session24 ヘキサトラップ
1ヶ月近くお待たせして済みません。
裏で彼等の元となる話を書き中なのですが、全く纏まらず。公開まではもう少し時間が掛かりそうです。
「……参ったな、こりゃ」
「どうしたの、クロウ?」
昼食を取った後、馬を走らせること二時間ばかり。俺たちはどうやら魔物の頻出地帯に出てしまったらしく、警邏のスキルで確認する限りは隙間無く魔物が『等間隔』で存在していた。
「魔物が多くて、戦闘回避は難しそうだ。しかも一度戦闘すると他の六体も六方から押し寄せてくる形だ」
「……HEX」
「ヘックス?」
エトワールが専門用語のような言葉を言ってきたので聞き返した。
「……ヘキサゴン。正方形だけで作られた六角形地形」
「は、はぁ……」
「……多分、魔物の配置がヘキサゴンの中心と角にあって、どれかに反応があるとヘキサゴン全体が集まる仕掛け。ヘキサゴントラップ」
「つまりは一度接敵すると、他の六箇所の敵とも戦う事になると?」
「……(コクリ)。義兄さんもそう言ってた」
今更そんな説明をされても困ると言わんばかりのトラップシステムの説明に、俺は呆れそうになったが、引っ掛かってしまう状況になっては仕方がない。目的地に行くためにも強行突破する他はない。
「テンペスト、エトワール。二人は降りろ」
「そうね」
「……分かった」
戦闘は避けられないと悟った俺は二人を降ろして臨戦体勢を整えた。二人を騎乗させて戦う事は出来るだろうが、それには『乗り物酔い』でダウンと言う大きなリスクが生じる。それに二人はもうひ弱な初期職ではなく上級職だから戦えて当然なのだ。だから俺は二人を降ろすと言う選択に至った。
「接敵!」
俺はそう叫んで目の前に居る魔物へと駆け出す。目の前にいたのは四本足で立つ巨大な角を持った牛だった。
「牛と馬の力勝負か……何だか馬が負けそうだな」
そう感じたのもあって、俺は手に持った槍で牛を薙ぎ払った。が、牛は非常に重く、馬の勢いもあって体に相当な負担が掛かった。
「うおぉぉぉっ!!」
俺は全身に力を入れて、その薙ぎ払う槍をしっかりと握り締めた。牛は俺の槍に押し負けて宙に浮いた。
「ブモモォッ!?」
ズシャァーッン!!
物凄い音を立てて吹き飛んだ牛を見て、テンペストが駆け出し、吹き飛んだ牛が体勢を直す前にトドメを打ち込んだ。
「一丁上がりっと」
「後二十秒ほどで次の敵が来るぞ!」
「……了解」
別に俺が牛を吹き飛ばした事についてはさしたる疑問もなく、二人は戦闘に集中する。ちなみに突進ではなく、槍での薙ぎ払いを選択した理由は馬の負担を少しでも減らすためだ。突進は強いが、それなりに助走距離と停止距離が必要な分、馬への負担が非常に大きいのだ。まだ四分の三しか進めていないのもあって、馬は出来るだけ残しておきたいのもあるから俺は槍を選択した。
槍で牛を吹き飛ばしたのは単にレベル上昇による攻撃力の上昇がそのまま影響しているに過ぎない。
ブブブブブーン!
「……って、この音は」
非常に耳障りな高音、目に見えたのは黄色と黒の尾。これから連想するものはただ一つ。
「は、蜂ィ!?」
「……燃え失せろ、『火球』」
俺が驚いたのもつかの間、エトワールが表情一つ変えずに蜂の羽を焼き払っていた。地に落ちれば危険な針を持っただけの魔物なので、身動きも取らせる暇もなく、テンペストが仕留めた。
「………………」
「ボケっとしないで、クロウ!次の魔物はどこから来るの?」
「……ハッ!えっと、二時方向から二十秒後だな!」
結局、七連戦で十分ほど時間が掛かってしまった。上級職なので一戦は一撃ないしは二撃なので相当時間が掛かってしまった事は分かるだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「クロウ、これが後何回ぐらいありそう?」
「多分四・五回ぐらいかな……。かなりきつそうだ」
「なるほど、これじゃ上級職でも苦労するようになるわけだわ……」
「……急ぐべき。野宿は嫌」
「そうだな、行こうか!」
結局俺たちが目的地に付いた時にはもう日が落ちて、街明かりが夜を照らす時間帯になっていた。




