テスト終わり。ボーリング。
靴を履き替え、1のFへ向かう。
1のF、またの名を406である。
4階の六教室、という事だろう。
そこまで2人で階段を登り、他愛もない話をしていた。
「オットセイの鳴き方の話って…、他愛もないんですか、?」
「ま、まあ…他愛もないっしょ、??」
他愛もない会話をして教室に着き、1度した席替えの席ではなく、出席番号順に座るということになっている。
「じゃっ、頑張ってね!静華ちゃん」
「ちゃんは…辞めてください、」
会話をしてからそれぞれの席につく。ペンを2本出して、消しゴム2個出しておく。
すぐに先生が来て紙を配り始め、チャイムと同時に書き始めた。
『轟 茜』
っとぉ。早い早い。2文字書くだけ終わるの有利だな。
今回のテストは1日で終わる為、今日さえ頑張ればあとは体育祭だけだ。
1時間目の数学、これは俺からしたら塩梅だ。
、、と思い、先生にバレずに静華ちゃんを見ると、険しい顔で問題を凝視していた。
数十分後、全ての問題を解き終わった俺は再度、静華ちゃんを見た。
ーー寝てる…、可愛ぃ〜〜!
それからどんどんテストは進んでいき、最終科目の終わりをチャイムが告げた。
テストを後ろから回収し終わると、みんな、わ〜!!と一気に騒ぎ始めた。
ーーすると、俺の方へ向かう足音がまず2つ。
「な!茜!、数学出来た??」
「塩梅だな!地理は諦めた」
「茜は数学は本当、出来るからな。そこだけは…尊敬だ」
嫌味〜に順が袖をパサパサしながら言い放つ。
「いや貴方の方が頭いいでしょうが」
ーーすると、俺の方へ向かう足音が1つあることに気づく。念願だな。
「そ、その…お疲れ様…でした、、!」
俺の席に集まっている2人と、座っている俺に向けた言葉で、俺は超嬉々として受け取る。
「おう!お疲れ様!!次は体育祭だな!」
帰りのホームルームが終わり、みんな走って教室から出ていく。そんなに急いで何があるんだか。
俺がバッグを背負い、前を見ると2人が俺を待っていた。
ーーいや、俺と静華ちゃんを、かな。
後ろから小走りで俺の隣までやってきて、一緒に歩き出す。
「んじゃ行くか〜」
翔也が先頭で、その後ろについて行く。
ーー俺はある事に気づいた…。横でめっちゃなにか言いたそうにモジモジしている静華ちゃん…!
ど、どうしたんだい。って言いながら頭撫でたい…!
当然、俺が気づくなら、先頭にいる翔也はいいとして…順がそれに気づいた。
「どうしたの?静華」
「いや…その、、…〜〜っっ!」
スマホをバッ!と突き出し…皆、頭の上に『?』が浮かんでいた。
俺はそんな静華ちゃんの頭の上にポムっと効果音がなりそうな優しさで手を置く。
「…???」
「ふっ、連絡先ね〜繋げようぜみんな〜」
「お〜!いいよ!繋げよ繋げよ!」
「そういえば繋げていなかったな。繋げるか」
静華ちゃんが突き出したスマホには登録用のQRコードが映っており、それをまたスマホで読み込む。
真ん中をくるくると回転して、終わったと思った時、表示された名前とアイコンに感銘を受けた。
「おお、!おぉおおおぉぉ〜〜っ!!」
「茜、うるさい」
「名前がシズ…、、っ。
アイコンが猫…っっ!!くぅぅゥ!!良いねぇ!!」
スマホを天にめいいっぱい掲げて喜んだ。
みんなと繋げてから少し歩いたところで、俺は静華ちゃんにプチドッキリとしてスタンプを1個送信してみた。
ピコン!という通知音が一瞬鳴る。
続けて、ぺこりとお辞儀をしている可愛い猫のスタンプが俺へ送られてきた。
「ムフフ…」
「静華。茜と連絡先を交換したのは間違いだったね」
校門前で順と翔也とは別れる。また明日〜と挨拶をして歩き出した。
そしてすぐにまた静華ちゃんとも別れる。
最近この瞬間が嫌すぎて泣きそうだったがら今の俺には素晴らしいアイテムが存在するのだ。
それはスマホだ。
離れていてもWi-Fiさえあれば連絡の取り合いが可能ですという、発明した人間に1年分のチョコを支給したい。
『今電車に乗った〜』
と送信。
画面を切り替える寸前、既読が付いたことに驚く。
既読スルーを覚悟していたが、まさかの返信がきたのだ。
『茜さんと連絡先を交換したせいで、どこでもうるさくなりそうです』
と。
「お、…おっふ」
携帯を強く握ってデコに当てるように悶えた。
電車から降りて、中学の時の通学路を歩く。対して歩いたことの無い道…。
何を期待しているのか、LINEアプリケを付けっぱで歩いて家の玄関を開ける。
「ただいま〜」
「おかえりっ…お兄ちゃん!、」
リビングへ入ると、愛しき妹、玲奈が体を動かすゲームをテレビモード出やっている真っ最中だった。
「妹よー。1回運動しまって体重は変わらないー、やるならコツコツだぞー」
「わ、わかっ……てるって!今日からしっかりやるの!」
「その言葉を聞いて明日を期待した俺が過去に何人いたのやら…1週間経てばゲームカセットを札に錬金術で変えてるじゃねえか」
「か、過去は過去!!今は今でしょ!!」
「そうだな」
さっさと夕飯を済ませ、風呂に入る。
風呂から出て自室に行き、溜まっている漫画を消化したり、アニメを消化したりして明日までの時間を浪費した。
ーー夜12時過ぎ。
まだ俺はLINEを閉じていなかった。
「いやいや。何を期待してんの俺は…もう寝よう、」
横向きになって縮こまった体勢になって寝ようとした所…ピコン!!とまじで聞きたかった通知音がなった。
マッハでスマホを見てLINEを開くと、そこにはこう書いてあった。
『おやすみなさい』
「だっしゃぁぁ!!」
右隣は妹の部屋、そこから壁ドンされた。
※※※
布団から体を起こし、スマホを開いて現在時刻を見る。
8時50分。
まあいつも通りだ。
「ふわあ…」
「おはよう…っ!お兄ちゃ…、んっ…!」
「朝からやんなよー」
「ち、違うわ!!運動だよ!!」
「はいはい笑」
朝飯を作りながら冗談を言って妹を困らす。これも恒例の様なものになってきている。
卵を焼いている途中、リビングで、ふんっ!ふんっ!と息を吐いている妹。
「お前、俺と兄妹で良かったな。今のお前、普通の男が見たら結構えげつないぞ」
「は、はあ??!知るか!興味無い!!あんたは手出さないでしょ!そんな勇気も覚悟も無いこと知ってんだからな!」
「ははっ、言ってくれるねえ」
テーブルの上に皿を置き、箸を付ける。
すると、横に置いてあったスマホに通知が届いて画面が付いた。
通知先を見て静華ちゃんじゃないことだけは確認してしょんぼりするが…こりゃまた意味不明なところからのメールだった。
『変態1と健全3』
グルチャか…?
衝動的にそのLINEを開くと、「今日駅前11時集合。」
と、意外に順からの連絡が来ていた。
不意に端的すぎるだろ…と思った。
「ちょっと遊びに行ってくるけど、なんか買ってきて欲しいもんある?」
「んっ!!んー??特にない!!」
「ふっ」
珍しく続いてんじゃん、運動。
外へ出て、陽の光を直に浴びる。大きく息を吸い、そして吐いた。
「行くか!!」
※※※
「ん、まだ10分前だよ。茜。」
「こっちのセリフでもあるんですが、それにしても…、、ふーん…」
駅前に着き、順がポツンとたってる所へ駆けつけた。
そして俺は、順の私服姿を頭からつま先まで凝視した。
「茜、キモイ死ね」
「シンプルなキモイ死ね発言…あざっす笑」
「Mかよ。それにしても茜は、静華と話す時と私の話す時のテンションが天と地レベルで、違うんだね」
「別に変えてるわけじゃないけどなー?気にしてんなら変えるぜ。ごめんな」
「いや…こっちの方がまだ話しやすいから、変えるなよ。あ、ほら!来たよ、大本命がさ」
少し話し込んで居たが、順の話題変換で気を取り戻し、順の指した方向を見た。
「がっっ!!!」
と、吐血するレベルだっ…!!
「お、おはようございます、」
静華は俺たちへ挨拶をする。
「おはよう。…ん?」
順も静華からの挨拶に答えると、右隣にいる俺を見た。
「あばっ……あばばばば…、、、」
俺の目からは静華ちゃんの周りに本来無いはずの雪がしんしんと降っていて、それはもう神々しく見えた。
学校のとは違うカーディガン、そして膝下までのロングスカート、黒いタイツ。
120点で、…
「よーもうみんな居るねー。…え?なんで1人死んでんの?」
「恥ずか死。だと思うよ」
俺の目には、オドオドといつも通りの静華。そして何がかかっているかも分からない電柱に寄りかかって死にかけている茜。その2人の間にすまし顔で立っている順。
(カオスだなあ、)
目的地に行くために翔也が先頭を歩く。
そんな翔也を気遣っているのか、順が隣を歩き、話をしていた。
「カ…カーディガン、、好きなんだね…」
「、!」
今度は喋らずに、頭をコクコクと上げ下げした。
「お、おぉ…、ぉあ、…」
俺はというと、隣に神聖なる者が歩いているという事実の余韻がえぐくて静かになった。
ーーピコン!!と順の携帯がなる。
「ん。ごめん。LINEが…、、ん?」
それは静華から、『茜さんが静かなのが新鮮です』と連絡が来ていた。
後ろを振り向くと、少し離れた所の塀へ手をついて悶えてる茜が居た。
それを指でちょいちょいと指している静華。
「見てよ翔也。茜が珍しく静かだ。」
「天然記念物だな笑」
「まじ愛おしいぃー…動物愛護じゃなくて静華ちゃん愛護になりたいぃ…、、」
※※※
「着いたぜ。ボーリングだ。」
「ボーリングか!やったことねぇな俺」
ワクワクしながら建物に入り、それぞれの名前を書いて店員に提出した。
300円で専用シューズを貸してもらい、履いてからボーリング場へ足を踏み入れる。
「ここか」
「そうね。名前はもう登録されてるらしいからさっさと始めちゃおう」
率先して行く2人について行く静華。
その後ろで目を輝かせている俺に静華は、「ど、どうしたの?」と声をかけてくれた。
「い、いや…なんでもない。やるか!ボーリング!!」
目に涙が浮かんでいたのは小説だけの話。
記念すべき第一回目の投球は翔也だった。
綺麗なフォーム、適度な速さのボール。全ての要因が重なって、
「ストライーーク!!」
を軽々しく取っていった。
「可愛げねぇ!!」
「おぉ、。やるね」
静華はぱちぱちと拍手している。
二球目は静華だった。
ボーリングの球を持ってレーンに近づくその姿は、
さながら姫…、。
「頑張れぇぇええええええ!!!!!」
「う、うるさ!」
耳を塞ぐ順。
「はははww」と笑っている翔也も、「どこぞの可愛げねえバスケ野郎に負けるなあぁぁぁぁああぁ!!!!!」
、と叫ぶ頃には「おい!!」の様に怖い声色へ変化していた。
そんなプレッシャーの中、静華の投球を拝む。
ヒョイ…という効果音と共に、ゴロゴロと床を転がっていくボール。
「どんまあぁぁぁあああいいいいい!!!!!!」
「うるせえー茜!!」
見事ボールに回転がかかっていた為、ガーターになっのであった。
「次、俺か。」
「いやさっきのテンションどうした…」
俺はボールに手を伸ばすとーー
「おい。私はやると思ったぞ茜。そのボール、静華が使ってた奴だ。お前のじゃない」
「そ、そんな事…、、ないよ〜??」
そうすると、順が立ち上がってボールの取り出し口にきた。
「お前のは入れたタイミング的に、これだな」
「な、、!?お前もゲスい顔すんだな順…!見損なったぞ!」
「見損なってんのはこっちだわ!!早くうちやがれ!私の順番が来ないじゃないか!」
私は溜息をつきながら椅子に戻る。
「なんの話を、していたんですか?」
「…どうしようもない変態が犯罪を犯すのを、事前に止めたんだ。」
「お、おぉ!?」
「な、なんだ?」
キラキラ周りが輝いている静華が、私を見つめてきた。
「警察官みたいです…、、かっこいいです」
「静華…君という人は…優s…━━━━」
「あぁぁあ!!ガーターじゃねぇか!!」
私の小さな声は、茜の叫び声によってかき消された。ピキピキと頭にシワが寄る。それを見て静華もさらに控えめになった。
「茜…、、はあ。まあいいか、見せてやる。」
四球目、順の出番でレーンの手前に立つ。
助走…腕の振り、この世の全ては、理論で解決出来る!!
「ほっ、!」
ボールの行く末を眺める。二回目にして、スペアで終わった。
※※※
「いやー楽しかったな!!」
「翔也の無双劇だったけどな」
「まあ、ボールに触ってる時間が段違いだからね」
それぞれ家に向かい、俺は駅に向かう。
少ししてから、翔也と茜がコンビニに寄りたいと言い出したので、外で待っている時間が出来た。
「ねえ静華。」
「あ、は、はい。」
「茜…相当迷惑でしょ。嫌なら突き放していいんだよ」
「い、いえ、、まだ…大丈夫です、。」
「そう?何か変なことされそうになったら言ってね。殴るから」
「な、殴っ、、…。た、確かに…友達にあんな人、いなかったから、少し慣れてないですけど、、あ!!わっ私そもそも友達が…、、ぁ、。」
「ふふ。気にしなくていいって笑。
そうだね…あんな奴、私も見た事ない」
「それも、あるからなのか…分からないですけど、」
「ん??」
少し口篭って、いつも通りにモジモジしている静華を見る。
「ーー少し、楽しいです。私の友達と話してるお母さんを、私はまだ見た事ない…」
「……」
「お待たせー!大好きな静華ちゃんの為にアイス買ってきたぞ!」
「あ、ありがとう…ございます。」
少し黙っていると、コンビニから2人が颯爽と出てくる。
翔也は私の所へ来て、ある袋を渡してきた。
「これは…?」
「チョコだ。好きなんだろ?」
「な、なんで??」
普通に疑問に思ったので聞いてみた。言ったことは無いのに、しっかりチョコ好きだとバレていたからだ。
「なんでって…学校生活一緒に暮らしてりゃ分かるよーそんくらい」
「皆の事、そうやって見てるの…?」
と、聞こえない程の声でつぶやくと、「え?何??」
と案の定聞き返してきたので、「なんでもない」と答えた。
「そうか??じゃあいいか。」
「今日は、ありがとう…ございました、、!楽しかったです!!」
家の位置的に、一番最初に居なくなってしまう静華が玄関の前でそう言った。
「お疲れ様!!今日はありがとうね!!」
「バイバイ」
私が玄関を締め切るまでの一瞬、その隙間で茜さんと目が合い、茜さんはニコッと笑って「ばいばい!!」と言ってくれた。
「じゃここでな」
「あぁ。今日はありがとうな!!体育祭頑張ろうぜ!」
「おう!!リレーは任せた!!大縄跳びは任せろ!」
「はっ!期待してるぜ!」
駅で2人と手を振って別れ、タイミング良く来た電車に乗って帰路に着いた。