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カミシデの陰陽師  作者: neluasob


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第1話

 乾燥した夜空に数点の星が点滅している。

 月夜に照らされた線路は鋭い鼠色に輝いていた。


 「ここか…。噂になってる踏切ってヤツは」


 この踏切周辺で、人身事故の多発。

 

 「ここら一体の都市伝説になってるんだし、()()()()あるに違いないよね


 踏切へと一歩近づこうとした次の瞬間、けたたましい警報音と共に警報灯が明滅を繰り返す。 

 左右を確認するが電車は来ていない。

 踏切の故障、あるいは…怪奇現象という奴だろう。


 緩慢な動作で下がる遮断棒を無視して、線路内部へと僕は立ち入る。

 再度左右を確認するがやはり電車は来ていない。閑散とした市街地に鋭い警報音のみが鳴り響いていた。


 「やっぱり妖怪の影響だったんだな…」


 

 次の瞬間、全身が生ぬるい空気に包まれる。

 湿度が高く、息苦しく、しつこいように体へと纏わりついてくる。 

 乾燥した江戸の真冬にとって場違いであろうそんな空気だ。


 「蜒輔?雕丞?縺ォ菴輔?逕ィ縺?縲ゅ%縺薙°繧牙?縺ヲ縺?¢??シ」


 僕の目の前には妖怪が立っていた。


 いや、立っているという表現は間違いだろう。

 実際、こいつは足がない化け物で、空中に漂っているだけなのだから。


 「縺翫°縺ゅ&繧�!!」


 異形の妖怪は理解できない言葉を発した。

 と言ってもこいつには口がないためそれを言葉と定義していいのかすら怪しいところだ。

 ただの雑音だったのかもしれない。


 「今からお前を祓う。悪く思うなよ」


 次の瞬間、七刀の剣が僕の周囲を囲むようにして現れた。

 柄に紙垂がついているソレは、円を描くように、僕の周りを緩慢な動作で旋回している。


 「縺薙▲縺。縺ォ譚・繧九↑?」


 妖怪の目が一斉に見開き、そのすべての視線が僕の背後へと向かっていった。

 一瞬にして赤く充血する妖怪の目、赤黒い血を撒き散らして爆散したかと思いきや、僕の背後に列車が出現した。

 特急並みの速度を保持した電車は、そのまま僕の立っている線路上へと突っ込んでくる。


 なるほど、この呪いの能力は、線路上に任意のタイミングで電車を出現させ、そのまま敵をひき殺すというものなのだろう。


 鉄の塊がすぐそこまで迫り、僕のことを引き殺そうとした次の瞬間、周囲を漂う七刀が一斉に動き出した。


 吹き荒れる暴風に甲高い金属音。

 紙垂を激しく揺らしながら高速で旋回する御剣。


 そうさ。

 僕は今、猛スピードで接近する鉄道車両を粉々に切り裂いているのだ。


 紙乃家代々伝わるこの妖術。

 僕の仕事は妖怪と戦い、この世界から祓うこと。


 「蜒輔?髮サ霆翫′?√?縺悶¢繧九↑繧医♀蜑搾シ!!!」

 「わりぃな妖怪。ここはお前の居場所じゃないんだ」


 電車を千切りにした僕はそういうと、踏切に住み着く妖怪を木っ端みじんに切り刻むのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「例の地区で噂になっていた踏切の怪現象ですが、呪害の影響であることが分かったんで僕が祓っておきました」


 本部に帰還した僕は、上司である碓氷課長に事後報告をしていた。 

 僕と同い年である碓氷課長は、その名の通り、冷酷な性格をしている。

 同僚たちの間で凍てつく課長と恐れられている彼女であるが、実際のところ、彼女の性格はあまり知れ渡っていない。


 「既に承知しているよ紙乃くん…。さっき一課の方々からクレームを頂いてね…。全く…面倒なことをしてくれたな…」


 鋭い視線で僕のことを睨みつけてきたかと思いきや、碓氷課長は深いため息を吐いたではないか。


 「え?どういうことですか?」

 「三か月前、七課総出の全体会議で話し合ったよね?まさか忘れたのか?」


 三か月前の総会議…?

  

 あぁー…。


 「妖怪が出没した時、まずはその妖怪の邪悪性の有無、そして害の有無を見極め、邪悪性のない場合は一課が保護。邪悪な存在かつ害が確認された呪害のみ私たち二課が殲滅するっていう取り決めだ」

 「そういえばそんな感じのルールがありましたね」

 「今回、紙乃くんが祓った妖怪は確かに害があった。しかし邪悪性は確認されていない。踏切の地縛霊となっていた妖怪は踏切内での列車接触による事故で死亡した霊体。一課の調査によると長期間にわたり踏切事故を未然に防いでいた、自己判断型の妖怪だそうだ。それを紙乃くんは容赦なく祓ったと一課の人々は激高していたぞ」

 「…例の踏切で人身事故が多発していたと聞きますけど…」

 

 それはもう、悪意のある妖怪、つまりは呪害であると断定しても良いのではないだろうか。


 「紙乃くんは不確定な噂話を信じるのか?」

 「だって地元の小学生達がそう言ってたし…」

 「はぁ…。頼むから私を困らせないでくれよ…。軽薄な行動は堪忍しかねる。他の課との対立を引き起こしたのは紙乃くんの身勝手な行動による結果だ」


 僕たちが所属する国家組織には合計七課の部署が存在し、それぞれ異なった考えを持っている。

 一課は呪害に対して、確保や収容という保護派の姿勢を取っており、僕達二課はというと…完膚なきまでの殲滅だ。

 この根本的な考え方の違いにより、僕たちは暫し対立することがある。


 「…碓氷課長も随分と丸くなりましたね。妖怪に人権があるとでも言うんですか?」


 そんなのあってたまるか。

 奴らは人を殺す災害だ。


 「邪悪だろうと何だろうと、呪いであることには変わりない。これまでもこれからも僕は妖怪が大嫌いだ。見つけた瞬間に祓ってやりますよ」

 「君が過去に凄惨な経験をしたことは知っている。だが、君の私情なんてどうでも良い。組織内で可決したルールを君は破った。それについてはしっかりと責任をとってもらわないとな。さぁ出て行け」


 碓氷課長はそういうと、僕を部屋の外へと追い出した。

 もしかしたら彼女は怒っていたのかもしれない。


 罰を受ける?

 この僕が…?二課の為に尽力を尽くしたというのになぜこんな仕打ちを??


 「はぁ…陰陽師って損な仕事だよなぁ…」


 碓氷課長の感情なんて僕には到底理解できないだろう。


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