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爽快のシアター Double Face  作者: ななたりや
第一章 エルフ族との共存
3/13

03 副会長

 すると、副会長である、霧野聖がやって来た。ちょうど、教室に帰ったところだった。


「会長が迷惑をかけて、すまない」

「そんなことねーよ、親が決めた、十年前からの鎖だ」

「首輪か?」

「犬じゃないんだからさあ……」


 笑えない。副会長は、普通に爆弾発言をする。


「そういえば、今日は薬を持っていないんだった」

「は?」


 一瞬だった。フェロモンの香りが充満する。放課後の教室内は、窓でも開けないと、むせそうだ。


「はやく、霧野……」

「聖と呼べ」

「はあ? 今それどころじゃっ!!!」


 激しくキスをされた。頭が真っ白になった。俺には会長がいて、それで……。契約なんて、そんなものは存在しない。紋章の類もない。

 水音が響く教室内で、意識を失った。


 目が覚めた頃、周りには誰もいなかった。副会長、性格悪すぎる。

 もう夜中じゃないか。急いで学生寮に帰ると、唇をぬぐって泣きそうになりながら眠りについた。


 朝目が覚めると、口が妙に乾いた。学生寮は一人部屋。二階の部屋から一階に降りると、水道水を捻って水を口に含んだ。

 急いで吐き出した。舌を嚙まれていた。血が混じった液体が口から流れる。


 最低。こりゃ、会長に報告だな。


 いってー、と思いながら、傷口を氷で冷やしながら、大学に向かった。


 大学に着き、急いで生徒会室へ向かった。

 誰もいない。また副会長と二人になったら……。不安でいてもたってもいられなくなる。

 すると、とんとんと、肩を叩かれた。


 怖い顔で振り返ると、ひゃっ! と小さく悲鳴が上がった。

 こじんまりした、ストレートヘアの役員である。大きく目を瞬かせ、かけている丸眼鏡を掛け直した。


「どうされたんですか?」

「あ、ああ……、何でもねーよ」

「嘘。口の中、ケガしてる」

「冷やしときゃ治る」

「誰に?」

「会長にしか言えねーよ」

「特別な唾液の持ち主。エルフのフェロモンの媚薬効果を打ち消す効能がある」

「な、なんだよ」

「……」


 役員の女子は、そう言って去っていった。ホラーじゃん。

 篠里は、生徒会室に入る。そこには、矢人桃谷がいた。


「会長!!!」

「お、どうした?」

「昨日はどうしたん? 会いに来んかったやんけ。ムカつくやつじゃのう」

「あはは、もろ方言出てる」

「副会長に任せたんやろ!!!」

「昨日は、たまたま忙しかっただけだよ。エルフ族の族長が、密会をしたいと言い出してね」

「はあ? フェロモンは」

「薬を事前に打っておいたから、大丈夫だったよ」

「じゃあ、俺いらんやんけ!!!!!」


 意味がわからない。なぜわざわざ口付けて唾液を与える必要がある。薬が少ないからだ。わかってる。「原本」から採った方が早いってこと。


「落ち着いて。僕は、君の味方だよ? 十年前からそうだったじゃないか」

「親が決めた取り決めだろうが。俺は、本来なら、母さんと父さんと幸せに暮らすはずだったんだ」

「でも、お金が欲しいと君を売ったのは、君の両親だよ?」

「それでもいい。母さんの子守歌、父さんの仕事の話、幸せな家庭だった。壊したのは……」


 エルフ族じゃないか。異世界交流を始めた、この国のせいだ。


「人身売買は、禁止される前だった。しょうがなかったんだよ。君は、貴重な血筋の家系だったんだよ。でも、ある日、エルフ族と戦争になった」

「じゃあ……なんで、なんでそんなやつら使役してんだよ!!!!!」

「……」


 会長は、俯いて、こちらを見ない。

 絆が壊れる音がする。桃谷を信用出来ない。


「お前の家、金持ちだろ。薬なら、幾らでも手に入る」

「え?」

「俺はいらねーよな」


 生徒会室の扉を蹴破って、クソがっ、と大学のゴミ箱を蹴飛ばしながら、教室に向かった。

 友人にも、唾液に耐性のあるやつがいる。男も女も。

 それは、一クラス十五人のみ。それぞれ、違う親に買われた時代だった。

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