後日談
1泊した後、頭におった傷によって起きるフラフラも次第に落ち着いてきた頃。世間は金曜日だった。
家に帰ってきた静華ちゃんの話によると、天童は停学処分。
俺がした画像を消す行為は、証拠不十分を招いて結果的に天童の処罰を軽くしたらしい。でも、あんなクソ画像の流出を止められたんだから、軽いとか重いとかどうでもいい。
「どう?楽になった?」
「はい!!1泊させてもらって本当、ありがとうございます!!」
「今日迎えが来るんだっけ、いつ頃?」
「三時って聞いてます!!」
現在の時刻は11時。静華ちゃんも学校に行っていて、寂しいこの上ないと思っていた。
「じゃあお話しようか。僕と」
「え、あぁはい。」
「まあそんな長くないから。なんなら短いよ?」
なんか緊迫してる…。心臓よ静まれ!!
「妹の、どのへんが好き?」
「っ!」
悔しくも、咄嗟には出てこなかった。
それだけ、頭の中に好きな理由が浮かんできたため。
「オドオドしてる話し方…仕草、髪型、文字の書き方。歯並び、爪、目の色が少し人とは違う所、全部…大好きです」
「は、…ははは!!」
「な、なななんですか?!!真面目に答えたのに!」
「いやあ…あはは、!静華から聞いていた通りだったなあって、。純粋に変態なんだねえ轟君」
へ、変態って…
「えぇ…、」
「多分いつか、イラつく事があると思う。」
「静華ちゃんにですか?」
「あぁ。その時は、何も考えずに自分勝手に物事を吐き出して、自己解決するんだ。義理の兄からの助言さ」
「もう結婚の話?!!」
「ふふ」
そう言って、部屋から出ていった。
ーーまっじで…学校行きてえ。
ベットから足を出して床につき、背伸びをして陽の光を浴びた。とりあえず部屋から出 出ると、すぐ横に階段があった。
下って見えてきた世界は洒落たリビングルーム。
本棚には『S級ド変態!!』という本が5巻ほどあった。
「やっか!!」
まず俺が目をつけたのは台所。食器をぱっと片してから窓を内側、そして外側を拭いて、抜けるだけの雑草を抜く。
手を洗い、それによって飛び散った水も完全に拭き取ってみせた。
「とりあえず外観は出来た!」
次は掃除だ、とりあえずは階段から。
「何してるの?」
「掃除です!」
「あぁ…、ありがとう」
2階から降りてきた樹はよく見るとボサボサの髪だった。それを見兼ねた俺は、ある提案をした。
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俺はゴミ箱を用意して、樹さんの髪をチョキチョキした。
「へぇ!凄いじゃん〜美容師とか目指してるのかなあ?」
「いえ、一応俺もお兄ちゃんなので…妹の髪をずっと切ってきたんです。その賜物ですね!!」
轟君は妹になにかしてきたのに…僕は何を出来てないなあ。
「ただいまあ…お兄ちゃん。今日のご飯は…あ!!そうだった……っあぁ…、、。」
いつものテンションなのか、そういう雰囲気でリビングに入ってきて、俺を見るな否や口調を正そうとする。
「髪型変わった?」
「轟君が切ってくれたよ〜」
「あ…ぇ、、その」
「ん〜、?」
まーたモジモジしてる静華を見て、にやあっと考えている事を察した。
「轟君。君に髪の毛整えて欲しいってさ〜」
「え?」
茜は振り返えると、顔を赤くして下を向いている静華を目の当たりにする。
「ぁ…その、髪…今回は整えるんじゃなくて…切ってくれると、」
「おっけ!!椅子に座って!!」
俺は静華を座るように促した。
「整えながら切る感じ?」
「うん…」
「うい〜」
妹のおかげで培ってきたこの力を解き放てる…!!これほどの快感はねぇぞおい、。
樹さんはおっとりしながらリビングのソファに座ってお茶を飲み、散髪の光景を眺めている。
「このくせっ毛は父親譲りですか?」
「母親似かなあ。静華の性格は父親譲りだぞ」
「へ〜、割とガチでっ、、ねちっこいくせっ毛だなぁっ!!」
痛みがでない程度の力を込めて櫛を通す。
「静華ちゃん」
「は、はい!」
「学校、どうだった?」
「…今日、早帰りでした。それと、みんな茜さんの事心配してます。特に、日下部君とか平石君とか」
あぁ、だから早めに帰ってきたのか。
っていうか…君呼び…?と、しょーもない所でショックを受けながら、「グループワークで一緒になること多かったからなあ。」
「あ、あの…聞きたいんですけど、いいですか?」
少し後ろを見てきた静華、両手はグーにして太ももの上へと置いてある。
「私の髪、切りやすいですか…?」
「おう!くせっ毛だけどサラサラだからな!!」
調子に乗りながらチョキチョキとハサミを走らせる茜。切ってる最中、「静華ちゃん、いい匂いするよね」とつぶやく。
「えっ?!」
1歩引下がる静華だった。




