座います』
「いやいや、それは無いでしょう。この城の何処にあるのよ」
「ちょっと待ってくれ。ナナくん。忠大はこの城にあると言っているのかぁ?」
「そうみたいです。本当なの? 何処なの?」
『はっ。このスアノース城は増築改築を繰り返しています。今の姿に落ち着いて60年が過ぎておりますが、実際には築100年ほど経過している建物で御座います。文献によりますと、初代勇者が山を切り開き築城したとの事です。そのため地下には空洞があったり崖があったりする様です。詳しい事は行ってみないと分かりかねます。姫様の為にも、雷属性のアイテムを見つけて参ります』
「忠大! 待ちなさい。私の事はどうでもいいのよ。確かに少しだけ興味はあるけれどね。でもあなた達が危険を冒してまで行く必要はないわ。それよりも、この城の地下空間はどうなっているの?」
『ナナ……遅いワン』
「え? ? ? ? ?」
『ネズミ隊、みんなで行ったニャ』
「ウッソ! ! ! ! !」
そうなの!
あの子達ったら。
私の話を聞かずに行ってしまった様なの。
シュード様は、今だに目を白黒させているし、エディとホセ、青ちゃんにマノアは我関せずでお菓子を食べ始めるし。
どうなっているの?
誰か説明して! !
そうそう、ちなみに期末テストの成績は……ウフフ、想像にお任せ致しますわ。
今年最後の更新となります。
実際には冬休みなのにナナ達は夏休みです。
その前フリの話でしたね。
次回予告
「ハンナ先生。私、ちゃんと先生できていますか?」
「大丈夫よ。ユント。私なんかより立派な先生だわ」
「ありがとう。でも、ナナさんの話の方が理解しやすそうなんだもん。自信なくしちゃうわ」
「仕方ないわよ。私達なんかより、忠大の方が詳しいもの。私達は予告でもしましょう」
「そうね。次回予告。王家の秘宝を探しに行ってしまったネズミ隊。彼らが持ち帰ったものは何だったのか! そして目の前で起きてしまった出来事に、皆は驚愕する! 刮目せよ! これが進化だ! ! こんなところでいいかしら?」
「素晴らしいわ! 私の出る幕なかったわね。あ! そうそう、今年のやり残した事をする為に来週の更新は無いみたいよ。まったく何をしているのかしら? 先が知りたいでしょう! やり残した事なんて個人的な事なのに……ズル休みね! 」
「ハンナ、許してあげましょう。慈悲なる心で……愛の鞭よ! オホホホホ! !」
本当にすいません。
私の都合で年明けの更新は1月13日の予定にしています。
それでは皆様良いお年を!
来年も幸せをお届けできれば幸いです。




