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38話 あらあら、丸くない地平線ですって

 私が通う事になる異世界人クラスには、誘拐されていたスアノースの王子様が居たの。

 だいぶん卑屈だったけれど、お父様とルバー様に連れられてお城へと行ってしまったわ。

 残されたのは私、青ちゃん、マノアちゃん、ホゼ、ユント先生、ハンナ。

 私達は、お父様の発案でロタ家のお屋敷にお泊まりする事になったの。

 楽しかった。

 ホゼとマノアちゃんのスキルが特殊すぎて、国で保護する話になったわ。

 まぁ〜、国と言うより冒険者ギルドよね。


 そして夜にはお楽しみのガールズトークが待っていたの。


「ナナちゃんって美人だよねぇ〜」

「マノアちゃんもだよ」

「2人とも綺麗です。私なんて……そのまんまだし……」

「青ちゃんこそ、エキゾチックで懐かしい日本人の顔だわ。いゃ〜、日本人にしては美しいわね」

「やめてよ!ナナちゃん!恥ずかしいわ。でも、日本かぁ。私がこの世界に来た後、日本はどうなったの?」


 キャピキャピ話を期待したけれど、彼女達にとっては恋の話より、自分のいなくなった後の世界を知りたがったようだわ。

 もちろん、教えたわよ。

 私の知り得る全てをね。

 さぁ〜、次こそは!

 話を振る前に、お互いの特殊スキルの話題になったの。

 恋バナはまたの機会ね、と諦めて私も話に参加したわ。


「そう言えば、ユント先生の特殊スキルはどんなスキルなんですか?」

「説明が不十分だったわね。ごめんなさい、ナナさん。その刻印は、私が解除しない限り有効です。どの様な傷でも刻印を通して、私に移ります。その時に傷を負った場所や細やかな感情も伝わります。オマケみたいなモノですね。後、面白いのが、心の傷も私に移る事です」

「え! 心の傷が移るの?……ですか」

「うふふ、マノアさん。そうですね。言い方としては正しくありません。正確には移るのではなくて、察知するがいいかもしれませんね。辛く悲しい時、はたまた、誰かに何かを言われ寂しい気持ちになった時、そんな時は誰かに話を聞いてもらうと心が落ち着きますよね。そして、少しだけ軽くなったりもします。そんな感じです。心の傷を負った時は、私が話を聞きますよ。安心して下さい。誰にも言いませんから」

「はい、先生」

「だったら、病気はどうなるのですか?」

「青森さん。とても良い質問です。病気は傷ではありません。ですから、私には移りません。気をつけて下さい。具合が悪くなったり、病気の前兆が現れたりした時は必ず教えて下さいね」

「はい、先生」


 次は私の番ね。


「先生。その刻印から受けた傷は先生に移るのですよね」

「ナナさん、その通りです」

「大丈夫なのですか? 軽い傷ならいざ知らず。致死に至る様な傷の場合、先生が……」

「大丈夫です。刻印を通して移った傷は10分の1程度に落ちて、私に来ます。大した傷ではありません」

「ですが! 塵も積もれば山となります!」

「それでもです。刻印から来た傷で、私は死に至ることはありません。たとえ致死に至る傷でも、軽い傷が沢山でも、私は死ぬ事はありません。ですから、皆さんは学生生活を楽しんで下さい。明日も早いですから、寝て下さいよ」

「「「はい、先生。おやすみなさい」」」


 私達は3つ並んだベッドで寝たわ。

 普段は、お客様の護衛の方が寝泊まりする部屋なの。

 そこにベッドを無理やり、入れた訳ね。

 なんだか、歌い出したくなるわ。

 トゥ〜モロ〜、トゥ、モォ〜ロォ〜、とね。

 孤児の少女が幸せを掴む、あの作品よ。

 孤児院で歌うシーンの、ベッドルームを彷彿とされる部屋で寝起きをしたからかしらね。

 みんな同じ事を思ったみたいで、鼻歌がハミングしたのには笑ったわ。


「あらあら、楽しそうですね」

「ハンナ、おはよう。だってねぇ〜、うふふ」

「「おはようございます。うふふ」」


 青ちゃんもマノアちゃんも、クスクス笑いが止まらないんだもの。

 私も参加したわよ、うふふ。

 食堂でホゼと落ち合い朝食を済ませた後、みんなで馬車に乗り異世界人校舎へと出発したわ。

 もちろん、中でも大騒ぎ。

 ユント先生の特殊スキルの話をしたり、ベッドルームで鼻歌の合唱をした事だったり、キリが無い程のお喋りが時間の経過を速めたみたい。

 あ! っという間に到着してしまったわ。

 話し足りないわね。


 窓の外を見ると、6台程の大型馬車が行き来していたの。

 その扉には3首の龍が描かれていた。

 王家のエンブレムね。

 正門から入るのを諦め、裏から入る事にしたの。

 その入り口で待っていたのは……。


「ナナ!」


 唐突に名前を呼ばれ、顔を上げて呼んだ方向を見たわ。

 その時の私は、馬車からハチの背中へと乗った直後だったの。


「ナナ! 君が言った通りだった。俺が馬鹿だったよ。前の世界の哀しみに囚われて、今を見ていなかった。もっと早く、もっと早く、もっと……早く、その事に気が付いて本当の事を言っていたら、母さんにも会えたんだ! でも、俺は幸せだよ。父さんが……抱きしめてくれた。力が強くって驚いたぜ。ナナのおかげだ。俺が出来るお礼は1つしか無い。最高の景色を見せてやる! そぉ〜れ!」


 私は鳥になった。


 私を抱えているのは、本田一ほんだはじめくん。


 光の速さで上がった高さは、東京タワーの展望台から見た景色だった。

 人など見えず、高層ビルと端に見える海の欠片。

 もちろん、今見ているモノはそんな景色では無いわ。

 それでもね。

 モンサンミッシェル風の城と、それに連なる建物がひしめき合っている姿が東京の景色とダブって見えたの。

 子供達を連れて出かけたものよ。

 最後は孫まで連れて行ったわ。


「東京タワーの高さだ」

「行った事あるの?」

「俺の爺ちゃんが連れて行ってくれた。5歳までは生きていたんだ」

「そうなの」

「爺ちゃんが最後に連れて行ってくれた所まで、行くよ!」

「え?」


 どこに行くの?

 その言葉を飲み込んでしまったわ。

 だって突然、上昇したのよ。

 でも、そこから見える景色に私は異世界を感じてしまった。


「凄いだろう。スカイツリーの高さだ」


 言葉も無いとはこの事ね。

 もちろん、高さに対する恐怖で話さなかった訳では無いのよ。

 けして……ね。

 そんな事を思っていると、唐突に話し出した。


「ナナ。前を見るんだ」


 その言葉で真正面を見たわ。

 東京タワーの高さで端に見えていた海が、スカイツリーの高さでは見える景色の半分が海。

 そして、異変に気が付いた。


「丸く……無い?」

「ココが何処だか知りたくて、この高さまで飛んだら地平線が丸く無い事に気が付いた。

 俺が繰り返し読んでいたお気に入りの漫画あるんだ。それは伝記モノので、ガリレオガリレイのヤツ。俺、好きでさぁ〜。天動説と地動説の話は有名だよなぁ。地球は丸い。太陽の周りを回っている恒星なんだって言うアレ。丸いから地平線も湾曲している。もう少し上がるともっとハッキリ分かるぜ。この世界は丸く無い。じゃ〜、太陽は? 月は? 星は? ……この世界は異世界だと認識した。

 ナナ……俺はどう生きればいい?」

「簡単じゃないの。今を生きればいいのよ。それにしても凄いわ。ここでは、地動説では無くて天動説が正しいのね。うふふ、ビックリだわ」

「あははは! そうだ! その通りだ! 俺は今を生きればいいんだ! 確かに簡単だぜ」

『ナナ!』


 下から凄い形相の獣が、階段を上がる様に登って来たわ。

 アレはルバー様が見せてくれた、風魔術の1つスプリングボードだったわね。

 透明な円盤を風の力で浮かせて、ステップにして上へ上へと向かってきているわ。


『ナナに何をするんだ!』

「ハチ! 止めなさい! 私は大丈夫だから、落ち着いて!」


 口にアンデスメロン程の無闘玉を咥えていたハチは、それを飲み込んだ。

 そしてスプリングボードを私とはじめくんの近くに形成して、噛み付かんばかりに睨みを付け始めた。

 怖いから止めて!


「も〜、ダメ! 私は大丈夫! ……ねぇ、一くん。私をハチに乗せてくれない。そうすれば落ち着くから。この子は私の家族であり仲間なの。名前はハチと言うのよ。他にも黒猫のロクに、ネズミの忠大、忠吉、忠中、忠末、忠凶が居るわ。みんな私の大切な家族なの」

「分かった。ガロス様から話は聞いていたけれど……魔獣かぁ。可愛いなぁ〜。俺さぁ〜、犬を飼ってみたかったんだ。滅茶苦茶、癒されるだろう。このモフモフがたまんないよなぁ〜。触っていい?」

「もちろんよ! ハチ……私は大丈夫だからね。背中に乗るから、暴れないでよ」

『でも………………分かったワン』

「ふぅ〜。大丈夫よ。まずは私を背中に乗せてくれる」

「了解。そうだ! 面白い事しながら降りようぜ」


 そう話したはじめくん。

 ライオン程の大きさがあったハチに私が乗った事を確認すると、何時もの大型犬サイズになったわ。

 すると、一くんが私を前の方に乗せ、その後ろに自分も乗ったの。

 驚く私に、いたずらっ子顔をした彼が笑いながら話し出した。


「エヘヘ。ハチ! 何もしなくていいぜ。ただナナを落とさない様に、気を付けてくれればいい。そんじゃ〜、いくぜ!」


 勢いのいい掛け声1つで、とんでも無いジェットコースターに乗ってしまったわ。

 ジェットコースターと言うより、アクロバット飛行機に乗っている感じね。

 緩やかに旋回しつつ、宙返りやら逆向き飛行などなど。

 仮免の車に同乗している気分だったわ。

 ある意味、怖かった。

 でも、当の本人達は楽しそうだったのよね。


「楽しかったぜ! なぁ〜、ハチ!」

『うん! 楽しかったワン!』


 ワンとしか聞こえないのはずなのに、意気投合している一くんとハチ。

 何だか疲れたわ。

 そんな事を思っていると、みんなが私達の周りに集まって来たの。


「一!」

「ホゼ! マノアに青! みんな心配かけて、すまん。俺、本田一じゃなくてスアノース・シド・エディートって言うんだ。エディと呼んでくれ」

「でも……王子様に呼び捨てはマズいんじゃん」

「マノアちゃん! タメ語はすでにアウトでしょう」

「あははは! 全然かまわないよ。今のままでOK。それよりも……これまで……その……あの……素っ気無い態度をしてごめん!」

「別にかまわないさぁ〜。一じゃなくて、エディ。ちゃんと分かってる。今までも、これからも、ダチだろう! 僕達!」

「ホゼ……サンキュ」


 何故か2人とも肩を組んでの泣き笑い。

 やっと本心が理解できた喜びと、それが王子だった驚きと、無事再会できた嬉しさでそんな顔になったのね。

 男っていいわ。

 喧嘩をした時でも笑いあって仲直りするんですもの。

 まぁ〜、誰とでも、と言うわけにはいかないでしょうね。

 うふふ。

 微笑ましく私が和んでいると、青ちゃんが思い出した様に話し出したわ。


「そうだ! 一くん、じゃなかった、エディ。表の馬車は何? やはり、王子様だから引っ越すの?」


 内容を聞いたエディは、バツが悪そうに頭を掻きながら下を向いてしまったの。


「確かに、王族や貴族がいるから……と言う理由だけじゃないんだなぁ。1番の問題は、マノアとホゼの特殊スキルだ」

「あたしの?」

「僕の?」

「そう! マノアが出したカメラが衝撃的だったらしいぜ。黒猫と一緒に写っているナナの写真をマジマジと見つめながら、騒いでいたもん」

「マジ!」

「そして、ホゼもマノアのスキルを使えばこの世界の薬はおろか、前の世界の薬も作れるらしいじゃん」

「確かに作れるけど……マノアの記憶と僕の記憶を擦り合わせないと作るのは難しいよ」

「そこは、関係無いらしいぜ。作れる事が問題だってさぁ。それに、前々から議題に上がっていたのが、青らしい」

「え? 私?」

「はぁ〜。自覚無しかよ」


 今度はお手上げ状態で溜息をついたわ。

 その気持ちは私にも分かる。

 青ちゃんは、どこか抜けている所があるのよね。


「分かるわ。青ちゃんは自分の魔術が大した事ない、と思っているもの」

「ナナちゃん! だって本当の事じゃない。変身するだけよ。10分に魔力1づつ減っていくけれど、それだけよ」

「だから! そ……」


 私はエディの言葉を奪って話し出したわ。


「だから、その変身するだけが! 凄いんじゃない。さらに、ねぇ、青ちゃん。ペガサスになれる?」


 突然の質問にみんなが固まってしまったの。

 その顔、好きだわ。

 人が驚いている姿って快感なのよね。

 やったわ!

 てぇ〜な感じかしら。

 うふふ。


「ペガサスよ。ペ・ガ・サ・ス! 馬に羽根が生えている生物ね」

「もちろん、知っているわよ」


 ブツブツ言いながらも、私達から数歩下がったの。


「ヘ〜んしん!ペガサス!」


 今度は私が目を見開く番だったわ。

 だって、ヘ〜んしん! と言ったのよ。

 変身って、私が驚いているとマノアちゃんが笑いながら話してくれたわ。


「ナナちゃん。驚いたでしょう。青ちゃんはね。ヘ〜んしん! って言って姿を変えるのよ。必ずヘ〜んしん! てね。あははは! 可愛いでしょう!」


 流石にポーズまではしなかったけれど、ヘ〜んしん! と言い放つとは思わなかった。

 でも、少し照れながら言う姿は確かに可愛いわね。

 言葉とは裏腹に、変わった姿は素晴らしいわ。

 青ちゃんは白磁色の光に包まれ、風船が割れるように弾けて現れたわ。

 その姿は、白のサラブレッドに大きな翼。

 見事な毛並みに、筋肉質なお尻。

 思わず叩いてしまったのよね。

 するわよね!

 お馬さんにするみたいに、ペチペチと。


「ナナちゃん! いた〜い!」


 馬面から青ちゃんの声がしたわ。

 私は後ろにいたのよ。

 だってお尻を叩いていたんですもの。


「見えるわよ。馬の視界は350度。真後ろでも少し動けば視界に入ります。ちなみにこの姿なら飛ぶとこも出来ますよ。そぉ〜れ!」


 間の抜けた掛け声で、本当に飛んでしまった青ちゃんペガサス。

 凄いわね。

 その動物に変身すれば、その動物の能力を使う事ができる。

 保護の対象だわね。

 あれ? 動物と言えば……。


「ねぇ! 青ちゃん! 戻って来て!」


 私は元の姿の彼女に戻ってもらって、聞いてみたわ。


「ねぇ、青ちゃん。人も動物よね。へ〜んしん! 出来るんじゃない?」

「はぁ? 無理よ! 無理! 試した事ないもん」

「だったら今、試せばいいわ。試すには……エディが良いわね」

「何で俺なんだよ」

「貴方の能力が分かりやすいもの。飛べばいいからね」

「まぁ〜、確かに。青! やってみろよ。面白いじゃん」


 エディまで参加して、煽ってくれたわ。

 ナイスフォローよ。

 渋々、変身してくれた青ちゃん。


「ヘ〜んしん! エディ……。やっぱり駄目だったみたいね」


 明らかにホッとした顔をしたわ。

 ところが、私の援護射撃をしてくれた人がもう1人いたの。


「ねぇ! 青ちゃん。私の特殊スキルの基本になっているのが、私の記憶でしょう。だったら、青ちゃんのヘ〜んしん! 出来る基準は、青ちゃんの記憶なんじゃない? もし、コレがあたりなら。エディでは無くて、本田一じゃないの?」

「マノアちゃんまで! 人になんか変身出来ないよ!」


 泣き出さんばかりの顔をし出したわ。

 コレはマズいわね、などと考えているともう1人、後押しした人がいたのよ。

 と、言ってもあと1人しか居ないんだけどね。


「いいんじゃないかぁ。なぁ、青ちゃん。僕達3人は、あまりにも自分の能力を知らなさ過ぎたんだ。1人になって、怖くなって、目立たない様に生きていくしか無い、そんな風に思っていた。でも、ナナちゃんに出会って教えられたよ。折角、今を生きているんだ。楽しまなくちゃいけないってね。面白いじゃん。やってみれば?」

「ホゼ……、わかった。やってみる! えぇ……っと。へ〜んしん! 本田一!」


 少しだけ照れながらも、意を決して変身してくれたわ。

 白磁色では無くて、月白色の光に包まれた。

 弾けて現れたのは、小汚い餓鬼だった。

 誰彼かまわず噛み付いてきた、あのジャックナイフ少年の姿。

 でも着ているものがボロいわね。

 何より、痩せ過ぎだわ。

 マジマジと見ている私。

 目を見開いて固まっているのがマノアちゃんとホゼとエディ。

 辺りをキョロキョロしているのが青ちゃん。

 この中で最初に口を開いた人の発した言葉が、呪いを解く鍵だだのかもしれないわね。

 今思うと、よ。


「うそ! 本当に一くんに変身しちゃったの! 視界が低いわ。……なるほどね。ナナちゃん! 私、飛べるみたい。凄いわ! コピーなのかしら? 能力のコピー?? 聞いたこと無いわね。みんな……どうしたの?」

「……プップッ……あはははは! おかしい! 出会った頃のはじめくんだ! でも、でも、でも! 女言葉……あはははは」

「……プップッ……あはははは! 一だ! 一だ! そして……声は青ちゃん……プップッ……あはははは」

「……俺の顔で、声は青。……プップッ……あはははは! 駄目だ! 面白すぎる! あはははは! でも、俺ってこんな感じだったんだなぁ〜。誰も近寄らなかったはずだぜ。ホゼ、ありがとなぁ」

「何言ってんだかぁ」

「青! 俺が飛び方を教えてやるよ! 一緒に飛ぼうぜ!」

「そうね!」


 2人で飛んでしまったわ。

 声はエディと青ちゃんで、姿は身なりの良い兄とストリートチルドレンの弟。

 それ程の開きのある外見をしていたの。

 何だか複雑ね。

 あ! ひょっとしたら……。

 私は青ちゃんを呼んだわ。


「青ちゃん! 戻って来て!」

「何? ナナちゃん」

「一旦、元に戻ってくれる?」

「いいけれど……何で?」

「うん。今の本田一くんをスアノース・シド・エディートとして覚え直してくれる。青ちゃんの記憶が基準なのはわかったから、その上書きが出来るのかどうかを知りたいの」

「分かったわ。スアノース・シド・エディート……エディ……エディ……エディ……。はい! 大丈夫だと思う。もう一度、やってみるわね。へ〜んしん! エディ!」


 月白色の光に包まれて現れたのは、エディと瓜二つの姿。

 声だけが青ちゃんなのよね。

 あ! そういう事なの!

 私の予測が当たっていれば、青ちゃんの能力はとんでもない代物になるわ。


「なんと無くだけれど、青ちゃんの能力が分かった気がするの」


 私がそこまで話すと、笑い合っていたみんなが振り向いた。

 元に戻った青ちゃんが、不思議な顔をして私の前に立ったわ。


「私の能力?」

「そうよ。貴女の特殊魔術“憑依”はコピー能力では無いわ。もし、コピー能力だったらそれらしい名前が付いていないとおかしいもの。恐らくだけれど、コピー能力は憑依の一部でしか無いと思うわ。憑は寄り掛かる、頼りにする、よりどころ、霊がのり移るという意味があるの。依は依り代ね。青ちゃんを依り代にして霊がのり移る事が出来る。コレが特殊魔術“憑依”だと考えるわ。“のり移る”がコピー能力を指していると思うのね。そして“霊”が青ちゃんの記憶と言うより想いね。だから、強く思う事で上書きが出来たのよ。貴女はまだ、本当の力を発揮してはいないわ」

「私の力……」


 あらら。

 完璧な不安顔よね。

 私の話を聞いていた、他のみんなも同じ様な顔をしていたわ。

 そんなに怖い事を言ったのかしら?


「うふふ。大丈夫よ。私だって秘めた能力があるかも知れないし。マノアちゃんだって、ホゼだって、エディだって、本当の力はまだ発露していないかも知れないわ。ひょっとしたら、時を遡るとか〜、時空を超えるとか〜。チート能力すらあるかも知れないわね」

「ナナちゃんに! だったら私は、どこにでも行けるドアが欲しいわ」

「僕だって、暗記できるパンが欲しい」

「俺は……ネコ型ロボットがいいなぁ」

「「「確かに」」」

「「「「あはははは」」」」


 みんなで笑い飛ばしたわ。

 青ちゃんだけは、しんみりしていたけれど意を決したのか顔を上げて笑ってくれた。


「みんなが居るから大丈夫ね。うふふ」

「勿論よ」

「当たり前じゃん」

「そうだね」

「おぅ!」


 みんながそれぞれに答えていたわ。

 本当にみんなが居てくれて良かった。


 笑い合っていると私達が乗って来た物より、大きな馬車が止まったわ。

 中からハンナとユント先生が現れたの。

 私はここで気が付いたわ!

 2人が居なかった事にね!


「夜遅くに連絡があり、城へと上がっておりました。時間もあまりありませんし、早くこちらの馬車にお乗りください。さぁ! 早く!」


 ハンナにしては、焦っていたわね。

 私達は、訳も分からず乗り込んだわ。

 そして、とんでもないスピードで着いた先は……。


「城? !」


 そうだったの!

 モンサンミッシェル風の王城が目の前にそびえ建っていたわ。

 何で城なの?

 あれは、お父様?

 私達はどこに連れて行かれるの?

 でもこの時、1人だけ行き先を知っている人物がいたのよね。

 初めに言っといて欲しかったわ。

 はじめ……にね!!



本田一、改め、エディの登場でした。

ついでに青ちゃんの能力も紹介してみました。

彼女の能力はコピー能力ではありません。

ここが……後に……お楽しみに!


次週予告は……。


「私はイヴァンだ。ガーグスト地方を統治している勇者だ。次週予告を仰せつかった」

「イヴァン。堅いわ。私はベルナよ。メースロア地方を統治している勇者だわ。来週は、私が活躍する話になるわね」

「ベルナよ。嘘はいかん。俺はマーウメリナ地方を統治している勇者マギノだ。来週は生きていたエディ様のお披露目と会議の話だ」

「マギノ!そんな説明文の様な言い方やめてよ。面白くないでしょう」

「面白いも、面白く無いも関係無いでは無いか。来週はどんな話だ? を説明する場所だろう。ここは」

「つまんないわ」

「大変な事が判明したぞ!」

「イヴァン。どうしたの?」

「ベルナ……。次週の話を……書き終えていない……らしい」

「はぁ? だったら次週更新は無し?」

「頑張って来週までには書き上げる! と息巻いている様だ。信じよ……信じるしか無い」

「……予告など書かずに、次週の話を書けばいいだろう」

「マギノ!!」


という訳で、本当に39話を書いている途中です。

あははは!……すいません。

来週までには書き上げるので、読んで下さいね。


それではまた来週会いましょう。




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