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session1 決死の騎乗

7/30 大幅改変。


~~クロウサイド~~



「……ここはどこだ?」


 俺は先ほどまでパソコンの前に居た筈なのに、今居る場所は多くの茶色と一部の緑に染まった荒野と呼べるような場所だった。


「あれ、あのゲームってVirtualヴァーチャル Realityリアリティーだったっけ?」


 思い返してみるがそんな事が書いてあった事は一度も無い。それどころかそもそもそんな技術が現代で公にされている事を聞いた事もない。


 俺はまず、自分の状態を確認してみた。五体満足、髪型や背格好は現実の自分と同じ感じだった。鏡が無いので顔がどうなっているかは知らないが、自分の手で触った限りでは多分変わっていない。目線の違和感などは無いどころか、少し悪かった裸眼視力が良くなって、遠くが良く見える以外変わりが無いように思える。この調子だと聴力も良くなっているかも知れないが、調べる手段が無いのでよく分からない。


 ただ、唯一の改悪点は服だった。質の悪そうな麻で出来たファッションとかあったものではない服装だった。元々来ていた服でもなく、ここまで質素なモノである事は現代の日本人では有り得ない事だった。身辺は確認出来たので、今度は周囲の様子を確認してみる。


 周囲の風景は今まで見たことも無い場所だった。一言で言うならば『荒野』。近くには少なからず動物が居るようだ。ちょっと遠くを見れば猪だって見えたぐらいだ。

 そして目の前には紫色の体毛を生やした耳の大きい生き物が居た。


「へぇ、野生の兎か。珍しいな、日本にいるなん、て……?」


 と呟きながら近付いた兎がニタリと見せたその非常に鋭そうで大きい二本の前歯はどう見ても殺傷するためのモノだと一瞬で悟った。直後、飛び掛かってきた兎を横転しながら回避した。兎は俺の後ろにあった岩へその牙をぶつけたが、その牙は岩の固さに負ける事無く突き刺さっていた。

 ――岩に綺麗に突き刺さって、牙を支点に宙ぶらりんの状態になっていた事は笑えたが。


「キキィィィッ!!」


 宙ぶらりんの兎が非常に耳障りな悲鳴を上げた。その音の大きさと甲高さから思わず耳を塞いでしまう程大きく、そして周囲に響きわたるような悲鳴だった。


 ドスドスドスドス、ドドドド、シュッシュッシュッシュッ。


 地面を揺るがす巨大な猪の移動音に加えて、さっきの兎の仲間のような小さい動物?たちが、あるモノは集団で駆けて来た。あるモノは茂みをかき分けて駆けて来た。


「あ、あれ?御団体様を呼び寄せちゃったのかな、さっきの兎は……?」

「ブモモ……」


 一匹の特に大きかった猪が千藤の方へ向かってきているのが見えた。明らかに何か怒っている様子だ。


「……あれ、何かまずくね?」


 何度も何度も前足を振り上げている様子はどう見ても突撃準備の行動にしか見えなかったので、必死に横へ転がるように飛び退いた。


 ズドドドドドッ!

「危ねぇ!」


 巨大猪は元居た地点を駆け抜けていた。横転していなければ60km/hは出ている巨大猪に轢かれてお陀仏だっただろう。縦長が目測でも2m50cmはあった事から、軽自動車クラスの体重も少なくはあるのだろう。間近で感じた風圧も物凄くて俺は吹き飛ばされそうになった。あんなのにぶつかったらただでは済まない。だが、武器も持っていないので猪たちに対抗する手段が無い。


「何か使える魔術とか何かは無いのか!」


 俺は転がり起きて、体勢を整えて考える。思考の一部に『ステータス』『アイテム』『スキル』『魔術』『特技』『情報』と言う項目があるのに気が付いた。そしてログアウトと言う、あって当たり前の項目がない事にも否応なしに気が付かされる。


(物理的にも逃げる事は出来なさそうだな)


 俺は逃げが無理だと判断して、戦う事を選択する。最優先で使えるモノを選ぶために『魔術』と『特技』の項目を見てみたが、その項目の欄を見るが真っ白だった。『スキル』の欄には『騎乗』『突破』『調馬』と言うスキルが書かれているだけで他は何も書かれていない。どれも今すぐ使えるようなものでは無さそうだ。『アイテム』の欄には銅貨千枚があるだけで他は着ている麻の服だけだった。


「ちっ、やっぱり魔術師系や戦士系じゃないと無いな、素で出せる技とかは!」


 俺は猪を避けても上手に回り込んで突進してくる。避けてもキリがないため、俺は一か八かの賭けに出た。


「くそ、いい加減にしろぉぉぉっ!」


 決死の覚悟で俺は駆け回る猪に器用に脚を掛けて飛び乗った。足を掛けた瞬間、その勢いに右足を持って逝かれそうになったが、猪の勢いに身を任せてジャンプし、そのまま上へと騎乗した。現実なら高速道路を走っている車に蹴りを入れて飛び乗るとでも思えばいいか、それほど無茶な事をやっていた。猪も乗られてしまえば、俺に直接突進してくる事は出来ない。しかもこの辺りで見える魔物の中では一番大きい猪だった事から、他の魔物が俺を襲おうにも猪が撃退してくれた。

 ……あれ?これ安置じゃないか?

 そう思ったのも一瞬で猪は大暴れし始めた。


「う、うわぁぁぁっ!」


 猪は上に乗せた俺を振り落とそうとして縦横無尽に駆け回る。上に乗っている俺は必死に猪の毛を掴んで落ちないよう懸命にしがみついていた。騎乗スキルが無ければ、間違い無く振り落とされて居ただろう。振り落とそうとしていた猪は何時しか、魔物の群れの中に突っ込んでいった。


「止まれ!止まれぇっ!うわぁぁぁっ!!」


 だが、猪は止まらない。時速六十キロを超す速度で兎とか他の猪とかが居た場所を縦横無尽に駆け回った。


 スドドドドドッ!

 ズガァァァーン!


 轢かれた魔物は数知れず。一時間近く暴れまわった猪が疲れはてて止まった頃には魔物の群れの大半が死に絶えており、魔物の群れは散り散りになっていた。俺は振り回されて、少し乗り物酔いしかけたが、目立った外傷は無く無事だった。


「……何だかんだ言って、この猪凄く強かったよなぁ」


 俺は運良く『騎乗』出来たこの猪に感謝をしながら、弱りきった所を素手で殴り倒した。倒れた魔物は煙のように消えてアイテムを落としていた。そのアイテムに近付くと勝手に消えて、思考の中にあるアイテム欄に追加されていった。


「これは……アイテムか。と言う事は、これはゲームの世界なのか?――まぁ、回収しておいて損は無いだろう」


 兎の肉が百五十二個、トカゲの尻尾が百三十八個を筆頭に計百数十のアイテムが全て『アイテム』欄に収まっていた。試しにアイテム欄から一つ、アイテムを選んでみた。すると手元に肉が出てきた。


「……便利だな、これ。アイテム運搬や収納の手間が無いなんて」


 俺は感心しながらアイテム欄を弄ろうと思ったが止めた。暫くすればここはまた魔物が現れるのだろうと思い、俺は再び周囲を見渡した。


「あれは……街か」


 右手の方には城塞のごとき壁を持った巨大な施設が見えた。おそらく、人が集まっている街なのだろう。行けば何か情報が、誰か知り合いに会えるに違いない。


「この猪、いつの間にか街の方まで移動していたのかな?まぁいいか。街に向かおう」


 俺は一人徒歩で近くの街に移動したのであった。

 偶然乗った猪がこの辺りでは最強クラスであるビックボア(レベル30ぐらいのパーティーで倒せる敵)であった事、『騎乗』のスキルの御陰でビックボアに乗る事が出来た事、『騎乗』していた事からビックボアが倒した魔物分の経験値を全て獲得していた事は全く知らなかったのであった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


Player name:クロウ

Job:騎乗兵

Level:1⇒18

skill:『騎乗』、『突破』⇒『突進』new、『調馬』、『索敵』new、『魔物使い』new、『調教』new

魔物使い系のスキルを習得しましたが、使うかどうかも分かりません。

何か踏み台にされそうなスキルです。


なお、魔物使い系のスキルは『魔物を使って経験値を稼ぐ』と習得出来るスキルと言う設定です。



7/30 改変 クロウのレベルを29⇒18に。

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