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session20 死守

物凄く手抜きになってしまった感じな20話です。


~~エイプリルサイド~~


 一番厳しい戦場はどこかと言えば、間違いなく本陣だった。


 大きな力量差に加えて人数差が非常に大きくなってしまった。特に左翼のクロウに向かっていた軍団の半分が敵本隊に合流してしまったのは余りにも痛手だった。


「予定より敵の人数が増えたのは痛いなぁ……」


 僕は頭を抱えていた。確かにクロウに言った事は上級職三人の足止め。願わくばその三人が連れている部隊も足止めしてほしかったが、それは叶わなかったようだ。


「でも、相手は全部初期職。だから決定打は決まっていない。そしてクロウもしっかり足止めはしている」

「そうだね。皆の回復はしっかり頼むよ?」

「……分かっている、エイプリル」


 僕の隣にはクロウと一緒に行動して上級職『司祭』となったエトワールが回復魔術を使い続けていた。敗北条件が大将の撃破なので、最悪の場合を考えて彼女には傍に居てもらっていると言うわけだ。

 僕はクロウによってレベルを上げてもらったが、まだ力量不足なのは否めない。ギルド内では一番レベルが高くても。

 そして上級職である彼女は本営から魔法を行使している。正確に言うと、最前線から本営まで殆ど距離が無いため、本営にいると言うのが現実的かも知れない。


「さてと、味方が居ない場所を確認した。よし、水線ウォーターライン!」

「……回復リカバリー


 僕たちは魔法を使って時間稼ぎをしていた。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇


~~テンペストサイド~~



 二人が一番後ろから魔術を使っている時、その戦線の先頭では決死の思いで耐え続ける戦士たちと一人だけ無双している女剣士が居た。


「いやぁ、凄いね、テンペストちゃん。ゲームの世界だからってここまで一方的に剣技で圧倒する人は初めて見たよ」

「そうでもないわ。相手が素人な分、動きが単純で前動作がわかりやすいからそれを見て動いているだけよ。でも素人だから予測出来ない行動もあって、沢山相手にするのは無理ね」


 最前線では戦士たちが切り合う中、テンペストが一人愛用の刀を持って文字通り無双していた。下級職主体――それも低レベルがひしめく中で唯一最前線に立つ上級職。他人の手によってレベルを上げられたとは言っても、現実での剣術をこのゲームの世界で生かせない筈がない。


「はぁっ!!」


 攻撃力や体力、防御力などは職業差はあるものの、レベルに大きく影響する。今のテンペストの攻撃は文字通りの一撃必殺であり、それを当てる技術も彼女にはある。


「ふ、巫山戯るな!!相手本陣に上級職なんて聞いていないぞ!!」

「あ、あんな化け物に勝てるかぁっ!!この戦線はもうお前に任せて俺は別の所から攻める!」

「む、無茶言わないでよ!!あんなの無理だよ!!」


 相手は浮き足立つが、下級職の中でも高レベルのメンバーを駆逐できたかと言えばそうではない。立場の弱い低レベルの新参が彼等の退路を作るための囮となり、テンペストは彼等の相手をさせられる。

 しかも面倒な事に、『根性』スキルは戦士職で最初から会得しているスキルなので、一撃では殺しきれないのだ。


「一閃!二閃!!」


 テンペストは間を置かずに連続で相手を斬り刻む。あくまで耐えられるのが一撃だけであるので、二撃を瞬時に入れる事で相手戦士を倒していく。攻撃モーションの設定など無いので、この連撃も彼女の技量が為している技と言えよう。


「……テンペストちゃん、凄いね。何か攻撃技でも会得しているのかしら?」

「あれは私の体術です。家が剣道道場をやっている、その影響ですけど」


 剣姫とか言われているのは彼女が剣を持っているだけではない。それに似合った実力を持つからである。何故彼女がソロでいられたかと言えば、その剣術で魔物相手に圧倒出来たからだ。


「私たちが居る所だけ圧倒出来ているけど、他はジリ貧ね。エトワールちゃんの回復で持っているようなモノだけど」

「数と質で負けているのですから、当然です。ここから切り返すためには何か戦況を大きく変える事でも起きないと……」


 テンペストがそう言った、その瞬間だった。



 ドドドドドゴォォォーン!!


 物凄い轟音と共に右翼にて突如巨大な火柱が上がったのだ。しかもその規模は半径百メートル級、高さはもう空まで届きそうな円柱型の火柱だった。轟音が鳴り響いた数秒後に爆風がフィールド全体を襲った。


「な、何!?」

「何が起こっているんだ!?」

「あの火柱は一体……!?」


 突然の爆風に敵味方共に大混乱に陥ってしまう。この世界で『火薬』なるモノなど存在しないし、魔術で攻撃するとしても範囲攻撃で出来ると聞いているのは十数メートル。明らかにおかしい威力を誇る火柱が突如として起きたのだ。


≪でも、これはチャンスね!≫

「ちょ、ちょっと、テンペストちゃん!?」


 テンペストはこの混乱に乗じて、一気に敵の中を駆け抜けた。狙いはただ一人、この本陣攻撃部隊を率いる『上級職』だ。その人物は一人安全な後方に居る事はもう分かっていた。だから彼女は他の敵には見向きもせずに単独特攻をした。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



「見つけたわよ、大将!」

「な、何ィッ!?ど、どうして敵がここまで来るのだ!?」

「何か、小物臭いなぁ……」

「な、何おう!?」


 そう言って、簡単に挑発?に乗った相手は真っ直ぐに剣を突いてきた。そう、真っ直ぐに、力任せに。


「……この私を馬鹿にしているのね。突きは速いけど、避けるのは容易く……」


 そう言いながら、テンペストは体を半歩分だけずらして敵大将の突きを避けた。突き出されたのは剣だけではない、大将の体も出ていたのだ。


「そして、こちらに取っての最高の攻撃タイミングよ、必殺・五月雨斬り!!」


 テンペストは十二回の斬撃を相手に加える。相手は突き出した動作のまま、為す術も無く斬り刻まれる。


「な、何故、そんな技が……?」

「現実でも連続攻撃と言うのはあるのよ。連続攻撃コンビネーションアサルト、と言った方がそちらにはわかりやすいかしら?一撃必殺と言うのはこう言う技の事も刺すのよ」

「コ、コンボなんて……ゲームだけだろ」


 そう言いながら相手の大将は倒れて消えた。


「う、うわぁ!カートロさんが負けた!?」

「ど、どうすれば良いんだよ!?」


「た、大変だぁっ!!」


 相手の大将――カートロと言うプレイヤーだったらしい、彼がやられた事でより動揺が広まった所に相手の伝令が来た。


「き、騎乗兵がこちらに……って、カートロさん!?」

「報告ありがとね、伝令さん。クロウ、足止めどころが倒しちゃったみたいね」

「え?け、剣姫!?」


 テンペストは伝令でやってきた盗賊を叩き斬って、自陣へと歩いて戻っていった。


 テンペストの大将撃破・クロウが後方から強襲、無双した事によって、敵本隊も潰走し、残るは相手本陣だけとなっていた。

 しかし、本陣は持久戦を強いられたギルドメンバーは半壊し、テンペストも単独突撃により大きく消耗。クロウも馬が限界近く、満足に移動出来なくなっていた。


 お互い大幅に消耗した所で、相手側からとある使者が訪ねてくるのだった。


8/1 修正

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