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session12 三人乗り

 九日目。

 一日の休息を挟んだ事で馬が使えるようになったので、俺は約束通りエイプリルを北の森へと連れていった。


 エイプリルも一撃でも喰らってしまうと即死するので、安全を期するために馬の後ろに乗せる事にした。エトワールも一緒に乗って三人乗りとなったが、装備する意味が殆ど無い重たい青銅の鎧を外したためか、馬は普通に動いてくれた。

 三人だけでこの辺りのエリアでは最もレベルの高い場所で戦うのは本来暴挙なのだが、常識外れの騎乗兵がここにいるのだから仕方無い。


  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 一時間ほど戦った所で一度休憩にした。

 エイプリルとエトワールは木にもたれ掛かっており、如何にもダウン寸前と言った所だ。それに対して俺は警戒をしながら、馬にアイテム欄より取り出した馬の餌にんじんを与えていた。しっかりと面倒を見ないと突然馬がへばって三人が魔物に取り囲まれて全滅と言うのも十分有りうるからだ。


「馬が酒を飲んで、馬に乗ったら整備不良とは『日本の法律どうこうほう』も良く言ったものだね。君の振る舞いを見るとそう思うよ」

「そうだな、エイプリル。しっかりと世話をしておかないといざと言う時に大惨事に結びついてしまうからなぁ。俺だけなら余り気にしなくてもいいけど、俺以外の二人も居るからな」


 高校生である俺たちが道路交通法なんて気にする必要は無いが、危険は同乗者にも及ぶ。そう、俺だけなら単なる自己責任なのだが、後ろにはエトワールと今回はエイプリルもいる。念には念を押しておいても悪くはない。


「だが、ここまで効率が良いとはね。地味な採集クエストを真面目にやるのが馬鹿らしく思えるぐらいだよ……」

「そんなにトンデモナイ効率なのかい?」

「ああ。ずっと戦い続けるわけにもいかないから、採集クエストや警邏クエストなどで皆お金と経験値を稼いでいるけど、段違いだよ」


 そう言いながらエイプリルはメモ帳を取り出して、一週間で入手したデータを公開してくれた。そこにはギルド内でクリアしたクエスト二十個ぐらいがズラリと書かれており、報酬の金とそれによってレベルが上がったかどうかの有無が書かれてあった。だが、レベルが2以上上がったと言う記載はどこにもない。


「確かにここは高レベル地域だから低レベルに比べると明らかに経験値の入りは違うけど、……正直上がり過ぎだね、これ」


 エイプリルが取り出したステータスにはレベル12と書かれてあった。出る前がレベル6だったので、一時間で倍増したと言う事になる。一週間で頑張って稼いだ経験値がそのまま加えられた感じなので呆れずには居られないのだろう。


「そうなのか……」


 俺は初日から意味不明な巻き込まれ方をしたのもあって、レベルの上がり方や自分のレベルの高さをイマイチ実感出来ていなかった。改めて、騎乗兵と言う兵科の強さを思い知る事となった。


「………………」

「そういえば、エトワールは大丈夫なのかい?」

「……大丈夫なわけが無い」


 平然とした様子で答えるエトワールだが、確かに余裕は無いのか、馬から降りた後は木にもたれ掛かっている。今日の服装は馬に乗らせることもあって、ズボンを履くよう言いつけていたので、視線に困るような事は無かった。


 その後、三時間ほど狩り続けて二人が気絶した所で引き揚げる事にした。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇



 街に戻って馬小屋で馬を預けた後、俺たちは飲食店で昼食を取ることにした。昨日フレンド登録した商人のフォックスも連れて四人だ。


「アレほど激しい運動の後に食事とは君も相当剛毅だな」

「……エイプリルが愚痴るとか、何をやったのよ、クロウ?」


 合流したフォックスが相当元気を無くしているエイプリルとエトワールを見て俺に口撃してきた。彼女は狩りをする必要自体は無いので、その辛さが分かっていない。……まぁ、同乗をそこらへんの狩りと一緒にされても困るが。


「騎乗スキルの無い二人を無理やり乗せて狩りしていました、ごめんなさい」

「はぁ?それで二人はこんなになってるわけ?」

「……でも、効率的には最善」

「でも二度もやりたくはないね。……エトワールの凄さがわかった気がするよ」


 そうなのだ。安全かつ効率もいいため、エトワールは嫌々ながらも同乗したのだ。エイプリルも一回でギブアップしているからエトワールの我慢強さが伺える。


「それでアンタはレベルいくらになったの、クロウ?」

「俺は39だな。二人でもう一回北の森に行けばレベル50まで行けそうだ」

「……私は37」

「はぁっ!?」


 唖然とするフォックス。アンタもレベル40間近で商人の中ではテストプレイヤークラスだろうがと突っ込みたくなったが、おいて置く事にした。


「しっかし、ここまで強いとはね。だけど……強すぎるね、騎乗兵」


 エイプリルは俺によく聞こえるようにボヤいた。呆れ半分、脅威に感じているのも半分あるだろう。


「しかも二人までなら『酔い』と言う敵があるモノの、守りながら育成出来る……常識外れな性能だね」

「ああ……」


 俺も同意するしかなかった。パーティー内には経験値が均等に配分されるとは言え、低レベルは事故での即死が怖いため、幾ら強い人が相方であろうと北の森に早々踏み入る事は出来ない。でも、安全が確保出来るならば、これほど効率の良いレベル上げを行えるようになる。正直チートと評されても可笑しくないだろう。


「馬の速さも相まって、敵は逃さないし攻撃もすぐに何度も打ち込めて倒し切れる。しかも移動が速い分、魔物との遭遇率も非常に高い。それなのに一人で生き残れるとなると、仲間なんて必要無くなるだろうね。噂の騎乗兵が君でよかった気がするよ、クロウ」

「………………」


 リアルで親友である彼から少し畏怖のような感情が表に出ていた。もし目の前にいる少年がリアルの友人で無ければ、その敵愾心に近い気配を察知して牽制で槍を振ったかも知れない。


「君が勧誘を断った理由も分かった気がするよ。ここまで力量差が出ると上位ギルドでないと君を怖がったり、過剰に頼ったりするプレイヤーが出てしまうだろう」

「……ああ。俺も複数人守れるほど万能では無い以上、君だけを連れると言ったんだ、エイプリル」


 エイプリルは少し惜しいと思ったのだろう。ここまで効率の良い育成は他には無いが、幾ら親友だからとは言ってもそこまで融通を通せるわけでもない。


「ギルドマスターとしては、君の勧誘に失敗して正解だったよ、クロウ」

「………………」


 どこか悪い笑みを浮かべた彼に冷や汗を欠かされる。


「でも、君がどこのギルドにも所属するつもりが無いこと、これは僕としても好ましい事だ」

「………………」

「可能ならば僕は君たちとは共闘関係を組みたいね。……共闘と表現出来るとは思えないけど」

「……どうなんだろ。俺としてはエイプリルなら組んでもいいとは思っているけど」


 俺はここで本音を言った。親友のためならば、俺は協力してもいい。だけど、そのギルドメンバーのためと言われるとあんまりやる気は出ない。だから『なら』と答えた。


「まぁ、それは後で考えるとして、そろそろ切り上げようか」


 エイプリルは俺が結論を出す前に帰る事を即したのだった。


「それはちょっと待ってくれないか、エイプリル殿」

「な、何でお前がここにぃっ!」


 想定外の声にここにいた四人は驚きを隠せなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


Player name:クロウ

Job:騎乗兵

Level:29⇒39

skill:『騎乗』、『突進』、『調馬』、『索敵』、『魔物使い』、『調教』、『槍術』

Rank:209⇒47


Player name:エトワール

Job:僧侶

Level:24⇒37

skill:『杖術』、『浄化』

magic:『回復リカバリー』、『付与エンチャット』、『鈍化デエンチャット』、『風刃ウインドカッター』、『異常回復ファルトリカバリー

Rank:856⇒64


Player name:エイプリル

Job:魔術師

Level:6⇒25

skill:『高速詠唱』new

magic:『火球ファイアボール』、『水線ウォーターライン』、『風刃ウインドカッター』、『土動ガイアムーブ

Rank:ランキング外⇒915

7/31 修正。

レベル下方修正。

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