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43話 あらあら、影縫いですって

 ヤレヤレだわ。

 やっと円卓会議も終わりね、などと考えていたのにベルネ様が投下した爆弾が炸裂したわ。

 なんと、自分の娘の為にマジックアイテムを違法改造して“恭順の首輪”を作ってしまっていたの。

 ところがそれは、なんちゃっての紛い物だったわ。

 知識の無い人が簡単に成功する訳がないのよ。

 さらに違法な製造は、死罪に値する犯罪らしいの。

 でもねぇ……作ったものが“恭順の首輪”だったから、ルバー様が私に丸投げしたのね。

 まぁ〜、夏休みにみんなでバカンス旅行へ行けるから不問にしたんだけれど。

 今度こそ終わったと思ったのよ。

 私の考えが甘かったわ。

 はぁ〜。


「チョット待った! ナナくん! スキル“影法師”の新しい技は何?」

「ルバー、よく言ってくれた! 俺も気になっていた! 新しい技とは? ?」


 ルバー様は百歩譲って良しとするわ。

 でも、王様がノリノリなのは何故なの?

 不思議がっていると、お父様が慌てて止めに入ったの。


「王! それはなりません。近衛隊長グフが嘆いておりました。最近、執務室に居られないし公務にも出られない事がたまにあると困っておりましたぞ。またスキル“影法師”を使い、城下町にでも繰り出しているのですか! ! さらに新しい技など聞いてどうなさるおつもりですか! おやめ下さい、王!」


 真剣に止めるお父様。

 何となく理解しちゃったわ。

 要はスキル“影法師”を使って城を抜け出して、遊んでいたのね。

 あれ?

 でも……最近って言っていたわね。


「王様。そんな事にスキルを使っていたのですか?」

「うっ!」

「でも、お父様。安心していいと思いますわ。入り口で捕まらないのなら、出口で捕まえたらいいです」

「はぁ? 出口とは?」

「どうせ、エディの所にでも行っているのでしょう。だったら、エディの部屋の前で待ち構えていると確実に捕まえる事が可能ですわね」

「なるほど! その手があったかぁ!」

「な! な! そ、そんな事は、ど、どうでもいいから……はぁ〜。少しだけ様子を見に行っただけだろう」

「1時間おきに行かれるのは、如何なものかと」

「そ、それはさて置き。……スキル“影法師”の新たな技とは何かなぁ?」


 王様はバツが悪そうに、頭を掻きながらスキルの事について聞いて来たわ。

 これは、話さないと離してくれないわね。


「忠大。詳しく教えてくれる?」

『はっ。姫様はご存知ないと思いますので、初めから説明いたします。スキル“影”は対象物の影に潜むスキルです。スキルアップして“影”から“影法師”に移行いたしますと、影から影へと移動が出来ます。どちらも重要なのが、対象物に気取らせない事です。自身の気配を薄くして、気付かせない様にするのが初歩の初歩です。そして新しい技と言うのが、対象物の影に潜み、その影を支配する事で本体にも影響が出る技です。対象物によってまちまちですが、概ね動きを止める事を目的としている技と言えます』

「ある程度、理解出来たわ。でも分からない単語があるわね。えっと……影を支配するってどういう事なの?」

『はっ。影の支配とは、対象物の影の中で、自身の気配を濃くして対象物に自分の存在を気付かせる行為です。本来ならしてはいけない事なれど、成功すれば動きを阻害する事が出来ます。しかし、対象物の意識が強い又は気概があるなど、気骨のある方には効きにくい傾向があります。イヴァン様なら動きを止めるだけでは無く、言葉や視力などの生命機関にまで影響を与える事もできましょう。ですがマギノ様なら動きを止める事すら出来ないでしょう。信念や覚悟がある方には効きづらいからです。あと心にダメージがあったり、隙があると大概の人は動きを止める事ぐらいなら可能です』

「面白い技ね。皆様、聞いて下さい。特にお父様。グフさんにしっかり伝えて下さいね」

「分かった」


 ダメね。

 ルバー様と王様のキラキラお目々が痛々しいわ。

 でも話さないと私、帰れないし……グフさん……ごめんなさい。


「では、スキル“影法師”から枝分かれした技について、説明をしますね。忠大、間違っていたらその場で言って、修正するから」

『はっ』

「皆様はスキル“影”とスキルアップした“影法師”の違いは分かります……よね」


 見回すと大きく頷いていたわ。

 う〜ん、改めて感じたの。

 私は、本当にこの世界の事を何も知らないのね。

 勉強しないといけないわ。

 勉強かぁ〜……私に出来るかしら?


「それでは、そこは端折ります。

 通常、気配をさせない様に潜んだり移動するのが“影法師”ですよね。ところが新しい技では、影に潜み対象物に自分の存在を気付かせるみたいです。そうする事で本体にも影響が出るらしいです。それを忠大は支配と言っています。えっと……イヴァン様なら動きを止めるだけではなく、生命機関にまで影響が出るらしくって、マギノ様なら動きを止める事もすら出来ないとの事です。要は意思が弱い人や精神的ダメージがある人にはとても良く効いて、気骨のある人には効きにくい傾向にある様です。こんな感じでいいかしら?」

『はっ。後は受けてみると理解しやすいかと存じます』

「まぁ〜ね。ルバー様。忠大が実際に受けてみた方が呑み込みやすいかもしれないと、言っていますわ。どうしますか? ……聞いています?」


 だって無反応だったんですもの。

 それでも表情で、今の感情は読み取れたわ。

 名前が上がったイヴァン様とマギノ様は、え! と驚いた顔をしていた。

 ベルネ様は、関係ない話ねと言いたげな素振りだったわね。

 難しい顔をしたのはお父様。

 やはりスキル“影法師”から発生した技には頭が痛いみたい。

 さて、楽しそうに私の話を聞いていたのが、ルバー様と王様よね。

 さらに、受けてみる? なんて聞いたもんだから、ワクワクと子供じみた笑顔が眩しくなったわ。


「是非に! イヴァンと僕と王様の3人で受けてみたい。おそらくだが、王様もかかりにくい分類に入ると思う。いかがですか? 王」

「うむ! ……未知なるスキルを体験するとわ……楽しみだなぁ!」

「ナナ。大丈夫なのか?」

「平気ですわ。お父様。忠大、お願いするわね」

『はっ。では、イヴァン様には忠中を、ルバー様には忠凶を、王様には忠吉に入ってもらいます。ですが、その前に姫様から技の名前を決めて頂きたいです。如何でしょうか?』

「私が決めていいの?」

『もちろんです。是非、お願い致します』

「そうねぇ……。スキル“影法師”……動きを止める……! 技名“影縫い”なんてどうかしら?」

『とても素晴らしい名前です。姫様。3人様をこちらに立ってもらい。ハチ様にホワイトランプで影を落とし頂きたいです。頼めますか?』

「もちろんよ。ハチ?」

『はいワン。ホワイトランプ』


 テーブルをほんの少しだけズラしてもらい、実査をするスペースを作ってもらったわ。

 そして、ハチが夏みかんサイズの明かりを出してくれたの。

 ほのかに辺りを照らし始めたわ。


「話は聞こえていましたか?」

「ナナくん。僕にはチュウとワンしか分からなかったよ。でも、技名だけは分かった。“影縫い”かぁ。なるほど、なるほど。面白そうな技だね! さぁ! イヴァン、王様、こちらに並んで立って下さい。ナナくん、これでいいかなぁ?」

「え! えぇ……。完璧ですわ」


 ルバー様ったら、私が促す前に席を立ちスタンバイしてくれたわ。

 先を読み過ぎね。

 何も言っていないのに、私の会話とハチの口から出た明かりで勘ぐったみたい。

 よほどワクワク感が止まらないのね。

 はぁ〜。

 男っていつまでたっても子供よ!


「さぁ! ナナくん! 始めてくれ!」

「わ、わ、分かりましたわ。みんな、お願いね」

『『『はっ』』』


 明るくなった室内に、細マッチョぽいイヴァン様と高級モヤシのルバー様とガチマッチョの王様が並んだわ。

 少しだけ濃くなった影に忠中、忠凶、忠吉が入った。


『それでは姫様。始めさせて頂きます』

「お願いね。始めますわね」


 〈〈〈『『『スキル“影法師・影縫い”』』』〉〉〉


 私にだけ聞こえる言葉が合図となり、立っている3人それぞれに状態異常が現れたわ。


「……」

「う、う、動かない! ……でも、目と口は動くし喋れる。コレなら魔術は使えるなぁ。それにしても……素晴らしい! ナナくん……ネズミ隊を僕に譲ってほしい! 情報収集には長けているし、魔術センスもいい。素晴らしい逸材だ。あ! 話が出来ないのかぁ!」

「う〜ん……なるほど、なるほど。誰かにマントを踏まれている感覚だ。動きを少しだけ阻害されている感じがする。しかしこれくらいなら、屁でもないなぁ〜」


 と三者三様、様々な反応が見て取れたわ。

 若干、イヴァン様だけ目を見開き微動だにしなかったのよね。

 ……生きてる?


「もう、よろしいですね」

 〈「解除して」〉

 〈〈〈『『『はっ。解』』』〉〉〉


 解放された3人も、またバラバラな発言だったわ。

 尻餅をついて倒れてしまったのがイヴァン様。

 肩で息をしながらゼェゼェ言っていますわ。

 興奮してなるほど、なるほど、と言い技を受けた感覚を体に刻み込む様に反芻しているのがルバー様。

 目はランランですわね。

 ご自身の手を握ったり開いたりを繰り返し、ニヤニヤが止まらないのが王様。

 こちらは目がキラキラしていますわ。


「今のはなんだ! 目も耳も口すら動かす事が出来なかったぞ! 呼吸すらもだ! 私を殺す気か!」

「素晴らしい! ナナくん! ネズミ隊に聞いてくれ。イヴァンで何割効いている? 僕は? 王様は?」

「なるほど、なるほど、面白い! 確かに単体では使い難い技ではあるが、パーティー戦を想定すると何とも頼もしい技なんだ! 素晴らしいぞ! ルバー!」


 ホッとしているのは、お父様ね。

 逃げる為の技ではなくて、動きを阻害する技だったからグフさんもホッと胸をなでおろす事でしょう。

 そして、心なしかマギノ様も楽しそうなのよね。

 あら? このお方も脳筋? 私は農筋かと思っていたのに。

 ちなみにベルネ様は……うそ! 寝てるの?


「ベルネ様……?」

「はぁ! 終わった?」

「まだですわ。寝ていらしたのですか?」

「違うわよ。瞑想、瞑想をしていたのよ」

「ナナくん! ネズミ隊に聞いてくれた?」

「はぁ〜。分かりましたわ。聞きますから、落ち着いて下さい。忠大、話は聞こえていたかしら?」

『はっ。イヴァン様で10割、ルバー様で5割、王様で1割でございます』

「あら〜、イヴァン様が100%でルバー様が50%で王様が10%。イヴァン様と王様。凄い開きね」

『それは……』

「それはイヴァンの精神状態が悪いからさぁ」

「ルバー様?」

「コレは、受ける側の精神状態とかける側の意思の強さで威力が変わる。魔力でも魔術でもHPでも無い! 必要なのは意思と精神力の強さだ! 素晴らしい! 早速試したい。イヴァン、マギノ! 頼む加勢してくれ」

「ねぇ。私でもバッチリ効くんじゃ無いかしら? そして、1番効きにくいのはガロスよね」


 突然、話に割って入って来たのはベルネ様。

 すると忠大が訂正をしたわ。


『確かに、今の状態のベルネ様なら8割程度かかります。ですが、ガロス様は姫様がお側に居られるために……7割程度かかります』

「フッ、フッ、フッハハハ! なに! それ!」


 みんなが注目してしまったわ。

 椅子に座って冷めた紅茶を飲んでいたイヴァン様でさえ、動きを止めて忠大を見ているんですもの。

 それにしても大ウケね。


「ベルネ様、フッ、半分は当たっていますわ。ウフフ、確かに普通の状態ならお父様も効きにくい分類に入ると思います。ウフフ。で・す・が! 今は私が側にいるので7割程度かかりるそうです。アハハハ! 私の事が気がかりで精神状態がフラフラという事なの? アハハハ! 可笑しい!」


 忠大が小さい体で大きく頷いたわ。

 私の話を聞いた皆様も大笑い。

 仏頂面だったイヴァン様でさて、肩を震わせ笑い出す始末。

 マギノ様も王様もルバー様も大爆笑。

 もちろんベルネ様は、目に涙を溜めながら引き笑いしているわ。

 当のお父様は、またもや悶絶大会を繰り広げていましたわね。


「フッ、フッ、フフフ。あぁ〜可笑しいわ。ガロス、貴方ってソノアだけじゃなかったのね。ナナちゃんにも甘々じゃないの! いきなり娘が居るって言われて驚いたけれど、貴方らしいじゃない。守りたい人が側にいると気になって仕方がないのよね。変わって無い。結婚しても子供が産まれても当主になっても、ガロスはガロスね。色々、ごめんなさい。ソノアにも謝らないといけないわね」

「……ソノアは気にしないさぁ」

「ルバー。私で“影縫い”を考査してちょうだい。あら? なに不思議な顔をしているのよ。確かにこの手の考査には参加しないけれどね。でも、スキル“影法師”を保有している人は皆無では無いもの。もし、“影縫い”を受けても慌てないように、1度ぐらいはかかっていた方が良いと思ったのよ。それに、今なら100%かかるのでしょう。そんな状態が悪い事そうそう無いもの。今のうちよ。ガロス! あんたもよ。ナナちゃんでフラフラのうちに受けときなさい」

「……はぁ〜」


 拒否権は無かったみたい。

 お父様も諦めて、席を立ったわ。

 天井には、ハチが出したホワイトランプが煌々と辺りを照らしていた。

 やっとの事で笑いを納めたルバー様がベルネ様の影に入った。


「はぁ〜。お腹が痛い。ふぅ〜。よし! じゃ、始めよう。ベルネ、本当にいいんだね」

「もちろんよ」

「分かった。それでは、始めるよ。影に入らせてもらう」


 頷いたベルナ様。

 その影にスルスルと入ったルバー様。

 スラリとしたボディーに繋ぎ目のないワンピースのベルネ様。

 あさぎ色のドレス姿は、有名な雪の女王そのままよね。

 映画のシーンも歌も、再現出来るほど観たわ。

 泰然自若の姿勢で立っていた彼女が、金縛りにあったような固まり方をしたの。

 でも目だけがキョロキョロ。

 ちょっぴり、怖かった。

 その目が物語っていたわ……動かない……恐い……助けて! ! とね。

 3分ほどだったけれど、恐怖が時間を超過していたみたい。

 みるみる赤くなった顔。

 ある意味、怒らせてはいけない人ナンバー1!


「ルバー! 長いわ! 死ぬかと思ったじゃないの! はぁ~はぁ~」

『姫様! スキル“影法師・影縫い”が登録されました! 何時もながらに、スキルとは面白い現象で御座いますね』


 ベルネ様の激怒と忠大の歓喜が重なったわ。

 でも大きさ的に怒りパワーが勝ったみたい。

 忠大の声がかき消されたもの。

 でも私は聞いていたわよの意味を込めて、微笑みながら頭を撫でたわ。

 嬉しそうにしてから、騎士の礼をして私のカップの影に入った。

 問題は雪の女王よね。


「何なのよ! はぁ~。イヴァンは視覚すら奪われたのよね。あれ? 私も100%ではなかったの?」


 この質問には影から出てきたルバー様が答えてくれたわ。

 得意満面の顔でね。


「それは、判決も出だし落ち着きを取り戻しつつある、と言うことだろう。立ち直りが早いのは流石だね」

「あら、そうなの。ありがとう。これが“影縫い”なのね。恐ろしかった。動かないだけではなくて、心臓を鷲掴みにされている様だったわ。本当に怖かった。イヴァン! 少しは心も鍛練しなさいよ」

「……」


 名指しされたイヴァン様。

 下を向き沈黙を守っていますわ。

 うふふ、余程“影縫い”がこたえたようね。

 うちの子達は凄いのよ。

 さて、残るはお父様……よね。


「入るぞ」

「あぁ」


 短い会話で影の中に入ったわ。

 ガチマッチョ気味のお父様。

 目を閉じて、体内で起こっていることを吟味しているようだわ。

 フムフムなどと言っていますもの。

 イヴァン様やベルネ様の様に固まることは無かったわね。

 どちらかと言えば、王様に近いかしら?

 でも、動かなかったところを見るとルバー様、寄りかしら?

 こちらも3分ぐらいして、影から出てきたルバー様。

 開口一番、キレていたわね。


「つまんねぇ! せめて僕ぐらいのかかり具合かと思ったのに! ! まぁ〜、王よりはマシだったけれど……もう少し慌てて欲しかった。ガックリ」


 オーバーリアクション気味にうなだれたルバー様。

 忠大の見立てによると、お父様は4割程度しかかからなかったみたい。

 足が動かなくなり、手に違和感があるぐらいだって。

 あれ?

 でも7割程度はかかるのでは無かったの?

 などと思っていると悔しそうに説明してくれたわ。

 ルバー様がね。


「まさか、お前まで立ち直りが早いとは思わなかったよ」

「アハハハ! まかせろ! スキル“影縫い”の理屈を知れば対処のやり方は、ある。それにしても、面白いスキルだなぁ。自身の力量で変化するスキルはあっても、かける相手の状況や状態によって変わるスキルとは、聞いたことが無い」

「あぁ、そうだなぁ。スキルにもまだまだ可能性が、ある! と言う事だ」


 お父様とルバー様は頷き合い、考査の結果を確認していましたわ。

 そこに、すっかり落ち着かれたベルネ様が話に加わった。


「確かに、面白いわね。でも……1番喜んでいるのは、貴方の所の情報局よね」

「情報局? ですか」

「ナナちゃんは知らないわね。ルバー、直属の部下で構成している部隊よ。主に情報収集を目的としているわ。でもね。情報屋の地位は低いの。だって、戦いには不向きだからね」

「その通りだよ。スキル“影”は埋蔵スキルと言われていてね。それも仕方のない事なんだ。スキルアップして“影法師”まで昇華しなければ全く使えないからね。お荷物スキル止まりなんだよ。ところが! “影縫い”は違う! この技の使い方で戦況が大きく変わる可能性を秘めたスキル技なんだ! スキル“影”にそんな技が存在していた……違うなぁ。どんなスキルでも、魔術でも、秘めたポテンシャルは計り知れないと言うことかも知れない」

「その通りだ。ルバー」


 王様がルバー様とベルネ様の会話を奪って話し出したわ。

 席を立ち、みんなを見回したの。


「イヴァン、マギノ、ベルネ、ガロス、ルバー。この報告書に書かれている内容は事実と認める。さらに、魔獣とは何か! 魔族とは何か! そして、人族の立ち位置について! を理解した」


 ここで話を一旦区切ったわ。

 イヴァン様を見て続きを話し出した。


「すまないが、至急、散らばっている勇者を召集して再編し直してくれ。次に、徴兵制により集められた若者の中から志願を募り、軍人学園に入学する手続きをしてくれ」

「はっ」


 王様は、マギノ様、ベルネ様を見たわ。


「その学園で訓練にあたってもらいたい」

「「はっ」」


 最後にお父様とルバー様を見て。


「2人には魔術、スキルの考査をもう一度して貰いたい。全ての魔術の考査を、だ。大変な事だと思うがよろしく頼む」

「「はっ」」


 あら?

 お父様達で最後かと思ったら、私を見たわね。


「ナナ、最後になってすまないが。今日はありがとう。君のおかげでいろんな事が分かったよ。ハチ、ロク、ネズミ隊の事はスアノース・シド・シュードの名にかけて安全だと証明しょう」

「はい。ありがとうございます」


 私はハチの背中から頭を下げたわ。

 すらと、優しく頭をポンポンだって。

 まさに胸キュン行動ですわね。

 少しだけドキドキしましたわ。

 お父様が咳払いして話し出したの。


「オホン!さぁ、もう夜も遅くなってしまった。ナナは寮に戻りなさい。食堂に行けば、何か食べさせてもらえるだろう。誰か案内させよう」

「お父様。不要ですわ。忠大が案内してくれます」

「あははは……調べ済み……なのね〜」


 最後の乾いた笑いはルバー様ね。

 私はやっとの思いで退室が出来たの、ホッとしたわ。

 それにしても、長い会議でしたわね。

 でも……問題が山積み。

 富士山よりも、エベレストよりも、高いわね。

 まぁ〜、話す事も話したし、私の出る幕では無いわ。

 私の目下の目標は、明日の入園よ!

 勇者の中に飛び込むんですもの。

 すんなり通れる訳がないわね。

 やはり、最初に脅しときましょう。

 あら!間違えましたわ!

 最初に挨拶はしましょうね。

 うふふ……でもその前に腹ごしらえよ。

 腹が減っては戦はできぬ、ですものね。


影縫いはネズミ隊に活躍の場を! で思いついた技です。

今回の主役はネズミ隊では無くてガロスだった様に思います。

何にしても、子供に、女の子に、弱いのは男のサガですわぁ。


次回予告


『忠大! 新しい技が採用されてよかったなぁ』

『忠吉……本当に良かった。姫様にも喜んでもらえて私としてもホッとしている』

『忠大、忠吉……俺が予告をしてもいいかぁ』

『忠中。カッコよく言ってもダメだよねぇ。オレだって、喋りたい』

『次回予告。お腹が減った姫様。忠大の案内で食堂へ行ったが、果たして晩御飯にありつけるのかぁ! そして、出された食事は? 何より、ご学友に会えるのかぁ! 忠大ばかり目立ってずるいぞ! などと決して思っていないボクからでした』

『『『『忠凶!』』』』


ネズミ隊に次回予告をしてもらいました。

43話のキーポイントキャラだったので最後までして頂きました。


それではまた来週会いましょう。

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