放課後までに
渡辺静華。16歳くらい。普通の人間だ。
他の違う点があるとするならば…2日続けて登校時、横に私の事を何故か溺愛している男の人がいるということだ。まあウザイわけじゃない。
「静華ちゃん。今日何限目に体育ある?」
「い、一限目かと…」
「おっけ〜、ありがとうねぇ」
※※※
と、いうことで一限目。ホームルームが終わり次第、女子更衣室にて着替え中の時、静華はふと思った。
「順さんって…食事はどういったものを食べてるんですか?」
「え?普通だけど、、」
「ありえないですぅ!同じようなものを口にしてこれほどの差が…?」
「…静華も茜に影響されているのか?」
自分の発言を振り返り、どんだけ馬鹿げたことを言っていたのか身に染みて分かったため、顔が真っ赤になる。
「い、いえ…別に、、でも、順さんって髪もサラサラで手も綺麗で足が長くて可愛いし、お…おっぱ、、、お胸を大きくて…あああ!もう!!」
「染まってんな…」
茜さんはこれを普通に言えるのかぁ、、その辺は尊敬ですね、、。なんて静華は思う。
「ご、ごぼぼぼぼっっ!」
「し、静華ちゃん?!!!」
静華が溺れて少し騒然となった。
※※※
「見ろよ轟」
珍しく苗字で呼ばれたことに驚きつつ、平石の方を向いた。
「女子の濡れ髪…濡れシーンや、、」
「はっ!見飽きたぜぇ俺はよお…」
鼻をピーンっ!と伸ばして上からものを言う。
だが、今回は違う。今までに無かったのだ。
濡れたことによる艶、光沢…そして俺の性癖のくせっ毛だ…!!!!
つまるところ静華ちゃんだ。
そして階段を上がる音が徐々に大きくなり、教室のドアが開き始めた。
どんどん女の子が入ってくる。一人はいる度、誰かしらの男が反応する。
ーーだが、クラスのマドンナ的存在であり、入学当初から男子に絶大な人気を誇っていた人物、西園寺佳奈の入室により、クラス中は湧き上がった。
そんな中でも俺は少し口を開いて分析しているだけだ。
「生まれ持ったルックス、努力で手に入れた美貌…まあ報われたって話か。」
そして大本命が入室する。
歩いたところに星がキラキラと舞うように錯覚し、周囲には雪が降っているように見えて仕方がない。
艶の入った髪の毛!プラスくせっ毛!!!ぁぁああ!
「ありがとぉぉぉおおぉぉあ!!!!!」
空けておいた窓に身を少し乗り出して叫んだ。
こうして1時間目が終了したのであった。
※※※
「ふぅ〜〜、、」
女の子はプール、男子は講堂でバドミントンをした後の現国に、チャイムが終わりを告げた。
席を立ち上がって教科書をロッカーに戻しに行こうと思ったところ、俺の袖がクイッと引っ張られた。
後ろを振り向くと、そこには深刻な表情をした静華がスマホを握りしめて俯いている。
「スマホ、没収されちゃうよ??」
「茜さん…」
声が震えていた。今にも泣きそうな声だ。
よく見れば手足もガクガクと小刻みに震えている。
それを見て、何か問題が起きているのだと直感した。
「どうしたの?」
「こ、これ…っ、、」
スマホの画面を突き出され、人とのメッセージのやり取りを見せらる。
そこにはこう書いてあった。
-------------------------------------------------
『君の裸の写真持ってるよ』
画像
『みんなにこればら撒かれたくないなら、今日の放課後に剣道部の部室来てね。先生に言ったらばら撒くから』
-------------------------------------------------
貼られていた画像はたしかに静華ちゃんだったが、何か手を加えられている様だった。裸にはなっているが、どこかボヤけているような。
「ごめん!写真撮るけど俺は悪用しないから!信じて」
「あ、ぁ……はい」
カシャっと取って静華ちゃんと教室へ行き、できるだけ人混みに紛れさせた。
順に相談しようとしたが、教室には居なかった。
廊下へ出て少し辺りを探っていると、ちょうど目の前にあったトイレから順がハンカチを持って出てきた。
「女子トイレを覗いていたのか。最悪だな君は」
「違うんだ。ガチの相談がある。」
対して変わらんが、普段とは打って変わった声色でそう言ってみた。
それを順が素早く感じ取り、俺の目を見た。
「わかった。今すぐか?」
「あぁ、今すぐでお願いしたい」
「休み時間はあと5分くらいか。廊下の隅で聞くよ」
そして薄暗い、廊下の隅の隅まで行って先程の写真を見せた。
「これは…静華に来たんだな?」
「あぁそうだ」
「天童…こいつ確か剣道部だな。捨て垢とか使わずに直で連絡を寄こしたのか。キモイなこいつ」
「何年生か分かるか?」
「多分、1年だとは思う。」
そこで、スマホを見るために下を向いていた順が、急に顔を上げて目が合う。
「こういうので、興奮したりするのか?」
まあそう思われても仕方がないだろうな。だが、これの答えは決まっているのだ。
「する訳ねぇだろ。多分この写真、AIで作られた奴だしな」
「恐らくね。無料プランでも使っているんじゃないかな。画質が終わってる。」
スマホをポッケにしまい、クラスメイトである日下部に天童のクラスを聞いた。
「えーっと確か、1のDかな。隣だった気がする」
「おっけ〜〜!ありがとう!!」
そして教室を出ようとした時、もう休み時間は1分と無かった。その事を順は俺に指摘した。
「今日の授業は捨てる。まあ皆勤賞だし大丈夫だよ」
「お前、どうしてそこまで…」
私のその声は、茜には届いて居なかった。
あいつの考えてる事はだいたいわかるが、本当にやるのか?茜。
D組が体育に向かうまてトイレでやり過ごし、外から天童の先をリサーチしておいた。
みんなが教室から出ていき、だ〜れも居なくなった教室へ入る。
女の子のひざ掛けに目もくれずに天童の席に行き、スマホを取った。そして俺は、授業中のクラスの横を通る度に恥ずかしさが襲ってきたが、そんなのはどうでもいい。
文芸部のドアを開けて鍵を閉めた。
開始だ。
今は3時間目が始まっている。3.4.5.6限目で4時間も時間ができ、剣道部の部活時間は3時間、計7時間はある計算だ。ざっとだが。
ーーやってやる。放課後までに