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121話 あらあら、コレが日常ですって

 まったく困るわ。

 トッシュとククルの間に、何かあると思っていたわよ。

 それが……。


「そうじゃ。桃は龍神が唯一食する事が出来る食物なんじゃ。妾は、一等美味しそうな桃を大切に育てておった。それを、此奴が食ってしまったんじゃ」


 そうなの!

 ククルの怒りは、食べ物の憤怒だったの。

 まぁ〜、ありていに言えば「食べ物の恨みは恐ろしい」かしらね。

 ウフフ、確かに食べ物の恨みは底が無いわよ。

 でも、未知なる食べ物で補えるみたい。

 ウフフ、未知なる食べ物……。


「バナナって言う果物だ。この間さぁ、えっ〜と浪漫飛行だったけ? ランデブ〜だっけ? そんな感じで、夜の散歩に出かけていたんだ。帰って来て、冷蔵庫を見たら何本もあったんだ。そしたら竜が、バナナだ! とか何とか言い出して、食ったんだよ。俺も食ってみたけど、意外に美味くて驚いたぜ。この黒い点々が美味しさの秘訣らしいぜ。こうやって、向いて食う果物らしい、ホラ」


 私たちには慣れ親しんだ果物。

 正確には、野菜らしいわ。

 その、バナナがこの世界にもあるの? と、ルバー様を見たら不思議な顔をしたの。

 場所をルジーゼの駐屯地にある執務室へと、移動して改めて話をしたわ。

 テーブルには、1本のバナナ。

 見つめるルバー様。

 シュールだわ。


「やはり、知っていましたね。私は見たことも聞いたこともありません。それがなぜ、寮の冷蔵庫に入っていたのでしょう? 王様はご存知でしたか?」


 真面目なルバー様。

 首を振る王様。

 その手には……バナナ。

 でも、笑ってはいけない雰囲気なの。

 年末の笑ってはいけない番組みたいだったわ。

 ある意味、1番怖かた瞬間よね。


 さて、このバナナ。

 ルバー様たちが知らないと言うことは、この世界には無いみたいなの。

 じゃ〜、ココにあるのは?

 思い当たる事柄はたった1つ。

 その重要人物に連絡を入れて確認したわ。


<「マノア? マノア? 今、話せる?」>

<「ナナ? 良いわよ」>

<「半年ぐらい前に、バナナを特殊スキル“絵師”で出した?」>

<「ハァ? 半年前……バナナ……半年前……バナナ……半年……前? あ! あたしのバナナ! ! !>

<「ちょっと! マノア? マノア! !」>

<「……」>


 反応が無いわ。

 3分後、今度はマノアから連絡が入ったの。


<「ナナ。あたしのバナナしらない?」>

<「やっぱり、貴女が出したのね。バナナ、一房」>

<「無性にバナナが食べたくなって。アクチュしたの。すっかり、忘れていた。で、なんでナナが知ってんの? ま〜さ〜か〜、犯人はナナ!」>

<「違うわよ。後で詳しく話わ」>

<「了解」>


 コレが答え。

 彼女の特殊スキル“絵心”のなせる技だったの。

 描いた物を、リアル化できる。

 出鱈目な能力よね。

 それなのに、バナナを出す事に使うなんてある意味、最強だわ。

 さらに、その事をすっかり忘れて半年。

 アハハハ! 笑うしか無いでしょう。

 この話はコレで終了! かと思われたわ。

 それなのにとんでもない方向に進み出したの。


「このバナナはどの様な環境で生育しているのか?」

「王様……」

「生産には妾も力を貸そう」

「ククル……」

『僕も!』

『あたしも!』

『『『『『我らもお貸し致します』』』』』

「ハチ、ロク、ネズミ隊……」

「とりあえず、マノアくんにアクチュアルしていただきましょう」

「そうしてくれ」

「妾の分も良しなに」

「俺の分も」

「ナナくん、頼みます。ナナくん? 聞いていますか? ナナくん? ?」


 と、まぁ〜。

 こんな感じで、生産する方向へと進み始めたの。

 上手く行くかしら?

 私には関係ないわね。

 龍神と言えど、生きとし生ける者よ。

 三大欲求の1つ、食欲には敵わないらしい。

 最強なのはマノアではなく、食欲だったみたいね。


 さて、このバナナ。

 生産にこぎ着けたのか? !

 出来たんですね。

 物凄い執念でしょう。

 この執念を支えたのは、マノアの奇跡だったの。

 そもそも、マノアがなぜバナナを描けたのか?

 なんと言う事でしょう〜。

 お母様がお好きで、お父様が苗を輸入して温室で育てて、新鮮な物を食べていたらしいの。

 ある意味ブルジョワよね。

 そんな事だから、栽培方法から場所探しに増やし方、事細かに教えてくれたわ。

 場所に最適だったのは、スアノースのお城の中庭。

 どこにも無かったから、温室を建てたの。

 その中で、バナナを植えたのね。

 マノアが、鬼の様に指導していたわ。

 ここでも食べ物の恨みが、発動したのよ。

 トッシュがマノアのバナナを食べてしまったのが原因ね。

 流石に悪いと思ったのか、改心してアノアとククルの下働きをしているわ。

 自業自得ね。

 コレで懲りたでしょう。

 人の食べ物を奪わない……とね。


「青さん。1組の皆さんに本を読んであげて下さい」

「はい。どの本を読みますか?」

「勇者の物語をお願いします。あの話は、みんな好きですからね」

「そうですね。私も好きです。なんと言っても、勇者様と龍神様の話しなので」

「ウフフ、よろしくお願いします」

「はい」


 青はルバー様とククルの決めた通り。

 昼は幼年クラスのお手伝いをして、夜はルバー様と忠凶で魔術の考査と実査さらに研磨までしているわ。

 コレがエグいの。

 呆れるほどにね。

 まず、ククルの指導がスパルタで厳しいの。

 次に、調子に乗ったククルが大暴走。


「馬鹿者! 何度、言ったら理解するのじゃ! 馬鹿者! ! 理屈で理解するでないわ。馬鹿者! 感じるんじゃ。魔力を感じるんじゃ。馬鹿者! ……まったくダメじゃのぉ〜。頭でっかちになりおって。とくに、小童! ダメダメじゃ。なぜ、分からぬのじゃ。馬鹿者! !」


 馬鹿者の大連呼。

 でも、言われた本人はどこか嬉しそうなのよ。

 そっちに、目覚めちゃったかしら?

 ルバー様?


「忠凶の方が、まだ良いぞ。魔獣なだけに、魔力を感じる事が出来ておる。ただ……使い慣れてはおらん様じゃ。使って使って使い倒すんじゃ。ホレ、そこに良い実験体がおるじゃろう。其奴に向かって放ってやれ。魔術1つ1つをしっかり感じ、感覚で放つんじゃ。首輪をつける前は、そうして魔力を使っていたはずじゃ。文明の利器に惑わされおって。魔獣としての、魔力使いを忘れるとは……情けないぞ。もう一度、立ち返り、感じてみろ。そなたなら出来る! 妾が保証するぞ」

『はい』


 ハァ〜。

 ルバー様だけではなかったわね。

 忠凶もだわ。

 どこか楽しそう。

 この3人? が、どんでもない事をまたやらかすの。

 ココは、スアノース城の訓練施設。

 訓練場のコロッセオ。

 ちなみに、四季折々の歳時記なんかもこの場所で執り行われるわ。

 夜間はルバー様の考査に貸し出されているの。

 もちろん、完全箝口令よ。

 誰も入るな!

 近寄るな!

 見るな!

 聞くな!

 話に出すな!

 の、完璧仕様で行われていたの。

 ココにいるのは私だけ……のはずが……。


「ウム、やっておるな」

「王様! こんな所に居ては危険ですよ」

「アハハハ! ナナの側に居るのが、1番の安全策であろう。ハチ」

『当たり前ワン。ナナに怪我をさせるヘマはしないワン』

「そうであろう。そうであろう」

「王様、ハチが話した内容が理解できたのですか?」

「ナナでは無いから、聞き取りは出来ないよ。ただ、言いたい事は分かる。任せろ! か、大丈夫ワン! とでも話したのではないかな?」

「違いますが、内容は合っています。ハチは、私に怪我をさせるヘマはしないと」

「なるほど。ハチ、俺も頼むよ」

『仕方ないワン』

「アハハハ! 嫌々ながらも守ってくれる様だぞ」

「ウフフ、当たりです」

『ハチ! 面白い事を始めたよ。後から忠凶に聞かないとね。あたしらだって負けてられないよ』

『ロク! もちろんワン』


 この会話は訳したくないわね。

 問題になりそう。

 さて、コロッセオの中央にククルを挟んでルバー様と忠凶が相対して居るわ。

 ククルの言う通り、獣になりつつある忠凶。

 元は魔獣ですもの。

 本当は、首輪に魔獣を止める力など無いわ。

 この子たちの、自主性なの。

 私を守る為に、自分たちで決めたルール。

 魔獣の姿では、人族の中で私を守ることが出来ないと考えたのね。

 郷にいれば郷に従え。

 その事を理解し、普段は犬の姿だし猫の姿なの。

 この子達は、私たち以上に頭が良いのよ。

 そしてその、明澄な頭脳が発揮されたわ。


『魔力……獣……本能……情動……怒り……哀しみ……憤怒! 魔術“ザイル”』


 集中しているのは、ハツカネズミ姿の忠凶。

 少し見え難いけれど、可愛らしい鼠の姿だわ。

 それが、みるみる内に変わって行ったの。

 いつのも忠凶の姿よ。

 愛らしく、活発に動きまわるとっとこ鼠だわ。

 もちろん、今もよ。

 けれど、溢れ出ている魔力がいつもの彼女では無かったの。

 魔獣化している時の魔力だわ。

 紛れもなく、彼女は魔獣・鬼鼠おにねずみ


『ウゥゥゥ〜、アァァァァ! !』


 雄叫びと共に、忠凶の身体から靄が一瞬現れて消えたわ。

 なんだったのかしら?

 対峙しているルバー様にも、分からなかったみたいで不用意に動いてしまったの。

 と、言っても半歩、左足を後ろに引いたでけ。

 でも、その1つの行動がルバー様の勝敗を決めたの。


『ウァァァ! !』


 叫び声と共に釣り上げられたルバー様。

 驚いたことに、何も無い所に宙吊り状態。

 タロットカードの、逆さ吊りの男みたいな格好なの。

 宙に……浮いてる?


「ホッホ〜。なかなか、良いぞ、面白いぞ」

『ありがとうございます』

「少し待っておれ。魔術“ヘルシャフト”。吊るされとる小童も、知りたいじゃろう」

「ムグムグ、ウッグ……」

「これは、失礼いたしました」

「そのままで、良い。こやつ、何が起こったのか理解しておらん。騒がしいだけじゃ。それより、忠凶は凄いのぉ。妾が言ったことを理解し、実行しおった。その感覚を忘れるで無いぞ。そこに居る、お前達もぞ!」


 ククルの最期の言葉は、ハチとロクに向けられたモノだったわ。

 この子達も……フンそんな事あんたに言われなくてもやってやるよ……そんな、ロクの声が聴こえて来た気がした。

 そんな目をしていたもの。

 もちろん、ハチも同意見みたい。

 さて、すっかり意気消沈しているルバー様。

 ムグムグもモゴモゴも、しなくて萎れているわ。


「フン、理解したのなら考査を述べてみよ。少し緩めてやれ」

「はい」

「フゥ〜。さすが忠凶です。素晴らしい。

 これは黒属性の魔術“ザイル”。通常、“ザイル”は、束縛系の魔術です。束縛と言う意味では、この使い方も間違いではありません。ですが、この使い方は罠系に近いです。ククル様が使って見せたやり方の進化系ですね。

 忠凶くんのやり方は、魔術“ザイル”を細く細く細く細〜〜く、霧にしか見えないくらいまで細くした“ザイル”で、僕は絡め取ったのが、今の状況です。素晴らしい。本当に素晴らしい。僕に出来るでしょうか。人でしか無い僕に……」

「人であろうが、獣であろうが、生きとし生ける者。妾からしたら大差ないわ。まずは、感じろ。空や大地、全てのモノには、魔力が宿ている。この空気中にすら、魔力があるんじゃ。その1つ1つを感じるんじゃ。意味など後回しじゃ。今の、そなたなら出来るのではないか? 無理なら……折檻じゃ! !」


 牙を剥くククル。

 動じないルバー様。

 あら?

 慣れちゃったのね。

 それほど、言われているのよ。

 でも……それでも、楽しそうにククルから指導を受けているわ。

 ルバー様は、魔力に関して生まれた時らかトップだったの。

 師匠と言える人は、いなかったそうよ。

 1人で考査をして、1人で実査をして、1人で……。

 初めて習える喜びが、顔から体から溢れているわね。

 何を言われても、平気みたい。

 そんな、ルバー様。

 やはり、この方も天才なのよ。

 私には到底不可能だわ。

 ククルからの言葉と、忠凶の実演で、何かを掴んだみたなのね。

 逆さ吊りのまま、目を瞑りブツブツ呟き始めたの。


「魔力……本能……人族……寂しさ……1人……友……魔力……魔力……魔……力! ! なるほど……こうですか? 魔術“ウインドランス”」


 ドスン。


 糸を切られたマリオネットの様に、落下したルバー様。

 運動オンチの彼が、綺麗に着地できる訳はなく。

 潰されたカエルの様な姿で、大地に激突したわ 。

 慣れているのか、何でもないかの様に立ち上がったルバー様。

 身体も心も、鋼のメンタルなのね。


「自身の魔力を感じ、自分以外の魔力を感じる。そのために、思いの感情でテンションを上げ、自身の魔力を感じやすくする。その為の瞑想なんですね。忠凶の場合は、情動、怒り、哀しみ。僕の場合は、寂しさ、1人、友。そうか、感情と魔力は結びついているのかもしれません! 面白いです! 魔力とは感情なのですか?」


 暴走ぎみに詰めるようルバー様。

 それに追従したのが忠凶。


「ルバー様! 新しい考査ですね。面白いです! たしかに、感情の高ぶりで魔力が増大します。そういえば、獣のときは感情の赴くままに、魔力を使っていましたね。魔術などなく、その場で必要な術を放っていましたよ! それが、ある意味正解だったのですね」

「それは違うぞ、忠凶。より多くの者が使うには、簡素にしなければいけない時もある。万物に対応しなければ、ならぬ時もあるんじゃ。その為の魔術よ。ただ、登録する者と開発する者は忘れてはいけぬのじゃ。時には本能に立ち返り、己を見直せ、と言うことじゃ。今の“ウインドランス”は良かったぞ。ルバー」

「はい! !」


 初めて、名前を呼んでもらって有頂天なルバー様。

 なんだか、考えさせられたわ。

 首輪を着ける事で弱くなった、この子たち魔獣。

 冒険者になる事で弱くなった、ルバー様たち人族。

 必要なんだけれど、不必要。

 あべこべで困るわね。


「ねぇ、ククル。なんで私には、魔力が無いの?」


 私は、ククルに聞いてみたの。

 だって、魔法使いよ! 魔女っ子よ!

 憧れるじゃない。


「分からぬ。これまで、魔力がない者など居らぬからな。ナナ、本当に無いのか? 目を瞑り、魔力を感じてみいるのじゃ」

「わかったわ。目を瞑り、魔力を感じるのね」


 私は、言われた通りにしたわ。

 魔力ねぇ。


 ……? ……? ……? ?


「……無理! 分からないわ。何が魔力で、何が感情なのか? 何も感じないし、何も起きないもの」

「フム〜。少し時間を……おくれ。調べて……みるぞ」


 なんだか奥歯に物が挟まった様な言い方をするのね。

 まぁ、いいわ。

 今はそういう事にしておきましょう。


 そうそう、忠凶が使ってた魔術は、“ザイル”では無く“黒霧こくむ”として登録したの。

 もちろん、白と黒は表裏一体。

 白属性の場合は“白霧はくむ”ね。

 能力は同じよ。

 罠系の魔術みたい。

 登録の時も大変だったのよ。

 ククルが“ヘルシャフト”を解除して、コロッセオの中央で授業が始まったの。

 個人レッスンよ。


「さて、ルバー。忠凶が使った魔術を登録するんじゃ……が! これまでの様なやり方ではダメじゃぞ」

「はい、心得ております」

「ウム」


 おかっぱ頭で頷くククル。

 瞑想するイケメンチャラ男のルバー様。

 破壊力抜群のね。


「ククル様! ダメです! 色んな魔力を感じてしまい。どれが、登録する魔力かわかりません!」

「馬鹿者! ! ! ! もっと集中せぬか。しっかり感じろ。魔力では無く魔術じゃ。魔力は感じれるじゃろ。次は、魔術を感じろ。……馬鹿者! ! ! ! もっと集中せぬか。余計な事を考えるな! 思うな! 頭から心から抹消しろ! それが出来ぬのなら、辞めてしまえ! !」

「やります! もう一度、僕にチャンスをください!」


 コレはなんなの?

 下手な、スポ根アニメを観ている様だわ。

 それから、ククルの罵倒と不退転の決意で、喰らい付くルバー様。

 格闘する事、1時間。

 ようやく、終わりが訪れたの。

 長かったわ。

 ハァ〜。


「フ〜〜〜。無……無……無……。魔術“黒霧”……魔術“白霧”……魔術“ショーテル”シリーズ」

「「「? ?」」」

『『『『『『『? ?』』』』』』』


 最後の“ショーテル”って何? と、話すことも忘れるほどの違和感。

 ルバー様の中で何が起こったのかしら?


「ルバー様。最後の“ショーテル”って……」

<「ガロス! スキル“意思疎通”を使うな。そう責められても、この場での説明を無理です。今は、ククル様とレッスン中です。明日、直接会って話をしますから。えぇ、そうです。そうしてください。必ず」>


 ルバー様は、お父様と話をしていたようね。

 本来は、言葉で発することはしないのだけれどよほど、慌てていたのね。

 耳を抑えて、言葉にしていましたわ。

 この光景を見たククルが、満足そうに頷いたの。


「ようやく、理解できたか。これこそが“全知全能”なんじゃ。どんな、所に居ようが関係ない。魔力を感じ、魔術を読み解き、発動する。本来の姿じゃ」

「良く良く、理解できました。ククル様、ありがとうございました。僕、の中途半端な“全能”のために骨を折っていただき誠にすいませんでした。これからは、粉骨精神、働かせていただきますよ。僕に任せてください」

「ウム」


 なんとなく、理解できたわ。

 ルバー様が魔術“黒霧”の魔力を感じ、魔術を読み解いているとき、お父様も無属性の魔術を考査し実査していたんだわ。

 それが“ショーテル”なのね。

 でも、お父様は無属性。

 さらに、シリーズって?


「ルバー様。魔術“ショーテル”ってどんな術ですか? しかも、シリーズと」

「アハハハ。すまない。魔力を感じていたら、ルジーゼの宿舎で、ガロスが面白い魔術を考査し実査していた様です。これは、全ての属性で使えそうなので、シリーズとして登録させて頂きましたよ。これが……魔術“ファイアショーテル”」


 左手を掲げたルバー様の先に、円形の刃物ショーテルの形をした炎が回転していたわ。

 大きさは、ビックサイズのジャイアントかぼちゃ。

 本当に大きいわ。

 こんなのが当たりでもしたら、一瞬であの世に行けるわね。


「コレをコウです」


 振り下ろされたショーテルは、大地にめり込み半円形の窪みを作って消えたわ。

 ルバー様が解除したのね。

 それにしても、凄い威力だわ。

 お父様はなんてモノを考査したんですか!

 そして、その魔力を離れたコロッセオで感じ取り、魔術を読み取り登録したルバー様。

 存外な存在ですわね。

 それとも、導いたククルが凄いの?

 龍神の本来の姿は、引き出す力かも知れないわね。


 ……コレが最近の日常。

 ……コレが最近の考査。

 ……コレが最近の実査。

 ……コレが最新の魔術。


 アハハハ……笑えてくるでしょう。

遅くなりましてすいません。

ルバー様の覚醒がなかなか訪れず手こずりました。


熱中症にはくれぐれも気を付けてください。

私は危なかったです。

目眩がしたら、アイスノンで首を冷やし、クーラーガンガンで、経口補水液です。

本当に無理はしないで下さい。


それではまた来週会いましょう!

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