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S級ド変態!!  作者: ぽこぴ
1年生編
5/15

体育祭

パン、パンパン!!と宙へ小規模の爆発音が鳴り響き、体育祭開始の狼煙を上げた。

日除けにテントが今年から立てられたことに感謝感謝だわ。


「最初ってなんだっけ」


「あー、プログラム…あったあった。…えっと、3年生のリレーだってさ」


「3年かあ、足速い人見てりゃ面白いやつな」


「それな」



目の前を早い人もいれば極端に遅い人もいる中、呆然と見過ごしていた。

すると急に翔也が立ち上がった。



「圭介!!お前頑張れよ!!!」

遠くから「うぃ〜」と手を振っている人が見えた。



「友達か?」


「あぁ。中学ん時のな!先輩だけど幼なじみだ」


「そうか。、ん!!ん〜〜っっ!!」

欠伸(あくび)をすると同時に体を伸ばして立ち上がった。


「少しその辺歩いてくるわ。俺らの番まで少し時間あるしな。」


「おっけ〜…早く戻ってこいよ!」


「うぃ」


ブルーシートの上を靴下を履いた状態で歩いて(ふち)まで歩いて靴を履いた。

目線を少し上げると、俺の前に誰かが立っているのが分かる。


「おぉ、静華ちゃん。どうしたの??」


「そういえば私…友達居なかった…ので、」


「輪に入れずに歩いてたんだあ…可愛いとこあるねえ」


「黙って下さい。」

素早く端的に答えられてちょっとドキッとした。

静華は最近、少しはっきりとものを言うようになった。


「テント戻ろうぜ」


「は、はい」


靴を脱いで、人を掻き分けて翔也のいる所へ戻る。

翔也の隣にはもう既に誰かが座っていて、それは萌え袖をしていた。


「お、戻ってきた」


翔也が俺たちにそういうと、隣に居た人も目線を上げてきた。

「う、上目遣いですか?順さん」


「……死ね」



それから横に並んで、多少の会話はあったものの、すぐに終わってしまう。故にあかねは足に肘を着いて頬杖をしていた。


それから2つほど、種目が終わったと思う。

それでも俺はボーッとしていて、何か自分だけの世界に入った感じがしていたのだ。



「ーーさん??」



「ーーねさん…!」



なにか聞こえる。



「茜さん!」


「あ、!はい!!」

横から俺を呼ぶ声が聞こえて咄嗟に振り向いた。


「つ、次です…大縄跳び、」

両腕を胸に縮込めて体育座りをしている静華ちゃん。

俺は頭だけを動かして上から下へ目線をゆっくりと落とす。



この学校の制服考えたやつと友達になれる気がする。

というか、モデルが可愛い。



「な、なんですか、??」


「静華ちゃんの7分の1スケールのフィギュア出ないかな」


そう言うと、縮こまっていた右腕をゆっくり俺の顔に向けて動かし…俺のデコを軽く弾いた。


正直、多分、恐らく、きっと…顔が赤くなったと思う。その時の静華ちゃんの顔は、俺の目を見て少しニコッと笑った。


俺はすぐに目を逸らした。

ーーー心臓に悪い…、



「は、早く行きますよ。あれからめっちゃ、練習したんですからね」


「静華ちゃんの飛ぶ音を念入りに聞いてるよ」



制限時間は3分。その時間を過ぎても飛び続ける限りは続行していいというルールだ。

1のF、総出で1列に縄の右へ並ぶ。

縄の回し係が、「せーのっ」という掛け声をして、皆身構えた。


頭上を縄が通り、足元へ迫る。

まず一回目のジャンプをして縄を(かわ)す。

恐らく皆無心で飛び続けるのだが、俺の頭の中には俺より前で飛んでいる静華ちゃんを考えながら飛んでいた。



「ーー30っ!!」


という飛んでいる皆の叫びで我に返る。もうすぐ、練習で一度も越えられなかった…36回目の壁。


1回飛ぶ事に、はっ!はっ!…と息遣いが聞こえ、それが今の記録、37回目を飛んだのだと教えてくれた。



「あ、あはは!!すげ…行ったぞ!」


「もう少し…、!」


1のF、大縄跳びの選手の誰か、または皆が新記録を叩き出した事へ、疲れながらも声を出す。



「4……っ3!!」


記念すべき43という数字を出したところで、誰かの耳に縄が当たった。

それによって縄がたるみ、また誰かの足にパチン!と引っかかる。


そして出来た少しの休息、皆が一気に気持ちよく息を吸う中、縄の回し手が叫んだ。



「まだ…っ!時間ある!!!」

その一声で皆は崩れかけていた列を即座に直し、再度飛び始める。

結局引っかかって終わったが、結果は2位。まさかの1回差で惜しくも1位を逃したが…俺たちは悔しいとかでなく、ただ単純、喜ばしかった。



野球部やバスケ部、そこに翔也も含むメンバーがクラス一丸となってハイタッチをしていく流れを作って、男女問わずに手をパチン!と合わせていく。


当然、俺のところにも女の子は来るし、男子も来る。



「茜!!いえーい!!」


「須藤うえーい!」


須藤の他にも、何人かと和気あいあいとハイタッチ。正直、1位のクラスよりも盛り上がっていたと思う。

周りの人を掻き分けて、俺はある人の所へ向かった。

ーーその他の人のハイタッチに気を取られすぎて、遅くなってしまったことを恥じたい!



「静華ちゃん!!ナイスジャンプ!!」


「は、はい!!」


両手を出してお互いを手のひらを合わせた。

すると俺と同じように、他の人とのハイタッチを終えてやってくる人物がもう1人。



「やったな、2人とも!」


「順さんも…な、ナイスです!!」

静華と茜は順ともハイタッチをし終わり、テントへ行くとにっこり笑顔で翔也が手を振って待っていた。



「ナイス!!言い飛び具合だったぞ!!」


「おう!」


「は、はい!」


「何回ハイタッチすればいいんだか」


順は渋々言いながらもノリノリでハイタッチをかます。

ブルーシートへ座り込んで一息ついた頃、次の種目が開始された。

2年生による借り物競争。こりゃまあ…酷いお題が出されていたと思う。

嫌いな先生とか、気まづくなるだろ。陽キャにしかこういうノリは出来ない。



『次の種目は1年生によるクラス対抗リレーです』



放送委員による女の子の声での放送。

同時に列が綺麗に散っていき、偶数と奇数の列で別れた。

それをテントで静華ちゃんも並んで座って見ている。


第一走者がスタート位置に付き、ピストルがパン!!と鳴らされた。

ーーそれと同時に、一斉に走り出す。



『お〜〜っとぉ?!!D組が優勢かあ!!!??』

ほぼ真ん中から追い上げてくるD組に解説だけでなく、観客も同じく驚いていた。

D組は1位を維持したまま、着々のバトンが繋がれていく。


F組は何とか2位を保ち、次抜かせば1位という状況という走者にプレッシャーのかかる状況下でーー


「ん??」


ーー何か変なものを見た気がするので、目を凝らして見ると、そこにはバトンパスを待つために呆然と構えている順が居た。



「順…?!さっきまでそこに居なかったっけ?!!」


「神出鬼没…」



順にバトンが渡り、綺麗なスタートを決める。



「!!?!?」



白衣を来て、実験器具をカチカチしてるイメージしかない順にはさほど期待はしていなかったが、そのイメージが180度変わった。

順はみるみる加速していき、力強く地面を蹴って走る其の姿は、さながら風神だった。怖い意味で。


惜しくも抜かせはしなかったが、次の走者は翔也。

F組は皆、「抜かせるんじゃね…??」と、期待をする。

翔也は期待に応える時もありゃできない時もある。


F組の走り終えた人や、未走者、そしてテントで見守っている人達は声を上げて応援をしている。



「頑張れええぇぇぇ翔也ぁぁあア゛ア゛ッ??ゴホッ!!」

むせた。


「が、頑張れ〜…!」


横目で隣に居る静華ちゃんの見て、声を聞き、チャージした。



D組に迫るF組。

運良く俺たちの前を通る時、「何ボケっと走ってんだ翔也ぁぁあ!!敵の1人でも抜かしてみやがれぇぇぇ!!!!」と、煽り口調で叫んでいる輩も居た。



別にアンカーでは無いのでほぼD組と並走状態のまま、次の走者へバトンが渡る。



「ねぇ、静華ちゃん。」


「頑張っ…あ、はい?」


頑張れと言いかけたところに被せてしまったらしく、ごめんと付け加えて本題を喋る。



「来年も同じクラスが良いね」


「そ、そうですね」


「何〜?嫌だった〜?」


「い、いえ!最近はす、少し楽しくて」


「ははっ。まあ先生がクラス別々にしようとしても、俺が細工しとくから!!」


「しなくていいです」


「え、クラスおんなじになるって確信してるの〜?嬉しいなあ」


「そ、そういうことじゃないです!!ほら、リレー…見ますよ」


「はーい」



皆が自分のクラスへの応援の言葉を叫んでいるこの場が、俺にはどうしようもなく楽しくて仕方がない。

ーーずっとここに居たい…いや、もっと前から、これを知りたかったのだ。俺は。



両手を太ももの横に置き、呆然と学校全体を見るかのように立ち尽くした。

目には涙が浮かびそうで、必死に堪える茜。


「だ、大丈夫ですか?」


不安そうにこちらを見る静華に、少し顔を向けて言う。

「あぁ、うん。静華ちゃんがいるから大丈夫!!」


「はぁ…」









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