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107話 あらあら、神の食事ですって

 アハハハ! と、笑うしか無いわね。

 ルバー様に全てを話し、誰に何を言うかの判断を委ねる事にしたの。

 当の本人は、王様は全てを話しお父様にはハチの特殊スキル“フリーザ”だけを話す事に決めたみたい。

 確かに、その方がいいのかも知れないわね。

 混乱するだけだし、必要な人が知っていればいい事ですもの。

 でも……私の気持ちとしては、全ての人に歴史の真実を知っていてもらいたかったわ。

 だって、知らなければいけない事だと思うもの。

 その誤ちが、未来に繋がる道しるべなんですから。

 その学びをさせないと言うことに、問題があると思うわ。

 それでもね。

 人生には、黒を白と言わなければいけない時はあるものよ。

 誰にでも、ね。

 ハァ〜。

 ため息が尽きないわね。

 それと言うのも、次の問題。

 そう、ハチの特殊スキル“フリーザ”の所為なの。

 このスキルは、とんでもないポテンシャルを秘めていたわ。

 新しい魔石を、創ってしまうほどにね。


『……キメラ魔石……』


 忠吉のこの言葉が、目の前で起こった現象の正体。

 お父様とルバー様の提案で、火属性のガーネットと風属性の翡翠を混合したの。

 勾玉を2つ合わさり1つの円にした様な球体を、ハチがスキル“フリーザ”から出したのね。

 私には、綺麗なアクセサリーにしか見えなかったんだけれど。

 私以外の、人達が色めき立っちゃたの。

 使える魔術は“ファイヤストーム”ですって。

 炎の竜巻。

 テーブルには、小さな焼け焦げを付けながら旋回してお父様が消したわ。

 だって、火事になりそうな勢いがあったから慌てて解除したの。

 でも、ルバー様の魔術“ヘルシャフト”がバッチリかかっていたから、平気だったんですけれどね。

 さらに凄かったのは、ランクの高い魔石を使うと使い捨てではなく補充が出来る魔石を創る事が出来た事なの。

 面白くて不思議ね。

 そう私の感覚では、面白実験的な感じだったの。

 お父様のこの一言を聞くまでは、ね。


「その通りだ。俺が保有していいる、最高のモノを持ってきた。やはり、そんな凄いものが出来たか。確かに面白い。いろんなパターンと品質で創れば、魔力を持っていない者にも……戦う事が出来る……な」


 言葉を失ったわ。

 私たちは、戦う魔力を持たない者達の武器を創ってしまったの。

 死ななくてもいい命を戦場へと導いてしまった……かも知れないモノを……。


「お父様なら、魔力を持たない者達の気持ちを汲む事が出来るのでは無いですか? それなのに……。その言葉は、あんまりな台詞ではないですか! その言い方からは、無駄死にの後押しをしているみたいな感じが読み取れましたわ。死にたく無い者に無理やり戦地へと、送り出す事を念頭に置いたような言い方でした。……魔力が無くて苦しんだ事がある人の言葉では、ありませんわ」

「ナナ、すまない。確かに、魔力のない者の気持ちはよく分かる。しかし、俺は国務者なんだ。国を守る責務がある。その為の兵力は……欲しい。魔力は有限で、限られた者しか保有していない。その限られた者以外でも、攻撃できる手段があるのなら……欲しい。そう考えてしまう俺は、奸邪者なのか」


 お父様が項垂れてしまったわ。

 少しだけ、言い過ぎたかしら?

 でも、お父様だからこそ言って欲しくなかった言葉だったの。

 国の為だなんて、言って欲しくなかった。

 たとえ本当のことだとしても、よ。

 なんとも言えない空気が、私たちの間に流れたわ。

 そこに、意外な方から援護射撃があったの。


『姫様。やはり、ガロス様こそ1番、ご理解しているかと存じます』

「忠大、どういう事?」

『まず、知っていて欲しい事がございます。ガロス様は2年前に軍事規約を改定され、徴兵制を撤廃されております。今現在この国の軍には、命を賭しても守りたいと考えている者達しか軍にはいないのです。もちろん、魔力が有ろうが無かろうが、です。

 ガロス様こそ、魔力の無い方達の光なのございます。その事を踏まえ、もう一度、思い出していただきたと存じます。ガロス様は、魔力を持っていない者にも戦う事が出来る、と。姫様とて、魔力を欲していたではございませんか! 皆、魔力に関係なく、守りたいのです。その想いは、私達も同じでございます』

「……そうね。お父様、ごめんなさい。私が言いすぎたようです」

「そんな事ないさぁ。ネズミ隊よ。そう言えば、そなた達は魔力が少なく破棄された経験を持っていたなぁ。魔力無しのレッテルは、なかなか剥がす事は困難だ。こんなところに同士がいたとは……嬉しいかぎりだよ」


 そう言って、ネズミ隊一人一人に握手しての。

 私も馬鹿ね。

 お父様の言葉をそのまま耳に、入れてしまったわ。

 そのままの意味でね。

 その裏にある想いを、見抜けなかった私のミス。

 私だって、魔力が欲しい! と、想っていたのに。

 私にはハチにロク、ネズミ隊が居るから、すっかり忘れてしまっていたのね。

 改めて思うわ。


「お父様って凄いわ。着実に想いを現実にしているんですもの。私にも出来る?」

「もちろん、ナナにも出来るさぁ!」

「あら、嫌だわ。思わず口からでっちゃっていたのね」

「アハハハ! 思わずかぁ! それは嬉しい本音だね」

「ウフフ、そうですわ。ごめんなさい。ウフフ」


 お父様は、守りたい心を尊重した攻撃をするための武器を探していたんだわ。

 それが、今回の考査なのね。

 だったら、私も真剣にならないといけないわ。


「そうだわ! お父様、ルバー様。土属性と黒属性を混ぜたら……墨? あれ? それは漢字の話だったわ。……ごめんなさい。役に立たないわね」


 ハァ〜、目から汗が吹き出そうだわ。

 クスン……と、涙ぐみそうになる私を、他所に黙り込むお父様とルバー様。

 ワクワク顔のネズミ隊。

 モォ! なんなのよ!

 確かにくだらない事を言ったわ!

 でも……そんなに、黙る事無いじゃないの!

 私が再度、謝ろうかと口を開きかけたとき、お父様が大興奮で話し出したの。


「ナナ! 面白いぞ! 文字とは古の知恵が詰まっているものなんだ。そうだろう、ルバー」

「あぁ、その通りだ。本当に面白いところを指しますね。融合するなら魔石は、シトリンと黒真珠で実査をした方が良さそうですね。おそらく、消えない墨? 土属性が定着剤の役割りをしそうです」

『黒属性が、色の役割ですか。僕が考査しますに、消えないどころか消せる墨? 自在に文字を操れる墨になるのではないでしょうか? ドキドキいたします』

「なるほど、忠吉くんはそんな風に考査をした訳ですね。……そうですね。ハチくんの特殊スキル“フリーザ”から生み出される魔石や属性を“アトリビュート”とするのはいかがでしょうか」

「え? 登録は出来ないのですか?」

「ナナくん。キメラ魔石や新属性はハチくんのスキルから発生するモノです。普通のスキルなら、僕が使う事で登録できます。なんと言ってもスキル“全能”を持っていますから。そんな僕でも、登録できないのが特殊魔術と特殊スキルなんです。そこから発生した、魔術やスキルも同様です。これまでの特殊系の魔術は、単体だったので別に問題は無かったのですが。今回のハチくんの特殊スキル“フリーザ”は多岐に渡ります。しかも、僕の“全能”で登録は出来ません。さらに、マジックアイテムまで、創り出す事が出来る。ハチくんのスキルは、レア中のレアなんですよ。そこで、“フリーザ”から生み出された、魔石またはマジックアイテムや新属性を1つにまとめる事で分類しょうと考えたわけです」

「分類してどうするのですか?」

「……ナナくん」


 あれ?

 みんなの冷たい視線が! !

 慌てる私を置き去りするほどの、大きさの笑い声が部屋中に響いたわ。

 まぁ、結果的に私を助けてくる笑だったの。


「アハハハ! ナナは竜の婆ちゃんなんだな。そっくりだぜ! 最高! アハハハ! 竜も整理整頓が下手くそなんだ。分類分けして片付ける事をしない。アハハハ! ナナも同じ穴のムジナかよ!」

「トッシュ! そんなに、笑う事ないでしょう!」


 そうなの!

 私たちの考査を、黙って聞いたいたトッシュがいきなり笑い出したの。

 今も、お腹を抱えて大爆笑しているわ。

 本当に失礼しちゃうわね。


「アハハハ! すまんすまん。口を出すつもりは無かったんだ。黙って見ているだけのつもりが、あまりにも面白かったから笑ってしまったぜ。さて、俺がこれから話すことはあくまでも独り言だ」


 突然、そう切り出し見回したトッシュ。

 何を言い出すのかを、固唾を呑んで見守ったわ。


「……ルバーの“全能”は、登録が問題なんだ。それをしなければ問題ない。ところが、ハチの“フリーザ”は違う。生み出されるモノ、そのモノの取り扱いなどなど。問題は、山積みなんだよ。管理するのが大変だから、天界に連行する。その方が早いからな。彼奴らは、お前らがそれをどう扱うのか見ているんだ。

 俺は……ルバーが提案する“アトリビュートに纏めて登録する”方法が良いように思う。

 そもそも、間違えてるぞ。ルバーの“全能”はスキルじゃない。“全能”は“全能”だ」


「「「『『『『『『『はぁ? ? ?』』』』』』』」」」


 みんなの顔が凄いことになったわ。

 もちろん私も含めてね。

 その中でもルバー様の顔が驚きを通り越して、滑稽だったわ。

 ひょっとこが目を見開いている感じ。

 そんな顔されると、吹き出しそうになるわね。

 でも、トッシュの言った事の意味を知る方が先よ!


「トッシュ。どう言う意味?」

「う〜ん。この間から気にはなっていたんだ。ナナ、魔術とスキルの違いは理解してるのか?」

「もちろんよ。魔力を使って術を発動させるのが、魔術。魔力を使わずに術を発動させるのが、スキル。で、しょう?」


 答えたのは私。

 だって、誰も立ち直ってないんですもの。


「間違いでは無いが、それでは花マルをやる訳にはいかないなぁ。次だ。ルバーの“全能”とは?」

「え? ! ……新しい魔術やスキルをこの世に登録する、スキルですわ。だって、魔力を使わないんですもの。スキルです」


 なんだか、腹がたつ言い方をされたので、完璧な答えを言ってやりましたわ。

 少しだけ鼻を高くしたのは、ご愛嬌。


「これも間違いじゃないが、いろいろ足りないぞ」

「ちょっと、おかしいでしょう! 何が違うって言うのよ!」

「いろいろ足りない」

「どこがですか?」


 お父様が復帰。

 そして、ネズミ隊もね。

 その少し前に、ハチとロクも平常心に戻っていたわ。

 残るはルバー様だけれど……もう少しね。


「ガロスでも……ダメかぁ。ルバー……オイ! 正気になれよ! !」


 バチン!


 ルバー様の目の前で、柏手を打ったわ。

 相撲の猫だましよね。

 やっとの事で、帰ってこれたルバー様。


「す、すいません。ハァ〜、少し落ち着きましたよ。トッシュ様の質問です。魔力とはなんですか?」

「魔力とは……神の食事だ」


「「「『『『『『『『はぁ? ? ?』』』』』』』」」」


 またもや、困惑。

 そして、混乱。


「トッシュ。それは、例え話なの? 揶揄?」


 私が1番に復帰。

 そのまま、質問。


「違う。そのままの意味だ」


 間髪入れず、帰ってきたのがこの答え。

 訳が分からないわ。


「だ・か・ら! 魔力とは、神や龍神の力の源。簡単に言うと、飯だ」

「だ・か・ら! それの、意味が分からないと、言ってんの!」

「分かった分かった。説明する。たいした話でもねェ〜しな。よく聞けよ。

 そもそも魔力とは、この地に生まれし全ての者に宿っている。それを魔術にまで昇華、出来るか出来ないかの違いしかない。魔力の無い者などいないんだよ」

「でも、私やお父様には無いわ」

「無いんじゃ〜ない。引き出せないだけだ。まぁ〜、今はその話しは後回しだ。とにかく、魔力とはこの大地から生まれたモノなんだ。それを、魔術を使い放出する事で神や俺たちに還元される。その為の登録なんだ。だからこそ、神にしか使えないんだが……。本来なら、ククルが担うべき事。それが……」

「トッシュ! その話も後回しよ。神様に還元されるってどう言う事なの?」

「う〜ん」


 全く、お父様には龍神様の事は話していないんですから!

 余計なことは言わないで欲しいわね。

 あら? 沈黙したわ。

 暫く考え込んで、か〜ら〜の〜・・・。


「まぁ! いいかぁ。お前たちなら、遅かれ早かれたどり着いていた事だし、話しても良いだろう。そもそもルバーには、龍神の代行をしてもらってんだ。知っとくべきだろう。さて、ルバー。しっかり聞いて理解しろよ」


 トッシュはルバー様を見据えて話し出した。

 当のルバー様は、困惑しつつも興味が勝り徐々にヒートアップしだしたみたい。


「ハ、ハ、ハィ〜!」


 上擦った声が、今のルバー様の心情をものがったていたもの。

 相当に緊張と好奇心で、どうにかなりそうな雰囲気だわ。

 大丈夫かしら?

 そんなルバー様を、放置してトッシュは話しだしたの。


「よし、聞けよ。まず、術を発動させるだろう。その半分は発動エネルギーに回される。もう半分は神へ献上される。使えば使うほど、神は成長する、と言う仕組みだ。俺たち龍神は、そのおこぼれで生きれいる訳だなぁ。まぁ、俺は龍王になったから、この大地で栽培された食物を食ってエネルギーに変えるがな。神には、それが出来ないからこその、ゆりかごなんだ。

 その術を登録し、神の供物システムを構築するのが“全能”なんだ。だ・か・ら! 特殊魔術だろうが何だろうが、登録できる。やり方が少し違うんだ。そんなの簡単だから、俺が教えてやるぜ。発動者の肩に手を置くだけで、良いはずだ。

 それともう1つ。スキルも魔力で発動するぞ」


「「「『『『『『『『はぁ? ? ?』』』』』』』」」」


 またまた、爆弾が落とされた。

 そして……。


「キャー! ルバー様!」


 赤い涙が鼻から零れ落ちたの。

 さらに……。


「キャー! お父様!」


 気を失い後ろに倒れたわ。

 直立不動でね。

 でも、倒れたのはお父様だけではなく、ネズミ隊もハチもロクも。

 私は床に放り出される寸前、トッシュに助けてもらったわ。


「トッシュありがとう。でも、その話、本当なの?」

「あぁ、マジなんだが……。コイツらが目を覚ましてから、続きを話すよ」

「は、は、は、話して下さい」

「聞きたいか?」

「ハ、ハ、ハ、ハイ」

「耳を貸せ」

「ゴニョゴニョ……」


 もちろん、私も耳を寄せたわ。


「「嘘!」」


 私とルバー様の絶叫で、気を失っていた人達が目を覚ましたの。

 でも、それくらいのインパクトがあったわね。


 それはね……ゴニョゴニョ……なんだって! ウフフ!

少しだけ短いです。

神様だってお腹が空くのです!

私もお腹が空いて当然なんです!

……更新よりお昼を先に食べてしまった事を懺悔します。



それではまた来週会いましょう!

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