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K組の西島

◯月×日 雨


 豹兄がこの前、季節外れの肝試しやったって言ってたけど、あたしも今日、百物語やったのよ。


 蝋燭百本用意して、一つ話すごとに火を消していって、全て消えた時に何かが! ってやつ。正確に言うと百も話してないんだけどさ。


 昼休みに、クラスの友達と話してて、なんか知らないうちに、放課後集まって怖い話を披露しあおう! みたいなことになって。


 その時話してたのは四人だったんだけど、人数少ないとつまんないから、他の友達も誘おうってことになった。


 蝋燭は危ないから、ペンライトを用意することにして、4時にプレイルームに集合ってことにした。


 プレイルームてのは、普通の教室なんだけど、使ってないオルガンがたくさん置いてある倉庫みたいな部屋で、なんかそんな名前がついてんの。


 あたしがプレイルームに向かったのが4時15分頃。日直だったから、片付けしたり日誌書いたりしてたら遅くなっちゃったのよ。


 プレイルームの入り口に、見たことない女の子がいた。まあ、うちの学校クラス数多いから、あたしの学年は十クラスあるし、見たことないのも当たり前なんだけどさ。


 気配を感じたのか、女の子が振り向いた。顔がまるっこくて、タレ目なの。動物に例えると、タヌキって感じ。


「怖い話大会の参加者? 会場ってここでいいんだよね?」


 いつから大会になったんだよって思いながら、答えた。


「そうだよ。あんたも参加すんの?」


「うん。2年K組の西島敦実。よろしくね」


 突然手を差し出されて、ちょっと戸惑ったけど、握手した。やけに冷たい手をしてた。


 教室の奥の方、オルガンが置いてないスペースに女子がたむろしていた。


「樹里、遅いよ」


「ごめん。日直だったから」


 あたしと西島敦実が入って、十人。知らない顔もいたから、その場で簡単に自己紹介した。


 ペンライトは物理室にあるのを借りてきてた。


「十人で百話ってことは、一人で十個を話さなきゃいけないの?」


「いやあ、さすがにそれは無理でしょ。とりあえずやってみて、続けられそうなとこまで続けようよ」


 なんつーアバウトな。


 そんな感じで、百物語が始まった。


 あたしは、この前、お姉が書いてたカメラ男のことを話した。みんなの反応は「気持ち悪い」「ていうか嘘臭い」だった。嘘臭くない話なんて出なかったけどね。


 十話目は、西島敦実の番だった。


「知ってる? こうやって集まって怖い話をしてると、自分のことを話してくれるんじゃないかって期待した幽霊たちが集まってくるんだよ」


 西島敦実は楽しそうに語った。


「へぇ。それで?」


「おしまい」


 たったそれだけ。


 正直、今までで一番つまんないって思った。


 みんな続きがあると思って構えてたのに、そこで終わっちゃったから、白けちゃったみたい。


「キリがいいし、ここでやめようか」


 一応、持ってきた十本のペンライトを消して。少し待ってみたけど、別に何も起きなかったし。


「やっぱ十話じゃダメなのかなあ」


「でも百話ってキツいよね?」


 だべりながら、昇降口まで行って、あたしだけそこで別れた。職員室に用事があったから。


 別れる前に西島敦実は、


「楽しかった。よかったらまた誘ってね」


 とか言って、笑ってた。



 職員室に行って、1年と3年の先生をつかまえて、西島敦実のことを聞いたけど、そんな生徒はいないって話だった。


 あいつ、誰だったんだろ。




「どういうことー? その敦実ちゃんは、じゅりじゅりと同じ2年生なんじゃないのー?」


「2年生は十クラス編成。J組までで、K組はないんだよ」


「なるほど」


「学年を間違えた……てことはないんだもんね」


「そもそもそんな生徒存在しないんだろう?」


「でも彼女は『2年K組』って言ったんでしょ? 今はなくても、昔は2年生にもK組があったんじゃないの?」


「学校に住み着く幽霊ってこと?」


「その可能性はあるな。怪談話をするって聞いて、出てきたのかもしれない」


「へー。本当に幽霊って集まってくるんだねー」


「でも何で彼女は幽霊になって、どうして学校に住み着いてるんだろう」


「座敷童的なもの目指してんじゃないのー?」


「また、会うかな?」


「わかんないよ……でも、はっきりしたことは言えないけど、なんとなく、あいつ、悪い奴じゃない気がする。縁があればまた会いたいかな」


「おまえがそう言うなら大丈夫だと思うけど、気を付けた方がいい。面白半分に肝試しとか百物語とかやるなよ。何が起きるかわからないから」






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