39話 あらあら、円卓会議ですって
障がい者の皆様に不愉快になる表現が含まれています。
不快に思われる方は飛ばして読まれても大丈夫です。
みんなでお泊まりした翌日。
異世界人校舎へと馬車で通学したわ。
楽チンよね。
ところが、校舎には大型の馬車が行き来し、引越しの真っ最中。
訳も分からず、裏へと回ると私達を待ち構えたいた人がいたの。
勿論、本田一くん改スアノース・シド・エディートくんが居たわ。
通称エディね。
彼の特攻で、スカイツリーの高さまで空を飛行した。
驚いたの何の!
その先で見たモノは、異世界を再確認する光景だったわ。
丸く無い地平線。
地動説では無くて天動説を用いている世界。
太陽は? 月は? 星は? 謎だらけの世の中ね。
みんなの所に降りて、話をする内にとんでも無い事が判明したの。
それは、青ちゃんの特殊スキル。
彼女のスキルは“憑依”と言うのだけれど、間違った解釈で能力の一部しか使っていなかったみたい。
まだまだ、全貌は分からないと言う事ね。
などと談笑していると、大型の馬車が私達を迎えに来たの。
エディは誰で、どこに向かうのかを知っていたみたい。
何とも言えない顔をしていたわ。
ここで私は迎えに来た人を見て驚いた。
だって、ハンナとユント先生だったの。
そう言えば、馬車には居なかったわね。
私も抜けてるわ。
だって、青ちゃんやマノアちゃん、ホゼにエディ。
みんなとのおしゃべりは楽しかったんですもの。
ユント先生が操る馬車で向かった先は……王城。
呆気に取られているうち、エディは近衛隊長のグフさんが、青ちゃん、マノアちゃん、ホゼはユント先生とハンナが、私はお父様に連れらてバラバラになって入城したわ。
私はネズミ達に護衛を頼もうとスキル意思疎通を発動させる直前、横槍が入ったの。
「ナナ。ハチやロク、ネズミ達を動かすなよ。影から出すな」
「え! 何でですの? お父様?」
「はぁ〜。やはり、動かそうとしなぁ〜。今日だけは絶対、ナナの影から出すなよ」
「だから、何故ですの?」
「訳はすぐ分かる。少しの間、大人しくしていろ。いいなぁ……返事は?」
「……はい、お父様」
だ・か・ら! 何でなのよ!
その言葉を飲み込まざるを得なかったわ。
だって、目がね。
目が、物語っていたの。
父の言う事を聞きなさい! とね。
そして向かった先は、夢の国にで見た様な王座がある大広間だったわ。
謁見の間と言うそうよ。
「お父様……ここは……」
「シッ!」
人差し指を口に当ててからの、一言でした。
私はさりげなく忠大にスキル意思疎通を使い、何の引越しだったのか?
なぜ私達が王城に連れて来られたのか?
などなどを聞いたわ。
で! 何の引越しだったのか?
それは、異世界人クラスの引越しでした。
要は、これまでの異世界人クラスには、平民しか居なかったので人里離れた校舎を当てがわれていたのね。
ところが久しぶりの異世界人は貴族様だった。
さらに、行方不明だった王子様も異世界人だったので、慌てて勇者校舎へと引越しになったみたい。
その方が守りやすいからね。
ちなみに、勇者校舎は全寮制。
これに関しては、貴族も王族も関係無しだって。
次に、なぜ私達が王城へと連れて来られたのか?
それは……。
「静まれ! 静まれ! ……王のご出座〜!」
何とも間の抜けた呼び込みね。
私が居る場所はお父様の左腕。
そのお父様が立っているのは、玉座がある壇上の右側。
反対の左側にはノラ家の当主インテリ眼鏡のイヴァン様。
その奥には、モア家の当主モリモリ農筋が眩しいマギノ様。
そして、お父様の隣にいるのが、セラ家の当主シンシンと降り積もった白銀の女王ベルネ様。
4つの貴族が揃い踏みなの。
そして、目の前にはレッドカーペットが、2階建ての家がスッポリ通りそうな程の大きさがある厳つい扉へと延びていたわ。
その両サイドに、勇者や豪商、商人や地位の高そうな人達が別れて頭を下げていたの。
恐らく魔力と財力と権力の順番かしらね。
最後には平民ってところかしら。
そんな事を思っていると、お父様達も膝を折り頭を下げたわ。
もちろん私も、下げたわよ。
下から覗く様に見ていたけれどね。
だって初めて見たんですもの。
王様をね。
威厳があり、怖そうで大きな人だったわ。
背丈はお父様と大して変わらないぐらい。
でも、横幅や筋肉のつき方はビルダークラスね。
ただ、髪の色や目の色なんかはエディにとてもよく似ていたわ。
違うわね……、エディが王様に似ているのね。
玉座まで歩き、着席したわ。
見計らっていた近衛隊長のグフさんが声を発したわ。
全ての人に聞こえる程のボリュームでね。
「表を上げよ!」
私の視界にはエディの頭が見えていた。
そうなの、目の前には居るんですもの。
王座の右側、隠れる様に立っていたわ。
声を掛けれそうなほど近くに居たから、話そうとした時グフさんが声を張り上げたの。
話したかったのに!
「この度、ロタ家のご息女様が学園に入学される事と相成った」
そこまで言うと、お父様が一歩前に出たわ。
私をみんなに見える様にしたのね。
だったら……ねぇ……うふふ。
「私、ルジーゼ・ロタ・ガロスとルジーゼ・ロタ・ソノアの娘ナナです。異世界人クラスに編入する事とに成ります。こんな姿をしておりますが、何不自由なく暮らせています。心配も、憐れみも不要です。悪しからず」
そこまで一気に言い放ち、スカートな真ん中あたりを摘み頭を下げたわ。
少しでも優雅に見えたかしら?
この時の私は、知らなかったのよね。
王族や貴族は声を発してはいけない、決まりになっていたみたいなの。
チラリとお父様を見ると、右手で顔を覆い天を仰いでいたわ。
そして、辺りがザワザワし出したの。
グフさんが静かにさせる前に、させた人がいたのよ。
「あははは! いいでは無いかぁ。ワシも皆に話したい事がある」
王座から立ち上がり、エディの背中を押して少しだけ前に出したわ。
「この子は、ワシとエクサの間に産まれた子供だ。名をスアノース・シド・エディート。この国の皇太子となる子だ。ガロスの娘と同じクラスになるなぁ。良しなに頼むぞ」
お父様を見た王様は、私を見て微笑んだ。
優しそうな笑顔とエディの背中に添わせた手から、誠実で温かい人物像が想像できたわ。
うふふ……みんなで殴り込みに行かなくてよさそうね。
頭を軽く下げたお父様。
私も一緒に下げたわ。
「はっ」
誰も言葉を発し無い隙に、グフさんが話し出した。
「この度、勇者や異世界人に限らず、第1子が世継ぎとする。違反した者、差別した者は皆等しく罰せられる事とする。反論は受けぬ!既に決定事項である!王が罷り(まかり)出る(いづる)。皆の者頭を下げよ」
全ての人達が立ち上がり、直角に上半身を曲げたわ。
最敬礼ね。
私達も頭を下げるのかと思ったら、下げなかったの。
不思議に思っていても、誰も答えてくれなかったわ。
王様とエディが左側の扉から出て行った。
それを見届けると、お父様達、貴族が同じ扉から謁見の間を後にしたわ。
廊下を歩き、階段を上がったの。
その先で4貴族とも別々の部屋に入ったわ。
階段を上がって直ぐに、ベルネ様が入り、次にマギノ様、イヴァン様、お父様の順番で入室した。
「ねぇ。お父様。私達も頭を下げなくて、よろしかったのですか?」
「ウム……ナナ、この国の起こりは知っているかい?」
「勿論ですわ。冒険者が起こした国です」
「当たりだ。その時のリーダーがシドで、1番強かったのがロタで、頭が良かったのがノラで、食べる事や作る事が上手かったのがモアで、才色兼備だったのがセラ。そんな彼等が各地を統治した。元々が仲間だった所為で、上下関係は希薄なのだよ。それでは示しがつか無いから、王と家臣の貴族と言う対面は保っている。そんな感じで理解出来たかぁ?」
「はい。お父様。仲間なのは今も昔も変わらない、と言う事ですね」
「あははは! そうだ。その通りだ。今も昔も変わらない……仲間……。さぁ、ナナ。これを早く食べなさい。これから円卓会議が開かれる」
私の目の間にクラブハウスサンドが置かれたわ。
もちろんミルク付き。
あら! 美味しそう。
でも、食べる前に確認しないといけないわ。
「お父様。円卓会議とは?」
「円卓会議とは……その言葉通りの意味だよ。円卓で開かれる会議の事だ。毎年、年末に開かれるのが通例なのだが……今回は緊急の案件があり、開かれる事となった」
「え! 何かあったのですか?」
「自覚無しかぁ〜」
あちゃ〜、ダメだこりゃ〜。
そんな言葉が聞こえた気がしたわ。
だって右手を顔に当てて、天を仰いでいたんですもの。
言葉にすると、あちゃ〜、よね。
「今回の議題は魔獣について、だ。ナナ……言いたい事は分かるかぁ。余計な事はするなよ。いいなぁ。ハチやロクは勿論の事ネズミ1匹、出すなよ!」
「……善処いたしますわ」
「善処かぁ〜」
お父様ったら。
さっきと同じポーズをしたわ。
失礼よね。
でも挑発されたり、理不尽な扱いを受けると……うふふ……よね。
私とお父様が入ると、既に他の貴族が揃い踏み。
目敏く私を見つけたイヴァン様から侮蔑的な発言を頂戴したわ。
早速、攻撃を仕掛けてくるだなんて信じられないわ。
急いてはことを仕損じる、と言うことわざを知らないのかしらね。
「ガロス! この席に子供はいらんだろう。しかも、そんななりをした子など、よく表に出せたなぁ。私なら無理だ。さらに、異世界人と聞く。もっと、無理だ。お前も、そう感じたからこそ5年間も隠していたのだろう。だったら死ぬまで隠し通せ! それが出来ないのなら、生まれた時に処分しろ。その子にとって辛い未来しか無いのに、可哀想だろうが!」
「はぁ? ……何を……」
カチャ
「遅くなってすまない」
あまりの内容に反撃を仕損なったわ。
だって、王様が入って来ちゃったんですもの。
直ぐ様、席を立ち迎えたわ。
勿論、4貴族ともね。
覚えてらっしゃい!
そのインテリ眼鏡を粉砕してあげるから!
「お、オホン、お父様。王様とお話がしたいのですが、よろしいですか?」
「手短になぁ」
「はい、ありがとうございます」
お父様は、王様の隣へと移動してくれた。
既に、座っていたのに立ち上がってくれた王様。
本当に優しい人なのね。
「王様。先程は失礼致しました。まさか、王族・貴族が民衆の前で声を発してはいけないだなんて、知らなかったものですから、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「気にする必要はない。そんな事より、ナナ嬢」
「ナナで結構ですわ」
微笑んだ王様は、私の手を両手で握りしめた。
優しい顔の目を潤ませながら話し出したの。
「ナナ……。君には本当に感謝している。生きていると信じてはいても、不安で、不安で、堪えられるものではなかった。エディートを見つけてくれて……ありがとう」
一筋の光が頬を流れて行ったわ。
この人はエディの事を愛している。
私は確信したわ。
だって、いい大人が涙を零しながら、生きていた事を喜んでいるんですもの。
これで、幸せになれるわね!
さて、反撃開始よ!
私の気配を察知したお父様。
首を横に振り、牽制をしたわ。
でもね……遅いのよ!
私ばかりか!
私ばかりか!
私はキリッとインテリ眼鏡を睨んだわ。
当の本人は、子供の睨みなど歯牙にもかけなかったけれどね。
「イヴァ……」
「会議を始めよう」
「お父様!」
「ナナ、ダメだ。黙りなさい」
思わず、黙りません! と言いそうになったけれど、言葉を飲み込むしか無かったわ。
お父様の目が、追い出すぞ、と語っていたもの。
悔しい!
でも……黙りません。
この会議が終わる頃を見計らって……うふふ……ですわ。
などと企んでいたのに、この人馬鹿なの?
「会議を始めよう。今回の……」
「ちょっと待って、ガロス。そんななりの子を1人にするのは心配だからと言っても、ここは大人の会議の場所だ。子供は誰かに預けておけ。それが出来ないのなら、連れ出すな。山奥にでも隔離しろ」
「オホホホ……。先ほどから聞いておりますと、そんななりの子、とは誰の事を言っているのですか? ひょっとしたら、私の事ですか? ……私にはナナと言う名前が御座います。
もう1つ言わせていただきます。私が5年間も表に出なかったのは、障がい者だからでも異世界人だからでも御座いません。原因不明の呪いがあった為に、私の事を慮っての行動ですわ。呪いの事を知らなければ、後から誰かに聞いて下さいませ。
さらにもう1つ。私にとっての“辛い未来”とは何でしょうね。貴方に決められたくなどありません! 確かに、私は1人で生きて行くことは不可能でしょう。ですが、手を貸してくれる仲間や愛してくれる両親がいますわ。私の所為で皆んなが不幸になる様な言い方をされたくありません!
それに、神にでもなったおつもりですか? 人の命を何とお考えですか! あ! そうでしたね。勇者至上主義でしたっけ。勇者が1番で後は配下の者。さしずめ、異世界人は人に非ず……ですか? 所詮、勇者も魔族と大差ないですわね。違う所は、配下者を取り込み魔力にするかし無いか、ですわ。詳しい事はその報告書に記載してあったと思います。そもそも……」
私が追い打ちをかけようと口を開きかけた。
そのとき、お父様から横槍が入ったわ。
「ナナ、そこくらいにして置きなさい」
「いいえ! 黙りません! 私だけならいざ知らず、お父様やお母様の事まで侮蔑の言葉で言われたのですよ! これを黙って見過ごすことなど出来ません!」
とうとう我慢できずに、お父様にまで噛み付いてしまった。
それほど、私は怒っていたわ。
イヴァン様はさも当たり前の様に障がい者は生まれた時に処理と言う名の人殺しをするか、それが出来なければ一生隔離して、世間様に出すな! それすらも出来無いのか! だから勇者では無い者が貴族になるべきでは無いのだ! 無能が……とね。
私の耳にはそんな風に聞こえて来たわ。
これを侮辱では無いというのなら、何が侮辱なの?
私の事だって“そんななり”と何度も言ったのよ。
そんななりって、どんななりよ!
私の怒りは治るどころか、ヒートアップしていったわ。
そんなとき、アイスまんじゅうの様な声が聞こえてきたの。
要は、外は柔らかく口当たりの良い求肥で中は冷たいアイス。
外見は優しそうな微笑みをたたえた姿をしているのに、目の奥や言葉の端々に冷たいモノを感じる。
そんなお方からの、発言に驚いてしまったわ。
「ナナさんの言っている事は、最もな事だわ。イヴァンは言い過ぎよ。言い方を間違えているわ。言葉を選びなさい。貴方の悪い癖ね。頭は良いのに時折、感情でお喋りしてしまう所があるのよ。注意しなさい。……でもね、話している内容は間違ってはい無いと思うわ。ナナさん。貴女と似た様な方は、生きるのに苦労するの。その為に自殺する人も多いのよ。勿論、異世界人にも多数いるわ。コレが現実なのよ。お嬢様」
「そうですわね。ベルネ様。確かに苦労いたしますわ。手もあり、足もあり、目も見えて、耳も聞こえて、普通にお喋りが出来る、健常者から見たら危なかしくて手を貸したくなるでしょう。でも、余計なお世話ですわ。勿論、生きて行く為には介助が必要です。だからと言って憐れみも、慰めもいりません。必要以上に構うから、生きていけなくなるのですよ。
私を育ててくれたのは、火の勇者ハンナです。1人ででも生きていける様に躾けてもらいましたわ。これこそが大切なのです。私の様な障がい者でも生きていける様にする事こそが重要なんです。ベルネ様の口振りだと、障がい者だから、異世界人だから、自殺するんだと言っている様ですわ。そうではありません! 障がい者でも、異世界人でも、皆が生きていける環境つくる。それこそが統治者の役目ではありませんか?」
「ナナ……、もうそのくらいにしておきなさい。会議が始まらないだろう」
この発言で怒りの矛先は、私を抱えている人へと向かったわ。
「お父様もお父様です! 初めてこの部屋に入って来た時から感じていましたわ。
魔力が無いからか、王様の近衛隊長をしていた為かはわかりませんが、卑屈になりすぎです。私はちゃんと知っていますよ。お父様は、私の様な障がい者でも生きていけるように環境を整えていますわ。そればかりか、就職斡旋までして安定した生活が出来るようにまでしています。勿論、異世界人に対しても同じです。これこそが統治者のあるべき姿ですわ。ここにいる皆様は統治者に非ず! 勇者です! どこまで行っても魔力で押さえつけるしか出来ない、勇者ですわ!」
私は言い切った。
気持ちがスッーとしたわね。
そのとき大地が揺れたのかと思う位の、笑い声が響いたの。
「あははは! あははは! オットト、すまん、少し揺れた。ガロスの娘は凄いなぁ。イヴァンとベルネを黙らせたぞ。ナナ嬢……」
「ナナで結構ですわ。マギノ様」
「では、ナナよ。そなたの言う通りだ。しかし、力も大切だ。守る為にも、敵を撃破する為にも、力は必要だ。ふふふ、君は勘違いをしている。ガロスは卑屈になっているわけでは無い。アレは最早、クセだなぁ。ちなみに、この中で1番強いのはガロスだ」
「え? でも、お父様には魔力がありませんわ」
「確かに無いなぁ。それでも、君のお父さんは強いんだよ。強くなければ近衛隊長など、務めることは出来んだろう。歴代の隊長は勇者が担っていたが……その中でもガロスがピカイチに強い。そればかりか、慕われ集う者が多くいた。この事からも分かるように、力強く上に立つのに相応しい男だとみんな知っている。ただ隊長が長かったせいで、前に出ないだけなんだよ」
「そうだったんですね。私の早合点でした。すいませんでした。お父様」
お父様は赤い顔をしていたわ。
私と目が合い、気にするなと頭を撫でてくれた。
やっぱり、お父様は私の理想の人だわ。
でも、いい男過ぎるわね。
「お父様とて弱点はありますわ」
「あら、そうなの?」
「はい、ベルネ様。それは……お母様です。これを見てください」
私がマジックバック改から出したのは、短く切られた秘宝“聖女の祈り”。
これに素早く反応してのは、王様だったわ。
静観していたのに、驚愕の声をあげたの。
「な! それは……」
手に取りマジマジと見つめたわ。
そして、確信して話し出したの。
「ルバー! 本物か?」
名前を呼ばれた当の本人は、知っていた為か見る事なく答えたわ。
「王、本物で御座います。以前、調べたときに鑑定いたしましたが違いありません」
「……そうかぁ」
あらら、意気消沈。
沈んでしまったわ。
当たり前といえば、当たり前の反応よね。
だって、初代勇者の遺産ですもの。
「王様。ごめんなさい。大切な秘宝だったはずなのに……お母様が私への贖罪の為に、切れるはずのない秘宝をチョッキンと切断してしまったみたいです。お父様ったら、それを咎める事なく許してしまわれて。ご自身で、なんか凄いモノを家宝にすると約束していましたわ。
お父様は、お母様のする事に反対なさる事はありません。何にも言わずに許しちゃうんですもの。愛以外ありえませんわ。で・す・か・ら! お父様の弱点はお母様です。お母様をこちら側に引き込めば、もれなくお父様も付いて来ますわ」
暗雲が立ち込め始めた室内に、嵐の様な大爆笑の渦が巻き起こったわ。
「ナナちゃん! 最高! オホホホホ」
「ふっ、ふふふ……。ふっ、ふっ、ふふふ……」
「あははは! あははは! あっ! あははは!」
「はぁ〜。ふっ、ふっ、ふふふ……あははは!」
いつの間にか私の事をちゃん付けで呼んでいるのが、ベルネ様。
含み笑いが漏れているのがイヴァン様。
豪快に笑っているのがマギノ様。
ため息混じりでも最後には大笑いしているのが王様。
結局、皆笑っていたわ。
ただ1人だけ、熟れすぎたトマトの様な、顔をしているのがお父様。
耳まで真っ赤っか!
勿論、私もにこやかに笑ったわ。
そう言えば……円卓会議はどうなったのかしら?
ナナとエディの御披露目です。
後は円卓会議と言う名の前説です。
イヴァン様の思考はやり過ぎですが、障がい者を見るとついつい構いたくなるのは私だけでしょうか?
でも、意外に余計な事なんですよね。
思っている以上に何でもできるのが今の障がい者です。
この日本が、この世界が、全ての人に優しい世の中であってほしいものです。
次回予告
「来週は、いよいよ、円卓会議の、始まりらしいです」
「青ちゃん! 硬い! もう少しフレンドリーな言い方でいいよ」
「だったら、マノアちゃんがしてよ」
「OK! 来週はナナの猫ちゃんとワンちゃんが大活躍。えっと……」
「2人とも、無理なら止めた方がいいよ」
「「ホゼがしてよ!」」
「ユニゾンしないでよ。分かったから。えっと……来週のケモノノコエは……。いよいよ円卓会議が開かれる。魔獣はどんな存在なのか!強さとは! 4貴族の話し合いはナナを中心に、激論が交わされる。着地地点はあるのか! 乞うご期待」
「「オ〜、スゴイ〜」」
それではまた来週会いましょう。




