23話 あらあら、竜王は指名制ですって
昨晩はよくおしゃべりしたわ。
魔獣や魔族の事について話したのよね。
でも主導権を私が握ったから話しやすかったわ。
それでもまだまだ謎は多いのよ。
ルバー様ではないけれど、魔族って何なのかしら?
謎は深まるばかりよね。
はぁ~考えても分からないものは分からないわ。
お腹が空くだけよ。
さぁ!
朝ご飯には何かしら?
目が覚めた私は、ベッドの縁に這い出で座ったわ。
投げ出した脚の影からハチがヌルッと出てきて、ベッドの続きで脚にフイットしたのよ。
驚いたのなんの!
突然出てこられると本当にびっくりしちゃうわ。も!
「ハチ!驚くじゃないの!」
『えへへ……狙っていたんだ!コレならすぐに移動できるワン』
「確かにすぐ移動できるけれども、突然出てこられるとビックリするわ」
『そうワンかぁ?驚いているナナも可愛いワン』
「……ごまかしたわね。どこで覚えたのやら。それはそうと、ロクはどこに行ったのかしら?」
『魔力察知と気配察知で探ってみたらいいワンよ』
「それもそうね」
昨晩、寝るときになってハチとロクとネズミ達と話し合ったの。
その結果、スキル気配察知も取得すべきだ!とのハチとロクの主張でスキルを取った。
ちなみに纏めるとこんな感じね。
【ルジーゼ・ロタ・ナナ 5歳 Jランク】
《スキル》
隠匿・意思疎通・気配察知・魔力察知
《特殊スキル》
獣の声
【ハチ】オス Eランク
《配下魔獣 ウインドウルフ》
《スキル》
影・意思疎通・完全擬装・魔力察知・気配察知・闘気功
【ロク】メス Cランク
《配下魔獣 黒ヒョウ》
《スキル》
影・意思疎通・完全擬装・気配察知・魔力察知・闘気功
【忠大】オス Gランク
《配下魔獣 ケナガネズミ》
《スキル》
影法師・意思共通・走破・完全擬装・気配察知・魔力察知・闘気功・絵心
こんなところね。
やっぱりネズミ達のスキル絵心が光っているわ。
でもこのスキルを取得したところで、絵が上手にかける訳ではないのにね。
1に練習2に練習3、4が無くて5に練習。
とにかく練習あるのみ!なのよね。
頑張れ!ネズミ達!!
私はネズミ達にエールを送りつつ、ハチの背中で目を閉じて意識を集中させたわ。
すると訓練場でロクとお爺様の気配と魔力の流れを感じたの。
まさか……試合をしているの?朝早いのに?
「ねぇ……ハチ……まさかお爺様と」
『そうワンよ。朝の運動に行くニャ!とか何とか言いながら布団を抜けだして行ったワン。ほっといて洗面所へ行くワン』
「大丈夫……よね」
『もちろんワン。ナナのお爺さんも鬼の様な強さを持っているから平気ワン』
「ねぇ……ハチ……もうワンって言わなくてもいいんじゃないの?」
『そ、そうかなぁ?僕としては可愛さもアピールしているワン』
「誰によ?」
『え、え~っと……洗面所に着いたワンよ』
まったくねぇ~、色々と誰に教わったのかしら?
身支度を整えた私は、食堂に向かったわ。
気配を察知したのか、ロクとお爺様も食堂にいらしたの。
シャワーでも浴びてきたのかしら?
砂埃1つ着いていなかったの。
それというのも、私は呆気無くお爺様に攫われてしまったのよね。
そしていつものスリスリ。
「お、お爺様!お、おはようございます。訓練をしていたのではありませんの?」
「めんこい、めんこい。おはよう、めんこい、めんこい。その通りじゃよ。ロクは便利じゃのぉ~。まさかウォーターボールにあんな使い方があるとはなぁ。面白いのぉ」
『あ!いたいた。ハチ、いつものやってニャ』
ぐしょ濡れの貧相なロクが、窓の縁に座っていたわ。
そして今更ながらに気がついた事。
お爺様の御髪が濡れていた事と首にタオルをかけていた事にね。
う~ん……何となくわかるわ。
『またワンかぁ?まぁ~いいワンけれど……』
「ハチ?何をするの??」
窓辺に座っているロクに向かって、ハチが夏みかん大のウインドボールを放ったの。
え!と驚いている間にウインドボールが直撃……ではなくロクに当たる直前、細かい亀裂から強い風が突きつけた。
『あ~、さっぱりしたニャ!乾いたしバッチリね。ナナ!おはようニャ』
「今のは何!?」
私の質問はロクのダイブで掻き消されてしまったわ。
抱っこしたロクの濡れていた毛は綺麗に乾きサラサラしていたの。
もちろん私も驚いたけれど、私を抱えているお爺様もびっくり眼だったわね。
改めて質問をし直すことになったけれど。
それにしてもこの子たち手馴れていたわ。
「ロク?大丈夫なの?ハチ、今のは……なに?」
『今のワンかぁ?アレは少し小さめの無闘玉の中にウインドボールを練り込んで、細かい亀裂をロクに向けて放っただけワン。そうすると強い風だけがロクに吹くワン。こちらから同じ力で支えてやれば安定して風だけがロクに行くワン』
『そうニャ。すぐに乾いて便利いいニャ』
「確かに……でも、一歩間違えれば大惨事ね」
『アレぐらい平気ワン』
『アレぐらい平気ニャ』
物凄く自慢気なハチとロク。
確かに面白いけど……。
「無茶しないでね。心配だわ」
『怒られたワン……』
『怒られたニャ……』
項垂れる尻尾に、お爺様が朗らかに話しだしたの。
「あははは!ナナ、そんなに言ってやるなよ。それにしてもこの2匹は凄いのぉ。ウォーターボールをシャワーのように使ったり、ウインドボールで乾かしたりと、魔術をうまく活用しとる。確かに緊急用の水源としてウォーターボールだったり、ウォーターリキッドだったりは使うが……一歩間違うと大惨事になる。わし達が魔術を使うよりも凄い使い手だよ」
『この爺さん。よくわかっているニャ』
そう言うと私越しにゴロゴロ甘えだしたのよね。
こういう時だけ可愛いんだもん。
お爺様もまんざらじゃないし……猫って役得よ。
私がうなだれていると、後ろからハンナと幽霊が現れた。
「キャ!ハンナ、後に幽霊が!!」
「ナナ君……幽霊は……酷い。そんな事より、君に聞きたいことがあるんだ。少し時間をいただけるかい?」
「なんだ、ルバー様でしたの。驚きましたわ。もちろんいいですわよ。でもその前に朝ごはんをいただきませんか?朝はしっかり食べませんと働きませんよ」
「確かに、そうだね。この歳で徹夜は流石に辛いね」
「え!ルバー様は……歳いくつ?」
「あははは!確かに、確かに、見てくれはハンナと変わらんが……俺と変わらんぞ」
「お父様……え!では40歳……ウソ!!」
あまりの真実に、大好きなフレンチトーストの味がわからなかったの。
残念……でもデザートのチーズケーキは幸せだったわ。
先人の異世界人に感謝よね。
そしてお父様の執務室でルバー様の質問に応じたの。
「ルバー様。少し待ってもらえますか?」
「もちろんだよ」
「忠大、いるかしら?」
『はっ』
執務室は、学校の校長室に似ているわね。
黒い猫脚のソファーに、お爺様に抱っこされながら座ったわ。
もちろん膝の上にね。
私を誰にも渡さないのよ、この人。
ここに来てから、お父様にもハンナにも抱っこされた事ないわ。
当たり前のようにお爺様だもの。
まぁ~大きいから見晴らしはいいんだけれどね。
テーブルには、私のミルクが入ったカップとコーヒーが入ったカップが4個あったわ。
その中で私のカップの影から忠大が出現。
何で私のカップと分かるのかしら?
不思議なことだらけね。
「ルバー様。何をお聞きになりたいのですか?」
「あ!そ、そうだね。その……竜王について、もう少し詳しく教えてくれないかい?」
「……ルバー様。1つお聞きしたいのですが、この世界に竜もしくはドラゴンってどのくらい居るのですか?」
「ナナ様。遥か昔には居たかもしれませんが、今は伝承話に出てくるぐらいです。祠には大抵、竜を祀ってあります。本当か嘘かはわからないくらい祀ってありますよ」
「ハンナ、そうなのね」
「で、魔族側にはどれほどの竜が居るのかが知りたい」
ルバー様は私にではなくて忠大へ直接、話しかけたわ。
まぁ~私もそのつもりで呼んだのだけれど、釈然としないわね。
「ねぇ、忠大。どうなのかしら?」
『はっ。魔族側でも竜は1匹だけにございます。リザードマンやワイヴァーンはドラゴン種となり、竜ではありません』
「なるほどね。ルバー様。魔族側でも竜は1匹しかいないようです。リザードマンやワイヴァーンはドラゴン種で竜とは違うようですわ」
「1匹だけかぁ……その竜王はえらく長生きだなぁ」
「お父様、確かにそうですわね」
『姫様、違います。聞いたところによりますと竜王は指名制だそうです。竜王が次の竜王を指名して魔力を注ぎ込み竜王となるようです』
「へぇ~。それで1匹しかいないのね。ルバー様。竜王は指名制ですって、現竜王が次の竜王を指名して魔力を……という事は忠大……捕食するの?」
『はい、その通りでございます。完食する事で、竜の力と魔力と記憶を受け継ぐのだそうです。おそらくですが、襲われたのは新しく竜王になったばかりだったからではないでしょうか。そうでなければ、紅蓮の竜王が尻尾を掴まれるわけはありません。それほどの力を保持しているのが竜王なのです』
「……」
「ナナ様。大丈夫でございますか?」
「あ!ハンナ、ごめんなさい。大丈夫よ。忠大の話では、現竜王が次の竜王を指名して魔力を注ぎ込み…………完食する事で竜の力と魔力と記憶を受け継ぐそうです。おそらくその隙をついて襲われたのではないでしょうか。そうでなければ紅蓮の竜王が襲われる訳はないと、それほどの力を持っているのが竜王だそうです」
「……誰が竜王を襲ったのか……」
『それは分かりません』
「ルバー様……それは分からないそうです。魔族側でも何か起こっているのかもしれませんわね。魔力を増している方々が居るように感じます。怖いですね……大丈夫なのですか?」
「う~ん……」
ここでお父様が口を開きましたわ。
「ルバー。誰が討伐に向かったんだ」
「う~ん……問題なくは……無い……」
「歯切れが悪いなぁ。誰が行ったんだ?」
「イヴァンとマギノだ」
「……マギノは良いにしてもイヴァンは聞く耳を持たんだろう。よく言う事を聞いたなぁ」
「何も言ってない。ただ、被害が出ても知らんと言っただけだ」
「また無茶をしたなぁ」
「お父様、ルバー様。そのイヴァン様とマギノ様という方はどなたですの?」
「あ……まぁ……なぁ……」
と何とも煮え切らない言葉です事。
何かあるのかしら?
チラリとハンナを見てみると、苦虫をつぶしたような顔をしていたわ。
コレは何かあるわね。
そう思って聞いてみたら……ばかばかしい話にうんざりした。
どこの世界に行っても差別に蔑み。
本当に飽き飽きするわ。
竜について少し詳しく書いてみました。
竜とドラゴンを別物として考えて下さい。
竜の劣化版がドラゴンと言った感じですね。
私は辰年になので竜モノは大好物です!
自然と目に止まるのは仕方の無い事ですよね!
辰年あるあるです。
それではまた来週会いましょう。




