テストは今日。体育祭も近い。お母さん。軽いし、いい匂い!
「順。化学分かるか?」
俺、轟茜はとりあえず白衣を来ているからという理由で桐島順、女の子へ問題を見せて聞いた。
それは化学反応式をなんか色々!色々やってやる問題だ。
「あーこれはね、feだよ」
「へぇ〜〜ありがとう!」
順へ寄せていたノートを自分の方へ再度寄せて書き始めた。
「そういえば…どうしていつも白衣来てるの?暑くない?」
「暑いといえば暑いが、科学部たるもの、雰囲気を大事にしたいのだよ」
「科学部、なんだ。ほ〜ん。俺は文芸部!最愛の静華ちゃんも文芸部!」
「見れば分かるさ。それに、よく軽々しく最愛とか言えるね君、。私は嫌だよ」
少し目線を下に落として暗く言われた。
何やら色々思う節があるのだと思う。けど俺はそんなのしーらない。
「何故?」
「本当に好きな人が出来た時に言うことだからだよ。好きでもない人にポンポン言ってちゃ、言葉の重みが無くなると、私は思うね」
「ふーん。まあいいや。俺は軽く言ってないし」
ムッ…っと少し順の顔が険しくなり、茜を睨んだ。それを見て少しピリつきを感じた翔也は仲裁に入ってくれた。
「ま、まあ!感性は人それぞれだし??毎回本気ってことはいいことだから!!ね??」
「…そうだね」
ーーいや、何がそうだね…やねん。納得してる顔ちゃいますってそれ
そう心の中で突っ込む翔也だった。
※※※
「んじゃ!バイバイ!!」
「また明日な〜〜」
学校の門を出て、左に坂、右に下り坂。
見事に翔也と順は左で、俺と静華ちゃんは右だ。
ありがとう神様。この道を作ってくれて…
「茜さんは…家、どこら辺なんですか?」
「ん?気になる??」
「いいから答えて、下さい…」
「電車乗って少ししたところにあるよ。いつか来る?」
「遠慮します」
間髪入れずに答えられて、「えーなんでよ〜」と幼稚に反応した。
「静華ちゃんの家どこなの??」
「ここ、下った先にすぐある。」
「へえ〜。送ってくよ」
「いえ、別にそんな、、」
「最近やばい奴増えてるらしいよ。今日だって※哲先が不審者情報言ってたし。すぐ可愛いねえとか言い寄ってくるらしいよ」
「あなたそっくりでは…?」
「ごふぅっ!!」
イヤッフー。以下略。
「ここ、です」
「お、大きい…!?」
思ってた以上に大きい…、、え??!
「え…、お嬢様…??」
「ち、違います!」
玄関に入っていく所まで見送り、手を振る。ドアから顔を半分出して睨んできたが、ご褒美の何者でも無い。
そして駅に着いて、電車に乗り、1時間かけて自宅へ向
う。
座って呆然と向いの窓のその先の風景を見ていると、おにぎりを持って電車に乗ってしたサラリーマンがいた。
少し見ていると、静かにおにぎりを食べ始めた。
スン、スン…と鼻をすする音が聞こえ、バレずに目をやると…
ーー泣いていた。
泣きながらおにぎりを食べていたのだ。
ここで爆笑してやるほど鬼でもないしツボも浅くない。なにかあったのだろうか。
こういうのを見ると、自分の将来が不安になる。
静華ちゃんと添い遂げるのは確定事項だ。
「ただいまぁ」
「おかえり!」
妹はいつも通り、ソファに座ってテレビを見ていた。
母は包丁でネギを切っている。
「どうだった?学校は」
「1ヶ月とちょっと経ったけど、友達は多くないけど出来た。いい奴らだよ。全く」
「そう。良かったじゃない。」
切ったネギを鍋に入れて煮ているのをリビングから見ていた。
「風呂行ってくる。」
※※※
「ご、ごめん…なざいっっ、、!」
クラスメイトに必死に謝る静華ちゃん。
その訳は、2時間目の体育を体育祭の練習時間として先生に変えてもらったのだが、大縄跳びに引っかかりまくり、まさかの9回から上に行けないという現象が起きているのだ。
「大丈夫だよ静華ちゃん。落ち込まないでって」
「中学の時より酷くなってる…、、」
「あー…まあ!少し動けば何とかなるでしょ!!」
2人で話している所へ、順がやってきた。
「もっとリラックスだ。地面に着いたらふんわり飛ぶイメージでやってみようか」
「は、はい。」
もう一度、縄を回してもらい、言われた通りにふんわりと飛んでみた。
「ーー9!!ーー10!!!!」
10回を超えた瞬間、大縄跳びに出ない人達や、飛んでいる人も、声を出して歓声が体育館に響き渡る。
結果、18回で引っかかってしまったが、結果オーライだ。
「はぁ…、っ、、、はあ…!!」
地面に倒れ、寝転ぶ静華。当然、俺も傍にいて声をかけていた。
すると、先程飛んでいた場所からこちらへ…トコ、トコ…と、順が歩いてきた。
「やるじゃないか。素晴らしいよ。」
「は、はい!!」
純粋にははっ!と笑う静華。
それを横で見て俺は、「可愛ええ…」と声を漏らすと、静華は俺の膝をペシッと叩いた。
「チッ、、静華…、、」
※※
「あーーー……」
英語の授業中、静華は顎を机に置いて口を開いている。阿呆面だ。
「では、はい。静華さん。ここを訳してください」
「うぇっ、え…、、えと、、」
指名された瞬間、その場に立って教科書を見るを向きが反対で1度直した。
「あなたの言うことは、正しいですか…?」
「はい、そうね。できるじゃない。座っていいわよ」
ふう…、、。と私は椅子に座る。
ーー答えがあって良かったぁ、、!
「チッ…」
茜は静華の後ろを見て、その声の持ち主を探る。
いい加減、イラつくからだ。
※※※
放課後、15分だけ校庭を日替わりで使用クラスを変えて体育祭の練習をすることが認められている。
今回、俺たち1のFは校庭の使用の番が回ってきた。
当然やるのは大縄跳び。目指せ19回!を掲げて飛び続ける。
12回で引っかかる。
次こそはと飛ぶと16回で引っかかる。
3回目…4回目、そしてもう終了まで残り2分となった。
結局、19回は行けずに終わってしまい、なんとも言えない雰囲気で教室へ行く。
そのまま解散になり、今日は部活には行かずに帰りたいと静華ちゃんが言い出したので、俺も帰る。
前に先輩とはLINEを繋いだので、そのLINEで『すみません!今日行かないです!!』と伝えておいた。
ーー校門を出て、右へ曲がる。しょんぼりしている静華ちゃんを励まそうとする途中、上から野球部の会話が聞こえてきた。
「体育祭練習、まじでダルいわ。しかもあいつ、なんだっけ名前」
「誰だよ?」
「えーっ…と、あ!渡辺静華!!クソ運動音痴、最悪だよまじで。練習が進まねえ」
「まあまあ。生まれ持った才能は仕方ねえよ」
…と、まあ、好き勝手言ってくれちゃって。俺はこう見えて、地獄耳だぞ。
静華ちゃんに聞こえてないのが救いだわ。
「ていうか、今週やばくない?明後日テストだぜ。んで土日挟んで月曜に体育祭…、、先生たちは何を考えてるんだマジで」
「テスト…どう?」
「おりゃ楽勝だな。わかんなかったら教えてやるけどぉ??」
「お願い」
「いやー断られんのももう慣れ……え?今お願いって言ったか??」
「う、うん。勉強、教えて。明日」
「お、おう……」
※※※※※
飛んで後日。
スマホで母親に少し遅くなると連絡を入れ、まさか静華ちゃん邸にお邪魔して貰っている。
「と、とりあえず空気を…」
「保存しないで」
リビングの机にとりあえず教科書を広げる俺。
台所の方でチャカチャカと食器の音が鳴り、お盆に乗っけてこちらまで静華母がやってきた。
「まさか…静華に男の子の友達がいるなんてねえ…!意外だわあ…、、!」
「お母さん…、、」
「はい!お友達です!!やましい関係ではなく!健全なお友達です!!!」
「だ、黙って…」
モジモジしながら小声で呟く静華。だが、2人には声は届いていなかった…。
「高校に入って1ヶ月と少しかしら、この子…あまり喋らないから心配だったけど、大丈夫そうね。いい子と友達じゃない。」
「~~~、、!」
なんで照れてんだ…、、クラスメイト達にお前はおかしい奴だ。なんて口揃えて言われた時は驚いたけど、静華ちゃんもよく考えたらおかしな奴だ。
「あ、!静華。あなたまた髪の毛整え忘れたわね。全く。」
お母さんは手で自分の娘の髪をワシワシと撫でて、その髪の毛に絶望の表情を浮かべた。
それを見て、俺は素早くバッグから道具を出す。
「あらあら、?」
首を傾げて俺の動向を見ているようだ。でも俺は躊躇なく、静華の髪は霧吹きで水を一吹きした。
「や、やめて!勉強しに来たん、でしょ…!?」
「おぅ、今日はよく喋るね」
「最近この子、少し様子が変なのよねえ。学校に気になる人でもいるのかしら?」
両手で俺の櫛を払おうとするが、手を避けて髪を梳かす。その間、「やめて!」と小声で言っているが、お構い無しだ。
「それにしてもお宅の娘さん。いい匂いしますね。家の外見からして育ちがいいのでしょう!!娘さんも暮らしやすいと存じます!!」
「よくできた子だわねえ…あ!そういえば、お名前はなんて言うのかしら?」
「轟茜です!以後、お見知り置きをーー」
「や、やめて…!!」
今までで1番でかい声で叫んだ静華。流石に辞めようと思った頃、髪はもう梳かし終えていた。
「それじゃあテスト勉強、頑張ってねー!」
そそくさと別室に移動する母親。
「いい人だね。お母さん。」
「う、うん。でも少し変態。茜さんと、きょ、共鳴してた…、」
「あはは!共鳴って……??…そんな見つめて〜??何も出ないぞ?」
「いや…髪の毛、ありがとう…、。」
「…!、おうぅ…。」
その日、俺だけが勉強に集中出来なかった。
静華ちゃんは普通にやってた。
※※※
電車から降り、通学路を歩いて学校へと向かう。
「ん?」
そこで俺は静華ちゃんを発見した。
そこで俺はテレビで見た、『忍者のお宅』の様に静かに、大胆に忍び寄る。
白いカーディガンに黒いタイツ。ふへぇ、いつも通りの100点だ。
並走気味に横に並ぶと、静華ちゃんは俺だと言うことに気づいておらず、俯いて後退していく。
それに合わせて俺も後退すると、今度はブルブル震えていた。可愛ええ…と思ったと同時に可哀想なので…。
「わっ」
「ひゃぁ!!」
…なんならその声にこっちがびっくりした。
ーー静華ちゃんは後退していた先程とは裏腹に、脅かすと今度は少し弾むように前に走って止まった。
ジロりと後ろを振り返る静華ちゃんと、目が合った。
「おはよう」
「…」
俺が話しかけると、ぷいっと前を向き、走り出した。
校門まで走るらしい。俺は走れる。けど静華ちゃんはそうは行かなかったらしい。
校門の所に先に着いて待っていると、すぐに静華はきた。
「ぜぇ……ぜえぇ、、、ゥッ、」
と言いながら。
「まっ、、、やば…っっい、、、早すぎ…、」
「静華ちゃんが遅いんだよ?なんならおぶってこうか???」
俺は決してやましい思いはなく、静華ちゃんをガシッと掴んで持ち上げると、背中にバッグの様に背負って下駄箱まで走り出す。
「ちょ、…っ!や、やめて!!」
「ほいっさほいっさ〜!あはは〜!!」
中央玄関に到着すると、まさかの人物が立っていた。
「こら!!辞めなさい!!!」
な、何故いる??!
「ずみまぜん…、、」
「しっかり怒ってください。ほんと、まじで、怒ってください。」
学年主任へ言うように、俺に指をさして言った。
あ、感想言うの忘れてた。静華ちゃん。めっちゃ軽かったです。いい匂いもしました。以上
※哲先=哲也先生の略