14話 あらあら、ステータスですって
乙女心をイジラれ真っ赤な顔をしたハンナ、怒っても怖いく無いわね。
でも、話を脱線して事故ったのは事実ね。
ここは彼女の意見にそって話を進めましょう。
「では、ハンナ君からのお叱りも受けたし話を進めようか」
そう言ってルバー様はテーブルに20センチほどの水晶を置いたわ。
もちろん転ばないように座布団の上だけれどね。
「コレがアイテム“見える君”だよ。この上に翳すと……」
あら!不思議!
ホログラムのように青い文字が浮かび上がったの。
そこには、こんな文字が浮かんだわ。
【火の勇者 ハンナ Fランク】
もちろん驚いたのは私だけ。
そんな真ん丸お目々の私を満足そうに見ていたルバー様。
「ここで横にひとフリ」
あらあら、不思議!
最初の文字は消えて、ハンナのステータスが浮かび上がったわ。
【ハンナ 25歳】
職業=勇者
レベル=50
ランク=F
HP=2500
MP=5000
STR(力)=87
VIT(生命力)=80
DEX(器用さ)=43
AGI(敏捷性)=74
INT(知力)=50
スキルポイント=50
「え!ハンナって25歳だったの!婚期が!」
「ナナ様……そりゃ~……うぅ~」
「あ!えっと……歳相応よ!大丈夫よ!それより職業が勇者ってどういう意味なの?」
思わず言ってしまった言葉に、ハンナはシオシオと項垂れてしまったの。
私は慌てて話題を変えたわ。
コレで立ち直ってくれれば、と思っていたら答えてくれたのはお父様だったの。
ハンナ……ごめんなさい。
「あははは、ナナよ。言ってくれるな。勇者は魔力を酷使するゆえ、色んな所に歪がでる。それに多忙だし独身者も多い。ハンナなんかまだ良い方なんじゃないかぁ」
「下手な慰め結構です!私にだって言い寄る男の人ぐらいいます!
そんな事よりナナ様、職業が勇者なのはですね。魔力を保有している兵士と同じ意味です。ですが魔術を使うために一般兵士と同等の扱いではありません。そのため職業欄に勇者と記載しています。勇者は魔力を使う者、もしくは魔術を使う者という意味です」
「へぇ~、だったら異世界人は?」
「異世界人の場合は少し意味が違います。彼等は魔力も凄いですが、特殊能力と前の世界の知識がこの世界を支えていると言っても過言ではありません。その為、色んな職業に就きます」
「だったら私にも何かしらの職業に就かなければならないの?」
「ナナ様の場合は……見てみるのが早くないですか?」
「うふふ、そうね。楽しみだわ」
「話も纏まったところで、君のギルドカードをここに翳してごらん」
そう言ってルバー様は私の前に見える君を置いたわ。
恐る恐る翳してみると……。
【ルジーゼ・ロタ・ナナ Jランク】
続けざまにひとフリしてみるたら……何度、振っても変化は無かったの。
「何度、振っても変化は無いよ」
「ルバー様……なるほどですわね。コレがスキル隠匿の効果ですか?」
「その通りだよ。まぁ~名前とランクが分かれば支障は無いから。でも犯罪者に隠し事は必要ないからね。この“スーパーなんでも見える君”の登場だ!
さぁ!ナナ、振ってごらん」
私の前には、少しだけ大きい水晶が置かれたわ。
並べて置いてあるから分かるけれど別々なら無理。
それにしても、“見える君”と“スーパーなんでも見える君”破壊的なネーミングセンスに引くわね。
でもこのアイテムは本物みたい。
翳してみると先ほどと同じ、私の名前とランクが浮かび上がったわ。
さらに振ってみると……。
【ルジーゼ・ロタ・ナナ 5歳】
職業=
レベル=1
ランク=J
HP=∞無限(+10)
MP=0(+10)
STR(力)=15(+10)
VIT(生命力)=10(+10)
DEX(器用さ)=20(+10)
AGI(敏捷性)=0(+10)
INT(知力)=40(+10)
スキルポイント=90
《スキル》
隠匿
《特殊スキル》
獣の声
「あら?職業欄には何も書かれていないわ!(+10)って何?あぁ!コレは私が着ている聖女の祈り効果ね。うん、納得。それと、特殊スキルってなにかしら?」
私の質問はどこに行ったの!的な感じでスルーされたのよ。
聞きたい事が多すぎるのが問題よね。
仕方が無いわ。
「なぁ!!ルバー……コレは本物なのかぁ?」
「ガロス。貴様、自分が作ったマジックアイテムを信用しないのか!」
「え!!お父様が作ったの?」
「はい、そうですよ。ナナ様。ガロス様はルバー様と協力して、マジックアイテムや魔術の開発をしています」
「ハンナ。物事は正確に伝えよ。俺はルバーにヒント言っているだけだ。開発はヤツの仕事、俺じゃない」
「お父様。それは違いますわ。ヒントは開発の燃料ではないかしら?ヒントが無いと出来ないことも沢山あると私は思いますよ。ねぇ!ルバー様」
「悔しいけれど、その通りだね。だが!僕はお前などの力を借りなくても平気だ!……が、助かっている……。ちなみにナナ、特殊〇〇は異世界人に多いスキルだったり魔術なんだよ」
「へぇ~、異世界人の証みたいなモノですのね」
「そうだねぇ〜」
「違うだろう!!ナナのHPだろうが!無限大なんだぞ!説明しろルバー」
「ガロス、説明しろと言われても……ナナくんが異世界人だからだろう」
「ルバー様!!いい加減にして下さい!無限大のステータスが、どれほど騒動を巻き起こすのかをナナ様に話して下さい。ナナ様は学生ですので職業欄にはそのように記載されます。今は入学前ですので空欄になっています。これでいいですね!しっかり、説明して下さい」
テーブルを叩かんばかりに拳を振り上げたハンナ。
お父様もルバー様も私も、まぁ~まぁ~と落ち着かせた。
振り上げた右手を左手で包み静かに下ろし、私の隣に座ったわ。
「そ、そうだね。改めて説明するから、少しは落ち着きなさい」
「はい、すいません」
反省していない顔をしながら謝ったハンナ。
私は悪くないと言いたそうな感じがしたけれど、言い出す前にルバー様が話し出したわ。
「ハンナが言ったように、無限大のステータスは問題を引き起こす。どんな問題か、分かるかなぁ?……少し難しいようだね。
無限大と言っても無限にHPがあるわけでは無い。おそらく細かい数字を表示するのが面倒くさくなった、神が無限大としたんだろうね。それでもこの世の中で君、以上にHPを持っている人はいないだろう。それほどのHPを保有している、と言うことは……」
何となくルバー様の言いたい事が、理解できた気がしたわ。
「攻撃を受けても倒されない、もしくは倒され難い。と、言うことは……私を盾に出来るワケですね」
「あははは!なかなか言うねぇ。盾までは言い過ぎでも近い事は出来る。だからこそ、ハンナは君のステータスを隠したんだ。ナナ、無闇に見せてはイケないよ」
「はい!ルバー様。ちなみに、お聞きしたいのですが。私以外に無限大ステータスの方は居られるのですか?」
あれ?
私マズい事を聞いたのかしら。
場の空気が淀んでしまったわ。
ハンナがルバー様を見て話しだしたの。
「ナナ様……この世界に無限大のステータスを持っているのは……天地万物の勇者ルバー様です」
「え!!」
私は思わずルバー様を凝視してしまったわ。
だって、雰囲気的に私しかいないような感じだったんですもの。
騙したのね!
感じ悪ぅ〜。
「あははは!悪いね、黙っていた事は謝罪するよ。
僕は産まれた時から、MPが無限大だったんだ。大変だったよ~、神を呪ったね。物心つく前から僕を巡っての争いが凄かった。もちろん王都へ直行便、だよねぇ〜。
無限大パイセンから一言!
幾ら無限大でも攻撃を受け続ければ0になるからね。僕だってこの王都を5回、焦土に還すほどの魔力を使えば枯渇するよ」
「と!いう事は……この王都を5回ほど焦土に還すぐらいの攻撃なら受けきる事が出来るわけね!」
「ナナ様!!!なんと言うことを!!!!」
「ハンナ……声が大きいぞ。ナナもルバーもハンナをからかうな」
「「ごめんなさ〜い」」
ハンナの大きな声に、いつの間にか部屋を出ていたセジルが何事かと思い入ったの。
貴女を待っていたの!
グットタイミング!
私はチャンスとばかりに行動を起こしたわ。
と言っても動くわけではないのよ……口だけね。
色々とチャンスだわ。
うふふ、ハンナここからが勝負よ!
ここまで書いてきて気がついた事があります。
ルバー様の人称代名詞「私」から「僕」に変わっていました!なぜだ!!
すいません……おそらくですが「私」ではしっくりこなかったと思います。話すときは「僕」で茶化す時は「私」と使い分けする事で自分を納得しょうと思います。
それではまた来週会いましょう。




