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137話 あらあら、新発見の結果ですって

 刀祢に対峙する為。

 刀祢の中に居るはずの、アークに会う為。

 私たちは力になり得る方法を考査したの。

 その結果、ハチの特殊魔術スキル“フリーザ”と、ロクの特殊魔術スキル“未来予想図”の再考査と実査に活路あり! と、纏めたの。

 ハチの方は何とかなったのよ。

 でも、ロクの方は2年もかかってしまったわ。

 本当に大変だったのよ、ロクが。


 でも、でも、でも ! !


『ウゲ! 』

『アハハハ! ハマった、ハマったぞ! 落とし穴にドンピシャだ! ! 』

『こんな事に、特殊スキル“未来予想図”を使うなワン』


 ここまで、完璧に使いこなせるようになったの。

 そもそも、ロクの“未来予想図”は、龍神が保有しているはずの術だったわ。

 それが回り回ってロクの元にたどり着いたの。

 神が使う魔術を獣が使えるはずないわ。

 と、誰もが思うわよね。

 私自身もそう考えるもの。

 でも、いま思うと魔獣だったから成し得た事だと、私は思うわ。

 純粋な力ほど、大きな成果を上げられるものね。

 ロクの特殊魔術スキル“未来予想図”は、私が思っていたより厄介なスキルだった様なの。

 なんせ、未来を知ることができるスキルよ。


 そう、スキル!


  少し前までわね。

 魔力を使わずに発動する術がスキルで、魔力を使用し術を発動するのが魔術という括りで表現していたの。

 でも、トッシュとククルの登場で大きく変わったわ。

 何が? ではなく誰が? の方が正しい表現ね。

 誰か? とはルバー様の事。

 彼がククルの特訓で、大きく成長したの。

 その成果が、無属性の発見と感じるだけで魔術の登録ができる様になった事。

 コレは、意識するだけで出来てしまうの。

 ルバー様のだけのスキル。

 それが生まれ変わった特殊スキル“全知全能”なの。

 呼吸するように使うのよ。

 その度に、新たな魔術やスキルが登録されて行っているわ。

 そこで、新たに開設されたギルドがあるの。

 名前は、レジストレーションギルド。

 みんな、レジストギルドと言っているみたい。

 もちろん冒険者ギルドと併用よ。

 ギルド長も、ね。

 話が脱線したわ。

 無属性の登場で、スキルと魔術の関係性が大きく変わったの。

 意味がまるで違うものに、よ。

 今では、無属性で発動する術や低燃費で出せる術や常時発動型の術、なんかもスキルの枠に入れているわ。

 無属性以外の属性の術を魔術と言っているのね。

 もちろん、私にもお父様にもカムイにも! 術が使えるわ。

 魔術ではなくスキルだけれど。

 でも、使えるのよ。

 魔力は私たちの中にも存在していたの。

 まぁ〜そのせいで、色々と大変だった事は割愛するわね。

 さて、大変だったのはもう1人存在するわ。


 その名は……ルジーゼ・ロタ・ナナ。


 私ですのォォォーーー! !


 それは、ロクが特殊魔術“未来予想図II”の実査をしている真っ最中の頃。

 いつもの朝。

 いつもの目覚め。

 いつもの食堂……のはずが、みんなが私より先に集合していたの。

 本日は7月7日。

 私の誕生日。

 みんなから、とんでもないプレゼントをくれたわ。


「「「「「「お誕生日おめでとう!」」」」」」

「エディ、ホゼ、青、マノア、ロキア、マナス……みんなありがとう」

「もちろんだぜ」

「お祝いをしてくれたのですから、お祝いをするのは当然です」

「ナナちゃんのお誕生日ですもの」

「ナナ! わたし張り切っちゃたから! プレゼントを早く開けてよ」

「ウフフ、楽しいです」

「あぁ〜、わたしがドキドキしちゃう〜」

「何で、マナスがドキドキするのよ」

「ウゥゥ〜」

「アハハハ! 本当にありがとう。開けるわね」


 大きな木の箱に入ったプレゼント。

 大きい割には、軽いの。

 何かしら?


「足? !」


 そうなの。

 左右の足が1組、入っていたわ。


「まさか……義足? ?」

「そのまさか! なの! ! ハチと忠凶とククルとわたしと……みんなで、考えて、考えて、考えて、作った義足なの」

「ナナ、重要な式典はハチを入場させる事が困難な場合があるんじゃよ」

「ククル!」


 いつの間にか、青からククルへと代わっていたわ。


「ハチが入れぬ所や此奴が戦わなければならぬ事も出てくるじゃろう。ナナが、1人で立たなければならぬ事もあるんはずなんじゃ。そんな時、コレがあれば良いであろう。それにしても、面白いのぉ〜。マノアの持つ力は独特で、有用性は抜群じゃ。じゃが、上手く使うには幅広い知識が必要になる。案外、宝の持ち腐れになる際どいスキルじゃのぉ……だって」


 最後は青に戻っての一言だったわ。

 私の手の中には、90センチぐらいの大きさで物凄く軽い太ももから足までの義足がある。

 素材は石みたいに硬いのに……軽いの?

 手触りは絹の様な滑らかで、触り心地は良いわ。

 見た感じ、まんま足そのもの。

 膝に当たる部分にはそれらしい関節もあるのよ。

 精巧に作られていたわ。

 その膝上には、私の太ももが入る受け皿になっていたの。

 それにしても……良く出来ているわ。

 本当に……良く出来ているわ。

 感嘆の声が漏れてしまった私を満面の笑みで見ていたみんな。

 そこに忠末がひょっこり現れて、詳しい説明をしてくれたの。


『姫様。オレも有意義な考査と実査を拝見した思いです。ククル様の申した通り、マノア様のスキルは面白くもあり、使うに難しいスキルです。ですが、知識1つで無限の可能性を秘めています。今回はその最たる結果が、この姫様の義足でございます。

 まず、素材はハチ様の“フリーザ・アトリビュート”により製作された魔石エメラルドを使い、マノア様が特殊スキル“絵師”で加工したのがこの義足でございます』

「ちょっと待ってよ。マノアにそんな事が出来るの?」

「なぁ〜んだ! コレを作った経緯を話していたのね。もぉ〜、ナナ! 通訳してよ。分かんないじゃない」

「ごめん。だってみんな知っている事かと思いって……。でも、マノア? 貴女ってそんな事できたの?」

「あぁ、アレね。実は簡単な事なの。今ナナは、ハチの魔術で作った石って聞いたとき大きな重たい石を想像したよね」

「うん」

「違うのよ。わたしも試してみるまで半身半疑だったんだけれど……。紙に書かなくても、なんでもよかったの。しかも、色を塗ればその色のまま、その物の形にリアル化される」

「え? という事は……」

『姫様。ハチ様は魔術“フリーザ・アトリビュート”作り出された風属性の魔石エメラルドを平たく平坦な石で出現なされたのです』

「ちょっと待って。そもそも、何でハチがそんなことを知っていたの?」

「あ! その事なんだけどさぁ。俺たち全員、忠大の実査に参加したんだ」

「ハァ?」


 私の義足を囲んで、とんでも無い事実を知ったの。

 その事実を教えてくれたのは、エディからだったわ。


「忠末……説明しなさい!」

『はっ。数多くの実査を、経験を、積まなければならないと。ククル様の進言により、手助けを申し出た次第です』

「その呼びかけに、みんなが加勢してくれたのね。と……いう事は……」

『はっ。忠大の魔術“フリーザ・解析”を試行いたしました』

「で、その解析結果は……」

『はっ。当然、ご本人様とハチ様に話したそうです。ハチ様には魔術“フリーザ・伝送”でお伝えしたそうです。ここまでして実査完了だそうです』

「あら? 忠末は不服なの?」

『そのような事はございません。ですが……そこまで実査をする必要が本当にあったのか、疑問を感じます。その度に、忠大は目を回し気を失います』

「それは心配ね」

『本人曰く、赤子からお年寄りまで津々浦々する事で得られる情報は千金に値する、と申しまして全ての人属に試そうとする始末。流石に止めましたが、ギルド職員には問答無用で使っていました』

「後で、忠大を呼んでちょうだい。説教です! 後で良いからね。その代わり、必ずするから……そう伝えて」

『はっ』


 そう言って義足の影に消えたわ。


「エディもみんなも、忠大の実査に付き合ってもらてありがとう」


 頭を下げた私に、みんなが楽しに話してくれたの。


「めちゃくちゃ楽しかったぜ。自分の知らない事をたくさん教えてもらって勉強になった」

「エディ」

「たしかに、勉強になりましたね。僕のスキルにあんな秘密があったなんて……」

「俺の魔術は、何にも無かったぜ。あ! 一個あったや。ナナ、俺の特殊魔術“フライ”なんだが凄いんだぜ。俺が触って魔力を込めると浮かせる事が出来るんだ。まぁ〜、今のところ3分が限度だけど。でも面白いだろう!」

「僕の特殊スキルにも新発見があったんです。少しコツが必要なのですが……素晴らしいですよ! 僕がスキルで出した薬の形状を変える事も可能だったんです。湿布のように患部へ貼る事で、ギズの治りも格段に早くなるんです! ! 」

「ホゼ」

「わたくしは無属性でしたわ。それでも、嬉しい事がありましたの! わたくし……ホゼのお陰で健康体ですって。元気に走り回れる体を手に入れる事が出来ましたのよ! 忠大ちゃんが太鼓判を押してくれました」

「ロキア」

「あたしわね。……風属性としてはギリギリだったみたい。忠大の話では、魔力の質自体は素晴らしいんだって、でも余白が少ないから使い切れていないみたい。そこで! ハチに相談したら……今度ね! お姉ちゃんに半分あげるの! あたしの魔力を上げるのよ! 」

「マナス。そんな事して大丈夫なの?」

「平気よ。あたしには、アイザックがいるもの。平気よ」

「ウフフ」

「エヘヘ」


 2人で笑いあっているわ。

 ロキアとマナスが理解して信じ合って助け合うのなら、私も幸せだわね。

 自然と私も笑顔になっていたみたい。

 笑いは伝染するのね。


「私は流石に自体したの。忠大ちゃんが、私を“解析”するとククルまで“解析”してしまうから、ですって。そうすると2日は起きられなくなるのから、ナナちゃんに心配をかけてしまうんだって。ちゃんと分かっているから安心しちゃったわ」

「青」

「最後はあたしね」


 胸を張って、義足に手を置いたマノア。


「わたしも自分のスキルを勘違いしていたんだ。ナナに言われて、わたしの力を知ったわ。でも、それだけじゃ無かったの。特殊スキル“絵師”はスキルだったのよ。そう! スキルだったの。しかも、常時発動型の!」

「え? 今も? ? 」

「そうよ。あたしの特殊スキル“絵師”は、見たもの聞いたもの感じたものを記憶するのがスキル“絵師”だったの。で、リアル化する事は、特殊魔術“絵師・真成しんせい”なの」

「真成って、いつわりやごまかしのないこと。まこと、真実、とかって意味の真成?」

「そうよ。その意味まんまなの。絵に描いた物の真成な姿がリアル化される。複製ではなく真成。驚いたわ。しかも、しかもしかも! ! どんな物にも描けるの。書けなくても、描きさえすればリアル化されるの! 驚くでしょう! わたし自身も驚いた」


 そうなの。

 要は魔力を使い、描く真似? 指をペン代わりにして描い物でもリアル化されるんですって。

 それは、驚くわね。

 さらに、魔石の上に描けば、魔力を秘めた物がリアル化するの。

 例えば……平らに加工しいた魔石に義足を特殊魔術“絵師・真成”を発動して描けば、風の魔力を秘めた義足の出来上がり。

 風で常に浮いているから軽かったのね。


「で、ね。この義足のココの部分ね。関節の部位なんだけれど……関節ってね。大腿骨と脛骨、そして膝蓋骨しつがいこつから構成されてんの。脛骨の関節部分はほぼ平らな形をしていて、その上を、大腿骨の丸い先端が転がるようにして動くのね。その骨をエメラルドで作って、神経や筋肉をナナのスキル“闘気功・纏”で担えば歩けるんじゃないかと考えたの! 試してみる価値は有ると思う! ナナやってみてよ!」


 キラキラお目目で見つめてくるマノア。

 その目は伝染するのね。

 みんなの目がワクワクを隠していないもの。

 着けるしかないのね。

 大丈夫かしら?


「ありがとう! 着けてみるわね」


 私は、ハチの背中に乗って後ろにある2人掛け用のソファーへと移動したわ。

 柔らかいところで着けたかったの。

 ……どれどれ。

 ……ふむふむ。

 あら! 以外に柔らかいのね。

 着け心地は……悪くないわ。

 なるほどね。

 常時、そよ風が吹いている感じがする。

 実際に、吹いているのよね。

 そのせいで蒸れないし、痛くもないのよ。

 良く考えられているわ。

 嘘でしょう! !


「あ! スキル“闘気功・纏”だったわね。今すぐ唱えるわ。……かんじーざいぼーさーつー〜〜〜」


 スイッチが入った見たいに、筋肉が隆起し出したの。

 えっ……と……歩く歩く歩く。

 あ! その前に立つのが先よね。

 立つ立つ立つ……立つ? ?

 あれ? どうやったら立てるの? ? ? ?

 完全に混乱してしまった私。

 そんな私を助けてくれたのは……。


「ストップ、ナナ! ちょっと休憩しようぜ。みんなも、落ち着こう。まずは、マノアの仮説は正しかった訳だ。属性の魔石で骨格を作り、スキルで神経と筋肉の役割を担う。突拍子も無い発想だったが、見事に成功した。

 次は、ナナ自身だ。ナナは生まれてから1度も歩いた事がない。自分の足で立った事すら無いんだ。俺は、リハビリから始めるべきだと思う」

「その前に、般若心経を何とかしないとダメですね」

「だなぁ〜」


 エディとホゼが、私の窮地を救ってくれたわ。

 でも、えらい言われようね。

 あながち間違って無いから、何にも言い返せないじゃ無いの。

 これでも、精一杯なんだけどなぁ〜。


「ナナ、痛くない? 」

「マノア。痛くないわ。逆に気持ちいい。この肌触り、良いわね」

「で、しょう! 色々、考えたの。人間で言うところの皮膚よね。その皮膚を、ベルベットのような触り心地の良いものでリアル化したの。以外に苦労したのよ。でも……そのお経は……ね」

「うっ。わ、わ、わかってるわよ。でも、でも、でも! 私にはコレが精……頑張ります」


 ガックリと肩を落とす私に、優しく声を掛けてくれた人がいたの。


「ウフフ。ナナちゃん。あたくしと一緒に頑張ってみない? 」

「ロキア? 」

「わたくし使えないの、スキル“闘気功”が。もともと、魔力が無かった訳だから、感じ方が良く分からなくって。マナスに呆れられたわ。一緒に頑張ってくれない? わたくしも、自分の身は自分で守りたいです」

「ロキア! ! ! 一緒に頑張ろう! ! ! 」

「はい!」


 さすが、私たちのお姉ちゃん。

 優しさが半端ないわ。


 それにしても、本物の足の様に見えるわね。

 私がダメダメだから立てなかったけれど、見た限りでは完璧な足だわ。

 この世界を発展させる為に、異世界から来た私たち。

 その為この世界は、私たちが居た世界に似ているの。

 もちろん再現できない物はたくさんあるわ。

 それでも、どこか似たり寄ったりなの。

 でも、ね!

 超えることはできないの。

 当たり前と言えば、そうよね。

 だって、この世界には存在しない物や技術、偉人たちの奇跡の上に私たちの世界があったのよ。

 その奇跡を私が起こせる訳ないじゃない。

 無理よ。

 ところが……超えられない奇跡をマノアは起こしてしまったの。

 しかも、その引き金を引いてしまったのは忠大。

 彼が魔術“フリーザ・解析”の実査と称した、情報収集が引き起こした結果よ。

 マノアの奇跡ね。

 少しホッとしたのが、マノア自身が良い子だったって事。

 彼女は、みんなが幸せになる事をちゃんと知っている子だわ。

 だって、魔術“絵師・真成”とハチの魔術“フリーザ・アトリビュート”を使えば、物が無く作る事が出来なかった武器が作れるのよ。

 さらに、魔力を秘める事で元の世界より遥かに超えた最高の物を作り出せるの。

 核弾頭も作り出す事が出来るわね。

 でも、マノアはそんな気持ちは毛頭ないの。

 そんな物を作ったて誰も幸せにならない事を知っているんですものね。

 優しい子なの。

 そして、みんな優しい人たち。

 ハァ〜〜〜、私にも優しくしてほしい。


「ナナには俺が教える。ナナ行くぞ! ……そうじゃない! ! 感じるんだ! 魔力はココにある ! ! なんで分かんないんだよ」

「ロキアは僕が教えるよ。肩の力を抜いて……。そう、目を閉じて……感じるんだよ。どう?」


 エディ……ホゼの様に優しくして……。

ナナの足が完成しました。

まさにいつのまに!って感じかしますね。


さて、今かわいい電気ネズミと冒険しています。

か、か、か、可愛い。

海兵さんのカッコをさせたのですが……バトル中にチラッとコッチを見るの。

その仕草が……クラクラしちゃいます。


それではまた来週会いましょう。

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