森の中の村で-3-
「本当に何とお礼を言えばいいのか」
救出された女性は全部で23人。中には10に満たない子どもさえいた。
涙を浮かべながら家族や恋人と抱き合っている姿は関係ないはずのセシリアにも涙を誘う。
そこにはあの少年の姿もあって、妹なのだろうか。髪の色や目の形がよく似た12歳くらいの女の子が飛びついていた。
優しく髪を撫でつける様は他のみんなと同じように少し涙ぐんでいる。
一時はどうなる事かと思ったセシリアだったが、目の前の光景は悪くない。
老人は自分の事をガリアと名乗った。この村の村長を務めあげているようだ。
名前も身分も告げ忘れていた事に酷く狼狽していたが、あの状況で冷静さを保つのは歳を重ねた老人でも難しいだろう。
その隣に助け出された孫と思しき女の子が寄り添っていたなら尚更だ。
「私は村を助ける意味を履き違えていたようです」
申し訳なさそうに語っていたが、セシリアにはそれが全て間違っていたとは思えない。
彼は村長で、この村の安全を守らなければならない立場にある。
勝ち目のないオークと戦いに行くのは村人を危険に晒すどころか、死なせに行くような物で、到底許容できる物ではない。
本心では助けに行きたいと強く思っていたはずだ。隣の女の子を見る優しげな眼差しを見れば分かる。
でも立場上そんな事が言えるはずもなく、強い葛藤の中でリュミエールに急ぎ救援を要請するくらいしかできなかった。
「臆病になりすぎていたのかもしれません。今回ばかりは手をこまねいていてはいけなかった」
どこか遠い目で、村長は先ほどの少年を眩しそうに見つめていた。
『何もかも他人任せでいいのかよ』
セシリアがオークを追った後、少年は怒りを隠しもせず村人にそう言った。
セシリアに頼るのもリュミエールに頼るのも自分たちは安全なところで静観を決め込むのと変わりない。
そんな数学的な考えでいいのか。何もかもを他人に委ねていいのか。
村人の心は否だった。自分たちの大切なものくらい自分で守りたい。
戦えない者をリュミエールへと使いに出し、残りの村人は武器になりそうな物を手に取った。
お礼と歓待をしたいから家に来て欲しいと言うガリアの言葉にセシリアは一度頷いてから、少し待ってもらい少年の元へと向かう。
彼もセシリアの姿を目に留めるなり屈託のない笑顔で頭を下げた。
「ありがとな。村を助けてくれて」
「いえ……。ごめんなさい」
少年は突然謝られたことにきょとんと目を丸くしている。
「こんな力を手に入れて思い上がってたのかも。貴方は邪魔なんかじゃなかった。私の方こそありがとう、助かりました」
この世界にはステータスやレベルよりも大切な物がある。
例えば意志や覚悟。勝てる事が重要なのではなく、立ち上がることが重要な時だってあるのだ。
そういった心の強さは、現代と比べ過酷な環境で生きている少年の方が遥かに強い。
だが頭を下げたセシリアを見て一番困ったのは少年だろう。滑稽なほど狼狽して顔を上げてくれと騒いだ。
それを見たセシリアが笑顔を一つ漏らすと、少年はようやく落ち着いて、同時に分かりやすいくらい顔を赤くするとそっぽを向く。
「俺はフィア。こっちは妹のリリー」
兄の陰に隠れながら、リリーと呼ばれた少女が伏し目がちに頭を下げた。
フィアと同じ黒い髪はどこか日本を想起させる艶を持って肩先まで伸ばされている。
引っ込み思案なのか恥ずかしそうにしている様は見ているだけで微笑ましくなるくらい可愛らしい。
「なぁ、セシリアはどうしてこんな時間にこの村に来たんだ?」
迷って歩き回っていたのだ、と告げるとフィアは取り繕いもせずおかしそうに笑った。
超然と村人を治療し、的確な指示を飛ばし、オークの群れを1撃で吹き飛ばしたセシリアが案外ぬけている所もあるのを知って親近感がわいたようだ。
「そこまで笑いますか……」
「そりゃそうだ。虫が怖いから夜中に森を歩くなんて奴早々いねぇって」
夜の森は危険なのだ。視界が遮られていると足を滑らせ崖から落ちる事だってありえる。
普通なら陽が落ちた時点で野営の準備を始めて1夜明かすのが常識だった。
「そうはいいますけど……。リリーさんは虫、怖いですよね?」
女の子なら大抵怖いはず。しかし、ここは虫と碌に接触しない現代ではない。まして森の中に居を構える村なのだ。
「平気、です」
そう言って近くを這っていた細長い何かをつまみ上げようとするのを、セシリアは必死になって止めた。
それがまたフィアの笑いを生んで辺りは陽気な空気に包まれる。
「村に来るのに迷った理由は分かったけど、こんな村に何か用があったのか?」
こんな村、という一言に村長のガリアが一喝する。
しかしフィアが「じゃあ何か寄る理由があると思うか?」とガリアに返すと喉を詰まらせていた。
特産は森に自生する山菜や木材の加工品。
豚や鶏といった家畜を飼いつつ、畑を耕し、川で魚を釣る、ほとんど村の中で完結した自給自足の生活だ。外部の人間が立ち寄るような場所は特にない。
「えっと、その……暫くの間でいいんです。この村の隅っことかのスペースをお借りできれば、と」
「住む場所を探してるのか? 家になら空き部屋があるし、好きなだけ使ってくれていいぜ」
セシリアは中間地点として数日使うつもりで言ったのだが、フィアは滞在できるところを探していると勘違いしたらしい。
好きなだけ、という言葉にセシリアが若干の反応を示す。
元々、プレイヤーの少ない居住地を探していたのだ。この村にプレイヤーが訪れるとは思えない。
まして、地図とコンパスを片手に何日も歩くという拷問じみた苦行もしなくていい。
ということは、次の街に行かずとも、暫くの間ここに滞在させてもらい、ほとぼりがさめるのを待てばいいのではないか。
幸い村人とは友好関係を築けている。彼らはこの世界に関する色々な事を知っているはずだ。
それを聞き集めるのもこれからの為に役立つ筈である。
「お願いしてもいいでしょうか」
遠慮がちに告げたセシリアに、フィアは嬉しそうな顔で勿論だと頷いて見せた。
「セシリアはさ、どうして俺達を助けてくれたんだ?」
こんな村を助けても金は手に入りそうもないだろ、と続けたところで再びガリアが一喝した。
フィアは奔放な性格なのか、表裏のない性格なのか、奥歯に衣着せる物言いより思った事を口にするらしい。
「罪滅ぼし、なのかも」
そんな彼らを尻目に、セシリアがぽつりと告げる。ガリアやフィアは不思議そうに首を傾げていた。
混乱したプレイヤーを纏め上げた誰かや、それを手伝おうとするカイトが眩しかったのだ。
彼らは多分、何の見返りも求めないで自然と誰かを助ける選択を取った。
それに比べて、セシリアは今の自分が酷く小さく思えたのだ。
物悲しそうに俯いたセシリアを見て、2人はそれ以上を追及しなかった。
村長の家で開かれた宴席は明け方近くまで続いた。といっても、飲んで騒いでいたのは大人たちばかりだったが。
滅多に飲めないお酒が振る舞われたこともあって、彼らのテンションは鰻登りに上昇したのだ。
セシリアも勧められるままに果実酒を飲んだのだが、搾りたてのジュースの様な甘い味についつい飲み過ぎて早々と撃沈していた。
アルコールの分解能力はレベルやステータスでどうにかなる問題ではなかったようだ。
ゲーム内でもお酒に関するアイテムはあったが、いくら飲んでも酔う事はない。
システム上、酩酊といった人体に害が出る可能性のある要素が制限されているからだ。
味にしても果実酒しか取り揃えておらず、ジュースと何も変わらないとアダルティーな層は嘆いたものだ。
実際その通りではあるものの、未成年が多いゲーム内で好き放題飲酒に浸れてしまうのは、幾ら現実とは違う仮想世界の中で起こった出来事とはいえ問題がある。
日本酒やビールが売られていないのも致し方のない事だったであろう。
翌朝、目を覚ましたセシリアは見知らぬ部屋を見て思わず小さな悲鳴を上げた。
飛び跳ねるように身を起こして手足に枷が付いていない事を確認すると深く息を吐き出して再びベッドに倒れ込む。
記憶は昨日の宴会の半ばから綺麗さっぱり消えていた。誰かがここまで運んでくれたのだろうと当たりをつける。
急に起きたせいか、昨日のお酒が抜けていないのか、頭が一定間隔でズキズキと痛みを発する。
「どうかしたのかっ」
扉が乱暴に開けられ、寝起きと思しきフィアが叫び声に反応して転がり込んでくるのをぼぅっと眺めていた。
「うぅ、頭痛がする……」
頭を押さえながら再び起きあがったセシリアを見て、フィアは表情を弛緩させる。
「たった2杯しか飲んでないだろ……」
木のコップ2杯。恐らく300mlもあるまい。
しかし元の世界とはアルコールの成分が違うのか、それともこの身体が分解する酵素を一つも持たない、極端に弱い性質なのか、二日酔いがしっかり残っていた。
「ちょっと待ってろ、水を持ってくる」
「んー、ちょっと待って」
飲めば少しは落ち着くだろうと考えたフィアが部屋から出ようとするのを、セシリアが呼び止めた。
二日酔いは一種の状態異常なのではないか。だとすれば、支援である自分には治療できるのではないか。そう考えたのだ。
「【ディスペル】」
ほぼ全てのバフ、デバフ、死亡以外の状態異常を例外なく解除する支援スキルだ。
指の先から生まれた清浄な光がセシリアの身体を包むと重かった頭がすっと軽さを取り戻す。
「うん。治ったかも」
元気よく立ち上がったセシリアを見てフィアは呆れたように笑っていた。
「村のみんなが泣いて喜びそうだな」
どういうことだろうか、と思わなくもなかったが、フィアに連れられて再び村長の家に行くとその理由がよく分かった。
勝手知ったる我が家とも言うべき顔でノックもせず家の中に上がり込んだフィアは木製の大きなテーブルに肘を立てて頭を押さえているガリアの姿を見かけると、人差し指を唇に当てるジェスチャーをセシリアに見せてから忍び足で台所に消える。
何だろうと疑問に感じつつ様子を見ていると、金属製の鍋と棒を持ちだしたと思えばガリアのすぐ後ろで目一杯打ち鳴らした。
途端にガリアが頭を抱え込んで酷い唸り声を上げる。
「止めんか! お前は年寄りを少しは労われ!」
「なら年甲斐もなく飲み過ぎるなよ。幾ら酒がこういう時しか飲めないからって飲みすぎだろ」
ガリアはぐぅの音も出ないのか、それとも頭痛が酷すぎるのか、何も言わずにへたり込んでいる。
この村では祝い事や祭事の時しかお酒が振る舞われないらしい。
だからみんな、飲める時は馬鹿みたいに飲んで翌日のた打ち回るのだと、フィアは呆れ気味に言った。
「セシリア、悪いんだけどこの老いぼれにもさっきの魔法かけてやってくんね? 早々に酔いつぶれて昨日は碌に話もできなかったろ? こんなんでも一応村長なんだよ」
「お前は敬意ってものをだな……うぐぉ」
一喝しようと顔を上げたせいで血が巡ったのか、声は萎むように掻き消えて再び沈没した。
セシリアが慌てて魔法を使うと白い粒子がガリアを包み込む。途端に痛みから解放され、ぱちぱちと目を瞬かせていた。
「いやはや、お恥ずかしい所をお見せいたしました。翌日こうなることが分かっていながらどうしても止められませんでな」
体調を取り戻したガリアは照れくさそうに頭をかきながら何度も礼を告げる。
広いテーブルにはセシリアとガリアが向かう様に座っていた。
台所に火を入れたフィアがお茶を淹れて戻ってくると部屋の中に珍しい香りがふわりと漂う。
「で、爺さん。話って何なんだ? まさか滞在するのを渋るなんていわねぇよな」
昨日のフィアの言葉は彼の一存だ。とはいえ、村長とて命の恩人を無下にするつもりはない。
「無論だとも。この通り何もない村でよければ好きなだけ過ごしてください」
村長から許しが出たことで、セシリアは内心ほっと息をついていた。
「セシリア様が悪い人でない事は私共も良く知る所ですが、私の知る限り死んでもおかしくない大怪我を負っていた我々を瞬時に治す魔法など聞いた事もありませんでしたので、もしや、やんごとなきお方なのかと」
相変わらず様付けか、と内心嘆息しつつも彼に変えるつもりがない事を嫌というほど思い知らされたので努めて気にしない風を装う。
この周辺には生息していないオークの生態を知っていた事からも、ガリアはこの世界の見聞が広い事をうかがい知れる。
それもその筈で、彼は村長として外に出向く必要が時々あり、その度に色々な地方の話を聞くのが好きだった。
知らない事を知るのは老人である彼にとっても良き刺激だったらしい。
この世界にもプレイヤーと同じ職業に就く者は多くいる。
セシリアの様な支援魔法を得意とする聖職者も数多く存在し、癒し手でもある彼らの力を借りる事はもはや日常の一部だ。
だが、一般的なこの世界の聖職者が治療できる傷とセシリアが治療できる傷には比較するのもおこがましいほどの差があった。
普通の聖職者が行う治療で治せるのは簡単なすり傷や切り傷、打撲程度まで。
それ以上の大怪我はすぐに命に関わらない物であれば何日も時間をかけて持続的に癒していく。
もし、即時治癒しなければならないと死に至るような傷であった場合、複数の聖職者が力を合わせて治癒に当たるのが常識だった。
中には大怪我を一瞬で治せる力を持つ者も極稀に居るが、国や大きな騎士団で囲われ、外に出される事はあまりないのだと言う。
多人数をたった一人で、それも一瞬で治して見せたセシリアの力は、聞きかじりの事情しか知らないガリアにとっても常識を逸脱しているレベルである事は容易に推測できた。
それを聞いたセシリアは、ガリアの事を良くできた村長なんだな、と深く思う。
村の場所を良く知らない上に森へ入り迷った挙句、常識的には考えられない、夜の森を踏破すると言う愚を犯した上に相当な力を持つ存在。
おまけに旅具と思わしき荷物は何一つとして持っておらず、見かけは年端もいかない少女ときた。
怪しむなという方が無理である。
いかにセシリアが命の恩人だといえ、村長が村を守る義務を放棄して良い理由にはなるまい。
「私は自分がどんな存在なのか証明する術を持ちません」
適当な話を作り上げて信じ込ませることも彼女の話術をもってすれば出来なくはないだろう。
しかし、セシリアは誤魔化すことを止め、その代わり本当の事も言わなかった。
ガリアはじっとセシリアの目を見つめてから、不意に脱力するように双眸を崩す。
「話せない事はあるが嘘もつきたくない、と受けとめてもよろしいですかな?」
聡明な彼はセシリアの言わんとしている事をちゃんと理解したのだろう。
寧ろそれらしい話をされるより余程信用できますと小さく笑った。
「いやいや、意地悪な質問をしてしまい申し訳ありません。初めから申し上げたように、セシリア様が悪い人でない事は十分に分かっておりますから。例えここでどんな突拍子もない話をされようとも信じる所存でした。今日お呼びしたのはこんな話ではなく、フィアの所に滞在するのでしたら色々と入用な物があるのではと思いまして」
ガリアはそう言うとフィアに向かって指示を出した。なんだかんだ言いながらも彼は素直に従って部屋を出る。
5分ほどの間をおいて再び戻ってきた彼は両手いっぱいに色とりどりの布の山を作り上げていた。
何と驚くべきことに、その全てが女性用の衣服である。
儀礼用と思しきドレスコートから、普段着として使えそうな物まで種類は幅広い。
「見た所旅具もお持ちでないようでしたので、いつまでもそのままの姿という訳にもいかないでしょう」
どうやらカイトに渡されたのは本当にどこにでも売っているただの服だったらしく、オークから貰った一撃が脇腹をざっくりと引き裂い時に切れてしまっている。
一部分だけだからまだ着れると言えば着れるが、乾いた血の跡は見た目的に良くないし、歩く度に白い肌が覗くのもどうかと思う。
かといって替えの服はずぶ濡れのままインベントリに仕舞われているプリンセス・ドレスただ一着のみ。
洗って乾かせば着れるかもしれないが、ゲームでは気にならなかった装いもこの村の中では浮くこと間違いなし。
挙句にますますやんごとなき身分なのでは、という憶測を加速させるだけだろう。
「いいのですか? ……それ、きっと大切な物ですよね」
村長の家には孫娘と彼しか住んでいない。にも拘らず、目の前の服は孫娘のサイズとしては大きすぎた。
フィアの家にも両親らしき人影は見えなかったし、村の規模と考えて人の数が少ない気もする。
「ええ。ずっと仕舞われているよりは同じような年頃のセシリア様に着て貰った方が良いでしょうから」
モンスターの襲来がなくとも、発達していると言えない生活のは常に危険と隣り合わせだ。
今から2年ほど前に襲った流行病も、あっという間に3割近い村人を死に至らしめた。
そこにはフィアの両親や、村長の孫娘の姉や母に当たる人物も含まれていたらしい。
「寂しくないですか?」
思わず口から出た一言に、セシリアにしては珍しくもしまった、という顔をしてする。
「もう昔のことだしいつまでも気にしてねぇよ。それに、この村はみんな家族みたいなもんだしな」
既に気持ちの整理はついているのか、フィアがあっけらかんと言い切ったのを見て地雷を踏まずに済んだ事に安堵する。
「幾つかお借りしますね。この村を出る時にはお返ししますから」
同じ年頃というだけあって服のサイズは似通っている。その中でも簡素に尽きるチュニックを幾つか選ぶと胸に抱えた。
「そんな質素な物でいいのですか? こちらの方が上等ですが……」
そういってガリアが選んだのは明るい色に染められた手触りの優しい、見るからに華美な衣服だった。
けれどセシリアにはこの期に及んでお洒落を意識するつもりなどない。
不信感を抱かれないようにそれらしい言葉遣いをしているが、今更プロネカマを演じるつもりもなかった。
ガリアにお礼を言ってからセシリアとフィアは家に戻る。
もう陽はとっくに昇っていたがまだ朝食も食べておらず、道中でフィアのお腹が盛大に音を立てた。
「思ったより長居しちまったな。リリーが朝飯作って待ってるかも」
フィアの懸念は見事に的中したようだ。家に戻ると焼いたパンの香ばしい匂いが漂っている。
中々帰ってこない2人を家でずっと待っていたのだろう、やや膨れた面持ちのリリーが苦笑いを浮かべながら戻ってきたフィアに恨みがましげな視線を送っている。
「悪かったって。つか、先に食べてても良かったんだぞ」
隣に座ったリリーの頭を撫でると、彼女は上目づかいでフィアを見た後、彼のシャツを握りしめて囁くような声で言った。
「……兄様と一緒に食べたいの」