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18話 あらあら、爺ちゃんは凄いじゃろうですって

 重たい沈黙だわね。

 私が作ってしまったモノだけれど。

 自分でも酷いことをしていると思っているわ。


 だって魔獣の情報を駆け引きの道具に使ってしまったのだもの。

 人の命が危険に、晒されるかもしれないのに。

 ハンナの眉間が波打つ訳よね。

 でも……私だって必死なの!

 ハチとロクとネズミ達を守る為には何だってするの!

 まだ魔獣ワイヴァーンの襲来まで10日あるのだか何とかなるわよ……多分……おそらく……きっと?


「ナナ様、着きましたよ」


 ハンナは奥歯に物が挟まったような言い方をしたわ。

 お父様は沈黙。

 ルバー様は瞑想?それとも迷走?

 目が閉じていても分かるくらい、グルグルしていたのよね。

 多分だけれどスキル意思疎通で誰かと連絡をしていたのではないかしら。

 口もモゴモゴしていたし……まさに東奔西走の忙しさのようね。

 ごめんなさい。


 ほどなくして到着したのはいいけれど、ここはルジーゼのお屋敷に戻ってきたのかしら?と思ってしまうほどの類似した建物が建っていたの。

 あらら~と見上げた私をお父様の腕からスルリと奪われ、チクチクする髭をスリスリする人物の腕の中にいるのよ。

 驚くわよね!

 するとウットリする声で何度も何度も同じことを言っていたわ……誰?


「父さん!ナナが嫌がっていますよ」

「なに!そ、そ、そ、それはいかん!!」


 大袈裟に驚いて私を高く掲げて見上げている老君。

 それにしては筋骨隆々でお父様より一回り大きいの。

 本当に年寄りなの?と思いたくなるけれど髪を見ると……ねぇ。

 お父様に窘められて頬ずりは止めてくれたけれど、このままみたいね。


「大地の勇者ガウラ様ですね。はじめまして、ナナです。お爺様」

「……う~ん……。誰に聞いたか知らないが、大地の勇者は別な者が名乗っておる。ワシはただの隠居爺よ。それにしても、めんこいのぉ~、可愛いのぉ~、めんこいのぉ~」

「お、お、お爺様。勇者の肩書は変わるのですか?」

「いやいや、めったに変わらんが今回は特別なんじゃ。今の大地の勇者は……まぁ~ええわ。そんな事よりナナの仲間は凄いのぉ〜。危うく負けるところだったわい。

 手紙には魔獣だと書いてあったんだが……そんな素振りは最後まで見せなかった。大したこと無いか、自分の立場を理解して無茶をしなかったかは分からんが後者ならワシ達は魔獣に対する考え方を改めんといかん。ルバー!聞いとるかぁ」

「ガウラ様。それどころではありません!

 ナナ……早く恭順の首輪を使いそこの獣だか魔獣だかを配下にしてください」

「なんじゃ?機嫌が悪いのぉ~」


 確かにルバー様の眉間の皺がハンナより波打っていたわ。

 あははは……どうしましょう。

 途方に暮れている私の目に飛び込んできたのは、初めて見るハチとロクの姿だった。


「キャー!ハチが白から茶色に変わってるし、ロクは灰色になってる……貴方達は何をしていたの?」

『忠吉から聞いてないワンかぁ?』

「もちろん聞いたわよ!でも、そんな姿になっているだなんて……聞いてない」

『この爺さんが悪いニャ。見かけ以上に強かったもん。本来の姿になる寸前だったニャ』

「も~ハンナ!水、水かけて!洗わないと」

「ナナ様。私がしておきますから、恭順の首輪の説明を受けて準備を進めてください」

「分かったわよ……そんなに怒ることないのに……」

「ナナ様!」

「はい、はい、は~い!」


 ルバー様に話を聞こうと振り向くと、私の肩に忠吉が現れたの。


『姫様。恭順の首輪の事なら、こちらのガウラ様にお聞きになる方がよろしいかと。作られた本人です』

「え!そうなの!お爺様!お爺様が恭順の首輪を作られたのですか?」

「なるほど。そのネズミが、ワシ達の情報をナナにながしていたのだなぁ。凄い情報収集力だのぉ。お前の地位も危ういんじゃないかぁ?」

「……」


 無言のルバー様が怖いわ。

 私を抱えたまま訓練場へと向かったお爺様とお父様、そしてルバー様。

 その道すがらお爺様が教えてくれた事は……。


「確かにワシとワシの父。ナナからみると曾祖父になるなぁ。ワシの父も孫のガロスを可愛がっておったわ。確かに孫は格別じゃのぉ~めんこいめんこい」

「お爺様。そこはいいですから!曾祖父がどうしたのですか?」

「そうじゃなぁ。ワシの曾祖父は発明の父と呼ばれるほどのアイテム作りの名手じゃた。ワシはコレクション派じゃなぁ。魔力の無いガロスを心配してコレクションしていた従魔の首輪に目をつけたんじゃ。そして作り上げたのが恭順の首輪だ。じゃから、正確に言えば作ったのは曽祖父でワシじゃない。まぁ~作り方は知っているが……今ではガロスの方が詳しいわ」

「お父様が作るのですか?」

「まぁ~趣味の1つだよ」

「趣味にしては度を越えているがなぁ」

「そうなんですの?お父様……うふふ。キャ!訓練場が!!」


 私の目前に現れたのは平坦な練習場ではなく、地割れを起こし隆起した荒地が広がっていたの。

 ここは魔獣などが襲ってこない平和なスアノース王国のはず、私は慌ててお父様を見たわ。

 でも反応したのはお爺様。


「すまんすまん。ついついなぁ~やってしもうた。直すからしばし待っとれ」


 そんな風に話して私をお父様に渡してから、大地に両手を突いた。

 するとあら!不思議。

 お爺様を中心にして大きな魔方陣が表れ、砂誇りが舞い上がり収まると平坦な大地が現れたの。

 コレなら訓練が出来るわね。

 もちろん私はお目々パチクリでビックリしていたわ。

 当のお爺様は明朗快活と笑い、お父様の腕から私を攫ったわ。

 その早業は見事ね。

 まぁ~そこはスルーで。


「お爺様!凄いです!あっという間に綺麗になりましたよ」

「だろ~爺ちゃんは凄いじゃろう。めんこい、めんこい」


 このお爺様はとことん私に甘いわね。

 目尻が下がりっぱなしだもの。


 それにしても凄いわ。

 あんなに荒れていた大地が嘘みたいに綺麗になっていたのですもの、まさに魔法だわ。

 感心していた私にハチとロクが話しかけてきた。


『ナナ!あたし綺麗になったニャ』

「とっても綺麗よロク」

『僕もさっぱりしたワン』

「ハチも素敵よ」


 喜び合っていたのにハンナが水をさしたわ。

 目が、目が、怖い。

 早速、始めた方が良さそうね。

 私はお爺様の腕の中からみんなを見回したの。


 そして受け取ったわ。


「ナナ様。こちらが恭順の首輪です」

「ありがとう。お爺様、お父様、ハンナ、ルバー様。それでは恭順の首輪を使わせえもらいます。ちなみに、どうなれば成功ですの?」


 答えてくれたのはお父様。


「ステータス画面が現れたら成功だよ」

「ありがとうございます。でぇ……誰からする?」


 私はお行儀よく並んでいるハチ達に聞いたわ。

 訓練場の真ん中でハチ、ロク、ネズミ達が並びその前にお爺様に抱かれた私がいて、その後ろにお父様、ハンナ、ルバー様がいるの。

 そんな感じね。

 当然のように恭順の首輪をする順番で揉めると思ったら、違ったのよね。


『誰からするワン』

『魔力が一番多いあたしからが良いと思うニャ』

『お待ちください。恭順の首輪の元は従魔の首輪でございます。忠吉の話では首輪をするだけでオーバードライブする可能性があるやもしれません。そこで私が初めに使います。もしオーバードライブしたのなら、その隙にお逃げください。私ぐらいなら、そこの人族でも討伐は可能だと思います。

 忠吉、忠中、忠末、忠凶……後は頼むぞ』

『『『『はっ』』』』

「ダメ!ダメよダメよダメーなの!!ハチもロクも貴方達も、誰も欠けることは許さないんだから!」

『……ネズミ達。お前たちが悪いワン。自分の命を粗末に扱うな!ナナは僕達の命を大切に思っているのだから。ナナを心から護りたいのなら、自分たちの命も守れ。出来ないのなら僕達がいるワン。頼れ』

『そうニャ。あたし達の力を甘く見るでないよ』

『……申し訳ございません。私が軽率でした。ハチ様、ロク様、よろしくお願い致します。異変が起きましたならばお知らせ致します。では、姫様、準備は整いました』

「そうなの……大丈夫……よね?」

『もちろんです』


 少しドキドキしながら恭順の首輪を受け取って、一歩前に出た忠大の首に着けてみたけれど……あれ?

 大丈夫よね?


 何も……起きない?

 何で???


お爺様、初めての孫を抱く!

何時の時代でも初孫は別各……らしいです。


ちなみに、初めての甥っ子もめちゃめちゃ可愛いです。

懐かれると弱いですね。メロメロです。


それではまた来週会いましょう。

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