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26話 あらあら、マジックアイテムですって

 この13日間は大変だったわ。

 そうそう、忠凶に魔術ワイヴァーンの事を調べに行ってもらっているのよね。

 スキル意思疎通で概要の報告を受けたの。

 さすが、勇者様です事。

 キッチリ、バッチリ、スッキリと倒されたみたいね。

 でも……寒気がするのは……風邪でも引いたかしら?

 用心しないとね。


 それにしても、説明に次ぐ説明で、何が何やら分からなくなるほどだったわ。

 こんがらがっちゃう???


 でもおもしろかったの事もあったのよ。

 それが、道具とマジックアイテムについてなのよね。


 そもそも話、魔力が宿っているモノがマジックアイテムで、魔力が宿っていないモノが道具だったらしいの。

 ところがなのよ。

 私の曽祖父にあたる方が、魔力が無いお父様を心配したらしく。

 魔力がなくてもマジックアイテムが使えるように、と工夫に工夫を重ねた結果。

 生み出されたのが、マジックアイテムに魔力が宿っている宝石又は魔石をはめ込み、魔力の無いお父様でもマジックアイテムが使用出来るように作り変えてしまったの。

 このことで天地がひっくり返るほどの、大騒ぎが起こってしまったわ。

 当たり前よね。

 魔力が無いから道具で我慢していた人達が、擬似的にでも魔力を使うことが出来る。

 何となくわかる気がするわ。

 私もナナやハチのように、バチバチっと派手に魔術を使いたいもの。

 そんな風に思った人達は沢山いた模様で、次々に魔石を利用したマジックアイテムの開発、発売がされたわ。

 あっという間に道具が無くなりマジックアイテムが支流になってしまうほどにね。

 そうなると些細な喧嘩で火災が起きたり、家が流されたり、挙句の果てには死人まで出る始末。

 困り果てた国王様が、すべてのマジックアイテムに制限をかけた。

 ギルドカード所有者しか使えないようにしたの。

 そうする事により誰がどんなマジックアイテムを持ち、使用したかわかるようにしたのね。

 さらに、認められた人しか開発したり販売したり出来なくしてしまったの。

 ある意味、賢明で英哲な判断だったと思うわ。

 でも、今では猫も杓子もがギルドカードを持っている時代よね。

 この制限は意味があるのかしら?


 まぁ〜、それはいいとして。

 曽祖父はお父様の事を心から心配したのね。

 愛を感じるわ。


「ナナ様、少しよろしいですか?」

「もちろんよ」


 私は朝の身支度を終え。

 食堂で朝ご飯を美味しくいただき、食後のお茶をまったりしていたわ。

 そんな時、ハンナに声をかけられたの。

 連れて来られたのは執務室。

 中にはもちろん。


「お父様。何か御用ですか?」

「明後日には……明後日には……」

「お、お、お父様?」

「はぁ~、ガロス様。ナナ様、御入園おめでとうございます。まずは、私とセジルからです」

「こっちが俺達からだ」

「お父様、ハンナ。これは何?」


 私の目前には、アームバンドとハンカチの束が置いてあった。

 それにしては、とても綺麗なハンカチとアームバンドね。

 虹色の薄い色合いで私を元気にしてくれる色だわ。

 なんと言っても虹色は七色、七色、ナナ色……なんちって!


「とても綺麗なハンカチとアームバンドね」

「はい。とても綺麗ですね。こちらのアームバンドは私とセジルからです。ハンカチ10枚はガウラ様、ガロス様からです。

 これはマジックバッグ改です。仮称で申し訳ありません。ガロス様が手を加えられて従来のマジックバッグでは無くなってしまったので、ルバー様に検証していただき正式名称が決まると思います。少しお手数ですが、ナナ様のギルドカードを翳して“バッグに登録”と言ってください。本来は言わなくてもいいのですが……分かりやすいので、お願いいたします」

「もちろんいいわよ」


 と軽く請け負ってしまったけれど以外に面倒くさかったわ。

 だって11個もあったのですもの。

 でも同じマジックバッグが11個、そんなにいる?


「終わったわよ。でもこれ同じマジックバッグ改でしょう。こんなには……」

「確かにすべてマジックバッグ改ですが。ナナ様、バッグには3種類あるのを覚えていらっしゃいますか?」

「もちろんよ。最大数のMPと同じだけ入る物。最大数のHPと同じだけ入る物。レベルの3乗をした数値の分だけ入る物よね」

「その通りです。MPの伸び率が高いので普通はMPバージョンを使う人が多いのですが、ナナ様はHPバージョンですよね。で!このアームバンドタイプのマジックバッグ改HPバージョンを用意した次第です。そして……コチラのハンカチですが……マジックバッグ改と言うより……。ナナ様、ハチ達を呼んで頂いてもよろしいですか?」

「もちろんいいわよ。みんな!……いる?」

『はいワン』

『何ニャ』

『『『『『はっ』』』』』


 ハチは私の座っている足元で、寝ていたのよね。

 ロクは私の膝で、やっぱり寝ているわ。

 ネズミ達は……居なかったわね。

 そう言えば、忠凶はおつかいに出かけているんだったわ!

 帰って来たのかしら?


 私の呼びかけでハチは椅子の横でお座りをして、ロクとネズミ達はテーブルの上で整列していたわ。

 少しだけ、忠凶の息が上がっているけれど……大丈夫ね。

 するとハンナがハンカチを三角形に折ったの。

 その形は……。


「コレはマジックバッグ改と言うよりも……こうやって使ってください」


 ハンナはロクの首に結び付けた。


「コレはバンダナよね」

「はい、そうです。ナナ様は首輪を付けることを気にしていたので、ガロス様がバンダナならいいだろうとお考えになり。どうせなら可愛いのがいいですからね!はぁ~やはり、可愛いです」


 確かに可愛いわね。

 ハンナはみんなの首輪を隠すようにバンダナをしていったわ。

 優しさと愛が詰まったバンダナに嬉しくなった。

 なんだがハチ達が誇らしく見えるから不思議ね。


 でも……この子たちは……。


「ハンナ、お父様。この子達は大きさが変わりますよ?」

「問題はそこだったんだよ。いゃ~苦労したが、良い物が出来た。コレは……」


 バタン!


「ガロス!!とんでもない物を作りやがって!」

『姫様!!とんでもない物を作ってしまいましたね!』

「え?忠吉?ルバー様?」

「……」

『……』

「今、君とシンパシーを感じた」

「チュ」


 見つめ合ったルバー様と忠吉。

 何かを感じ合った……の?

 お父様がこのマジックバッグ改の説明を話しだす前に、飛び込んできたのがルバー様で大声を上げたのが忠吉。

 話した内容は2人共、同じだったわね。


「ルバー様。どうされたのですか?」

「あ!あぁ…そうだ、そうだ!ガロス!!自分がとんでもない物を作ったと自覚しているのかぁ!」

「はぁ?」

「コレだ!!!」


 ルバー様がババン〜と効果音が聞こえてくるかのような勢いでテーブルに置いたのは、カップのバニラアイスだった。


「バニラアイス?」

「ナナ君。ただのバニラアイスでは無い!5日前に賞味期限が切れたアイスだ!」

「はぁ?そんなの食べれないでしょう?」


 でもデーブルには今出来上がったばかりのようなアイスが、冷気と香りを一緒に漂わせていたの。


「ガロス……しっかり、さっぱり、簡潔に、説明しろ。今すぐにだ!!」


 何だかおかしい語呂が混ざっていたけれど、不思議なアイスを前に瑣末な事。


「提出した書類に書いてあったろう。時空理論を確立したから、腐敗しなくなった……と」


 お父様が、続きを話し始めるタイミングで忠吉が割って入ったの。


『姫様。腐敗しなくなったのも、とても気になりますが更に気になる事がございます』

「え?気になる事って何?」


 私のこの言葉で、お父様もルバー様も一歩前に出た忠吉へ注目したわ。


『論より証拠です。姫様、ステータス画面の矢印に視線を合わせてください。忠凶、頼む』

『はっ』


 忠吉は忠凶に何を頼んだのかしら?

 影の中に入って何処かに行ってしまったのよね。


「忠吉が、論より証拠だから……ステータス画面を見るのね。あ!矢印があるわ。これに視線を合わせると。四角い枠の画面が出てきてわね。何も書かれていないわよ」

『はっ。その画面に、バッグへ入れた物の名前が記載されます。右上に矢印がございますでしょうか?そこにまた視線を合わせてください』

「へぇ~。この四角い画面にバッグへ入れた物の名前が記載されるのね。で、右上の矢印ね。あるわ。あるわよ。ここに視線を合わせるのね」

『僕達の名前が記載された画面に変わると思います。そこにも矢印がございますか?』

「みんなの名前と矢印がある画面に移動したわ」

『一番下をご覧ください。忠凶の矢印に視線を合わせてください』

「一番下の忠凶ね。……で矢印から視線を合わせて……あ!“ナナの枕”だって」

『その“ナナの枕”に視線を合わせ“出す”を選んで、取り出して下さい』

「え?でも“ナナの枕”は忠凶のマジックバッグ改に入っているはずよ……え!!視線を合わせると取り出せるみたいよ」


 確かに視線を合わせると“出す・出さない”表示が出て来て、出すを選ぶと私の手中に愛用の枕が現れたわ。

 それを見た瞬間、ルバー様が部屋を飛び出して行った。

 すると忠吉が、この枕を私のマジックバッグ改に入れてほしいと言ってきたの。

 もちろん、入れたわよ。

 なかなか面白いわ。

 手で触って、私のステータス画面の矢印に視線を合わせると“入れる・入れない”表示が出て来て、入れるを選ぶと膝の上にあった私の枕が消えたのよね。

 で!画面に“ナナの枕”と表示されたの。

 そして、消えたのよ!私の枕が!!


「枕が消えたわ!!」


 私の声を聞いて、お父様もハンナも驚いていたのだけれど……どうも違うところで驚いていたみたい。

 私には目く前の枕が消えたことがビックリだったのよね。

 やはりどこかズレているわ。

 私が話し始めようと口を開きかけたとき、勢い良く戸が開いたの。

 しかも大きな音を立てて。


 ガダン!


 入ってきたのはもちろんルバー様。

 その姿は目を見開きお父様を睨みつけながら、私の枕を握りしめてプルプルしていたわ。

 そして、力無く雪崩れ込むように椅子に座ったの。


「ハンナ……すまないが水を一杯くれ。ナナ君、済まないね。君の枕を皺くちゃにしてしまったようだ」


 そう謝って、私に枕を渡してくれたわ。

 コレの何が凄いのかしら?

 すると忠吉が説明してくれたの。


『姫様。僕がルジーゼ地方にあります、お屋敷にいたとします。姫様はスアノースのこのお屋敷に居ります。僕がルジーゼのお屋敷で、新鮮なミルクをこのバッグに入れます。姫様はスアノースのお屋敷にてバッグから、その枕のように新鮮なミルクを取り出せます。ご理解いただけますか?20日かかる道のりを0日にしてしまう。そればかりか腐る事すら無い模様です。それがこのマジックバッグ改なのです』


 私は驚きのあまりに言葉を失ったわ。

 どんな魔法を使ったのでしょう?

 そんな目でお父様を見ると横からルバー様が話しだしたの。


「ナナ君。忠吉はどんな話をしたんだい?」

「はい。忠吉がルジーゼ地方にありますお屋敷に居て、私がこのスアノースのお屋敷に居るとします。ルジーゼ地方にいる忠吉がバッグに新鮮なミルクを入れて、スアノースに居る私がその新鮮なミルクを取り出します。20日かかる道のりを0日にしてしまう。さらに腐敗する事もないようです。それがこのマジックバッグ改だと、話しています」

「その通りだ。ガロス……お前は何を作ったんだ。どこからどうやって何を作った。順を追って説明しろ」


 私が話した内容に衝撃を受けて、誰も話さなくなったわ。

 そんな空気をぶち壊して、お父様がお茶を啜った。

 ちゃんと筋道通りに話して下さいね。


「ルバー、すまん、迷惑かける。

 まずは順を追ってだなぁ……と言いたいが順番も何もないんだ。まずはマジックバッグの改良を頼まれたが最初だなぁ。ナナ、マジックバッグの仕組みは理解しているかなぁ?」

「いいえ、全く解りませんわ」


 突然、話を振られ正直に答えた私。

 するとお父様は懐からハンカチを取り出し、テーブルに広げたわ。


「少し難しいかもしれんが。ナナ、このハンカチにコップは何個入るかなぁ?」

「え!包み込むなら……4個ぐらいですかね。上に置くだけなら10個はイケるかしら?」

「うむ。いい答えだ。上に置くだけなら10個は置ける。そう、このハンカチの最大空間量はコップ10個。この最大空間量をギルドカードに繋げる事により、無理やり空間量を押し広げて収納することが出来る。この空間理論を施したのが、マジックバッグなのだよ。ところがこれにも問題がある。入れるだけで認識、識別が出来ない事だ。埋没してしまい樹海になる。そこに食べ物などを入れようものなら……言わぬが花だなぁ」


 そこで話を切り、お茶を一口啜ってから話を続けたわ。


「どうしたものかと思案している時に“呪い騒動”が起こり、棚上げにした訳だ。

 さて、ナナに質問だ。武器・防具・アイテムにどれだけの加護を付けることが出来る?」

「え!……」

『姫様。1つ又は2つでございます』

「これ!忠吉。そなた答えを教えたであろう」


 私の方を向いていた忠吉が、慌てて列に戻り頭を下げて直立した。

 忠吉に悪いことをしたわ。

 ごめんなさいね。


「忠吉、ありがとうね。1つ又は2つですわ」

「……まぁ、いいであろう。では」

『姫様。例外もございます。伝説級の防具・武器・アイテムには沢山の加護が付いていると思われます』

「これ!忠末。ナナに答えを話したであろう。みんなして甘いぞ!」

「うるさいぞ!ガロス。お前が1番甘いわ!続きを話さんかぁ!続き!」

「せっかちだぞ、ルバー。話すからまぁ~、待て。忠末はなんと言ったのだ?」

「はい、お父様。例外もございます。伝説級の防具・武器・アイテムには沢山の加護が付いていると思われます。と話していましたわ」


 忠末も慌てて頭を下げて列に戻り直立していたのには可哀想だったのだけれど、少し笑えたわ。

 でも笑っていたのは私とお父様だけなのよね。

 ルバー様はこめかみピクピク、ハンナはお目目グルグル。

 ちゃんと理解できているのかしら?


「忠末の話した通り。普通のアイテム類には1個、付けて2個だ。それ以上だと、その物自体が壊れてしまう。ところが伝説級の武器・防具・アイテムには多くの加護が付いている……かも?」

「かも?ですの」

「そうだ“かも”としか分からん。仕方のない事なのだよ。伝説級のアイテム類を、そうやすやすと研究させてもらえないかなね。

 と・こ・ろ・が!

 我が娘可愛さに伝説級のアイテム聖女の祈りをチョン切ってしまった者がいた。まさか、俺もハサミで切れるとは誰も思わなかったよ。母の愛がそうさせたんだろう。まぁ~そのおかげで切れ端を貰う事ができた。で!研究した結果……」


 誰もが息を呑んだわ。

 母の愛が切れないはずのアイテムを切断した。

 そこから生まれた新事実……あぁ~、話している内容は難しいけれどドキドキするわ!!


母の愛は無限の宇宙より広大なのだ!!

と誰かが言ったとか言わなかったとか?


分かりきっている事ですが、ファンタジーの世界です。

ですが、おかしい所がございましたら……教えて下さい!お願いしす!


次回は時空理論の話です。小難しかったらごめんなさい。

それではまた来週会いましょう。


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