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session15 道を行く剣姫

「いて、いででっ!!ここまで魔物が面倒な相手だったとはな!」


 兎や人ならざる小鬼などを相手にしたが、逃げる雑魚が半端無く厄介だった。レベル差があるため、そう大したダメージを被るわけではないが、雑魚が鬱陶しい事この上ない。今までの感覚と同じように槍を振るっても、魔物の方が速く動いて回避されてしまう事もしばしばあった。馬が居れば、一人で追撃も出来て一掃出来るのだが。


「戦う頻度が少ないのはいいんだが、効率悪すぎ……」

「……確かに」


 俺が愚痴ると、エトワールは賛同した。馬で体当たりをするだけでほぼ一撃、耐えられて逃げてもすぐに追いついて仕留める事が出来る。そんな狩りをしていた俺たちにとって、普通で地味な戦闘は堪えた。


「これで数時間ぶっ通しで戦い続ける奴、マジで馬鹿みたいな精神力を持った廃人だな」



 そう愚痴を零しながら、魔物と戦う事一時間。狩りをしながら移動していると何やら騒いでいる集団を見つけた。その中心には黒い髪をしたポニーテールの少女の姿が見えた。その手には刀が握られていた。


「さぁ、観念するんだな!」


 そこには一人の少女が三パーティー十八人に囲まれていた。黒髪のポニーテールが特徴的な彼女は立派な刀を手にしているが、服装は初期装備の麻の服のままだった。麻の服で台無しだが、外見は結構可愛らしいように見える。


「巫山戯ないで!何で私がアンタたちなんかに従わないといけないの!」


 囲まれた少女は叫んだ。どうやら相当強引なギルド勧誘のようだ。それを拒絶する彼女は多勢に無勢。喧嘩にでもなったら、対抗できるハズがない。


「今の声は、まさか?」

「……相沢だと思う」


 エトワールと顔を合わせて彼女の存在を確認した。フォックスの情報通り、本当にここに居たようだ。刀を持った女性ソロプレイヤー。黒い髪の毛を後ろで結えたその髪型も俺が知っている仲間の一人、相沢智代によく似ていた。ならば助けない道理は無い。


「行くぞ、エトワール!アイツを助けるぞ!」

「……(コクリ)」


 俺たちはその囲いに向けて走り出した。


「うおぉぉぉっ!」


 馬がいないので、今までに比べると移動が遅く感じるが、それでも俺は必死に走った。一時間の戦闘で精神的な疲労は結構貯まっているが、仲間が危機に陥っているのなら話は別。全力で助けに向かう。


「な、何だ、お前らは!」

「通りすがりの無所属者だ、流石に三パーティーで一人を囲うのは非常識じゃないかな?」

「そういうお前らも二人のパーティーで喧嘩を売ってくるのか、ええ?」


 そのパーティーの戦士がこちらに向かって言ってきた。数に物を言わせて我が物顔でこの平原にたむろする者たち。数とレベルにモノを言わせて戦っているような連中だ。そんな連中に負けるハズがないと踏んで、俺は強行突破を決断する。


「適当に捌いてアイツと合流するぞ!」

「……(コクリ)」

「うおおぉぉぉっ!」

「……『風刃ウインドカッター』」


 俺は槍を持って活路を切り開くべく突き進んだ。馬がないので思うようにはいかなかったが、それでも相手の注意を引きつけながら戦うくらいは出来た。そこにエトワールの攻撃魔術が入る。僧侶なので、魔法攻撃が得意と言うわけではないが、他に居ないので彼女もアタッカーだ。


 大きな真空の刃が相手パーティーを吹き飛ばしていた。。


 魔術を食らっている相手パーティーを見て、俺は≪人って本当に吹き飛ぶんだな~≫的な事を思った。


「な、何だ!この魔術師は!」

「うわぁぁぁっ!」

「おい、大丈夫かぁっ!僧侶、大至急回復を!」

「コイツゥッ!ええい、鬱陶しい槍使いめ!」


 少女を包囲していた一つのパーティーはエトワールの魔術数発で半壊していた。それに対して俺はこれまでの化け物のような活躍とは違って相手の前衛三人と必死に槍を向けているだけだった。


≪これまでとは役割分担が逆になっているな。馬が欲しいわ≫


 現状、レベルにモノを言わせて戦っているが、前衛三人を相手にすると手一杯だった。馬が居れば、こんな奴等に手古摺る事も無いだろうに。そう思いながら俺はエトワールの援護を待つ。エトワールは俺の望んだ通り、魔法で敵を一掃していく。


「なんて奴等だ!テスターが何でこんな所に居るんだよ!?」

「俺たちはテスターじゃねぇぞ?」

「嘘だ!」


 そう叫ぶ相手パーティー。二人で三パーティーを圧倒する実力を持つともなれば恐れおののくだろう。彼等の目的は囲んでいた彼女にちょっかいを出したいだけで、俺たちと戦う事ではないのだから。


「ひ、退くぞっ!相手していられるかっ!!」


 俺たちに対峙したパーティーが逃げて、他二パーティーもその逃げ様から俺たちの力量レベルを察知したのか、潰走していった。それを確認した俺は囲まれていた少女の下へと駆け付けた。


「大丈夫か!」

「何よ、アンタたちは!邪魔するなら容赦無く斬るわよ!」


 助太刀に入ったにも関わらず、少女は俺たちに刀を向けて来た。


「全く……。少しは落ち着け、智代」

「え?え?な、何で私の名前を?」

「……話は後。今は街までの帰還を優先する、相沢智代」

「えっ?えっ?えっ?えっ?」


 先ほどまで囲まれていた少女は、俺たちの正体に気が付いていないのか、疑問符を上げながら、俺たち二人に両腕を掴まれて街まで連れて帰られる事となったのだった。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



「あんな敵、一人でも対応出来たんだから!助けなんて要らなかったわよ」

「はぁ……いい加減にしてくれ、智代。俺は千藤だ」


 貸しを作りたくないのか、強情さを見せる彼女に俺はため息を付きながらも、その彼女の肩を掴んで至近距離で見つめ合うようにして自分の苗字を名乗った。もう少し近ければ唇が重なりそうなぐらい顔を近付けたが、こうまですれば幾ら馬鹿でも分かるだろう。


「えっ?……センドー?……えええっ!?」


 ようやく落ち着きを取り戻したのか、俺の名前を呼ぶ。やっと理解してくれたか、と思って手を彼女の肩から離した。これ以上、顔を近付けたままだと意識してしまいそうになるからだった。彼女の顔が少し赤くなっていたようには見えたが、助けた二人が俺とエトワールだと言う事に気が付かなかった事に恥じているのだろう。


「登録名はクロウだ。一応、ゲームの中だから実名を連呼するのは避けてくれると助かる」

「え、ええ……。えっと、私はテンペストよ。それでそっちは久保かな?」

「……(コクリ)」


 首を縦に振ってエトワールは答えた。苗字を知っている以上、身内に決まっているのだが。


「取り敢えず、テンペスト。俺に協力してくれないか?」

「分かった、クロウなら・・いいわよ」


 強情な剣姫テンペストは俺の勧誘に対してあっさりと首を縦に振ったのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

~~party member~~


Player name:クロウ

Job:騎乗兵

Level:39⇒40

skill:『騎乗』、『突進』、『調馬』、『索敵』、『魔物使い』、『調教』、『槍術』

Rank:47⇒51


Player name:エトワール

Job:僧侶

Level:37⇒38

skill:『杖術』、『浄化』

magic:『回復リカバリー』、『付与エンチャット』、『鈍化デエンチャット』、『風刃ウインドカッター

Rank:64⇒65


Player name:テンペスト

Job:戦士

Level:20

skill:『闘志』、『根性』、『威圧』、『刀術』

Rank:ランキング外

8/1 修正

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