21話 あらあら、ドロップキックですって
「Cランクだと!!!ルバーどうなっておる。ルバー答えぬかぁ!」
「ガウラ様……僕も始めて見ましたので答えようもありません」
ハチとロクに恭順の首輪を着けることが出来て、喜んでいたの。
だって嬉しかったのよね。
舞い上がっていた事を認めるわ。
でもね……でもよ!
忠大が私の頭に直接、話しかけてきたのよ。
突然やめて!
ビックリするでしょうが!
〈『姫様。渡りネズミの件は話さなくてもよろしいのですか?』〉
「ご、ひゃくえん!!何なのよ!!!」
〈『姫様。コレはアイテム恭順の首輪を使い配下にした獣がいる場合、自動的に取得するスキル意思疎通です。ついでにスキル影も同じです。このスキル影は配下の獣が、姫様の影に潜む時に必要なので自動取得していると思われます』〉
「私はどうしたらいいの?」
〈『頭の中でお話ください。もしくは声に出さずに口の中で……その……モゴモゴとお話くださればよろしいかと思います』〉
〈「う~ん……聞こえてる?」〉
〈『はい、しっかりと聞こえております』〉
〈「便利なようで難しいわね」〉
〈『すぐになれるニャ』〉
「ロク?あ!しゃべっちゃった。も~突然割り込まないでよ!ビックリするでしょう。しかも目の前にいるのにスキル意思疎通を使う意味ないじゃないの」
『だって使ってみたかったんだもん。ねぇねぇ、スキル影も使っていいニャ?』
「もちろんよ。忠大、スキルは誰に聞いたらいいのかしら?」
『ボクがお答えします。姫様は影を作るだけで大丈夫です。後は我々がその影に潜みます』
『忠凶……僕が影の中に……入れるワンかぁ?』
『大丈夫です。初めは躊躇いたしますがすぐに慣れます』
「こんな感じでいいのかしら?」
私は呆けているお爺様を放置して、両腕を伸ばし掌を広げて影を作ったわ。
まずはネズミ達が慣れた感じで入っていったの。
次はロクが右前足でチョンチョンと突いて、私の影に消えるのを確認してから飛び込んだ。
最後にハチだけど、腰が引けていてなかなか決心がつかない様子。
『あ~も!イライラするニャ!!』
いつの間にか、私の影から出ていたロク。
ハチに向かって駆け出したと思ったら、後頭部へと綺麗なドロップキックが炸裂したの。
反動を受けたハチは頭から私の影にダイブ。
「ハチ!大丈夫……なの?」
〈『大丈夫ワン。入ってみると快適ワンね。暑くも寒くもなくて、外だってナナの見ている風景がそのまま見れるし、話も出来るし、言うこと無いワン。ただ……』〉
ここまで楽しそうに話していたハチ。
私の影から飛び出して、滞空している間にロクに向かってウインドボールを放ったの。
『痛いじゃないかぁ!』
『ふん!あんたがウジウジしているからニャ。背中を押してあげただけニャ』
『背中じゃなくて頭だワン』
ロクに向かっていたウインドボールは、スキル闘気功で強化した左の尻尾で上に跳ね上げ、右の尻尾でウォータースピアを飛ばしウインドボールを貫通し破裂させたわ。
もちろんウォータースピアもね。
それにしても、なんでしょうねぇ。
獣のフリをしなくなった途端、魔力全開でじゃれてるのよ。
いつの間にかロクもハチも魔獣化していたのよね。
その大きさで遊ばれると怖いわ。
「も~2匹共、いい加減にしてよ!魔力全開で遊ばれたら周りに被害がでるでしょう」
『怒られたワン』
『怒られたニャ』
いつもの姿になった、ハチとロクは私の側に来て甘え出したの。
うぅ~ずるいわ。
可愛いんだもん。
思わずニッコリ笑顔になって撫で撫でしちゃったわ。
『えへへワン』
『うふふニャ』
〈『姫様』〉
「分かっているってば!ルバー様……正気に戻ってください。お話をしなければなりません。ルバー様!」
私はお爺様の肩越しにルバー様へ話しかけたの。
話しかけられた本人は、雷にでも撃たれたかのようにビリビリして再起動したわ。
ちなみにハチとロクは、私の影の中が気に入ったのかまた潜んでじゃれているたの。
楽しそうで、羨ましい。
「あ!ナナかぁ……魔獣とは何なんだ……混乱しかないよ……はぁ~」
「恭順の首輪も成功いたしましたし、すべてお話いたしますわ。ですがその前に、私の話をそのまま受け取り対応してください。後でいくらでも質問をお受けいたします。いいですか?」
「も、も、もちろんだよ」
「10日前後のガーグスト山から魔獣ワイヴァーンが人族側に侵入します。ランクで言いますとハチと近いようなのでEランクの魔獣ですが、間違えないでください。これまでの魔獣とは違い理性があります。おそらくですが2匹で連携を取ってくる場合もあるでしょう。もし無理ならハチとロクに行ってもらいます。……分かっているわよ!頭の中で暴れないで耳鳴りがしそうだわ……と、とにかく理由は後でご説明いたしますから、魔獣が侵入するので対策を立ててください。大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だよ。今からから連絡するから少し待ってくれ」
目を瞑りモゴモゴと口の中で話しだした。
たぶんスキル意思疎通を使っているんだわ。
私も傍から見たらあんな風に見えるのね。
カッコイイ感じに見えるように訓練しないと。
そんな風に心に誓っていると、忠大からお願いをされてしまったの。
〈『姫様。少しよろしいでしょうか?』〉
〈「なに?」〉
〈『取得したいスキルがございます』〉
〈「もちろん何でもいいわよ。実はね。貴方達1匹に付きスキルポイント50、私に入っているのよ。合計で430ポイントもあるのよね。ハチもロクも他のネズミ達も、欲しいスキルがあるなら教えて。取得するから……聞こえてる?」〉
〈『もちろんワン。だったら、気配察知を取得してほしいワン。魔力の無い人を察知するのは出来ないから』〉
〈『聞こえているよ。あたしも気配察知がいいニャ。後は……その時ナナに言うニャ』〉
〈『僕もワン』〉
〈『姫様。私達も気配察知と……その……スキル欄に絵心とあります。絵で伝える事もあるかも知れませんし……役に立たないかも知れませんが……取得して頂く訳にはいきませんか?』〉
〈「もちろんOKよ。気配察知は私も取得するわ。あと絵心ね。ちょっと待ってね……はい!取得したわよ。確認してね。残りは325ポイント……凄いわ。沢山あるわね」〉
うふふ、絵心ね。
確かに文字で伝えるにも限界があるもの。
でも、ネズミが絵心……大丈夫かしら?
みんなの様子を見ていると、やはりモゴモゴしていてわね。
やっとの事で立ち直ったお爺様たち。
深いため息と共に、吐き出された言葉は混乱だったわ。
まぁ~実際にあたふたしていたのはハンナだけだったけれどね。
「ナナ様!ガーグスト山から魔獣ワイヴァーンが侵入?侵略ですか!え!え!え!!」
「ハンナ、落ち着いて。大丈夫だから」
「そうだぞ。俺達が慌てても仕方あるまい。とりあえずナナの話を聞こう」
「そうじゃなぁ。腹も減ったし晩飯後にした方がいいだろう」
「お父様、お爺様。そうですわね。私もお腹が空きましたわ」
「そうじゃろう~そうじゃろう~。う~ん……可愛いのぉ~。ナナはワシに似て賢くめんこい〜めんこい〜のぉ〜」
ダメだこりゃ~。
ハチとロクにも首輪が着いた後の話でした。
スキル意思疎通より影の方が使い勝手が良さそう。
話は横道に逸れてしまうのですが……使っていた文字入力アプリが使えなくなりアタフタ。
探しに探して何とか使えるモノをゲット。
次の問題として、私自身の慣れが大問題。
もう少し訓練が必要ですね。
はぁ〜、最大のピンチかも?
それではまた来週会いましょう。




