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session16 誤解多き女友達?

 街に戻った俺たちはまず自らの所持金を確認した。

 エイプリルのギルドのために買いだめをしたが、まだ金貨一枚と銀貨三百枚は手元に残っている。これで何を買うかと言えば。


「何よ、こっちをジロジロ見て!」

「お前、刀は買ったのに服は初期あさのままなんだな」

「そうよ、悪い!?」


 非常に強気な顔をこちらに向けてくるテンペスト。刀は結構良質そうな物で、これまでの狩りで稼いだお金の大半を注ぎ込んだ感じだった。


「仕方ない、服いるだろ?買ってやるよ」

「い、いいわよ、そんな事しなくてもっ!!」

「……テンペスト、もう少しは素直になるべき。私も買ってもらったから」

「む、むぅ……」


 どうやら彼女は俺に道具を買ってもらう事が恥ずかしいと感じているようだったので、もう一押しするためにある人物を呼ぶことにした。その名前はヒトミ。登録者がほぼ仲間で占められているこのリストにある唯一の部外者。エイプリルのギルド『草原の微風』の一員だ。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



「エトワールちゃん~!」

「……っ!!」


 その姿を見るや否や、エトワールに飛びつこうとしてきた女性。エトワールはその彼女に気がついた瞬間、俺の背後に隠れた。背が俺より高いエトワールが俺の後ろに行っても隠れきれないが、何と言うかその仕草は可愛らしい。


「クロウ、その人は……?」

「彼女たちは草原の微風のメンバーで戦士のヒトミさんだ」

「エトワールちゃんに続いて、こんな可愛らしい子を連れるなんて、クロウ君もやり手ねぇ」


 ヒトミは隣のテンペストと後ろのエトワールを見てそう呟いた。実際、二人とも外見は良いので、そう見えなくはないだろう。反論すると面白おかしくからかわれそうだ。


「そ、それよりも!突然呼び出してすみませんけど、彼女――テンペストの服のコーディネイトをお願いできますか?」


 俺は少し慌てながら本題を言って、テンペストの肩を持って前に押し出した。テンペストは文句を言いたそうにこちらを牽制しながら、ヒトミを見た。


「ん~?良いよ~。どうせ暇なんだし、女の子の服選びなら何時でも喜んで受けるわ~。服買ってくれたクロウくんの願いなら断る理由も無いし~」

「一応、報酬として銀貨100枚を用意しているので、テンペストの服選びをお願いします」

「おお!気前がいいわねぇ!しっかり選んであげようじゃないの!」


 そう言ってヒトミに報酬分を含んだ金を渡した。それを受け取った彼女は腕まくりをして今にもオバさんパワーを見せ付けんとばかりな様子だった。大人の女性ってこう言う面では非常に便利だと思う、買い物に関しては結構合理的な面を持つし。

 どうせ俺やエトワールでは服を選ぶ際のセンスも無いのだ。こういう所は適材適所だ。そしてテンペストの服もいい加減麻の服からは卒業させるべきだ。


「念の為言うが、遠慮はするなよ?そしてヒトミさんに危害を加えないでくれよ?」

「……分かったわよ!」


 テンペストは渋々ヒトミについて行った。テンペストも結構な暴力女ではあるが、エトワールとは違ってまだ社会的常識はある女だ。なので、エトワールの時のように付いていく必要は無いと思い、彼女に合流場所だけ伝えて見送った。


「さてと、俺たちは食事の後に道具屋でも回ってみるかな?」

「……(コクリ)」


 そして俺とエトワールは道具屋巡りをしたのであった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 NPCの道具屋は『1ダースの誓い』に比べるとどれも高価で種類も少ないと感じるぐらいになっていた。一週間も経てば流通量もそれなりになるためか、既にNPCの店には余り人はいなかった。まだ初心者っぽい人が何人か売り買いをしていたぐらいだった。


「ギルドショップに比べると一割以上値段が高いなぁ……」

「NPCを相手にするとやはり金欠になる」


 などとエトワールと話しながら、テンペストを待った。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 時間が来たので、テンペストと合流した後、一緒に夕食を取ってお互い宿に戻るためにテンペストと別れようとしたら、テンペストが突っかかってきた。ちなみにテンペストの服装はTシャツにジーンズと結構ラフな格好だった。Tシャツの上から分かる程の胸も持っているので、ちょっとその胸に目を取られてしまう事もあった。



「それで、クロウ。エトワールを連れて何処に行こうとしているのかな?かな?」

「て、テンペスト……いきなり何だい?」


 非常に嫌な予感しかしない、その表情からは怒りのような感情しか感じ取れなかった。


「私はこれから宿屋に向かうわけだけど、貴方たち二人はどうするつもり?」

「え、えっとぉ……」

「だから、エトワールと『一緒』にこれから何処へ行こうとしているのかなって聞いているのよ!」


 腰に手を当てて、此方に顔を近付けて言うテンペスト。


「え、えっと……そう、食事だ、食事!食事しに行こうと」

「なら何でさっき、私と一緒に食事をしたのかな?かな?」


 御丁寧に指摘された。


「今からセイの所に行こうかと……」

「先ほどセイは留守だと言っていたでしょう?」

「………………」


 簡単に嘘だと見破られてしまう。終わりだ、この女にエトワールと二人で寝ている事を知られてしまったら、俺が殺されて終わる。


「そ・れ・で。今から何をしようとしているの?」

「……宿に帰ろうとしていました」

「エトワールと一緒に?」

「ハイ、宿が一緒なので行くついでに送ろうとシマシタ」


 何故かカタコトな上で敬語が混じり始める。脳筋娘でもこの不自然な俺の様子に気が付けたようで。


「ま~さ~か~、エトワールと同じ部屋に泊まってないでしょうね?」

(ギクリ)

「同じ部屋の同じベッドで寝ていると言う事は無いでしょうね?」

(ギクリギクリ)

「もしかして……男女の営みまで」

「それはやってないっ!」


 つい俺は声に出して言ってしまった。嘘では無いのだがこの状況では藪蛇でしかない。


「それ『は』?」

「…………はい」


 もう言い逃れは出来ない、出来る訳がない。俺は観念して肯定の意を示した。行為になんて及べるものか。万が一、及んだものなら怖い職業ヤのつくひとの方々が俺の喉元に刃物が突き付けられる事になるだろう。

 リアルでも情報屋のセイはそっち方面の人にも知り合いがいるため、冗談抜きでそんな手段に及ぶのだ。もし、彼に何か危害を加えようとした場合、それと同等の手段で報復を行なうのだ。そんな人間の義妹に手など付けられる訳もない。


「と言うことは、一緒の部屋で一緒に寝ている訳ね?」

「…………はい」


 俺は正しく獅子に睨まれて縮こまる兎のごとく彼女に屈服していた。それに対して彼女は俺を殴るとか蹴るとかはせずに、悔しそうな顔をしてエトワールを見ていた。


「でも、まだ行為には及んでいないと……?」

「断じて!断じてそのような事はしていない!」


 この事に関しては懸命に否定した。そうでないと本当にセイによって殺されかねない。

 ゲーム内ではテンペストより俺の方が強いのに、今は根本的な所で俺は彼女に勝てる気がしない。


「ぷっ」

「わ、笑うなぁぁぁっ!」


 その様変わりした俺を見てテンペストは笑ってしまったようだ。


「いや、クロウが必死すぎてもうね。少しはそんな既成事実を作ってもいい仲だとは思っているけど、やっぱりセンドーはセンドーだったか」

「おい、名前」

「ととっ、ごめん」


 悪気無い様子で謝罪されてしまう。まぁ、確かに本名はあんまり言うべきでは無いと言うのは嘘ではないのだが、それにしても御怒りモードから突然笑って緊張が少し溶けた様子でもある。


「え、えっと……」

「クロウたちが泊まっている宿はどこかしら?私もご一緒しても良いかしら?」


 突然何を言うか理解出来ていないのだが、とにかく返答する。


「問題ありません!」


 でも……流石に彼女と同じ部屋は恥ずかしい。エトワールは言うならば手の掛かる妹のような存在だが、テンペストは……暴走する事はあっても、やっぱり女子として見ている。一緒に寝るなど……どうやっても出来ないだろう。


「朝ご飯から一緒に居られるならいいし、……私は別の部屋シングルを取るわ」

「わ、分かりました!」


 彼女が何を考えているのかわからないけど、逆らうつもりなど全くない。宿を案内して、お互いの部屋番号を伝えた後、部屋に戻って休息を取ったのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


職業:戦士

体力:B

攻撃力:B

防御力:C

精神力:E

魔術耐性:E

敏捷力:E

技量:E

スキル:『闘志』『根性』


先頭での戦闘を重視した職業。高い体力と攻撃力を持ち、耐久力にも優れる頼れる前衛職。最も多い職業の一つにも当たる。多種多様な近接武器も簡単に扱えるため、剣槍刀斧など様々な使い手が存在し、武器関連のスキルを会得しやすいなどの特典もある。


スキルの闘志は攻撃力上昇。根性は『一撃は絶対に耐える』と言う壁役に置いて必須のスキルとなる。

レベル差が大きくても絶対に一撃は耐えるので故に戦士は壁役に一番向いている。

8/1 修正

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