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36話 あらあら、特殊スキルですって

 クラスメイトの本田一くんは、こちらの名前でスアノース・シド・エディートと言うの。

 そうなの!

 この国の王子様だったのよ。

 6年前、第2婦人との間に産まれた子供。

 それを良くは思わなかった、第3婦人が誘拐事件を起こした。

 これが全ての真相。

 この時、近衛隊長をしていたのがお父様。

 責任を取り、辞職してロタ家の当主に成ったのね。

 当時のお父様はお忙しい方だったようよ。

 だって、この時すでにロタ家では呪い騒動真っ只中。

 王都に来れば、生きていると信じている王子様を探し、ルジーゼ地方へと帰れば呪いの原因追求。

 心休まる暇は無かったでしょうね。

 呪いも、誘拐事件も無事解決を見てホッと胸を撫で下ろしていると思うわ。

 ルバー様とお父様、近衛隊長グフさんが守りながら一くんを王城へと連れて行ったの。


 さて、残された私達。

 渡来者の陸奥青森むつせいしんの青ちゃん8歳。

 転生者のメースロア・マノアのマノアちゃん7歳。

 転生者のルジーゼ・ホゼッヒのホゼ5歳。

 担任の異世界人ユント先生25歳。

 私のお目付役、火の勇者ハンナ25歳。

 後はルジーゼ兵ね。

 それらを連れて、ロタ家のお屋敷へと向かったわ。

 お父様の発案で、お泊まり会をする事にしたのね。

 まぁ〜、みんなは異世界人根性を植え付けられている人達なので“貴族様のお話に口を挟まない”を守っただけなのよ。

 その隙にアレヨアレヨと決めてしまった。

 うふふ……お友達とお喋り。

 うふふ……恋バナなんかしちゃったりして。

 うふふ……あぁ〜、楽しみだわ。


「ここが、貴族様のお屋敷?」

「マノアさん! なんという事を言うのですか!」


 先生……聞こえていますよ。

 小声が小さく無いですよ。


 私達は1度、学園に戻りお泊りセットを持ってルジーゼのお屋敷へと来たの。

 その入り口で、今のような会話がなされたのね。

 さらに、ホゼとマノアちゃんがフォローにならない一言を添えたわ。


「僕は好きだよ。質素で簡素で砦のようなお屋敷。なんだか懐かしい感じがする」

「あ! それ分かるぅ〜。有名なRPGに出て来る。通り過ぎるだけの砦ね。リアルにするとこんな感じだよねぇ〜」


 言葉が無いとはこの事。

 だって、私も同じ事を思ったもの。

 なんとも言えない不思議な顔をしていたと思うわ。

 そんな私に、ハンナが助け舟を出してくれた。


「……まぁ〜、立ち話もなんですし、中に入りましょう。昼食の用意も済んでいますし、冷めないうちに召し上がれ」


 く、く、苦しいわ。

 でも色んなものを汲んでくれたみんなが、屋敷の中に入ってくれたの。


 お昼は定番の焼きそばでした。

 モチモチのちゃんぽん麺をソースで炒めた麺料理。

 具材にはモヤシにキャベツ、忘れてはいけないのは豚バラ。

 牛でも鳥でもダメよ。

 豚の旨味がソースに絡まり、麺にも絡まり、美味さ3倍よね。

 ここで不思議なのが、ちゃんぽん麺はちゃんぽん麺と言い、キャベツはキャベツなのよ。

 名前がね、前の世界のままなの。

 後で聞いたところによると、異世界人が考え、元からあった似た素材を改良してちゃんぽん麺と命名したらしいわ。

 流石と言うかぁ〜。

 飽くなき追求心が新素材の開発を成功させるのね。


 さて、食後のミルクとチーズケーキを食べながら異世界人の事について、聞いてみたわ。


「ねぇ、みんなに聞きたいんだけれど。ここにいる以外の異世界人って、会った事ある?」

「「「…………」」」


 あれ?

 反応が可笑しいわ。

 そう思っているとユント先生が答えてくれた。


「ナナさん。ここ5年ほど、転生者も渡来者もいません。ホゼッヒくんとナナさんが、新しい異世界人です」

「そうなんですね」


 と、ここで私のカップからニュルリンとドブネズミ姿の忠大が現れたわ。

 みんなは、突前の事で固まっているのよね。

 まぁ、どうでもいいから話をしましょうか。

 なんの用事があるのかしら?


『姫様。調べてまいりました。今のところ、異世界人と申請している方様に、困った事や苦しんでいる人達はお居りませんでした。隠れている異世界人につきましては、スキル走破で調べますので今暫くお時間を下さい』

「ちょっと待って。そこまでする必要は無いわ。隠れて幸せならそれで良いのよ。今、苦しんでいる異世界人はいないのね。だったらそれで良いわ。手紙を書くから少し待ってね」


 私は紙とペンをマジックバッグ改から出して、サラサラと忠大から聞いた話の内容を書いたわ。


「忠大。コレをルバー様に届けてくれるかしら?」

『はっ。忠凶、頼む』

『はっ』

「何で、忠凶に頼むの?」

『いつの間にか、担当が決まってしまいまして。ルバー様には忠凶。ガロス様には忠吉。忠中と忠末はガウラ様とハンナ様を担当しております。最後に姫様の担当は私でございます』

「うふふ。忠大、よろしくね」

『はっ』


 ここまで話して、ようやくみんなが復活したのよね。


「ナナちゃん! ネズミ!」


 マノアちゃんの悲鳴がこだました。

 中に入って来た兵士がいたけれど、ハンナが外に出してくれたわ。

 だってネズミ! と叫んで指を差したのは忠大の事だもの。


「大丈夫よ。この子達は私の仲間で家族なの。そう言えばちゃんと紹介した事なかったわね。足元で寝ているこの子は、ハチ」


 名前を呼ばれたハチは、お座りをしてカッコいい顔をしたわ。

 キラリと白い歯を見せて、ドヤ顔をしたわね。


「うふふ、素敵よハチ。次に、膝の上で寝ているこの子がロク」


 ロクはチロリとみんなを見て、欠伸をした後また寝始めたわ。

 猫らしくツンデレよね。


「もぅ〜、ロクったら。ネズミ達! みんな出てきてくれるかしら?」


 不思議なのよね。

 私が“ネズミ達”と声をかけると、何処からともなくみんな出てきてくれるのよ。

 どうなっているのかしら?

 などと思っていると、ハツカネズミ姿のネズミ達が鎮座したわ。


「うっ、何故ハツカネズミ姿なの? まぁ、いいわ。こちらから、忠大、忠吉、忠中、忠末、忠凶よ」


 自分の名前を呼ばれると、一歩前に出てお辞儀をしたわ。

 白い体にクリクリお目々。

 女の子なら誰でも癒されるミニマム姿……あざといわ。


「キャー! ナナちゃん! 可愛い」

「可愛いですわ!!」


 はっちゃけたのはマノアちゃんとユント先生で、すでに手を伸ばして忠凶をナデナデしているのは青ちゃん。

 ホゼですら、優しい目をして見ているわ。


「ねぇ、ナナちゃん。この子達、ナナちゃんのペットなの? あ! 家族よね。私もロバや山羊を飼っていたから、分かるわ。家族になっちゃうのよね」

「確かに、家族で仲間よ。……青ちゃん……この子達、動物ではなくて魔獣よ」

「「「「!!!!」」」」


 みんなの目が見開き、伸ばしていた手が止まり、青ちゃんはそっと忠凶から手を離したわ。

 魔獣と聞いて恐れをなしたのね。

 平気なのに!


「大丈夫よ。魔獣と言っても、この子達は私の配下魔獣なの。ほら、見て! 首輪を付けているでしょう。それに、こんなに大人しい魔獣はいないと思うんだけど……優しいし、強いし、温かいし……何より可愛いわ」


 私はお座りしていた、ハチのバンダナを少しだけずらして首輪を見せたわ。

 そして、ムフムフと撫で回した。


『ナナ、止めてワン。折角のキメ顔が台無しワン』

『あんたのキメ顔なんか、誰も見てないニャ』

『はぁ?! やるかワン』

『そっちこそ! やるかニャ』

「も!! 2人ともいい加減にして! みんなが怖がっているでしょう」

『怒られたワン』

『怒られたニャ』


 ショボくれたハチとロクは、静かに元いた場所に戻ったわ。

 やれやれと思っていると今度は……。


『姫様。異世界人の調査は少しだけ規模を小さくして継続、致しまして龍王の調査へと移りたいと思います。如何致しましょうか?』

「そうね。異世界人の調査は少しづつでいいから続けて頂戴。でも……龍王の調査は少し待って。確かに気にはなるけれど、一くんの事もあるしもう少し落ち着いてから調べてくれるかしら?」

『はっ。その様に致します』


 ここで、ホゼが意を決した様に話し出した。


「ナナ……君は魔獣と話が出来るのかい?」


 と、当たり前の事を聞かれたわ。

 だから、私も普通に話したの。


「出来るわよ。だって私の特殊スキル“獣の声”だもの。話せるわよ。みんなだって、特殊スキルか魔術を持っているでしょう?」


 私のこの一言が、マノアちゃんの奥底に秘めていた不満を爆発させたみたい。

 まさに、マシンガントークだったわ。


「持っているわよ。でも、ナナちゃんみたいに役に立つスキルなら良かったわ。私のなんて特殊スキル“絵師”よ。スキルだから魔力は必要ないの。そんな事は知っているわよね。私の特殊スキル“絵師”は、紙に書いた物をリアルにする事が出来るの。一見聞くと凄いでしょう! でもね! 中途半端なのよ! 初めてこの能力に気がついた時、もちろんギルドよ! ギルドの中でギルドの職員の人に教えてもらったの。その時、書いた物を出せると聞かされて、それからすぐに異世界人クラスに入れられて、個室を与えられて、早速、紙に描いて色々、出したわよ。初めに目玉焼きが乗ったハンバーグ定食。お皿とお箸は、当たり前の物が出てきたわ。でもね……でもね……目玉焼きが乗ったハンバーグは……食品サンプルだったの! それでも私は、諦められなかったわ。次にご飯を出したの。アツアツ、ホカホカでお茶碗によそいだ炊きたてのご飯をね。そしたら……出来立ての、食品サンプルだったの。ホカホカだったわ。頭にきた私は、お米一粒一粒を描いた。今度こそ炊き立ての白米よ! と思ったら……生米だったの。私の特殊スキル“絵師”は最小単位の物しかリアルに出せない。パンはダメで、小麦粉なら出せる。悲しいでしょう。役に立たないでしょう。私の特殊スキル!」


 スキルに驚いたのでは無くて、マノアちゃんにビックリよね。

 でも凄いポテンシャルを秘めているのが、特殊スキル“絵師”だと私は思っているんだけど、と言い出す前にもう1人、溜め込んでいた人が居たみたい。


「だったら、僕の方がもっと酷いよ! 僕の特殊スキルは“薬剤師”なんだ。僕の知っている薬ならどんな物でも、作り出すことが出来るんだ。さらに、この世界での薬も作れる。ポーションだよね。アレは前の世界では無いものだ。でもね。僕の手にかかれば一瞬で作れる。ポーションは前の世界では栄養剤なんだ。その事に気が付けば、後は応用で、凄い効き目のポーションが出来る。一瞬でね。さらにね、さらに、僕は前の世界でも世界一の薬剤師を目指して勉強をしていたんだ。代々の薬剤師の名家だったんだぜ! その後継として期待されていたのが僕なんだ。だから、薬のレシピは頭の中にある! それを応用して、この世界でも不治の病とされていた人達を治す薬を作り出すことも可能なんだ! でも……でも……薬を作る事は出来ても、原料が無いと作れない。目の前に材料が無いと作れない。作る機材は無くてもいいんだ。材料さえあれば作れるんだ!! ……理解した? 僕の方が使えないだろう。はぁ〜、僕の特殊スキルがもう少し使えるヤツだったら、ロキア様に良い薬を上げることが出来たのに……うっ! ぼ、ぼ、僕は別に……その〜あの〜」


 私達は何も言ってはいないわ。

 ホゼが1人で、赤い顔をしているんですもの。

 そっちの方にツッコミを入れたくなるじゃない。

 ねぇ、青ちゃんにマノアちゃん!

 3人ともニタニタ顔でホゼを見た。


「ぼ、ぼ、ぼくはべつに……あの〜その〜」

「うふふ。何も聞かなかった事にしてあげるわ。2人だけのお話ですしね。野暮な事を言わないのが優しさですもの。ねぇ、青ちゃん、マノアちゃん」

「うふふ、そうですね」

「だねぇ〜」

「だったら、そのニタニタをやめろ! ゲホゲホ」


 慌ててミルクを飲んだものだから、むせてしまったホゼ。

 そんなに焦るから変な所に入るのよ。

 私が背中をさすりながら話し出したわ。


「からかう様な言い方をしてごめんなさいね。実は私ね。貴方達の事をネズミ達に頼んで調べてもらったの。その時からマノアちゃんのスキルには興味を惹かれていたわ。だって1番使い勝手が良さそうだし、面白い事が出来そうなスキルなんですもの」

「でも、ナナちゃん。私のスキルは……」

「そうね。確かにクセのあるスキルだわ。でもね使い用によっては神アプリならぬ神スキルになるんじゃない? 問題は、何が最小なのかだと思うの。マノアちゃん。毛糸のセーターを描いてみて」

「はぁ? なんで??」

「毛糸のセーターの最小単位が知りたいの」

「う……うん……わかった」


 シブシブ、取り出した紙と鉛筆。

 描いたのはハートのセーター。

 その絵に触れながら、目を閉じると紙からニュルリンと抜け出しす形で現れたわ。


 ゴト


 イイ音がしたわね。

 紙は白紙になり、その上に子供服サイズのセーターが立ち上がっていた。

 そうなの!

 立ったのよ!


「やっぱりね。食べ物は食品サンプルになって、それ以外はプラスチック製の置物になるの。多分だけど、毛糸が最小単位よ。描いてみるから待ってて」


 描いて出したのは、ピンク色の毛糸玉だったわ。

 売り物の形で、値段まで書いてある。


「うふふ、以外と安いのね」

「うちの近くに卸屋さんがあって、よく買っていたの。私自身は指編みまでで、母が得意だったからよく買いに行かされたわ」

「お手伝い屋さんだったのね。偉い!」

「えへへ〜ありがとう」

「次に、木彫りの熊を出してみて」

「はぁ? あの熊?」

「そうよ。あの鮭を咥えた熊。小さいのでいいから出してみて」

「わ、分かったわ」


 マノアちゃんはお土産の定番、木彫りの熊を描いた。

 セーターの時と同じ様に、描いた絵に触れて目を閉じて出現させたわ。

 出てきたのは……。


「見事な木彫りの熊ね」

「うん。我なら完璧」

「ねぇ、マノアちゃん。描いたものに触れて出すのね」

「そうよ。紙に描いたものは、あくまでも平面でしょう。それを出すには情報が不足しているわ。だから私の記憶にある画像で補うの。その為に、私が知らない物は出せないわ。あと、生きてる者も出せないわね」

「なるほど……ね。と! いう事は、最小単位を決めるのは描いた物では無く、描いた者なのね」

「はぁ?」

「だから、描いた物では無く描いた者。マノアちゃんが描いたんでしょう。貴女の記憶にある画像が最小単位の基準なのよ」

「え?! 」

「セーターの場合は、記憶にある画像で最小単位が毛糸玉だから、プラスチックのセーター置物が出てきたわけよね。木彫りの熊の場合は、記憶にある画像で最小単位が木彫りの熊だから、木材では無く木彫りの熊で出てきたわけよ。では最後、ポラロイドカメラを描いてみて。もちろんカラーフィルムも忘れないでね」

「う、う……ん」

「ポラロイドカメラは知ってるわよね?」

「もちろんよ。前の世界で私の相棒だったもの。ポラロイドとスケッチブックは必ず鞄の中に入っていたから、大丈夫だけど……」

「まぁ〜、とりあえず出してみてよ」

「わ……わかった」


 みんなの頭にもハテナマークが並んでいたわ。

 私の勢いに負けて、誰も何も言わないんですもの。

 やったもん勝ち、言ったもん勝ち、よね。

 でも当のマノアちゃんでさえ、半信半疑のまま描いているのは少しだけ、マズイかしら?

 紙に描いたカメラと箱の中のフィルム。

 その2つを描き終えて、目を閉じたわ。

 そして、出て来たものは……。


「ナ、ナ、ナ、ナナちゃん!! 」

「思った通りね。マノアちゃん。私達を撮ってよ」


 私は膝の上にいたロクを抱え上げたわ。

 恐る恐るシャッターを切るマノアちゃん。


「ちゃんと動く! そして写る! そうかぁ! 私の中の記憶が基準なのね! ナナちゃん凄い! そして……ありがとう」


 大興奮のマノアちゃん。

 せっせと、ポラロイドカメラとフィルムを描きだしたわ。

 そして次々とリアル化して行ったの。


「私ね。不安だったの。

 前の世界ではね。自分で言うのも可笑しな話だけれど、美人だったのよ私。ママはモデルでパパはイケメン外交官。ママの親族には有名人だったり歌手だったり、パパの叔父さんは電力会社のceoだったりと裕福だったわ。でもね……みんな忙しくてね……1人遊びのプロになっちゃった。あはは……寂しくなかったと言えば嘘になるけど、哀しくはなかったわ。だってパパもママも、私を愛してくれたもの平気だったわ。手を伸ばせば、繋いでくれる手はいくらでもあった。

 そんなある日、駅のホームで押されて、線路に落ちてからの記憶が無いわ。目が覚めて、これまでと全く違うところに居て、本当に驚いた。でも、手を伸ばせば繋いでくれるお父さんとお母さんは居たの。ところが……異世界人だと分かると、誰も手を繋いでくれなくなった。さらに、私の能力は役に立たないものだと分かると、誰からも相手にされないばかりか、蔑む視線さえ感じたわ。異世界人のクセにショボイスキルしか持ってない、知識も少ない、役立たず……とね。寂しくて哀しくて辛かった。そんな時、青ちゃんやホゼにはじめくんに出会えた。一くんはツンツンだったけれどね。みんな、みんな、優しかった。それでも“ショボイスキルしか持ってない”が、私の心に棘となってチクチク痛んだわ。でも! ナナちゃんが、抜いてくれて癒してくれた! スキルはパワーでも珍しさでも役に立つ立たないでもない! と教えてくれた。

 これみんな、使って。私ね。絵も好きだったけれど、写真も大好きだったの。せっかくこの世界に産まれたんだもの。楽しまなくちゃ〜、転生させてくれた人? 神? に失礼だよ。撮り方は私が教えて上げる」


 そう言って、私たちの目の前にポラロイドカメラとフィルムを置いたわ。

 どうしょうかと悩んでいると、笑いながらホゼが話し出した。


「写真部の結成だね」

「はぁ? 写真部?」

「ナナちゃんは大学には通った事、無かったんだよね。青ちゃんも……知らないかぁ〜」

「知ってるわよ。テレビでやっていたもん。合コンとかサークルとか、でしょう」

「青ちゃんが言ったのでいいんだったら、私も知ってるわ。サークルとかで、一気飲みさせてアルコール中毒で亡くなったとかなんとか、ニュースで観た記憶があるわ」

「はぁ〜、2人ともテレビに毒されてるよ。そんな事をするのは一部の人間だけで、至極真っ当な大学生ばかりだよ。僕が通っていた大学でも写真部があってね。ほとんどの部員は一眼レフカメラを使っていたんだけど、1人だけポラロイドカメラで撮っているヤツがいたんだ。そいつと1度だけ、酒を飲む機会があって、話を聞いたんだ。最近のポラロイドカメラは優秀で、セピアやら白黒やら高画質やら、長々と講釈を聞いたのを覚えているよ。そのカメラと同じ種類だ」


 目を輝かせたのはマノアちゃん。

 ポラロイドカメラを手に取り嬉しそうに話し出したの。


「そうなの! 叔父さんが私の10歳の誕生日プレゼントにくれたの! も〜、嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて大騒ぎしたもん。いろいろ教えて上げるわ。あのね……」


 延々と続く説明に、少しだけうんざりしたのは内緒ね。

 みんな同じ顔をしていたのに、笑ってしまったわ。

 もちろん、マノアちゃんには見えない所でね。

 でも1人だけ、笑っていた目の奥で、笑っていない人が居たわ。

 彼の特殊スキルも凄いのにね。

 なんで、気がつかないのかしら?

 不思議ね。


マノアのスキルの話でした。

彼女のスキルが1番欲しいスキルですね。


少し話が長いですが、すいません。

次週予告は……。


『なんでナナとロクがツーショットを撮ったんだよ。僕だって撮りたかったワン』

『エヘヘ。良いだろう! 良いだろう! ナナと2人で撮ったニャ。宝物ニャ』

『面白い! 面白すぎです! ポラロイドカメラは凄すぎです。僕は撮りたいです。誰か! 被写体に……』

『忠吉が壊れたニャ』

『次週の予告をしないといけないワン。でも、僕とナナを撮って欲しいワン! 忠吉! 撮って!!』

『もう、いいニャ。あたしがするニャ。次週はホゼのスキルが凄いニャ、と言う話。さらにユント先生のも凄いニャ! そんな感じの話ニャ』

『それじゃ〜、予告になって無いワン』

『だったらあんたがしな!あたしにやらせんじゃ〜、無いニャ!』

『はぁ?! 自分でするニャとか何とか言ってたワン。しっかりやるワン』

『ハチ様、ロク様。予告が進みません。ここは僕が。次週予告! ホゼッヒ様のスキルも秘められた能力だった! さらにユント先生にも隠されたスキルが存在した! 果たしてどんな能力なのか! 乞うご期待。こんな感じで如何でしょうか?』

『完璧だワン』

『完璧だニャ』


それではまた来週会いましょう。

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