表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/154

12話 あらあら、姉妹ですって パート1

 私達は、モンサンミッシェル風のスアノース城に到着した。


 私とお父様、ハンナと連絡係の忠凶で冒険者ギルドの戸をくぐったわ。

 ハチとロクは、他の兵士さんたちと一緒にロタ家の屋敷へと向かったの。


 そうそう、絶対にこの国が建国するときに日本人も関わっていたわね。

 おそらく、日本史の先生辺りが怪しいわ。

 だって、参勤交代があるんですもの。

 私も詳しくは知らないけれど、ドラマや映画にもなったはずよ。

 4つの貴族が各地方を統治しつつ、国の有事には駆けつけるようにと城下町の先に東西南北と別れて広い屋敷をあてがわれていたの。

 半年に1度、当主とそれに近い親族と入れ替わりをしながら行き来しているみたい。

 もちろん、それ相応の費用もかかる。

 まさに参勤交代。

 いろんな意味を含めての、この制度だと思うわ。

 よく考えたものね。


 私達が降り立ったのは、モンサンミッシェルの参道グランド・リュー風にある一角。

 ガラス張りのオープンテラスがある、カフェに入っていったわ。

 広いテラスの先に3つのカウンターがあり、受付、受取、酒と書かれた看板が掲げられていた。

 そのうちの受付に、ハンナが近寄って話をしたの。

 難しい会話でもしたのかしら、渋い顔をして戻ってきたわ。


「ハンナ……何かあったの?」

「いえ、何でもありません。妹がいたものですから……私達、仲良くありませんの。私が勇者になったのが気に入らないのでしょう。子供の頃はそれなりに良かったと思うのですが、いつの間にか離れてしまいました。

 さぁ、ガロス様、ナナ様。こちらで登録をするそうです。ただルバー様は城に上がられているとの事。夜にでもロタ家に顔を出すそうです」


 私達は個室に入ったわ。


 ここは、冒険者が申請を出せば打ち合わせなどに使える部屋で、3畳の広さにテーブル1つに椅子4脚があるだけの簡素な部屋。

 入り口から正面に私を抱えたお父様、となりにハンナが座ったの。

 2分ぐらい後から、お腹の大きな女性がくじを引く箱を持って入ってきたわ。

 受付に居た女性よね……と言うことは……ハンナの妹?


「姉がお世話になっております。妹のセジルです。ルジーゼ・ロタ・ナナ様ですね。いくつか質問をさせて下さい」

「こちらこそ、ハンナには大変お世話になっています。包み隠さずお話いたします。それとお父様の膝の上でお話することをお許しください」

「え!あ……はい。大丈夫です。それではよろしいですね。ルバー様から異世界人だと聞いております。前の世界での名前と出身地をお話ください」

「はい。鐡ナナで日本人です。追加情報もお話いたしますね……」

「ナナ。それは必要ない事だと思うぞ。ルバーなら見抜くであろう」

「本当ですの!そのルバー様は凄い方なのですね」


 私とお父様の会話に面食らいながらも、何とか取り繕い話を勧めたセジルさん。

 それが出来たのはひとえに、姉がいたからでしょうね。

 身内がいるのは心強いから。

 でも仲が悪いと言っていたわね。

 その割には……。


「そ、それではこちらの箱に片手を入れて下さい。手に何かが出てくるまで入れておいて下さい。何かが触れたら仰って下さい。あの……えっと……その……」

「分かっています。私の足のことですね。気にしない下さい。テーブルに乗ることをお許しくださいね。お父様、お願いいたします」

「うむ」


 私をテーブルの上に置いたお父様。

 箱に手をかけ、身体を支えながら何とか右手を入れたわ。

 するとあら不思議!

 はじめは何も無い空洞だったのに、いつの間にか手の中には硬い石が存在していたの。

 慌てたのは私ね。


「お、お、お父様!手に余るほどの石が!落としそうですわ」

「何?大きいのか?」

「はい!大きいです。重さはさほどありませんので軽石かしら?」

「何でもいいから出してみなさい。落としても壊れることは無いし、壊れてもなんの問題も無いよ」

「そうなんですね。では出しますね。セジルさん、よろしいですか?」

「え!あ、はい」


 私が尻餅をつくつきながら取り出したモノは……。


「ナナ様、ダイヤモンドだわ」


 ハンナはため息混じりの言葉で、転がったダイヤモンドを手にしながら話し始めたわ。

 目は私のダイヤを凝視しつつだけれどね。


「凄いの?」

「もちろんです。ダイヤは魔力の無い人や、魔力の属性が無い人などが手にする石です。珍しいのは大きさと品質。私の…………セジル、加工をする人は誰?」


 私に話していたハンナが、鋭い視線でセジルさんに言い迫った。

 手には縦5センチ、横10センチ、高さ5センチの無色透明なダイヤモンドの原石が握られていたわ。


「何よ!私の旦那様。何か文句でも」

「……他の人には……ダメね。ナナ様。本来ならご自身で悩みに悩み、スキルを取得するのが正しいのですが。今すぐスキル隠匿を取って、実行してください。よろしいですか?」

「もちろんよ。私も隠匿のスキルは取ろうと考えていたから平気よ。すぐするから待っていて」

「ハンナよ。それほど珍しいのか?」

「はい。判断を間違うと、ナナ様の身に何が起こるかわかりません。利用しょうと虎視眈々と狙われる事になるかもしれません。セジル、済まないけれど加工の時に出た破片も回収しといてね。そしてこの事をルバー様に報告して、私の名前を出してもいいから早くして!」

「分かったわよ!偉そうに言わないで!!」


 そんな会話を聞きながら私は操作をしたわ。


 目の前には半透明の画面が現れた。

 目線を下に向けると画面も移動するのね。

 目的の項目“スキル取得”の欄を凝視すると場面が変わり、いろんなスキルが出てきたわ。

 その1つを凝視すると細かい説明と“はい”と“いいえ”の項目も出てきた。

 もちろん、目的のスキルでは無かったのでいいえを選択して、探したの。

 2ページ目の上から5段目に隠匿が出てきて凝視したわ。


 隠匿

 ステータスや魔術やスキルを隠す。読み解かれ無いようにする。

 はい いいえ


 すぐにはいを選択して、実行して、顔を上げると険悪ムード。

 どうしたものかと、お父様を見ると明後日の方を向いていたの。

 役に立たないわね!も!


「セジルさん。スキル隠匿を実行しました」

「それでは、何に加工いたしますか?」

「だったら……お父様。この世界に懐中時計とかありますか?」

「あるにはあるが……なぁ〜ハンナ」

「ガロス様……はい、確かにございます。ですが魔力が無いと使用する事が出来ません。動力が魔力なので、ナナ様には」

「いや!ちっと待てよ!ナナには聖女の祈り効果で補正が効いてないかぁ?」

「そう言えばそうですね!懐中時計は魔力1で済みますのでナナ様でも使えます。懐中時計にするのですか?」

「そうなの。前の世界でね。私の夫が大好きだったのよ。そのうち私も好きになってね。シンプルな物でも何でもいいから、出来るかしら?セジルさん」

「もちろんです。最高の物をご用意いたします。少しお時間がかかるのでお屋敷にお持ちいたします」

「いいえ。ここで待っています。私が責任を持って持ち帰りますので、ガロス様とナナ様はお屋敷へとお戻りください」

「ハンナ、俺達も待とう。あの男にも用があるしなぁ。ナナもスキルの事をもう少し学ばないとなぁ〜」

「そうですね。お父様。ぜひ学びたいです」

「だったら私が教えますよ。ナナ様……」

「コレを読まれた方がより一層、理解できます。では加工をしてまいりますね。少しだけお時間を頂きますがお待ちください」


 セジルさんがハンナに敵意むき出しの視線で睨み、私達には笑顔を向けて分厚い本を置いて部屋を出て行ってしまったわ。


「「「……」」」

「ガロス様、ナナ様。すいません。セジルは私の事が嫌いなんです。ナナ様、少しだけ昔話をしてもいいですか?」

「もちろんよ。聞きたいわ」


 私はお父様の膝の上に戻り、ハンナがお茶を煎れに出て行ってしまったわ。

 変わりに私の前に現れたのは白いハツカネズミ。


『姫様。この本に触れてもよろしいですか?』

「いいわよ。まさか読むの?」

『はい。姫様のお役に立つ事なら何でも致します。それにスキルの事ならボクたちも知るべき情報です』

「いつもありがとうね」


 小さい頭を撫でてあげると嬉しそうな顔をしたの。

 可愛い!

 でもすぐにキリリとした顔に戻り本に触れたの。

 その姿も可愛い!

 小さい手がチョコンと本の端っこに触れたわ!

 ミニマムなモノがいいわ~、心が和むもの。

 そんなほっこりした雰囲気でいると、ハンナがコーヒーとミルクを持って戻って来た。


「お待たせしてすみません。ガロス様にはコーヒーを、ナナ様にはミルクを持ってきましたよ」

「そんなに待ってないわよ」

「うむ」

「そ、そうですか……すいません。身内の恥を話すようで気が引けるのですが、聞いてください。

 私はマーウメリナ地方出身で実家は米農家をしています。兄、私、妹の3兄弟で、兄が家を継いで米を作っています。ありがたいことに美味しいお米が食べられるのは兄のおかげですね。……ナナ様は誤解されていますよね。もちろん産まれた時から魔力が溢れるほどあれば学園行きなのですが、大概の人は魔力があっても無くても身体の奥底に眠っていて、表に出ることはありません。何かの拍子に出てくるのです。

 私の場合は……私が7歳で妹が5歳の時です。タイミングも悪かったと思います。冬ごもりする直前の秋です。私とセジルはキノコ狩りがしていて、つい夢中になって森の奥へ奥へと進んでしまい遭遇してしまったのです。冬眠する直前で、まだまだ食べ足りない猛る熊に。私はセジルの手を引き全力で逃げましたよ。一心不乱に。でも熊のスピードって速いんですね。あっという間に追い着かれて……怖くなった私はセジルの手を離してしまったのです。

 実はここから先の事はあまり覚えていないのですよ。ただ怖くて怖くて、セジルの事もここが森の奥地だという事も、考える余裕なんてありません。恐怖に支配された私は、セジルに襲い掛かる寸前の熊を燃やし、森を燃やし尽くして気絶したそうです。

 後から聞いた話によると、私の魔力が暴走したそうで。セジルは、近くの川に飛び込み助かったそうです。それでも背中には大きな火傷をしましたけれど、命には別状が無くてホットしてのを覚えています。でも、それからですセジルは私を避けるようになり、目すら合わせてもらえなくなりました……私の事が怖かったのでしょう。

 そのまま学園へ行きましたので、セジルには会わずじまいです。再開したのは私が仕事を始めた時、ギルドに来て驚きましたよ。だって受付に居るんですもの。でも……駄目ですね。あんな別れ方をしたせいか、私とは相容れないのでしょう。産まれてくる子が健勝ならいいのですが……ね」


 最後の“ね”に哀愁を感じ取ってしまったの。

 私は腕を伸ばしそっと触れたわ。

 お父様が私をハンナに渡してくれたので、強く抱きしめる事が出来たの。

 そこにノックの音が響いて入ってきたのは……。


「ご歓談中に失礼するよ」


 チャラ男だった。


モンサンミッシェルはいいですね。憧れます。

ただし……出不精の私には……海外旅行は重荷しかないのです!!

でも一度は憧れますね。

でも海外は……と項垂れつつまた来週!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ