体育祭の終わり。水泳。ポップ作り!
「まあ惜しくも俺たち白組は勝てなかったが、皆ーよく頑張ってたぞー」
またやる気のない、無気力な声で1のFの担任、哲也は言った。
「んじゃ、解散で〜。あ、ハチマキ来週に洗濯して返せよー」
教室で解散の流れで、俺も帰ろうとする時、静華ちゃんが声をかけてきた。
「茜さん…これ、ど、どうぞ…」
そう言って手渡して来たのはクッキーだった、丸焦げの…。
俺たち3人が、パッと見で結構焦げていて、静華は申し訳なさそうに俯いていた。
順が貰ってすぐに袋を空け、匂いを嗅いでみた。
「これは、ホワイトチョコ?バターの匂いも少しするね」
「ん〜!!うめぇぇぇえ!!最高!」
「よく食べるね、茜」
すごい勢いで口にクッキーを放り込んでいく茜に見劣りはするものの、翔也と順も1枚、2枚と食べ始めた。
「確かに、ちょっと苦いな」
「ご、ごめんなさい、、」
「静華ちゃんが作ったものならなんでも美味いんじゃ〜…」
※※※
6月下旬。梅雨も終わりを迎えようとしていた時の事
「あー、雨嫌だな。…あ!!」
いつもの通学路を傘をさして歩いていると、前に静華ちゃんらしき人を発見した。
いや、絶対静華ちゃんだ。そう思って水が跳ねないようにして小走りをする。
「おはよう!」
「…!おはようございます」
静華は突然横に並ばれた人からの声がけに体がビクン!と弾んだ。えろい意味では無いので安心して欲しい。
それから体育祭から時間が経ち、そろそろ迎える夏という季節。男にとって、最高の時間である。
「どうして…、グスっ、、プールが女の子別々なんだっ、、」
「お前みたいなおっぱい星人がいるからだろ」
「なんだお前!!おっぱいこそ至高だろ!!」
「論点はそこじゃあねぇ、、」
プールサイドで座りながら、タイムの測定を行っている人たちを呆然と見ていた。小声で、「あ、あの人早い」と呟いたりもした。
「茜、次じゃないか?」
「あぁそうだわ。行ってくる」
濡れているプールサイドをぺちぺちと小走りして縦にストン!とプールへ入った。
先生の笛の音とともに壁を蹴ってクロールをした。
言っておくが俺は水泳が大好きだ。女の子の水着が好きだからでは無く、泳ぎを習っていた為である。
向こう側の壁に着き、よじ登ってからタイムを聞きに行くと、「茜は12秒02。あと少しで11秒だな」と言われる。
そうしてプールサイドへ戻ると、陽キャ達から「早いじゃねえか茜!!」や、「静華さんといい感じ?」等と褒められながら茶化された。
悪いな諸君。俺は割とクラスじゃ中キャラなのだ。
俺たちのクラスには現役水泳部が居て、そいつはまさかの10秒を記録していた。
「茜って早いんだな」
そう考えている内に、ご本人の吉崎廻話しかけてきた。
「なあ、水泳部って女の子居る?」
「あ、あぁ?そりゃまあいるけど」
「まじ?!拝みに水泳部に!…っと、俺には静華ちゃんが居るんだった…あぶねえあぶねえ」
「お前…言っとくが女子と時間は別々だぞ?」
「チックショォォオ!!!!!!!」
全員がタイムを測り終え、少し早めに先生が授業を終わらせた。
髪を拭いてから着替えて教室へと向かう。
体育の後の現国は地獄だ。だが今回の授業はこうだ。
『ー自分の好きな映画のポップ作り〜』
でかでかとホワイトボードにそう書かれた文字。
少ない時間でのクオリティで作り、それを机の上に置いて置く。
そして個人で自由にクラスの中を回って同じく置いてある感想用紙に書くーーといった内容。
俺は速攻で静華ちゃんの机に飛びかかっていく。
「あらまあ可愛いぃ〜、!!」
机の上に置いてある紙には、『君の大腸を食べたい。』と書いてあり、その下にキャッチコピー、そして説明文が記載されていた。
綺麗で丸みを帯びた、小さな字。恐らくこの字が嫌いな奴日本に居ない説を推したいが、まあテントなんとも言えない。
内容を濃く、素早く綺麗に感想を書いて別の人のポップを見て回る。少し席と席の間を通って見渡すと、廻のポップが目にとまった。
『心が静まり返っているんだ』
という、少年少女の成長を書いたアニメ映画。
へー、こういうの見るのか。
感想を書いてから順の席に行くと、そりゃまあ理系ですわ。何を言っているのかさっぱり分からん。
顔色真っ青でその紙を見ていると、順が話しかけてきた。
「茜、こういうの好きなの?」
「いや、分かるわけねー…ガッツリ理系…無理だ俺には、、」
この後、翔也のも見に行ったが安定にバスケ系で特に面白く無かった。
「ん…?!!」
静華は茜の書いた感想欄の最後に、ちっ〜〜っちゃく、「大好き」と書いてあるのを発見した。




