表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/154

閑話 あらあら、4月1日ですって

本筋とは全く関係ない話ですので、飛ばして読まれても構いません。

 

 爽やかな風と温暖な陽射し。

 気持ちのいい木陰が私を開放していく。


 私達はスアノース城近郊にあるロタ家の屋敷に居るわ。

 今は練習場が一望できる、大樹の陰で休憩しているところね。


「ねぇ、ハチとロクにだけ……話があるのよ……秘密にしてね」

『何ワン?』

『何ニャ?』


 私は伏し目がちに話しだしたわ。


「誰にも言わないでね。

 私は……実は……桃から生まれたの。川を、ドンブラコ、ドンブラコ、と揺れながらね。少し酔いぎみで、気持ち悪かったのを覚えているもの。誰が!と思っていると、川で洗濯をしていたお婆様に、私を内包している桃をゲットしてもらったのよ。

 自宅に持って帰るのも苦労したと思うわ。それでも桃を捨てずに、私を捨てずに、持って帰ってもらったの。その後すぐが恐ろしかったけれどね。だって桃を縦割に切るんだもの!頭をかち割られるかと思ったじゃない。もちろん私は真剣白刃取りでバチィ~と取ったわよ。

 世に出てこれて、お爺様とお婆様に育ててもらって、犬と猿と雉を餌付けして鬼退治を成し遂げたの!」

『ナナ凄いニャ!』

『え!……餌付けワンかぁ?』


 ロクとハチの言動をスルーして、私は両手で顔を覆い続きを話しだしたの。


「すぐにお婆様は亡くなって、コブ付き同士で再婚したの。

 この継母と姉達が酷い女で、私の事を虐めたのよ。シクシク……それでも私は耐えたわ。その頑張りが認められたのね。

 お城で王子様が婚活パーティーを開くと通達があったの。私も参加したいと思ったけれど、洗濯や掃除、洗濯や掃除、洗濯や!でパーティーに行く時間なんて無かったわ。

 泣く泣く諦めた私に、通りすがりの魔術士様が哀れに思って。チョチョイのチョイと魔術でドレス一式をレンタルしてくれたの。時間は2時間で1食分だったわね。すぐに食事の用意をしてパーティーへゴーゴーしたわ。ところがこの魔術士も継母の手先だったと、今でも思っているの。だってガラスの靴よ!ガラスよ!ガラス。そんなもん履いて踊れる訳ないじゃない。案の定、無理で諦めたわ。悔し紛れに食べに食べやったわよ。そんな私を王子様が見初めてくれたの。嬉しかったわ。でも魔術士様のタイムリミットが迫っていたの。私は貧しい姿を晒す訳にはいかなかったから、走って、走って、走って……ここでまたガラスの靴が邪魔をしたの。仕方がないからその場で裸足になって逃げたわ。悔しかったのでその場で放置よ!捨ててやったわ!一時の夢でも王子様の想い人になれた事で私は満足することにしたの。

 また洗濯、掃除、洗濯、掃除、洗濯の毎日に戻ったわ。ところが神様は、私を見捨ててはいなかったのよ!私の事を王子様が探してくれたの。程なくして見つけてもらって幸せに暮らしました……とさ」

『姫様……その話は……』


 ハチとロクだけかと思ったらネズミ達もいたのよね。

 私、話に夢中で気が付かなかったわ。


 何か言いたそうね……バレちゃったかしら?


『ナナ!幸せになれて良かったニャ!!』

『俺もそう思います!』

『オレもです!』


 あらら、上手く行ったのはロクと忠中と忠末だけね。

 ハチ、忠大、忠吉、忠凶は疑いの眼差しを私に向けているわ。


 そろそろ限界ね。


「ねぇ、忠大。この世界でも、前の世界と同じ暦よね」

『はい、その通りです。姫様』

「前の世界では、4月1日をエイプリルフールと言ってね。嘘をついても許してもらえる日なの。

 で!今日は何月何日でしょうか?」

『今日ニャんか?……4月1日ニャ……と言う事は……嘘なのかニャ!!』

『『嘘!!』』

『やっぱり!そうワンね。変だと思ったワン。ナナは僕達の声が聞こえるのに餌付けはする必要ないと思ったワン』

『確かに無理があります。ですが私的にはドレスを着た姫様を見てみたいと思います』

『僕も姫様のドレス姿を見たいです』

『ボクもです。それに魔術士がチョチョイのチョイと使った魔術が知りたいです』

『バカたなぁ〜、忠凶。僕が思うに、姫様の作り話なのだから実在しない魔術なのだよ』

『え!!』

「あはははは!確かにフィクションだからね。実在しないわ。この話も元の話があるからね。楽しんでくれたかしら?」

『もちろん、僕は楽しかったワン』

『私もです』

『僕もです』

『ボクもです』


 元気よく返事をしてくれたのはハチ、忠大、忠吉、忠凶だけ。

 ロク、忠中、忠末は今だにピクピクグルグルしているわ。

 少し可愛そうな事をしたかしらね。


 でも4月1日ですもの、仕方ないわね。うふふふふ!

エイプリルフールネタです。

折角、4月1日に更新するので書いてみましたが……いかがでしょうか?

シャレになんない嘘はつくべきでは無いけれど、笑顔になれる嘘なら有りだと思います。


ネタ元は言わずと知れた、桃太郎とシンデレラです。

どちらもネタとしたら定番ですけれど、色んな解釈があっていいと思います。


とても短いですし、次の話を更新したいと思うので……しばし待たれよ!!です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ