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116話 あらあら、白龍神は類友ですって

 なんで、気絶してんのよ!

 意気地無し!

 ルバー様!

 そう、声を大にして言いたい。

 確かに突然、ククルから青にチェンジしたわよ。

 アレされると驚くのよね。

 それでも、気絶する事ないわ。

 ハァ〜、私は青の姿で海辺の洞窟を出て欲しかったの。

 だって、騒ぎになるでしょう。

 青が居なくなっただけでも、大事なのに。

 なのに……よ!


「妾は、白龍神ククルじゃ。良しなに頼む」


 だって。

 卒業試験は、海辺の洞窟にある龍の祠へと赴きお札を納めてくる。

 帰りに、去年のお札を持ち帰る。

 たったこれだけの事なの。

 でも、青は帰って来なかった。

 まぁ、その事は良いわ。

 本人も納得していたようだし。

 ククルの想いに共感し、協力をする事を誓っていたからね。

 ここからが、大変だったの。

 何度も言うけれど!

 私は、青の姿で表に出てきて欲しかったの!

 それなのに……。

 初めは、青の姿だったのよ。

 トッシュも、騒ぎになるのは面倒だと考えて賛同しれくれたわ。

 もちろん、ククル自身もよ。

 なのに、札を渡す段階になると、ククルに姿を戻してあの一言よ。

 そりゃ〜、びっくり仰天よね。

 陸奥はどこだ!

 お前は誰だ!

 まさに、パニックよ。

 その前に、私自信もある意味面食らっていたけれどね。

 時間が変だったのよ。

 私が、青の悲鳴を聞いて洞窟に飛び込んだの。

 それから結構な時間が経過したはずなのに、1秒も進んではいなかったのよ。

 驚いた私に、“妾は白属性ぞ。このゆりかごの時を操るなんぞ、寝ていても出来るわ。妾は白龍神。容易いわ”の言葉。

 白属性にそんな事ができるなんて、初耳なんですけど。

 ルバー様に確かめようとしたわ。

 でも、そんなのは無理!

 それほどの大騒ぎに、話ができないと判断したトッシュがギルドのルバー様の執務室に場所を移動したの。

 私もそっと、そっと、そ〜っと、抜け出したわ。

 ルバー様には、バレましたけれどね。

 でも凄まじい騒動に負けて、私も解放してくれたわ。

 だった……。


「……確かにそうですね。でしたら、僕も乗せてください。ハチくんに乗って行く方が速いですよね」


 で、ルバー様を乗せて海辺の洞窟を後にしたの。

 乗りごごちは……想像にお任せしますわ。


 さて、執務室のソファーでふんぞり返って座っているトッシュと、ちょこんと座っているククル。

 対照的な2人。

 でも、仲は良いのよね。

 仲間なの。

 同じ釜の飯を食べた、同士ってところね。

 ルバー様も、お茶とお茶菓子を給仕して座ったわ。

 長いテーブルを挟んで、トッシュ、ククルが座って反対側に私、ルバー様が腰を掛けたの。

 そこで、私がこれまで聞いた事を話したわ。

 私が理解しているかも心配になったからね。

 大切な事だから、私自身がしっかり理解していないといけないと感じたの。

 少し長かったけれど話し終えたわ。

 もう一度、言って! と、言われても無理だけれどね。

 追加で青が姿を表し、話し出したの。


「ルバー様。私は生きています。ククルの中で、生きています。みんなと同じ刻を、歩む事は出来なくなりましたが……生きています。……この世界に来た意味を知る事ができます! 私にしか出来ない事があります!

 ナナちゃんが、ククルのに言っていた言葉があります。愛する心を責めてはダメ。愛はね、優しさから生まれるの。貴女の優しさが、アークを愛したの。その心をいじめないで、と。この話を聞いて、私の心が温かくなるのを感じたんです。母が同じ様な事を言っていたのを思い出します。青森、隣人を愛しんなぁ〜よ。その愛は優しさとなり、貴女に返ってくるんさぁ、と。母は父を愛しています。父や私たち兄弟の側にいる事が、自分の幸せだと! 生きる意味だと! 言っています。その言葉の本当の意味を知った想いです。私は、この世界の仕事は、愛を守る事です。ククルの愛が、その優しさが、間違いだったと言わせません! 私が、確かめて来ます!」


 と、ね。

 突然の青の出現にルバー様が気を失っていたのには、予想外だったわ。

 情けないわね。


「ルバー様……。ルバー様! しっかりしてください。聞こえていますか? ルバー様、ルバー様!」


 頬をピシパシと叩いたわ。

 私がしたので、たいした打撃にはならないわね。

 それでも、人1人の目を覚まさせる事は出来たみたい。


「す、すいません。今、青森くんの声と姿が見えたものですから……。青森くん……ですか?」

「はい。陸奥青森むつせいしんです」

「こんなところにいたのですか? でも、どうして……ここに? ここは、僕の執務室です。勝手に入って良い場所ではありませんよ。みんなが貴女を探しています。早く行って下さい」


 ルバー様は青の背中に触れたわ。


 “此奴は頭が弱いのか? ”

「ククルちゃん、仕方ないわよ。理解しにくいもの。私が説明するわ」

 “良しなに”

「ウフフ、ククルって時代がかる言い方をするわね。でも、似合っているから不思議?」

 “そうか。似合っているか。ナナには妾の声が聞こえているのか?”

「もちろんよ。ククルの声も、青の声も同じように聞こえているわ」

 “そなたも奇妙な運命を背負っているようじゃな”

「え?」


 もう少し詳しく聞きたかったのに!

 なぜが横槍、入ったの。


「ククルが、なんか言ってんのか?」

「トッシュ。私が奇妙な運命を背負っているみたいよ」

「ククル……」

 “分かっておるわ! ……と、言っても聞こえぬか”

「私には聞こえているわ。確かに、そんな間では無いわね」


 ルバー様の怪訝な表情が、私を捕らえて離さないの。

 話を進めるしか無いわね。

 私は、青に託したわ。

 けして、私のキャパがパンパンになったからでは無いからね。

 少しだけ、ほんの少しだけ、青の声が聴きたくなっただけ、よ。


「青、よろしく」

「良いわよ。ルバー様。白龍神ククルと私、陸奥青森は同一人物です。白龍神であるククルが現世に顕著するには、私のような特殊魔術を備えた人が必要だったようです。

 ルバー様。私は、ククルの中で生きています。みんなと同じ生を生きる事は叶いませんが、それでも私はククルの想いに共感したのです。彼女の愛する優しさを支えたいと思います」

「そうですか。……そうなんですね。……理解しました。君がそう望むのなら、僕は止めようがありません。白龍神ククル様。彼女に、陸奥青森くんに、友と過ごす時間をあげて下さい。願わくば、学び、伝える機会を与えて下さい」


 そう言うと、頭を下げたわ。

 今度は私が、怪訝な顔をする番ね。

 顔を上げたルバー様が、説明してくれたの。

 青が本当にやりたかった事を知ることになるわ。


「僕はてっきり、幼年学園の教師になる者と思っていたよ。空いた時間を、子供達と一緒に過ごしているのを見ていたからね。その道に進むものと、思っていたんだが……良いのですか?」


 その問いに答えたのは……。


「妾も童は好きじゃ。あの元気と笑顔に癒されるしのぉ。それに、すぐ動く事は無い。妾とてスキルを使って見たいし。……不穏な輩もいるようだしのぉ。此奴の言う通り、じっくり下調べをしてから動くとする。それと……まだまだ甘いわ! 小童!

 耳を澄まし、心を落ち着かせ。さすれば、見えぬ魔力を感じる事ができるじゃろう。それを登録せんか! 妾が目覚めたからにはしっかりと、教育して行くからのぉ。覚悟をしておれよ。小童」

「は、は、はい」


 ウフフ、ルバー様がパニック寸前ね。

 後は何を話さないといけないのかしら?

 とても、大切な事が有ったようだけれど……?


「私から追加の説明をしますわ。と、言いたかったんですが私にも……」

『姫様。ボクが説明いたします』


 助け舟を出してくれたのは、忠凶。

 この子達、私たちの邪魔をしないよう、影に潜んで話を聞いていたの。

 黙ってね。

 色々、聞きたい事や想いを押し殺していたと思うわ。

 今、目がランランですもの。


「お願いするわ」

『はっ。では、姫様、同時通訳をお願い致します』

「まかして」


 嬉しそうに、話し始めた忠凶。

 本当に楽しそうね。


『陸奥青森様が、お持ちの特殊魔術“憑依”が白龍神様のリアル化するための大切なパーツだったと思われます。精神生命体である龍神様が地上に降り立つには、エネルギー体であるご自身の器を用意する必要があったのです。トッシュ様は、時間をかけてエネルギーを肉体へと変化し大地へと赴いたのです。しかし、ククル様はエネルギーである魔力を使い果たし、肉体を造る事が出来なかったと思われます。そこに現れたのが青様です。青様の魔術“憑依”が、神降ろしの成功に導いたと考えられます。そして、森様の魔術“変身”が青様の心を守ったのではないでしょうか。魔術“変身”の真骨頂は真似る、写し取る、投影させる、保存する、だと考査いたします。

 青様、これまで魔術“変身”で姿を変えた方に今“変身”出来ますか?』

「出来ます。……そう言えば……“変身”した後は、声まで変わっていましたわ! それに、リストアップされているの。……項目別に」

 “なるほどのぉ。このネズミ、只者ではないようじゃ”

「ククル、ありがとう。後からみんなを紹介するわ。で、忠凶が話した事は当たっているの?」

 “正解じゃ。妾は魔術“憑依”しか見ておらんかったから、なんとも言えぬが。今ならよく分かるぞ。青の中に居るもう1人の青、森じゃったか。この子も良い子じゃ。ただ、意識が薄弱でほとんど眠っているがな。姉である青を信頼しておる。どちらも良い子。妾の大切な相棒じゃな”

「ククルちゃん」


 両手を胸に抱き、一筋の涙を流したの。

 森の事まで、良い子と言ってもらえた事がよほど嬉しかったのね。

 ここまでは、平和だったわ。


 “そうじゃ、そうじゃ。変わるぞ”


 何を思いついたのか不安になりつつも、姿を変えた青。

 ククルの、おかっぱ頭の座敷童姿になったわ。

 そして……。


「さっきから気になっておったんじゃが。妾にはステータス画面が出ぬぞ。それにスキルも使えぬようじゃ。忠凶、なんか心当たりは無いのかのぉ?」


 テーブルに起立していた忠凶へと向けた視線。

 女王の気質ね。

 話しかけられた忠凶が答えるより先に、言っちゃった人がいたのよ。

 言わなくても……ね。


「そんなの簡単だぜ。ナナの配下になれば良いんじゃねぇ〜の」

「なるほどのぉ〜。地上の理に順ずるしかないのか。お前の時は、どうしたんじゃ?」

「俺の時? 俺は、ナナの配下に入ったぜ。この首輪を着けるだけだな。まぁ〜、着けたからっと言っても、何の変化も強制もされねぇ。ナナとは、親分子分の間柄になるが……なんてないなぁ。こいつ、何にも言わねぇ〜し、好きな事をさせてくれるぜ。まぁ、なんだ。用事がある時も呼ばねぇから、困るけどよ。そういう時に限って、面白いことをやってんだぜ。

 ……ククル、人属をあまりなめるなよ。こいつらは、一人一人の力は大したことない。その事を本人が1番よく理解してるんだ。それを踏まえて、行動をする。タチが悪いぜ。補いながら成長する。しかも、上限しらすでだ。

 そして……ココからが重要だぜ……魔族でも同じ事が言える。あいつらの方がもっとシビアだな。魔力こそ力だ! 力こそ生きる全てだ! まさに、弱肉強食の世界まんまだ。そこが、人属と違うところだな。あいつらの事知りたいのなら、人属を知れ! そこから道が開けると、俺は考える」


 トッシュの話を、黙って聞いていたククル。

 冷めた紅茶を飲み、沈黙したわ。


「なるほどのぉ〜。よぉ〜く理解したぞ。ナナ、妾はそなたの配下になる事にした。ついでにルバー! そなたの指導もするぞ。神の育成が遅いのは、コレに原因があったようじゃ」


 指差したのはもちろん、ルバー様。

 驚きと、自分にまだ伸び代があることへの喜びが溢れた不思議な表情をしていたるわ。

 そんなに勉強が好きなのかしら?

 私には理解しかねるわね。

 でも、同感している人? がいたの。


「フム、そなたも喜びに震えておるな。妾も久しぶりの扱きがいの有るようで、楽しみでならぬわ」

「アハハハ〜。楽しそうね」


 呆れるわね。

 ココで、気がついたの。

 そもそも、魔術“全能”はククルが使うはずだったモノ。

 それが、大地を修復するために魔力と記憶を使ったのよね。

 そのせいで、神の食事である魔力の登録、“全能”が出来なくなった。

 それを補うべく、選ばれたのがルバー様。

 相通じるものがあるのかも知れないわね。

 それに……。


「妾を受け入れてくれた、青に感謝しておる。この子の願いを叶えてやりたい。

 どうじゃ、ルバー。昼間は童の指導を青がして、夜にそなたの指導を妾がする。青は童が好きなんじゃ。童の世話をしている時が楽しくて仕方ないんじゃよ。愛されて育った証拠じゃな。良い良い」

「そうしていただけると助かります。なんせ、無属性の登録いらい学園への入学が増えてしまって大変なんですよ。子供の未来を想うのは、親の仕事なのかも知れませんね。しかし、0歳児を預ける親の心は、理解しかねます。如何、思いますか? 白龍王様」

「ククルで良い。……それは、仕方のない事であろう。親かどうかなんぞ知らんぬが、優秀な眷属に連ねたいと思うのは、当然であろうな。世の流れとはそんなものぞ」

「で、すね」


 あらあら、意気投合してしまったわ。

 似た者同士ね。


 少しだけ、ホッコリしていたの。

 新しく入れてくれた紅茶を啜りながら、焼きもちをパクリ。

 ハァ〜。まったりと過ごす時間って大切だと思うわ。

 忙しい毎日に追われて忘れがちになるのよね。

 心の休息よ。

 この安らぎを忘れるから、壊れるのよ。

 心が、ね。

 今まさに、壊れる寸前だったの。

 だって、仲間が死んだのよ。

 ショックと怒りで、我を忘れかけたわ。

 でも、彼女が承諾した事。

 私が口を出す、筋合いではないわ。

 皆それぞれの思いを抱き、夢に向かって歩いて行くのよ。

 青が選んだ道ですもの。

 止める権利は無いわ。

 寧ろ、応援するべきよ。


 ハァ〜、それにしても美味しいわね。

 意外に合うわね。

 焼きもちと紅茶。

 ククルとルバー様。

 余計な事を言う事に関しては、私とトッシュも同類かしら?

 などと、思っていいると色んな人を刺激するような事を言い出すのよ。

 トッシュが、ね。


「で、ククルもナナの配下に入るんだな。確か、マジックアイテム“恭順の首輪”が1個、残っていたよな。あれで、大丈夫だろう」

「なんじゃ。その得体の知れない物は?」

「ほら、獣用にチョンピが造ったアレの魔力を使わないバージョンだ。魔力を使わないから俺たちでも、擬似登録ができる。無属性の魔術が使えんだぜ。それだけじゃない。スキルは面白い! 連絡手段だったり、移動手段だったり、なんでも有りなんだぜ。お前もハマるって」

「ホッホッホ。そうか、そうか、アレか、アノ首輪なんじゃな。人は、面白い事を思い付くもんじゃ」


 どうしても気になったから、聞いてしまったわ。


「獣用のアレって何?」

「アレか。ナナたちのマジックアイテム“従魔の首輪”の事だ」

「その、道具は獣用の登録装置なんじゃ」

「登録装置?」

「そうじゃ。獣には意思が無い。教えるには時間がかかるし、めんどくさいからのぉ〜。そこで開発したのが、魔力を使うたびに吸い上げる装具を造ったんじゃ。ただ、のぉ〜。装着する時に、魔力自身を登録しなければならず脱落した獣は数知れず。そこで、その衝撃に耐えきれた獣を、進化させる事にしたんじゃ」

「それじゃ、マジックアイテム“従魔の首輪”を造ったのは龍神なの?」

「そうだぜ。闇の行商人は、雷龍神チョンピの記憶を元に造った龍神だぜ。まぁ〜、残りカスで造ったから力は、ぼぼ0だ。でも、アイテム生成や知識に関しては、右に出る者はいないんじゃ〜ねぇの」

「後は、移動速度じゃな」

「アハハハ! 確かに逃げ足だけは、速かったな」

「「……」」


 前言撤回だわ。

 余計な事を言うのは、トッシュとククルね。

 私では無かったみたい。

 あらあら、ネズミ隊もルバー様も、あんぐり口を開けているわ。

 仕方がない事。

 ただ1つ言える事は………龍神、半端ないって!

ニッポン! オォーオ! ニッポン、ニッポン、ニッポン! !

君のゴールが明日を繋ぐ!

頑張れ!日本!


それではまた来週会いましょう。

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