99話 あらあら、“フリーザ”の脅威ですって
この子達の好奇心には、呆れるわね。
好奇心?
私から言わせると、無謀よ!
ルバー様に感化されたんだわ。
とんだ迷惑野郎! よね。
コンコン。
「お父様。ナナです」
「入りなさい」
「失礼します」
「お昼を軽く持って来させよう。ソノア、なんでも良いから持って来てくれ」
「はい、ただいま。お持ちいたしますわ」
私は自室で聞いた話をする為に、お父様とルバー様が居る執務室へと赴いたの。
そう、魔族 マンプクを飲み込み、進化してしまったハチの新しい特殊スキル。
これがまた、厄介なことこの上ない。
ハァ〜、困ったことだわ。
お父様、と言うよりルバー様がどんな反応をするかよね。
ハァ〜、この2人だけには全てを話すしかないわ。
内緒にしても、すぐバレそうだしね。
なんせ、ルバー様もネズミ隊と同様のスキル“走破”を持っているのだから。
「貴方も食べますわよね」
「いただくよ」
「あら? ルバーも居たのね」
「ソノア様は、僕に冷たいですよ。何かしましたか? とんと、記憶に無いですねェ〜」
「貴方の惚けた顔が嫌いですわ。わたくしから、旦那様とナナを取ってしまうんですもの。敵です」
「お、お、お母様」
「「……」」
思いのほか真剣な面差しに、言葉が出て来なかったわ。
私もお父様もね。
でも、持って来てくれたモノに、私の笑顔が溢れたの。
「おにぎりだわ! お母様、梅干しはどれですか?」
「1番左端にあるのが、そうですよ。その横がおかかで、高菜巻ですわ。貴方の分はこちらに置いておきますね。こっちが、ルバー分ですわ。貴方は酸っぱいのが嫌いですものね。梅干しの代わりに昆布の佃煮を入れています」
「「「あ、あ、ありがとうございます」」」
アハハハ!
流石、お母様だわ。
隙がないわね。
それにしても、美味しいわ。
昆布も………美味しそうね。
「物欲しそうな顔をしてもダメですよ。あとでソノア様に作ってもらってください」
「ケチですね」
「「……」」
「オホホホ! ……ごめんなさい。お父様、ルバー様」
笑って誤魔化して、おにぎりを平らげたわ。
後で、お母様に何故おにぎりだったのか聞いたら……。
「ナナのために日本食を勉強していたら、魅力にハマっちゃって。美味しくて、健康的で、お財布にも優しい。パーフェクト食なんですもの。ただ……まだまだ、謎の部分があるのよね。ウフフ、ナナちゃん今度、一緒に考査と実査をしましょう」
「はい! お母様!」
そんな会話をして、空になった食器を手に持ち、部屋を出て行ったわ。
本当に良くできた人よね。
母としても妻としても、完璧な人だわ。
尊敬する。
私は、ダメね。
お母様の様に、一歩引く事が出来ないもの。
常に、前を向いてしまうわ。
時には後ろを振り返ることも大切よ。
ハァ〜、今がその時ではない事は確かね。
後ろを振り返る時ではなく、現実逃避をする時よ!
うん、コレが正しいわ。
ハァ〜。
「お父様、ルバー様。これから話す事は……。とりあえず聞いてください。ハチ“ヘルシャフト”を使ってちょうだい。誰にも聞かれたくないの」
『はいワン。魔術“ヘルシャフト・密”』
私は、ハチにそっと言いたわ。
魔術の発動を確かめてから。
改めて、2人に確認を取った。
大きく頷く、お父様とルバー様。
ハァ〜、話さないといけないわね。
「お父様、まず何から話しますか?」
「もちろん特殊スキルからです」
「ルバー様に聞いていませんわ」
「ウッ」
「アハハハ、1本取られたなぁ。ナナ、済まないが。何故、魔人があの姿でルジーゼ地方へ向かっていたのかを真っ先に知りたい。まずはそこからだ」
「はい、お父様。こちらへと向かっていた球体が、魔人 マンプクこと楽満俊哉だという事はご存知ですね」
「もちろん」
「忠大の話では、楽満俊哉は北岡真理亜に対して、ほのかな恋心を抱いていたようです。ところが彼女にはすでに恋人がいました……諦めたみたいですね。ところが、マリアは紅蓮の龍王 鐡竜一のことが好きになり、恋をしてしまいます。楽満俊哉は思い違いをした様ですわ。……自分にも脈があるのではないかと……。恋心に、片想いの恋心に、想いを乗せてしまったんです。そして、マリアが居なくなったことで、保たれていた心のバランスが崩れ去り、後を追いかける暴挙に出た様です。そもそも、この世界に来た時に壊れけていたのでは無いかと、忠大が話していましたわ。自我が……自分の心が折れてしまい瓦解したようです。マリアを求め、マリアの魔力を探して、ルジーゼへと来たみたいです。彷徨っているううちに体力が無くなり……スキルが暴走したのでは無いかと話していましたわ。ルバー様、そんな事ってあるのですか?」
「……聞いたことが無いよ。ただ、僕の意思に反して、魔術やスキルが思った通りに発動しない時があった。また逆も然り、想像以上な破壊を招いた事もあった。この様な現象をビックバンと言っているが……」
『そうでは、ありません。完全にスキルが、マンプク様を支配下に置いている状態です』
忠大が割り込んだわ。
「違うみたいです。完全掌握していたみたいです。スキルが楽満俊哉を乗っ取っていたみたいですわ」
「「……」」
黙り込む、お父様とルバー様。
追い討ちをかけるべく話をまとめたわ。
「恋に酔いしれた楽満俊哉は、愛する人を求め壊れたのです。その心を、スキルが飲み込んだ。その姿が、あの球体です。あの球体は、特殊スキル“冷蔵庫”に壊れた心を飲み込まれた成れの果て。その想いだけが暴走し、マリアの魔力を求め……その魔力を有するロクに反応して、ルジーゼ地方を彷徨っていただけですわ。ここまでは理解できましたか?」
「あ、あぁ、理解できない部分もあるが……今はいい。次は特殊スキル“冷蔵庫”について話してくれ」
「はい、お父様。ですが、その前に踏まえて置きたい事柄があります。私が……私が……。暴走したマンプクに飲み込まれた事です。そのせいで、ハチがバーサー化してしまいます。我を忘れたハチがマンプクを、パックと食べてしまった事で事態は幕を閉じます。その事はルバー様から、聞いていますよね」
「もちろん。その後のこともだ。正気を取り戻したハチが、ナナを含め全てを元に戻して眠りについた。そう、報告を受けた」
「その通りです。そして、今朝、ステータスを確認したら“冷蔵庫”ではなく特殊スキル“フリーザ”と名前が変わっていたんです。さらに、魔獣 犬神に進化していましたの。報告が遅くなってごめんなさい」
「大丈夫だ。Sランクかぁ」
「感傷に浸っているところ申し訳ないが、特殊スキル“冷蔵庫”では無く、特殊スキル“フリーザ”はどんなスキルなんだい?」
身を乗り出すルバー様。
Sランクの魔獣に対する、対応が対照的ね。
恐れを抱いているのがお父様。
好機の喜びを顕にしたのがルバー様。
その2人の顔がこれから話す私の言葉で、同じ表情になるはずよ。
忠凶から聞いた全文を、そのまま言いましょうね。
ハァ〜、間違えずに言えるかしら?
「お父様、ルバー様。聞いた話をそのまま、言いますわ。忠凶、間違えていたら訂正してね」
『はっ』
私はお茶を一口啜ってから、話し出した。
ウフフ、私に話した時の忠凶と同じ事をしてしまったわ。
あの時、彼女はこんなにも緊張していたのね。
今更ながらに、気がついたわ。
「えっと……。属性は無属性で、どんなものでも飲み込み貯蔵する事が出来ます。呑み込んだモノはハチの意志で、操作でき。種を飲み込めば発芽させ、実を付ける事も出来ますし、種の状態で永久に保存しておく事も可能です。また、体内に取り込んだモノに、自身の魔力や貯蔵した魔力を付与する事が可能です。もちろん、自分以外の者に与える事により、その者又は物のHPもしくはMPを回復する事が出来ます。
意志ある者は、スキル“闘気功・纏”を使用し1分以上息止めが出来るの者なら取り込め、その者に魔力・属性・スキルを与える事も可能です。ただし、意志ある者は長時間取り込んだままだと死を迎えます。ご注意を! さらに、取り込んだモノの時も操れます。人なら若返る事も、年をとる事も可能です。
無尽蔵に取り込める、大規模倉庫。それが特殊スキル“フリーザ”です。まさに、神なるスキルです。
これが私が聞いた、全文です。理解できましたか?」
『姫様、完璧です。様付けや接続詞などの間違いはあれど、パーフェクトです』
「ありがとう。理解できましたか?」
「「……」」
あれ?
反応が無いわ。
すると、突然、お父様が震え出し取り乱したの。
「そんな事……ある訳無いだろう! それが出来るなら俺は……俺の……俺の、人生は何だったんだ! 貴族なのに魔力無しと蔑まれ、疎まれ、かげ口を言われ続けた。俺の歩んで来た道は、なんだったんだ!」
「ガロス、落ち着け。きっと、無理難題な条件があるはずだ。そうでなければ、割りに合わない」
「そ、そ、そうだなぁ。ルバー、すまない」
少し我を取り戻したお父様。
でも、次の私の言葉で……。
ハァ〜。
「ルバー様。聞いていなかったのですか? 条件は3つです。スキル“闘気功・纏”が使える事と、1分間の息止めと、ハチに魔力か属性のストックがある事です。どれも簡単ですね」
「……そんな事が許される訳無いだろう! そんな簡単に、魔力の受け渡しや属性の付与が出来るなら。僕の苦しみは何だったんだ! 信じられない。ナナくん、それを認める事は出来ない」
まさかのルバー様から、拒絶の言葉。
否定的な言動が、飛び出してくるなんて、思いもよらなかったわ。
困った私に、ある提案が持ち込まれたの。
と、言ってもネズミ隊の話なんだけれどね。
なんだか、大義名分を与えてしまった感があるわ。
仕方のない事なのかしら?
『姫様。ここは実査を見せるしかございません。まずは私が、先にいたします』
『忠大……狡くないか? 僕だって!』
『忠吉、分かっている。順番だ。順番にしていただこう。どうせ、1回では実査は完結しない。人族で試すほどの度胸は無いと考査する』
「あらあら、中々の予想を立てるのね」
ニヒルな笑みが、忠大の顔に浮かんでいたわ。
思いもよらず、悪い顔をしているわね。
とりあえず、ネズミ隊の提案を言って見ることにしたわ。
「お父様、ルバー様。そんなに信じていただけないのなら、実査をしませんか?」
「実査? ……誰かで試すのか?」
「その通りですわ、ルバー様。ネズミ隊が実査いたします。ハチ、解除して練習場と移動しましょう」
『その必要無いワン。そうワンねぇ〜。色々、試したいから全属性の魔石が欲しいワン。白属性だけ1個多くちょうだいワン!』
「楽しそうね」
『ウフフ……ワン』
「ハァ〜、お父様。実査のために全ての属性の魔石を用意して下さい。白属性だけ1個多く下さると有難いです」
「……ココでいいのか?」
「大丈夫みたいです。魔術“ヘルシャフト”分の1個でしょう?」
『当たりワン』
「問題ないので、魔石の用意できますか?」
「勿論だ」
お父様が部屋を出て行ったわ。
その間も、ルバー様はブツブツと独り言を止めるつもりは無いらしく、怖いくらいな眼差しでハチを見ているの。
沈黙が辺りを支配したわ。
本当の支配者はハチなんだけれどね。
だって、魔術“ヘルシャフト”はバッチリ効いているんですもの。
それにしても、この子達は何も言わなくても動作で手に取るように分かるわね。
ネズミ隊のワクワク感が伝わってくるわ。
ドキドキ、ソワソワ、ウロウロ、ガクガク、ボ〜。
え?
忠凶がボ〜と、天井を見つめているわ。
「忠凶? 大丈夫!」
『はっ! だ、だ、大丈夫です』
「ボ〜と、していたじゃ無いの。忠末、だってガクガクしているわ。本当に大丈夫?」
『ボクは、夢にまで見た白属性の魔力です。それに、ボク達は5人で1人だったのに、違いが生まれる。その影響がどんな形で出てくるのか。その事を、想像していたのです。きっと、魔獣化した際に出てくると予想されます。尻尾かなぁ? 耳先かぁ? 属性の色? その事に想いを馳せています』
『分かるぞ! 忠凶! オレは火属性だ。ハンナ様と同じ属性。自分では熱いのか? 温度の調整は出来るのか? あぁぁ、震えが止まらない! 好奇心に押しつぶされそうだ!』
ダメだこりゃ〜、次行ってみよう〜。
本当に、楽しみで仕方ないのね。
辞めようかと思い始めた矢先、お父様が戻ってきたわ。
両手に抱えるほどの袋を抱えてね。
「とりあえず、全属性の魔石を持ってきた。大きさは20センチ四方で揃えて来たが……いいか?」
『バッチリだワン。そこに置いてくれワン』
「いいみたいです。そこのテーブルに置いて下さい」
お父様はハチだけを見つめ、客用のテーブルに置いたわ。
袋から1個づつ出しながら、その度にハチを見るんですもの。
それはルバー様も同じ。
そんなに非常識な事を言ったのかしら?
目の前には、色とりどりの綺麗な宝石が並べられたわ。
「この魔石は、人工のモノだ。ルバーがダイヤモンドに付与したもの。左から、火・水・土・風・黒・白の6種類。そして、白属性魔石1個。これで、本当にいいのか?」
「いいの?でも、黒属性はいらないわよね」
『ストックして置くからいいワン』
「お父様、これで良いそうです。ハチ、やっちゃって」
『了解ワン。スキル“フリーザ”』
ハチがサラッと発動したの。
しかも、鼻歌まじりの軽いノリでよ。
そして、口から出て来たのは……夏みかんサイズの球体。
「ハチ、それが“フリーザ”? 派手ね」
そうなの、黒い球体では無くて白と紫のマーブル模様。
『何色でも出来るワン』
そう言った途端、金色に輝き出したの。
『黒には絶対しないワン。ナナを食った色にはしない……ワン』
「私は気にしないわよ」
『僕が嫌なんだ』
『あたしも、だね』
『『『『『はっ』』』』』
『私達も、でございます。あのような、心臓が止まる行為はしないで頂きたいです』
「忠大……ごめんなさい」
私の謝罪を受けてかどうだかは、定かでは無いけれどその球体が動き出したの。
まるで、生き物の様な動作だわ。
ここにいる全ての人が、驚いたのは仕方がない事ね。
『ふ〜ん。魔力量はそこそこワン。コレが基準の質という事かぁ。なるほど、なるほど。このスキルは面白いワン。この球体で、いろんな事が分かる。そのモノが何なのか、どんな魔力と属性なのか、いつごろ作ったなのか、などなどあらゆる事が分かるワン。……さて、取り込むワン』
その言葉に反応したのか、ハチが動かしたのかは分からなかったけれど。
浮遊しているマーブル模様の球体が、魔石の上に乗ったわ。
私の時と同じように、吸い込まれたの。
『取り込んだワン。完了っと。さて、忠大からワンね』
『はっ』
『そこで良いワン』
忠大は、テーブルの真ん中にいたの。
『スキル“闘気功・纏”』
『忠大、行くぞ。僕を信じて待つワン』
『勿論でございます。ハチ様、ロク様は私たちの仲間です。仲間を信じなくて誰を信じるのですか? 姫様を守る同士です!』
『良い事言うね。あたいも同じだよ。ハチ、とびっきりの魔力を上げな』
『あ・た・り・ま・え・ワン! じゃ〜、行くよ! 3・2・1・0!』
「あ! !」
思わず、声が出てしまったわ。
ハチたちはあの時、こんな感じだったのね。
確かに、大切な人が消える姿は心臓が止まるわ。
『フン、フン、……完了。ハイ、出来上がり!』
ハァ?
ハチの間の抜けた声が響いたわ。
電子レンジでチン! する手軽さでね。
そして、球体が下から上へと上がったの。
現れたのは、可愛らしいいつもの姿の忠大。
……変わったところは無いわね。
『姫様。ステータスを確認して下さい』
「そうね。えっと……」
私は、沈黙しているお父様とルバー様を見たわ。
『私のステータスは公開しても構いません。忠吉、比較のために貴方の分も公開しても良いですか?』
『勿論』
「本当に良いのね」
『『はっ』』
「お父様、ルバー様。忠大と忠吉の了解を得ましたわ。実査の為に、ステータスを全て公開します。いいですか?」
「よ、よ、よろしう頼む」
お父様の震える声が、2人の心情を表しているのね。
「先ずは、忠吉のステータスを公開します。ステータスオープン」
私の言葉で、目の前に忠吉のステータス画面が現れた。
この子達は私の従魔。
全ての権利は私にあるの。
その証拠の画面を広げ、みんなに見やすい場所へと展開したわ。
【忠吉】オス Eランク
《配下魔獣 鬼鼠》
HP=4000
MP=6000
STR(力)=1500
VIT(生命力)=2000
DEX(器用さ)=2000
AGI(敏捷性)=5000
INT(知力)=5000
《魔術=黒属性・雷属性》
ダークボール(黒)
ダークシールド(黒)
ザイル(黒)
ヒプノティック(黒)
ロック(黒)
加速装置(雷)
雷喜(雷)らいき
雷怒(雷)らいど
雷哀(雷)らいあい
雷楽(雷)らいらく
スパイダーライトニング(雷)
創造電送・電受(雷)
創造(無)
その他
《特殊魔術》
魔獣化
《スキル》
影法師・意思共通・走破・完全擬装・気配察知・魔力察知・絵心
「コレが忠吉のステータスですか?」
「バランスの取れた素晴らしいステータスだ」
「次は忠大のステータスです。ステータスオープン」
【忠大】オス Dランク
《配下魔獣 鬼鼠》
HP=6000
MP=8000
STR(力)=1500
VIT(生命力)=2000
DEX(器用さ)=2000
AGI(敏捷性)=5000
INT(知力)=5500
《魔術=黒属性・雷属性・風属性》
ウインドアロー(風)
ウインドランス(風)
スプリングボード(風)
ダークボール(黒)
ダークシールド(黒)
ザイル(黒)
ヒプノティック(黒)
ロック(黒)
加速装置(雷)
雷喜(雷)らいき
雷怒(雷)らいど
雷哀(雷)らいあい
雷楽(雷)らいらく
スパイダーライトニング(雷)
創造電送・電受(雷)
創造(無)
その他
《特殊魔術》
魔獣化
《スキル》
影法師・意思共通・走破・完全擬装・気配察知・魔力察知・絵心
『やったぞ! 1度、使って見たかったのです。魔術“スプリングボード”』
忠大の目前に、胡麻せんべい程の円板が空中に出現したわ。
それに、自ら乗り上下を始めたの。
スムーズね。
『忠大。風属性の魔力が少し足りなかったから、僕のを足したよ。今あるのが最大量だ。あとは自分の努力次第で、伸びる。風属性は癖があるから十分に気をつけて考査をするといいよ。僕と一緒にやろう』
『はっ。ありがたき幸せ』
あれ?
お父様とルバー様の反応が無いわ。
せっかくステータスも公開して、魔力と属性の付与の実査をしてみせたのに!
まだ、信じてくれないのかしら?
これ以上はどんな事をすれば良いのよ!
と、思っていたらどうも様子が変んなの?
ワナワナと震え出し雄叫びをあげたわ。
「「嘘だろう! ! 現実なわけ無い! ! そんなん事があってたまるかぁ! ! ! !」」
見事な息の合いように驚いたわ。
そんなことなど御構い無しに、今もワナワナ中のお父様とルバー様。
次、次、と急かすネズミ隊。
ある意味、特殊スキル“フリーザ”の脅威を目の当たりにしたわね。
恐るべし!
ネズミ隊の実査が終わった後のお父様とルバー様が怖いわ。
でも、ハチの魔力は大丈夫なのかしら?
魔術“ヘルシャフト”に特殊スキル“フリーザ”。
この2つを併用して行っているのに、平気な顔。
本当に……大丈夫なのよね?
なんだか不安になり始めたのは、私だけ見たい。
ハァ〜、すでに疲れたわ。
何もしていないのにね。
白と紫のマーブル模様……だいぶん気持ち悪いですね。
さて、ネズミ隊に差し色が入ることになります……か?
楽しみですね。
次回予告
『なぁ〜、ブート兄。オレたちのことは絶対忘れているよな』
『だよなぁ、弟マーゼ。オレもそう思う』
『『オレたちホワイトベアーの双子だぜ♪ ヘイヨ〜♪』』
『兄のオレが予告をするぜ♪』
『弟オレはリズムを刻み♪ 明日に向かって時を刻む♪ ヘイヨ〜♪』
『ヘイヨ〜♪ ……次回予告。
ハチの特殊スキルに牙を剥くルバー達。彼らの思いと熱意にナナは答える事が出来るのか!ガロスに魔力が宿るのか! !見逃せない思いに背を向けるなぁ! !
ヘイヨ〜♪』
『なぁ〜兄貴。なんで、リズムを刻め無かったんだよ』
『マーゼ、オレにそこまでの技術は……無い!』
『威張るな!』
アイザックの息子達にしてもらいました。
わ、わ、わ、わ……忘れていた訳では無いのだよ!
アハハハハハ!
それではまた来週会いましょう!




