表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/154

16話 あらあら、魔獣ワイヴァーンですって

 冒険者ギルドの登録なんて、すぐに終わるらしいの。

 でも私が無知なばかりに、半日もかけてしまったわ。

 ハチとロクそしてネズミ達は大丈夫かしら?

 話はある程度、忠凶から聞いているけれど全てでは無いからね。

 心配よね。

 でも一番の心配は今なのよ!今!!


 ギルドから馬車に乗り込んだ時、なぜかギルドマスターであり天地万物の勇者ルバー様も一緒だったの。

 迷惑だわ!


「なぜルバー様もご一緒なのですか?」

「ナナ君……寂しい事を言わないでくれよ~シクシクだよね〜」

「ご冗談もいい加減にしてください。ルバー様」

「ハンナはつれないねぇ〜」


 私達はギルドを出て、スアノース王国にあるロタ家の屋敷へと移動している最中。


 私の隣にはハンナが座り、前にはお父様で隣にはルバー様がいるわ。

 おちゃらけているようで、本質を見抜く眼を持つ勇者様。

 この方を敵に回すと面倒くさい事になるわね。

 などと思っていると徐にお父様が渡したダイヤを取り出し、話し始めたの。


「ナナよ。このダイヤの意味を理解しているのか?」

「え?」

「やはり、そうかぁ。だったらこのダイヤはナナが持っていなさい」

「え!でも……。でしたらその意味を教えて下さい」


 すると私の隣からハンナが話し出した。


「ナナ様。このダイヤの成分は何だと思います?」

「ダイヤの成分?鉱物だから……炭素?」

「いいえ違います。このダイヤの成分は、ナナ様の気が結晶化した物です。コレはナナ様の分身なのですよ。

 情報を消してただの石にしなければ、この大きいダイヤからナナ様の情報や位置、はたまた健康状態まで読み取れるのです。もちろんスキル隠匿で情報を隠していれば読み取れることは出来ないのですが……」


 ハンナがチラリとルバー様を見たわ。

 すると手をヒラヒラさせて楽しそうに笑顔を作り。


「私なら見れるよね〜」

「そうなんですよ、ナナ様。スキル隠匿と言えども完璧ではありません。それほどこのダイヤはナナ様にとって大切なモノなのです」


 ハンナが話し終えると、お父様が私の手の中にダイヤを置いたわ。

 そのダイヤをまじまじと見つめながら、納得したのよね。

 ハンナの妹セジルが慌てるわけよ。

 そんなに大切なモノだったなんて驚きだわ。

 でも、だからこそなんだけれど……ね!


 私はお父様の手にダイヤを戻して、そんなこと知ってましたわよ風に話しだしたの。

 少し無理があったかしら?


「そんな事ですの。だったら平気ですわ。私の情報が知りたい方は教えて差し上げます。ハンナ!そんな怖い顔をしないで、分かっているわよ。無限のステータスって言いたいのでしょう。でも……それでも……違うわね。だからよハンナ。だからこそ、このダイヤはお父様とお母様の側に置いておきたいの。だって私を感じるアイテムでしょう。親だもの子供を近くに感じたいと思うでしょう」

「ルバーよ。どうすればスキル走破を修得出来る?」

「お前には無理だ。ソノア様なら何とかなるかもなぁ〜。もっとも早いのは爺さんだよね」

「マジかよ……はぁ」


 お父様は掌のダイヤを見つめ。

 そして私の手を取り、しみじみ話しだしたの。


「俺には勿体ないほどの娘だなぁ。それなのに……俺は……」

「お父様。何も言わないで下さい。ちゃんと愛は感じていましたよ」

「ナナ……すまない」


 何度も何度も謝っていたの、でもお父様とお母様の気持ちも分かる気がする。

 私自身は子供を捨てたことは無いわよ、それでも堕胎した事は転生した今でも自責の念に捕らわれているわ。

 きっとそんな感情よね。

 2人にとって私という存在が重荷にならなければいいのだけれど……これからの私、次第よね。


 結論付けた私の肩にハツカネズミが現れた。


「ひゃくえん!」

「ナ、ナナ様?」

「ご、ご、ごめんなさい。チョツトした振動に驚いただけよ」


 何とか誤魔化せたかしら?

 苦しいけれど、今はそれどころでは無いの。

 突然、現れたハツカネズミは忠大で、忠凶と入れ替わるようにして2匹がまた1匹へとなり髪の毛に隠れるようにヒソヒソ声で話しだしたわ。

 私は外の景色を見るふりをして話を聞いたの。

 もちろん私もヒソヒソ声よ。


「忠大どうしたの?」

『はっ、申し訳ございません。ですが火急のお知らせがございます』

「なに?」

『ネズミには渡りをする者がおります。魔族側にも人族側にもネズミは居ります。渡りネズミは行き来する者達の事です。そのネズミから聞いた話でございます。

 魔獣の中には魔族すらも配下に置く事が出来るほどの、魔力を秘めた者がおります。その魔獣王が何者かに襲われ瀕死の体でメースロア山を越えて息絶えたと思われます。問題はここからです。その魔獣王の遺体を取りにリザードマンから進化し、ワイヴァーンとなった魔獣が2匹ガーグスト山を越えて侵入してくる模様です。ちなみにルジーゼ山を越えなかった理由は、勇者が多い事を知っている為に使わなかったと思われます。有名な話ですから。

 ネズミの話では、10日ほどでかけて来るのではないかとの話です。ハチ様の足なら楽勝で往復できるでしょうし、ロク様の魔力なら進化したとは言え、リザードマンに遅れを取ることは無いと思われます。ハチ様とロク様に頼みますか?でしたら今すぐ連絡をいたします。姫様、いかがいたしましょうか』

「え?どうすると言われても……。ハチとロクはもちろんの事あなた達地も、遠くに行っては駄目よ。でも……ガーグスト山を越えるワイヴァーンって……少し心配ね」

「ナナ様!今、ガーグスト山を越えるワイヴァーンと言いましたよね。先程からネズミ達とお話されていた事は気付いておりました。話していただけますよね」


 視線が痛いわ。

 やはりバレていたようね。


「忠大、待機よ。私が行くまで待っていて。私なら平気だから!先に行きなさい!」

『はっ』


 私の影に入り姿を消した忠大。

 完全に消えたのを確認してから振り向いたわ。

 敵はルバー様よね。


 先手必勝よ!


「ルバー様。何か言いたい事がありそうですわね」

「あははは……よく分かるね。その通りだよ。そもそも、僕は今でも反対しているんだ。君には申し訳ないけれど恭順の首輪を使うことを承服していない。アレは魔力のない人にとっての希望の光なんだよ。それを異世界人に使われるのは、心情的に問題がある」

「だったら私と取引しませんか?恭順の首輪10個に匹敵するほどの情報を私は持っています」

「どんな?」

「それは……では私から質問ですわ」

「どうぞ」

「魔獣はどこから生まれてくるのですか?魔族と勇者の違いは?」

「は?魔獣は魔獣で魔族は魔族だろう」

「うふふふ……それでは答えになっていませんよ。私はそれ以上の情報を、まだ隠し持っています」

「うっ」


 この攻防に割って入った者がいたの。


「ナナ様……気持ちはよく分かるのですが……やはり被害が出るかも知れない事を駆け引きに使うのはよくありません。すべてお話ください」

「ハンナ、ごめんなさい。私は守りたいの!人族にとって魔獣は討伐対象の敵よね。でも恭順の首輪を着ければ私の配下の魔獣として認識されるのよ。上手く行っても行かなくても、どうでもいいの。首輪をする事に意味があるの……お願いよハンナ、少しだけ時間をちょうだい」

「ですが……」

「ハンナ!ナナの言葉を信じよう」

「ありがとうございます。ルバー様」

「礼はいらないから、君が持っている情報が、価値あるものであって欲しいよ」

「大丈夫ですわ。楽しみですわね」


 汗を掻いてしまったわ。

 冷や汗ものよ。

 嘘っぱちもいいところね。

 私が持っている情報なんて、ハチとロクに聞いた話しかないもの。

 正直なところ何が有用で、何が無用なのかすらも分からないわ。


 ………どうしましょう。


 それにしてもワイヴァーンって竜よね?ドラゴン?


 ……分からないわ。

 ………どうしましょう。

 ………どうしましょう。


陰険なルバー様ですね。

恭順の首輪は確かに魅力的ですもの。

私ならねこ型ロボットに着けたいですね。


昨夜「熊本地震」が起きました。

私の所は震度4でした。


被害にあわれた方にやすらぎと一刻も早い復興をお祈りいたします。


それではまた来週会いましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ