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13話 あらあら、ギルドカードですって

 ハンナと妹セジルの因縁を聞いていたの。

 そしたらノックの音が響いて入ってきた人は……。


 チャラ男だった。


 だって、白いジャケットに白のパンツ、中のシャツはフリルの着いた紺色、もちろんジャケットの胸ポケットには赤いハンカチ。

 甘いマスクにタレ目が幼い印象を与えているわ。

 髪は明るい茶色でクルクルと毛先を遊ばせていて、後ろが少し長いわね。

 真相のチャラ男、まさにそんな印象だった。


「早かったではないかぁ。チャラ男の勇者ルバー」

「はぁ!脳筋のガロスには用などないわ!お前は帰れ!さて、ハンナ。君が僕を呼んでいると聞いてすぐに馳せ参じたよ。おや!その子は……お前の隠し子だなぁ」

「なに!隠し子などでは……いや……隠し子になるのかぁ?」

「うふふ。隠し子などではありませんわ。私はルジーゼ・ロタ・ガロスとルジーゼ・ロタ・ソノアの娘ナナでございます。ルバー様」


 私はハンナの腕からお父様の膝に座りながら自己紹介をしたの。

 すると、ルバー様は私をマジマジと見て、何にかを読み取った感があるわね。

 流石ギルマスだわ。


「へぇ~君がナナかぁ……なるほど。では、コレが君のギルドカードだ。スキル隠匿が施されている。これを進言したのはハンナだそうだね」

「はい。そうです」

「ハンナ。君はスキル走破を使えたっけ?」

「いいえ。私はスキル読破です」

「そうなんだ。なら、今は何も見えないね」

「もちろんです」

「それでは、ルジーゼ・ロタ・ナナ。コレが君のギルドカードだ」


 そう言って私の前に差し出されたものは、直径5センチ(リューズまで入れると縦7センチ、横5センチ)で厚さ2センチの懐中時計。

 ナポレオンが発明したかも?そう噂されているデミハンターね。

 シルバーで蓋を開けると白い下地に黒文字で1から12の数字が彫ってあって、短針と長針が真ん中で浮いて時を刻んでいたわ。

 何よりも特徴的なのが浮いている針の下には、2センチ弱のダイヤモンドが埋め込まれていたのよ。

 デミハンターなので蓋を閉めてもダイヤが見えていたわね。

 少し厚いけれど、とても綺麗な時計だわ。


 ボサボサ頭のひょろ長い男性がボソボソと何かを言ってきていたのよ。


「裏も……開く……」

「も!ジュローラ君、しっかり喋ってよ」

「セジル、ジュローラ。君たちは自己紹介はしたのかなぁ?」

「ルバー様。ですが……姉もいますし……はい、すいません。

 こちらは私の夫で加工職人をしていますジュローラです。私は……ギルド職員をしていますセジルです。主人は口下手で代わりに私がお話します。

 ご存知ないと思いますのでご説明いたします。こちらは両開きのデミハンタータイプの懐中時計になります。裏蓋についてですが、オーバーホールでは分からないのですね。解体して洗浄する為だったり置時計型にしたり、出来るのがデミハンターとかハーフハンターなどと言われている時計です。魔力を入れても動かなくなったりした時や、1年に1度は持ってきて頂けるとオーバーホールや点検をいたします。

 この時計はナナ様のギルドカードですので、ご本人様しか魔力の充電ができないので気をつけておいて下さい。あと……オマケなのですが裏蓋を開けお日様に向けて、表から中を覗いてください。見れば分かります。説明は以上です。分からない事があれば受付に来てください」

「ナナ様……理解、出来ましたかぁ?」

「大丈夫よ。とても丁寧に説明していると思うわ。おかげで私が知っている時計と、さして変わりないのだと理解できたもの。付け加えるなら、表に時計が見える穴が開いているのがデミハンターだったりナポレオンタイプとか言われているわね。あと……これは!!」


 ハンナに私が知っているうんちく話をしながら、裏蓋を開けて外に向けて表から覗いて見ると……絵も言われない美しさ。

 表現の仕方が古いわね。

 なんて言うのかしら……あ!もどかしい!!

 とにかく万華鏡になっていて綺麗なの。

 万華鏡と言うと3枚の鏡合わせて、その中にビーズやセロハンなどを入れて回転するといろんな模様が見えて綺麗な物よね。

 私の手の中にある物は、懐中時計の中に144面ラウンド・ブリリアント・カットに仕上げた大粒のダイヤモンドが仕込まれていたの。

 実は前の世界で、私の娘がカット職人をしていたのよ。

 ジルコニアでブリリアントカットの練習したと言ってプレゼントをしてくれたの。

 可愛いでしょう!

 自慢の娘だったのよ。

 だからこそ知っていた、144面ラウンド・ブリリアント・カット。

 本物のダイヤが鏡のように光を反射、反射、反射。

 光の乱舞がダイヤの中で美しくいわ。

 何時間見ても飽きないわね。

 私がうっとりと、覗いているのを不思議がっていたハンナが肩を叩いた。


「ナナ様。何が見てるのですか?」

「あ!ハンナね。貴方も見てみて、とっても綺麗よ」

「何ですか!これは!!」

「おそらく万華鏡だと思うのだけれど……」


 ボソボソと話しだしたジュローラさん。

 片言だけれど、納得する内容だったのよね。


「俺の、お師匠さんが、異世界人。懐中時計や万華鏡、カットの仕方。教えてくれた。俺のお師匠さんは凄い」

「なるほどね。本当に凄いお師匠さんだわ」

「えへへ。コレは屑ダイヤと1200カラットのダイヤと5カラットのダイヤ。これで全部」


 目の前には、大きなダイヤと袋に入った砂のようなダイヤと給料の3ケ月分ぐらいで買えるほどのダイヤが並べられていたわ。

 私は迷う事なく大粒のダイヤをお父様に渡して、砂のダイヤと小振りのダイヤをルバー様に差し出した。


「この大きいのはお父様に持っていてもらいますわ。そしてルバー様、屑ダイヤと小粒のダイヤの情報を消すことは可能ですか?」

「もちろん可能だよ。貸してごらん……ほら!出来た」


 手渡したダイヤを両手で包だと思ったら、閃光が炸裂したわ。

 でも、信号機の点滅より速く収まり何事もなく手が開いた。


「アレだけで終なの?ルバー様、見た感じ何も変わったところは無いように見えるのですが?」

「ナナ、君には分からないかぁ。魔力または気配察知のスキルを取得していないと分からないからね。そこの脳筋ガロスも分からないから……セジル、判別機を持ってきてくれる」

「はい、今すぐに持ってきます」


 大きなお腹を支えながらセジルさんが、直径20センチ程のまん丸水晶を持って現れた。

 確かに水晶を持っているのはセジルさんだけれど、その彼女を支えているのはジュローラさんだった。

 それほどの大きさのお腹を抱えている妊婦さん、あの大きさは……。

 私の思いとはよそに話が進められた。


「コレはギルドカードの判別機“見える君”だよ。この見える君にギルドカードを翳すと、あら不思議、名前とランクが現れる……と言っても分からないよね」

「でしたらルバー様。どうせ、ナナ様との比較もしなければなりませんし私のカードで試して下さい」

「いいのかい?みんなにハンナのステータスがバレるよ」

「私は大丈夫です。それよりも、ナナ様。ご自身のステータスが変わっている事を自覚して下さい」

「ハンナよ……そこまで言わなくても……」

「ガロス様!旅の途中から言いたかったのですが、甘いです。ナナ様には足がございません。ですが、私なんかより完璧に、お料理も家事もお出来になります!だからこそ、だらこそなんです!危ない事は危ないと、しっかり教えてさし上げるとご理解していただけます。大体、前々から一言、申したかったのですがよろしいですか?」

「え!俺……はい」

「話がそれていますよ。ハンナはお母様にも怒っていたわね。と!言う事はお父様にも怒っているわね」

「当然です!ナナ様を……ご自身お子様を、放置されたのですよ!怒って当然です」

「はぁ~。お母様の時にも話をしましたよね。……ハンナ、貴女の気持ちは嬉しいわ。本当にありがとう。でもね、仕方のない事もあるのよ。お父様にしても、お母様にしても、苦しんだはずたわ。その末の答えが貴女なのよ。火の勇者がメイドだなんて聞いたことないもの。着るものにしても食べるものにしても、高価な物が多かった。貴女だって、これ食べたこと無いって喜んでいたじゃない。確かに物だけ与えていると思うかもしれないけれど……ハンナ、大人になりなさい。どうしても仕方のない時があるのよ。汲んであげてちょうだい。私からのお願いよ」

「ナナ様……はい。コレが私のステータスです。おそらく平均よりやや上ですが、こんなモノです」

「はぁ~、ぶぅたれないでよ。ハンナ、はぁ~」


 私が困っていると、助けてくれてのは意外な人だったの。


「ハンナ。君は本当に彼女の事が大好きなんだね」

「当たり前です!ルバー様。この世にこれほど可愛らしい方はいません!」

「ハンナ……」

「そんな君に説明してあげよう。この男はどうでもいいんだが、ソノア様の誤解は解いておきたいしね。呪いの調査をしていたのは僕だったんだ。そもそも、変だろう?勇者が5年も同じ所にいるのは。普通、2年周期で交代している。勇者は強いからその分、影響力もパネェ〜、君だって知っているだろう?それにどんな呪いなのかも分からなから対処しょうが無い。ほとほと困っていたんだよね。

 それにしてもナナ、君は本当に異世界人なんだ。とても5歳児には言えないセリフだったよ」

「あら!ごめんあそばせ。オホホホ」

「こちらこそ、オホホホ」

「ルバー様もナナ様も、大概にしてください。私のギルドカードです」

「はぁ~、遊び心も分からんとは……ハンナよ。心のゆとりが無いと寄ってこないぞ!男が」

「ガ、ガ、ガロス様!!」

「お父様……何と言う爆弾発言を落とすのですか?」

「本当だよ。さすが脳筋だね。女心1つも分からない男が、ソノア様のハートをゲッチュー出来たんだ。王都7不思議だよ」

「ルバー様は、お母様の事をご存知なのですか?」

「もちろんだよ。ソノア様はシュード王の姪で、私達のマドンナだったんですよ。それはそれは綺麗で美しく聡明で儚くも優しく………」

「ガロス様もナナ様もルバー様も、いい加減にして下さい!脱線するにも程があります。本題に入ってください!!」

「「「は~い」」」


 私達は素直に、真っ赤かな顔をしたハンナの言うことを聞いたわ。

 だって、本当に赤かったのよ!

 うふふ、ハンナったら、可愛い。


 それにしてもギルドカードって、名前と物とが合ってないわよね。

 カードはどこに行ったのかしら?

ナナのギルドカードはダイヤモンドの懐中時計です。

私なら、黒真珠かしら?

ちなみに私の時計は懐中時計です。

学生時代から腕時計が嫌いで懐中時計を持ち歩いています。


それではまた来週会いましょう!

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