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S級ド変態!!  作者: ぽこぴ
1年生編
13/15

翔也と順

茜は帰りの電車に乗りながら、「少し…考えさせてください、。」と静華ちゃんが言った言葉を繰り返し脳内再生していた。

夏休みなんてあっという間だった。静華ちゃんとか順、翔也を誘ってどっか行きたかったが、それももうできそうに無い。また来年だ。

つか、静華ちゃんが俺の従兄弟のファン…?!


(感慨深いぜぇ、)

浮かんでもいない涙を拭うように目をかいた。

家に着き、そろそろ始まる学校の準備をしていると、ある最悪を発見した。

そう、丸つけをした数学のプリント10枚だ。


ーーやっっ、ちまったー…

じゅ、順!!頼む!!。そう願いながらスマホをタップして順へ連絡をとった。

思っていたよりすぐ既読が着き、今までにない期待を順へかけると、絶望の一言が返ってくる。



『気が変わった。自分でやって』

見捨てるのかよ。


急いで机に向かい、ペンを走らせていると、母親がは風呂だと言って部屋へ入ってきた。

「茜ー、ふろー…、、なにやってんの?」


「見りゃ分かるでしょ!忘れてた宿題!!!」

丸つけをする時。自分でも解読不能で、まるで古代文字だった。



-------------------------------------------------


私、桐島順(きりしまじゅん)の朝は対して早くない。

6時50分頃、起床。朝ごはんを用意して食べ始める。


「いただきます。」

これは絶対に欠かさない。私はこう見えて少し食べる方なので、適当に作った朝食ではぺろっと平らげてしまうのだ。

使った食器を洗い終えるとリビングに置いてある扇風機をつけた。

勉強する時、手が黒くなるのが嫌すぎて袖を伸ばす癖があった私は、いつの間にか手が隠れてしまうくらいに袖がたるんでいた。

その袖が扇風機の風で(なび)いている。


迫ってきている登校日の為に、再度持ち物を確認していた。どっかの馬鹿が見してくれとせがんできた数学のプリント、社会の調べ学習。理科のプリント、諸々をファイルへぶち込んだ。



「…暇だ、」


そう思った時は近くの図書館へ行く。そこには珍しく私の好きな小説が貸し出してあるからだ。

『赤色豚野郎は後輩の現実を見ない』通称、赤ブタ。

私はこれが大好きだ。



「あれ?順か?」

第7段を手に取った時ーー横から聞き覚えのある声が聞こえた。振り向くと、そこには翔也と他バスケ部員が居た。


「翔也…」


「ここで会うなんて。また後でな!」


「あぁ、うん」

本当、会うとは思ってなかったよ。

いつもの席に座ってリラックスをするためにイヤホンで曲を聴きながら読む。イヤホンによる音漏れには最大限注意を払う。当たり前とかいうか、マナーだ。


なので、この会話は私には聞こえていない。

「なあ翔也。順ってエロくね?」


「あぁ?なんでだよ」


「いやさ!この前部活してる所見てさ!後輩と笑いあってたんよ!!そんときの前かがみがもうっ!さいっこう…」


「…後輩か。」

俺は自然と順の場所を探り、少し離れたテーブルで本を読んでいることを知った。

「エロい、ねえ…」


「いやっ、そんな深く考えんでも…。」

友達の1人が忙しなく呟いた。

-------------------------------------------------


少しして読み終えた本を本棚に戻し、自動ドアで外へ出る。左を見ると自販機があり、微糖コーヒーを買おうとする。

するとどこからか、走る足音が私に近づいて来るのがすぐわかった。

少し怖く感じたため、ボタンを押す手を止めて注意深く耳を傾けているとーー


「順!!やっと来たなまじで!!!」


「翔也…?……おっ、と」

走って来た翔也が、「ほら!!」と言って渡してきたのは微糖コーヒーだった。


「なんで、分かったの?」


「ん?いつも飲んでるじゃん。学校の自販機に買いについて来てって言った時、ほぼ毎回買ってるよなw」


「あ、あぁ!…よく見てるね。じゃあ…遠慮なく頂くよ」


「おう!」

カチッと音を鳴らして缶の蓋を外し、微糖コーヒーを口へ流した。口の中には程よい甘みと苦さが広がり、それぞれを相殺し合っている。


「やっぱり美味しいね」


「自販機だしな」

ーーそういうことじゃないんだが…。



「友達はどうしたの?」


「あいつらはもう帰ったよ。」


私は疑問に思い、目線を翔也に移した。

「なんで翔也は帰ってないの」


「…コーヒーを渡すためだよ」


「嘘ついてるね」


「う、嘘じゃねえ…!」

横でははっと笑う順を見て、我ながら照れくさく感じたのか、目を見て話すことが出来なかった。

本当、調子が狂う。

薄暗くなってきた道を歩きながら2人の会話は続いく。


縁石の上を1本渡りの様に歩く翔也に注意をする私。

すぐ近くにある川へ行き、水切りをする訳でもなく石を投げ入れる2人。



「私さ、クラスで男子たちがよく言っているのを見かけるんだ。少し行動がうるさい人にADHDだとか、出てる…とか、そういうのが苦手なんだよね」



「得意なやついないと思うけどな?」

投げ入れた石がちゃぽっと川へ入っていく。



「茜がギター練習してるってさ」


「え?ほんと?すぐ飽きそうだけだ」

している…という事実に対しての驚きはあったものの、続けられるとは思っていない。

すると翔也が茜から送られてきた写真を私に見せてきた。

ーーその写真には少し控えめにピースをしている静華、そして(おおやけ)にピースを茜がギターを持っている写真だった。



「なんだ、静華のためか」


「それだけで納得だよな笑」

微笑する2人。


「翔也、バスケ部で上手くいってなかったりするのか?」


「どうした〜急に…まあそんな事もないかもねえ」

図書館で会った時から表情がひきつってるいるのを見逃しているわけがない。

人間観察が一時期の趣味だった女を舐めるなよ。



「困ったら…っ」

石を投げる瞬間の言葉は詰まる。そして投げた後にすぐ言い出した。

「科学部くりゃいいんじゃない」


「そうだなあ…結構まじで考えてみるよ」


その会話をした次には川から離れ、コンビニでグミを1つずつ買い、分け合う。


「これ、クソ硬いコーラグミだって」

私は翔也にグミを差し出す。もちろん翔也は手の上に乗せて欲しいのだろう、だが私は翔也の口へ運ぶ素振りを見せてみた。


「あ、…あ、こっち?」

ジェスチャーは使わず、その場のノリで口に直で入れるのかと聞いてくる。私は頷いた。



「ほいっ」


「あ、ありがとう…」


「ふふ……んっ!!」

次の瞬間、急に翔也は自分で買ったグミを私の口にねじ込んで来たため、私はちょっと良くない声を出してしまった。



「エナジードリンク味。ぶっ決めようぜ」


加えて私は私っぽくないことをふと思ってしまった。

(皮脂の味…)

飲み込んだ後、流れ的に家へ向かっていた。それは確実に解散を意味する。


嫌だ。

「ね、翔也。都合がいいなら、少しだけ私の家に来てくれない?」


「あぁ…いいよ。」

茜ならこうやるな。

女の子の家に行ったらやることはとりあえず空気の保管、そして奥行きがある本棚なのに本が少し手前に来て、後ろになにか置けるスペースがあるかどうか。


豪華、といえば豪華な順の家。ロックガーデン?というのか。

豪華ではなくお洒落である。

玄関を開けてもらい、ゆっくりと踏み入っていく。

床も木製で内装も本格的に洒落ていた。


広いな…。なんて思っていると順に誘導されるようにある部屋に連れていかれた。



「ここ、私の部屋。適当に座ってて。あ、上着脱いでね」


なんでと思いながらも上着を脱いで適切な場所へ畳んでおいておく。

恐らくここの部屋は順の部屋だろう。

少し広めで窓がふたつ。日光もしっかり差し込む角度だ。

ベッドに座り、その窓から外を眺めていると、ドアがキィっと音をたててゆっくりと開いた。どうせ着替えて戻ってきたんだろう…と気にせずに外を見ている。



ーーすると、急に俺の体が押し倒された。


「ぇ、あ、あの。順??」


みると、順は明らかに薄着だった。

「翔也は…私の事さ、冷静で落ち着いてる人とかって思ってた?」


「イメージは、そんな感じ?」

ほぼ馬乗りになってそう聞いてくる順、目のやり場に困り、キョロキョロと周囲を見渡す。

ストン…っと順は力が抜けて俺の上に乗っかった。

そ、その。


「じゅっ…順さん??当たってるんすけど」


乗っかっていることにより、順の顔は俺の顔の右耳にある。


「やりたいなら、やれば?」



俺は聞こえないくらいの声量でため息をつき、順を起き上がらせた。


「やらないんだ」


「茜に負けた気がしてな。それに…寂しいな電話でもかけてくれりゃいいだろ?こんな無理したやり方選ばなくても」


「こうしないと…ダメかなって」


相変わらず目のやり場に困るが、目だけはそうでも無い。ジッと目を見て俺はあることを告白した。



「順、好きだ」


「…あんな事したから、好きになったの?」


「んなわけないだろ。親は色々あって家に帰ってくるのが遅いんだろ?ならその間の時間、俺といればいい」


翔也は、私の目を真っ直ぐ見て言ってきた。

どれだけ私の心に響いたか計り知れない。


「翔也…私と付き合って…下さい、」


「そんな辛そうに言うことかあ?こちらこそ、お願いします!」


とりあえず服を着ろ。と言われたので服を着て、その日の夕ご飯を一緒に作って、一緒に食べた。

風呂は別々だ。当然だろ?

夜8時過ぎあたりまで遊んで、帰る時は見送ってもらった。

順は馬鹿じゃないからずっと電話をかける生活なんていつか根をあげるか、俺が順の事を鬱陶しく思う日がくると考えている。

絶対無い、なんてのは言いきれないのが現実だ。


それを順も分かっているから、頻繁にはかけないよ。と言ってくれた。


俺はLINEで後にこういっておいた。


『家がクソ近いから、何かあったら走って来ればいいよ』

これに対して送られてきたのは、『うん』の一言。

このうん。にどれほど思いが込められていることやら。








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