session18 作戦会議
十五日目。
この世界に落とされて二週間が経ったこの日、各ギルドのギルドマスターに『闘争禁止が解除されました』との通達が届いたらしく、『草原の微風』のギルドマスターエイプリルの所にはギルド間の戦いを起こすための宣戦布告状たる『闘争状』が送られてきていた。
エイプリルから招集を受けた俺は一緒に過ごしているエトワールと同じ宿を取っているテンペストを連れて、予定通り『草原の微風』のギルドへと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「良く来てくれたよ、クロウ!君を頼りの綱にするのは申し訳ないが、これも存続のため。その力を最大限に利用させてもらうよ」
そう言って、エイプリルは俺の手を取った。俺は頼りにされると明言されるのが嫌いだった。期待されてその期待を裏切った時の反動を知っているから、俺は頼りにされたくはなかった。だが、今はエイプリルのためだ、そんな事など言っていられない。
「そしてテンペストと言ったね。僕はエイプリルだ、改めて宜しく」
「ええ。エイプリルのためなら私も協力するわ」
テンペストも差し出されたエイプリルの手を握った。一応、俺たちはギルドに所属していないので手を組む態度もギルドメンバーに見せる必要があるらしい。ややこしい話だが、背中側から攻撃されたらたまったものではないので、大人しく儀式のような挨拶をした。
今、この『草原の微風』のギルド内に居る無関係者は四人。
俺、エトワール、テンペスト、そしてセイである。一応、エイプリルは他ギルドにも援護要請はしたそうなのだが、参加してくれる所は一切無かったそうだ。協力して敗北した場合、協力者にも責任が問われるためである。
「他のギルドも僕たちが負けると思っている。だけど今、ここに四人の協力者がいる。絶対に勝って、周囲を見返してやるぞ!」
「「「おーっ!」」」
エイプリルの演説に賛同するかのごとく声を上げたのは三人だけだった。ヒトミさんを筆頭とする女性陣だ。他のギルドメンバーはやはり負けを見越しているのだろう、雰囲気が暗かった。
「エトワールちゃんとテンペストには期待しているわよ~」
服を選んでくれた女性陣のリーダーたるヒトミさんはそう言ってくれた。エトワールは様子が分からないが、テンペストは少し恥ずかしがっている様子だった。
「今回の闘争で陣形……と言えるようなモノではないけど、左翼はクロウ一人に、右翼はセイ一人に任せようと思う」
「了解、左翼ね……って、え?一人?」
一人ってどういうことだ?まさか左側に来る多人数を相手に一人で無双しろとでも言うのか?
「顔に出ているそのまさかだよ、クロウ。騎乗兵とトップランカー。君たちで相手の上級職を引きつけてもらうよ。頭一つ抜けた存在の君たちには僕らが側に居ても邪魔だろう?」
「……ああ、邪魔だ」
奥の壁に縋っているセイは首を縦に振った。
「何をぅ!」
「俺は広範囲の高火力術を持っている。それを最大効率で使うには味方なんざ逆に邪魔さ。それともなんだ?自ら『撒き餌』になって術の爆心地にでもなるか?丁度君は戦士だから一回は攻撃に耐えられるだろう?」
「え、そ、ソイツは勘弁願いたいね」
反論してきた男性のギルドメンバーはセイに食いかかったが、正論を言われて黙る。まぁ、誰だって死亡確定な役割はやりたくないだろう。セイもそれが良く分かっているらしく、それを脅し文句として使っていた。
錬金術師の性能はよく分からないが、突撃騎兵の方も単独での攻撃力並びに攻撃頻度の高さが売りの職業だ。他のメンバーを置くとするなら、回復役を同乗させるぐらいだが、回復役も乗り物酔いには勝てずに使い物にならないだろう。
だから俺とセイのツートップはある意味正しい。でも精神的に頼られすぎていると言うのが嫌になってくる。
「とにかく二人に頼った戦術になるため、二人には大きく負担の掛かる戦いとなる。でも、僕にはこれしか打つ手がない以上はこの策を押し通すよ。特にセイはしっかり頼むよ?君の交渉が唯一の道なんだから」
「了解、任せておけ」
「分かった」
エイプリルはどうやらセイと何か打ち合わせをしたのか、彼の事をしきりと気にしていた。錬金術師である彼なら、他の人とは違って上位に対する交渉カードを持っているだろう。いきなり唐突に上位周りをした奴だ。
どうやら俺は単純に戦力分散させて時間稼ぎさせるための駒として使うようだ。ならば俺は負けても良い、ただ時間さえ稼げばいい。そう思うと多少気持ちが楽になった。
「他のメンバーは本拠前で防御陣を張る。防御陣を形成しながら魔術師などで敵を攻撃していく。本拠前には一応上級職のエトワールとテンペストも来てもらうよ、戦士の根性で一撃は耐えられるからそれを回復してもらう。本陣は特に露骨な時間稼ぎが必要となるから、皆頑張ってもらうよ」
「……了解」
「任せて!」
「「「おう!」」」
わっと沸くギルドメンバーたち。まぁ、上級職頼みの現状、居るだけでも戦況は変わるのだから、それはもう心強いのだろう。特に戦士には『根性』と言うスキルがあって、『HP全快』ならば『どんな攻撃』を受けても一度は耐えきると言うスキルがある。そして上級職になったエトワールは低レベルの戦士なら簡単に全快させられるのだ。
三人一組で壁・準備・回復のループをしていれば、かなり長い間耐えられるだろう。
上級職『剣豪』となったテンペストは本陣に向かってくる上級職の相手、他の魔法系などのメンバーが本陣に向かってくるその他大勢の相手をすると言う手筈となった。
「戦術については以上だ。それでは皆の健闘を祈る!」
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~~party member~~
Player name:クロウ
Job:騎乗兵⇒突撃騎兵
Level:50⇒1
skill:『騎乗』、『突進』、『調馬』、『警邏』、『魔物使い』、『調教』、『槍術』
Rank:27
Player name:エトワール
Job:僧侶⇒司祭
Level:50⇒1
skill:『杖術』、『浄化』、『解呪』new
magic:『回復』、『付与』、『鈍化』、『風刃』、『異常回復』
Rank:27
Player name:テンペスト
Job:戦士⇒剣豪
Level:50⇒1
skill:『闘志』、『根性』、『威圧』、『刀術』、『乗馬』
Rank:27
Player name:セイ
Job:???
Level:?
skill:『????』、『武具生成』、『魔術具生成』、『道具生成』、『金属製錬』、『薬調合』、『料理』
magic:『火球』、『水線』、『風刃』、『土動』
Rank:1
Player name:エイプリル
Job:魔術師
Level:29
skill:『高速詠唱』、『杖術』
magic:『火球』、『水線』、『風刃』、『土動』
Rank:862
8/1 修正




