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session3 規格外の依頼主

7/30 大幅改変。

~~クロウサイド~~



 エトワールと合流した後、俺は彼女にある場所へと案内された。

 そこらへんの木造の宿屋に比べると上質である事が伺えるコンクリートで作られた立派そうな宿屋だった。


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「………………」

「――あの、済みません。此方にセイと名乗る方は居られないでしょうか?」


 俺をここまで連れてきたエトワールは黙ったまま、何も行動を起こさない。宿屋の人相手に答えるつもりは全くないようだ。千藤クロウは仕方なく、訪問相手の名前を言った。


「その前に貴方のお名前を教えてもらえないでしょうか?」

「あ、はい。俺はクロウですけど……」

「はい、クロウ様ですね。セイ様より来られればお通しするよう言い伝えられております。二階の201号室にてお待ちですので、どうぞお入りになってください」

「ありがとうございます」


 どうやら、奴は受付の方に俺たちを通すように言っていたらしい。多分まだエトワールが連れてこれる人物;即ちコ・エクジスタンスのメンバーを通すぐらいの事は言っているのだろう。そう悟った俺は二階に上がって奴の取っている部屋のドアをノックした。


 コンコン。

「セイだな、クロウ――千藤だ」

「センドーか?来るのが早かったな。入ってもいいぞ」

 ガチャ。

「失礼する」


 中から入室を許可されて、部屋の中へと入った。中に案内されるとそこには一人の男が何やら物弄りをしていた。エトワールに比べると少し赤がかった銀色に染まった派手な髪が特徴的な大柄の男だ。顔は締まり気が無く温厚そうな表情で何を考えているのか悟らせてもらえた事など無い隙の無い男だ。


「お帰り、エトワール。随分と早かったね?」

「義兄さん、見つけてきた」

「やっと会えたよ、田子」


 ここに居たのは思った通り、俺たちをこのゲームへと参加する原因となった一人である出資者田子セイだった。ここへ案内してくれたエトワールの義兄に当たる人物でもある男だ。


「今は『セイ』と名乗っている。個人情報リアル関する問題われも多々生じる可能性があるから、ゲーム内では登録名で頼むよ」

「分かった」


 仮にも彼は社会人。現実社会に置ける正体がバレてしまう事が怖いのだろう。


「まぁ、ベッドにでも腰掛けてよ。ちょっとどころかじゃない長話になりそうだから」

「ああ、分かった」


 千藤クロウ田子セイに言われるまま、ベッドに腰掛けた。そして、久保エトワール千藤クロウの隣に座った。

 それを見た田子セイは口を開いた。


「さてと、まずはこの世界が『グリモワールオンライン』の世界になっている事は理解出来るかい?」

「……非科学的だがな。一番可能性としてはVirtualヴァーチャル Realityリアリティだろうが、その様子から見ると違うようだな?」


 一番考えられる科学的な事象。脳波だけを上手く汲み取って世界観を楽しむゲーム、まるでVirtualヴァーチャル Realityリアリティのようなシステムが存在しているとは聞いたことも無いが、それでも無さそうだと言う事はセイの様子からも分かった。


「そうだな。Virtualヴァーチャル Realityリアリティだったら痛覚などの再現はともかくも、腕の切断などの再現は極めて難しいし、俺たちは年齢的にもアウトだ」

「過剰映写……か」

「ああ」


 まだ、大きな傷を負ったわけでは無いので分からないがその様子だと、死ぬし斬られれば痛いなどの事象もそのままあるようだ。


「もしそうであったら排泄なども組み込まんだろう?人の体をそのまま使っている証拠だよ」

「そうだな」


 今は大した空腹も尿意も無いのでいいが、衣食住に関わる事全てが欠かせない事になるのだろう。


「詳しい事はまだ分かっては居ないが、少なくともここはグリモワールオンラインをかたどった異世界とでも思えば良い。俺の今の推論だがな」


 セイは肘を机の上に、手を顎に当てて考える人のポーズを取った。これは彼が説明などの長話をする時の癖だ。


「取り敢えず、分かっている限りの情報だが、『帰還手段』は不明。能力はゲームに準じて、死んでも復活場で生き返るけど、生命活動は維持していく必要がある。簡単に言えば戦闘やアイテムなどはゲームのルールを世界の常識に採用しただけで人であるまま異世界に堕ちたって考えるのが一番妥当かな」

「………………」

「……取り敢えず、能力関係はゲーム準拠。でも、生活もする必要がある」


 黙って聞いていたエトワールがオウムのようにセイの言った言葉を彼女なりに言い換えて復唱した。そう言われても理解しづらいモノはしづらい。


「多分、ゲーム開始時に出たあの五芒星の陣がこの世界の『次元転移』術式を内包した『魔方陣』になっていて、それを見たプレイヤーたち全員をゲームのルールの概念を付与した上で『召喚』したのだろうな。だからログアウトなんて存在しないし、帰る手段も分からない。また召喚だから、人そのものがこの世界へと導かれている事からも、衣食住も必要になってくるだろうな。睡眠や食事、排泄などもしっかりやる必要があるだろうし、耳かきや歯ブラシと言った日用品が無いから最初の頃は非常に生活に苦労するだろうね。身体能力やスキルなどはゲームによって概念を上乗せされている形だから戦えば確実に強くなるだろう。寿命は知らんが、書き換えによって死んでも生き返る事から、何年経とうがこの世界においては死ぬ事はないだろうから、寿命を気にする必要はないだろう」

「……無駄に詳しいが、それはあくまでお前の推測か?」

「ああ。だが、あながち間違っては居ないと思っている。昔、読んだ虚術書の中にあった異世界の概念統一理論に似ているモノがあったからな」


 何だよその参考資料は、と突っ込みたくなったが仲間内でも一番の知識を持つのは他でもないこの男であるため、今は彼に考える事を任せるのが最善だと思った。現実では情報屋を営んでいることもあって、情報処理能力も非常に高い男だ。

 十六歳の少年がどうしてそんな才能などを持っているかは良く知らないが、少なくとも『プロ』の立場で情報を整理してくれるため、異常事態では頼りになる男だ。


「まぁ、とにかく。現状、存在するはずである『帰還手段ログアウト』として有力なのはクリア条件である『魔術書グリモワール』の回収であると俺は考えている。それが本当かどうかを調べるためにも信頼出来る攻略派のプレイヤーが仲間に欲しかった所なんだ。お前ともなればこれ以上無い人材だ、義妹エトワールも任せる事が出来るし」

「なるほど。俺で良ければ協力するよ、セイ」

「一応、職業とレベルを確認したいんだが、ステータス画面いいか?」

「ああ」


 そう言って俺はステータス画面を開いて書かれていた数字に固まってしまったのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

~Player Party~


Player name:クロウ

Job:騎乗兵

Level:18

skill:『騎乗』、『突進』、『調馬』、『索敵』、『魔物使い』、『調教』


Player name:エトワール

Job:僧侶

Level:1

skill:『杖術』、『治癒促進』



~Friend Member~

Player name:セイ

Job:鍛冶師?

Level:?

skill:『????』、『武具生成』、『魔術具生成』、『道具生成』、『金属製錬』、『薬調合』、『料理』


魔術に関する話が出てきましたが、ゲーム内だけでなく、現実でも魔術が存在すると言う設定です。事件原因も魔術なので、ジャンルをSFではなく、ファンタジーにしちゃっています。

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