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session2 道端に座る少女

仲間設定がいきなりヒロインに適応されます。

一応、このMMORPGより前の学園話はあるのですが、自信が無くて全くの未公開です。

~~クロウサイド~~



 城塞都市サントアンジェロ。巨大な城壁に囲まれた中世の都市国家、その都市と思える場所に俺はたどり着いた。


 その街の入口にはボロ切れのような人たちが転がっていた。転がっていると言う表現は正しく無い、正確には積み重なっていると言った方がいいだろうか。

 そこは『復活場』と書かれた看板が立っており、脳内に浮かび上がる項目の一つ『情報』によると、ここがフィールド上で死んだ時の復活場所……らしいが人数は百人を越していた。と言うか数えたく無いぐらい居るように見える。

 だが、復活場があると言う事は少なくとも『HPがゼロ』になってもその場復帰は無く、死ぬ事も無い……ようだ。脱出手段でも無い事も分かるが。俺はその人たちを横目に見ながら街へと入っていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 街の中に入ると活気付いている様子はあったが、少し暗い表情の人も多く見かけられた。大半の人の髪は黒いが茶色い人も居る。けど、大半が黄色人種の黒髪である事に間違いは無かった。

 つまりは同じ日本人がこの世界にいると思えばいいのだろう。


「何か活気付いているように見えて、所々気落ちしている人がいるなぁ……」


 買い物する人も多くいて、人の行き来も激しいが道路の隅にしゃがみこむ人もいる。見る限り魔物に襲われた恐怖で立ち直れないとか言う人だろう。


「……出来れば誰でもいいから知り合いに会いたいものだが」


 そう独り事を呟きながら千藤は街中を歩いた。

 現実の仲間である七人の内の誰かにでも出会えれば大分楽になれるのだがそう甘くない。街を歩いている間に幾度かパーティーを組んでくれないかと声を掛けられたが、騎乗兵である事を聞くと相手側は即座に勧誘した事自体を無かった事にしようとしたので、俺の方からも断った。


「職業を聞いて勧誘を無かった事にするそんな失礼な輩に協力しようとも思わないぞ」


 露骨に避けられるのは分かっていて、それでも選んでは見たがこの扱いは酷いと千藤は少し落ち込んだ。でも、変更の仕方も今は分からない以上このまま進むしかない。


 街の中央広場に付くと、どう見ても時代錯誤のような超巨大スクリーンがあって、そこには沢山のプレイヤーネームが書かれていた。


「すいませんが、これはなんでしょうか?」

「プレイヤーの個人ランキングだね。ベータ版テストのレベルが引き継がれてあるから、ランキングに乗る人は廃人ベーターと言うわけさ」

「なるほど」


 どうやら、この巨大スクリーンはランキング板のようだ。どうやって動かしているのかは分からないが、どうやら嘘偽りは書いていないらしい。軽く調べた限りでもランキングがある事はベータ版の時にもあったそうだ。


「『アイツ』ならこの中に名前があるかもな」


 そう思い、このリストを眺める大量の人混みに入ってそのリストを見る事にした。この人混みの大半も『知り合い』がこのリストの中に居ないかを探すために居るのだろう。


「ゲルマン、金剛、シェード、ザイクス、リード……」


 下から上へ、ドンドン名前を流し読みしていく。だが、知っている名前は一向に出てこない。


「……ゴッドってなんだよ、その巫山戯た登録名は。しかも2位だし」


 時々、全力で突っ込みたくなるような名前も見ていくが、それでも知っている名前はない。そして、何時しか一番上、一位の所まで来てしまう。


「1位:セイ…………、ってオイ!?」


 セイ。間違えていなければ田子スポンサーの登録名だ。直前に彼の名前は聞いていたので、間違いではないだろう。人種で言えば超越者ばけものに当たるあの男だ。こんな所でも一位を取っていてもおかしくはない。彼はそう思った。


「だが、それを知った所でどうなるか、って問題だなぁ……」


 彼は嘆いた。名前を知っているからとは言え、ダイレクトメッセージが送れる訳でも無く、所在地が書かれている訳でも無い。ただ、彼の存在を書いているだけなのだ。


「誰か、一人でもいい。とにかく知り合いに会いたいなぁ」

「………………」


 そう願いながらも、巨大スクリーンを見上げ疲れたのもあって、彼は一旦道端の壁を背にして周囲を見回そうとした。その時、すぐ隣から視線を感じたので、その方向を見た。


「………………?」


 すがった場所の近くに居た銀髪の白人美女が此方を向いた。日本人が大半であるこの街において、外人さんは嫌でも目立つ。

 そんな彼女はチョコンと御人形のように座っているがそれでも出るところはしっかりと出ている事が分かる良い体格の持ち主で、今も男たちに話しかけられているが、その男たちの声を完全に無視して千藤を見ていた。


「おい、コラ。そこの男!俺たちが彼女へ先に手を付けたんだ。お前は後にしやがれ!!」

「………………」

「はぁ?」


 彼は瞬時に状況を理解しようとした。今まで会ったのは大半が黄色人種の黒髪。それに対して、今隣に居る少女は銀髪白人。注目を浴びるのは間違いなく、そしてその美貌に引き寄せられる人も少なくなかった。だからこそ、こんな野蛮な人たちが絡んできたのだろう。


 それより、問題はこの銀髪白人美女だ。彼には思い当たる知り合いが一人だけいる。


「……『エトワール』、か?」

「……(コクリ)」

「俺はクロウだ。宜しく頼む」


 千藤クロウが一言、名前だけを呟いて、彼女は黙ったまま頷いた。間違いなく彼女は久保エトワールだ。そう確信した千藤クロウは自分の名前を名乗り返した。


「おいおい、兄ちゃん、マジで横取りかよ!?」

「ふざけてるんじゃねぇぜ?痛い目に遭いたくなけりゃ、置いて行けよな?」

「……逃げる」

「え?ちょっと……?」


 男たちに絡まれて逃げ道を失いかけてた所、しゃがみこんでいた久保エトワールは立ち上がって千藤クロウの手を引っ張った。


「ま、待てっ!!」

「……待てと言われて待つ馬鹿は居ない」


 一瞬の隙をついて、俺の手を引きながら走り出したエトワールは人混みの中を上手に抜けていった。俺もそれについて行って人混みを抜けたが、男たちは人混みによって阻まれていた。


「ふぅ……間一髪だったなぁ」

「……無事、千藤君に会えた」

「そうだな」


 まるで事務会話のごとき話し方に何にも違和感を感じず、お互いただ淡々と声を続けた。


「会えて良かった。義兄さんが待ってる。行こう」

「ああ、頼む。総合一位のあの野郎の下へ案内してくれ」


 そう言って、彼女は千藤クロウの手を引いた。その力強さに少し安心しながら、千藤は最強プレイヤーである田子セイの元に向かう事となった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇


~~エトワールサイド~~



 私は義兄さんに仲間を探してこいと言われて街中へと出た。そこには沢山の人が居て、非常に鬱陶しく感じる。彼等が心底邪魔だ。



「ねぇ、彼女一人?」

「………………」


 また鬱陶しいのが来た。しかも今度は男三人組。見るからにちゃらい外見だが、麻の服がそれを台無しにしている。


「聞こえてるの、ねぇ?」

「コイツ、NPCじゃないのか?特徴的な外見をしたのは大半がそうだし」

「なら何でこんな道端でしゃがみこんでいるんだよ?どう見ても人だろ?」

「………………」


 鬱陶しい。黙れ。消えろ。私はそう思った。こんなんだから人間は信用ならない。信用出来るのは義兄さんたちだけだ。

 私はこんなグズ共には目を合わせること無く、周囲を見回していく。人々はどんどんランキング板に集まっていく。そんな流動的な流れを私はただただ見ていた。


「もう面倒だし、直接お持ち帰り出来ないかな?」

「無理だって。さっきもシステムエラーとか言って触ろうとして弾かれたじゃんか!」

「何でそこだけちゃんとシステムが稼働しているんだよって言いたいなぁ」

「………………」


 男たちは私の前で話をする。どうやら極悪犯罪者候補らしいが、犯罪をしようとしてもシステムで弾かれて何も出来ないと言う事を嘆いているようだ。

 心底どうでもいい。

 そう思っていたら、見覚えの有る外見が通っていくのが見えた。


 黒髪で身長は並、外見も目立った所の無い少年だが、私にとっては特別な人物に見える。


「………………」


 私が彼をじっと見つめていると彼もこちらの視線に気が付いたようで、こちらに体を向けた。だが、それをよしとしない奴等が居た。さっきからずっと私の側にいようとするこの男たちだ。


「おい、コラ。そこの男!俺たちが彼女へ先に手を付けたんだ。お前は後にしやがれ!!」

「………………」

「はぁ?」


 何とも覇気の無い返事に、私は安心した。私の知る千藤悠歳その人だ。


「……『エトワール』、か?」

「……(コクリ)」

「俺はクロウだ。宜しく頼む」


 私は彼の名乗りを聞いて立ち上がった。お互い事前に決めていた名前、そのままだったのもあって確認は一瞬だった。


「おいおい、兄ちゃん、マジで横取りかよ!?」

「ふざけてるんじゃねぇぜ?痛い目に遭いたくなけりゃ、置いて行けよな?」

「……逃げる」

「え?ちょっと……?」


 痛い目にも合わせられないだろうにと思いつつもこんな不快な奴等と一緒に居るのはたまったものじゃないので、私は彼の手を引いて逃げる事にした。こんな不快感極まりない場所など速く抜け出したかったのだから。


「ま、待てっ!!」

「……待てと言われて待つ馬鹿は居ない」


 私はそう言って、彼と一緒に逃げた。


「ふぅ……間一髪だったなぁ」

「……無事、千藤君に会えた」

「そうだな」


 再会に関しては感動もクソも無い。まだ彼と別れて半日も経過していないのだから、そうも思えないのだ。だけど、私の中には安堵があった。義兄さんから言われた任務もこれで果たせる。


「会えて良かった。義兄さんが待ってる。行こう」

「ああ、頼む。総合一位のあの野郎の下へ案内してくれ」


 こうして私は彼を義兄の下へ案内する事になった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

~Player Party~


Player name:クロウ

Job:騎乗兵

Level:18

skill:『騎乗』、『突進』、『調馬』、『索敵』、『魔物使い』、『調教』


Player name:エトワール

Job:僧侶

Level:1

skill:『杖術』、『治癒促進』


7/30 大幅改変+エトワールサイド書き加え

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