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27話 あらあら、時空理論ですって

 新しい理論で作られたマジックバッグ改。

 どんな理論なの!

 気になる!


 そして、切れるはずの無い伝説のアイテムを母の愛でちょん切ってしまった私の母ソノア。

 切れ端で研究、考査を続けた父ガロス。

 2人の愛で新たに生まれた理論!

 やっぱり、気になぁ〜るぅ〜!


 焦らすお父様を憎たらしく思いつつ言葉を待ったわ。


「物の空間をギルドカードに、無理やり繋げて収納する事が空間理論だ。そこを踏まえて次は……なんだが。

 伝説級のアイテム“聖女の祈り”から確認された加護は、耐火・耐水・耐風・耐氷・耐雷・耐呪・耐呪術・耐突・耐斬・耐撃、ここまでは攻撃に対する加護だなぁ。そして、耐塵・耐腐食・耐断・耐臭・伸縮が状態を維持する為の加護だ」

「ちょつと待て!そんなに加護は付かないだろう」

「それが付くんだなぁ〜、ルバーよ。伝説級のアイテムだからだと考えただろう~、ルバーよ」

「いちいち名指しするな。面倒くさい。それより先を話せ、馬鹿者!」

「あははは!すまん、すまん。冗談はさて置き。初めは俺も伝説級のアイテムだからと思っていたが全く違ったんだ。ヒントは空間理論にあった。“聖女の祈り”の最大空間量は20個で、そのうち10個が防御系に、5個が状態維持に、5個が攻撃アップ系に割り振られてあった」

「ちょっと待て、待て、待て……はぁ?そんな訳ないだろう。だったら何で、今まで分からなかったのだ!おかしいだろう!」

「ルバー、少し落ち着け!今から説明するから。最大空間量=付けられる加護の数、だけではない寧ろ数よりも加護を付ける順番が大事だったんだ。すべての物に加護をつける順番がある。その順番通りに付けると最大空間量の数だけ付ける事が出来るが、問題は付ける物でその順番が変わることだ。ハンカチや布製品なら判明した。ここまでは理解したかなぁ?」


 お父様が私達を見回したわ。

 ルバー様はお父様からの書類を熟読していて、ハンナは思考を放棄して冷めたお茶を新しい物に変えていたの。

 さらにお茶菓子まで出していたわ。

 私はロクを膝に置いて、撫で撫でしながら現実逃避をしていたの。

 だって分かるようで、さっぱり分からないんだもの。

 この手の事はネズミ達の領分よね。

 そ、それでいいわ。

 新しいお茶を啜りながら、出された芋羊羹を一口サイズにカットして頂いたの。

 そうしたら……頭の中でモヤモヤしていた思考が動き出したのよ。

 甘味が足らなかったのね。

 納得だわ。


「お父様。でしたら、このペンに順番通りに加護をつければ最大空間量個付けられるとのことですの?」

「その通りだ。ただ、順番を確定するのに苦労するだろうがなぁ。ナナが理解できたのなら次だ。

 ルバーとハンナなら、“聖女の祈り”に付いている加護の多さと種類に驚いたろう。俺でさえ、聞いたことがない加護が混じっていた。耐雷・耐腐食・耐臭・伸縮の4個だ。伸縮はハチ達が着けているバンダナに付いている。この加護のおかげで大きくなっても平気なんだぞ」


 お父様と私の間でお座りをしていたハチを、ガシガシと荒く撫でたわ。

 当のハチは嬉しそうに尻尾をフリフリ。

 可愛いわね。


「さてと。耐雷は雷属性を持っている者がたった1人しかいない為に、検証がし難い。その為、放置だなぁ。そして耐臭は……おまけだなぁ。問題は耐腐食だ。食べ物ならハンナかぁ?腐食とは何だ?」

「何で私なのですか!……腐食ですか?食べ物が腐ることです……かぁ???」

「はてなマークが多いなぁ。食べ物が腐る事、なぜ腐る?」

「はぁ?」

「ハンナ……間抜けな声を出さないで。お父様もお父様です。そんな意地悪な質問をしないで下さい」

「あははは!すまん、すまん。少し悪ノリしすぎたようだなぁ。悪い、悪い。腐食は食べ物が腐ると書く。では腐るとは……食べ物に細菌がついて、それを食べながら仲間を増やし、食べ物を細菌の排泄物に変化させているという事だ。食と書くが食べ物だけではないなぁ。金属も腐食する。金属が酸素・水などとの化学反応によって変質するんだ。分かりやすいのは鉄に付く錆だなぁ。さて、最終問題だ。食べ物や金属に細菌または酸素・水が付着して細菌の排泄物にしたり、変質させたりする。ではその細菌または酸素・水はいつの段階で付着したのかなぁ?」

「……」

「……」


 私とハンナは顔を見合わせ首を傾げたわ。

 何時……なの?

 するとルバー様が、やれやれ仕方ないなぁ〜と言わんばかりの顔をして話しだしたの。

 少しだけカチンときたけれど、ここは譲るしかないわね。

 だって分からないもの。

 腐るとか錆びるなんて考えた事無いもんね。


「今だ。細菌にしても、酸素にしても空中に漂っている。できた瞬間に付着する。で!それが何だ!」

「お前は……つまらんなぁ。そこまで分かっていながら俺が言いたい事が分からんとはルバーよ……大丈夫かぁ?」

「うるさい!私を疲れさせたのはお前達だ!!」


 熱り立ったルバー様。

 私とお父様を指差してプルプル震えていたわ。

 お手洗いかしら?……すいません……自覚しています。


「あははは!まぁ~まぁ~座れよ。話すから、悪い、悪い。ルバーが言った通りだ。食べ物が出来た瞬間から細菌は付く。しかし、すぐに仲間が増えるわけではない。食べられ無くなるまで細菌が増えるには時間がかかる。もちろん環境や場所でその時間は変わる。そこで俺は改めて“耐腐食の加護”を考査してみた……ら、この加護は……」


 そこまで話したお父様。

 みんなを見回して続きを口にしたわ。

 ちなみに私は理解不能ね。

 もちろん、ハンナもね!


「……時間理論を用いていた。時間を止めることで腐食するのを防いでいたんだなぁ。時間理論と言うのは、時を考査する理論なんだ。時を進めたり、戻したり、止めたりと小難しい理論に俺はこんがらがってしまった。一番簡単なのが止める理論だったんだが……これでも難しい。暗礁に乗り上げてしまってなぁ~。ハタ!と机を見るとマジックバッグが目に止まって、ビビッ!ときたんだ。ヒビっと。

 広い空間で形の無い時を考査しても、難しくなるばかりだからなぁ。狭い空間なら理解しやすいのでは?と考えて……時間理論と空間理論を合わせて、時空理論を組み立てる事に成功した訳だ。その理論を使い、新たにマジックバッグを作ってみたらコレが完成したんだ。まさか、空間を繋げてしまうなんて誰が思う!時空理論は、この空間に朽ちる物や腐る物を認識し、時を止める事が出来る。俺的には、入れた物のリストと腐らせる事を念頭に置いて作ったんだが……イヤ〜まさかまさかのビックリだよ。あははは〜」


 ペラ~、ペラ〜、と紙をめくる音が響き。


「ガ・ロ・ス!」


 地響きの如しの低い声が轟いたわ。


「時空理論はどこだ!!」


 ルバー様の叫びが爆発いたしました……チン!合掌。

 冗談はさて置き。

 お父様が渡した書類に時空理論が抜けていたようで、今もプルプルワナワナしているわ。

 そんなルバー様を見てゲラゲラ笑っているお父様。

 この2人、本当に仲良しなの?


「あはははは!ルバー面白いぞ!あはははは!

 当たり前だろうが、まだ明確ではないあやふやなモノを出す訳ないだろう。この時空理論は黒属性くさいから、ルバーに加勢してもらって、もう少し検証したいのだが……無理だなぁ。で!ナナ!ロクかネズミ達を借り受けたい。もちろんナナにも加勢してもらうが……いいかなぁ?」


 ルバー様は今もワナワナプルプルしているわ。

 よほど辛いのね。

 ここは私の出番だわ。


「もちろん喜んで加勢いたしますわ。でも、時空理論が黒属性だから何だというのです?」

「ナナには、少し難しいかもしれんなぁ。なんせ魔力が無いし……ハチ、ロク、ネズミ達はよく聞いておけよ」

「ワン」

「ニャ」

「「「「「チュウ」」」」」


 元気よく答えていたわ。

 いつの間に、起きたのかしら?


「うむ。いい返事だ!

 理論と属性だなぁ。ナナも言っていたと思うが……魔力とは魔術を使う糧!その通りなのだよ。では、魔術とは何か?それは……理論だ!

 例えばファイヤーボールの場合を考えてみよう。属性は火で、理論は火系。まぁ~なんだ。理解しやすく言うと、火系の理論は燃える・燃焼の事だ。火が点火するには、可燃物、燃える物だなぁ。あとは酸素。それらの混合物が引火点を越えるための熱が必要だ。ちなみに引火点とは燃えるための最低温度の事だ。そして火が燃焼し続けるには、連鎖反応を生み出すよう酸素が連続的に供給される必要がある……コレが火の理論だ。理解する事で魔術を発動させる事ができる。言い換えると、魔力があっても理論を理解できなければ魔術は発動しない」

「と、いう事はハチやロクは理論を理解しているから魔術が使えるのね!」

「ナナ、それは違うぞ。ハチやロク、ネズミ達もそうだが、おそらく魔術やスキル、ステータスのような概念はなかったと思うぞ。首輪を付けて初めて認識したのでは無いかなぁ?」


 お父様はハチ達を見つめたわ。

 当の本人たちは首を上下に振りながら。


『そうワン!』

『そうニャ!』

『私達も驚きと興奮に震えました。それは今も変わりません』


 目を輝かせながら私に話してきたの。

 目はランラン、尻尾フリフリ、楽しい我が家ですわ。


「だったら魔獣はどうやって魔術を使うのですか?」

「そうだなぁ~……ではナナに質問だ。ナナはどうやって呼吸をしている?」

「はぁ?そんなこと意識した事ありませんわ。無意識に息をしていますもの」

「そう!それが答えだよ。俺達は意識せずに呼吸をする。魔獣は意識せずに魔術を使う。名称や効果などの説明は後からついてきた。そんな感じではないのかなぁ?」


 お父様は忠大に視線を向けたわ。


『はい。その通りでございます。首輪を付けたとき魔術、スキル、ステータスを数値で知る事が出来ました。ですが理論を理解し、魔術に意識を向けることで新たなるスキルや魔術を得ることが出来るなど誰が思うのですか!全く持って目からウロコでございます。素晴らしい発見です!』

「うふふ……お父様。忠大の力説で私が理解できましたわ。魔術と言うモノは理論を理解することで新たなるスキルや魔術を得る事が出来るのですね」

「その通りだ!ここでお爺様の発明が魔力の無い俺達に、新たなる光を与えたんだ。魔力が宿っている石。魔石を埋め込んだアイテムなら魔力の無い俺達でも使う事が出来る。後は理論を理解して魔術を使うだけだ。解るかナナ……魔力は魔術を使う糧に過ぎぬ。いくら大きな魔力を有していようとも理論を理解できなければ、宝の持ち腐れだ。ナナもハチもロクもネズミ達もしっかり理論を磨けよ」

「はい、お父様!」

『はいワン』

『了解ニャ』

『『『『『はっ』』』』』


 みんなそれぞれに返事をしたわ。

 それにしても忠大しか居なかったのに……どこから来たのかしら?コレも魔術??

新しい理論、時空理論の登場です。

小難しいのでサラリと流してもOKです。


次回予告!

新たな理論による、新たな魔術が発動する!

誰が発案者なのか!

ロク?ネズミ達?それとも……!!


それではまた来週会いましょう。

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